機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE 作:meitoken
デュランダルによるロゴス打倒の声明が発表された。停戦条約締結から一年足らずでユニウスセブンが落下し、それらへの支援などをせずに戦争を行う口実が出来て大喜びの連合への潜在的な地球市民の敵意は爆発……特にザフトの支援を受けていた地域では熱狂的なまでにデュランダルを支持する動きが出た。
ザフトでも戦争のない世界を作るべく……その邪魔をするロゴスを打倒する。その理念にミネルバのクルー達も酔いしれていた。
「待て…!」
「どうしたの?」
シオンが提示された者達をよく見ており、ミサキが問い返す。
「この連中を全て討てば……大変なことになる。」
「どういうことです?」
クルー達が酔いしれる中、冷静だったカインが問う。
「提示された者には大西洋連邦やユーラシアの政府と関わりの深い会社のトップがいる。」
「それは…ブルーコスモスのバックにいるんだから当たり前じゃないですか?」
そう、誰だってそう考える。ブルーコスモスを通じて連合を牛耳る死の商人達。二度の戦争を私欲のために引き起こした。
「それだけじゃない!オーブや赤道連合、スカンジナビア王国…中立国の軍や政府にも影響力がある要人もいる。」
「なんだ、じゃあそれも最初からロゴスって事じゃないですか?」
クルーの一人があっさりと三つの中立国をロゴスと断じる。が…
「違う!ロゴスのグローバルカンパニーは地球のあらゆる国家の政治、経済、軍事と関わりがある!」
軍に所属し、多くを見てきたシオンは理解した。これがいかに危険であるかを。大西洋連邦を初めとしたプラント理事国だけではない。オーブなどの中立国どころかこれらと関わらない国など地球に存在しないと言っても良い。
「ちょっと待って!もし、そうだとしたら地球の社会システムが破壊されるって事でしょ!?」
ミサキがその意味を理解した。そう、これを実行すれば地球の社会システムの維持に貢献してきた企業が崩壊し、それと関わりを持つ政府や他の企業も巻き込まれる。
「なんです、臆病風に吹かれたんですか?伝説のエースともあろうお方が?」
シンがまたも嘲笑してきた。
「あいつらは戦争を自分達が儲けるためだけに戦争を起こしてるんだから、良いじゃないですか。何も分かってないんですね?」
「分かってないのはお前だ……あの連中の会社が全て潰れてしまえば、政治も経済も全て破綻すると言ってるんだ。戦争がなくなっても、その後の混乱が起こる!」
「そんなの議長がなんとかしてくれますよ。」
「そうだそうだ。」
「臆病者だな…所詮、地球生まれのナチュラルまみれか。」
「お前達、いい加減にしろ!!」
カインが仲介するが、ルゥが割って入る。
「よせ……シオン、貴方の意見は確かに一理ある。ですが、ロゴスが戦争を牛耳るのも事実です。」
正論だ…しかし……!
「仮に実行するにしても、この勢いでやれば後に待つのは混乱だと言っているんだ。」
「そんなの、大丈夫ですよ。」
クルー達は誰も取り合わず、慎重論を唱えるシオンを嘲笑した。
何故、分からないんだ!?プラントに例えれば、評議会を一緒に潰してしまうようなものなんだぞ!!
プラントでそれをやれば、たちまち政府は機能不全に陥る。それとも、コーディネイターだから大丈夫だとでも思っているのか?こいつらは。
そして、シオンは無言でいるアスランをにらみつけた。
「お前もこいつらと同じなのか、アスラン?」
「あ、い…いや…」
はっきりしない奴だ。この期に及んで、まだキラ達が間違っているとでも言うつもりなのか!?キラ達がロゴスに踊らされているとでもほざくか!?
「AWACS006より入電。セクションスリー、ポイント1836にアンノウン。アークエンジェルです。」
スカンジナビア王国に極秘に展開していたザフト地上軍のウィラード隊……隊長のウィラードは老齢だが熟練の指揮官で、この作戦の指揮を任されている。
「やはり動いたか…司令部へ報告。それとデータベースを直しておけ。アレはもはやアンノウンではない。エネミーだ。」
そして、艦隊司令部からミネルバにも入電が送られた。
スカンジナビア王国からオーブへ向かおうとした矢先……アークエンジェルは突然ザフトの大軍に襲われた。バビ、バクゥ、ディン、ガズウート……地上で運用されるMSがありったけ投入され、母艦のコンプトン級も追ってくる。
「取り舵10、台地の陰に回り込んで。」
「バリアント、てぇー!」
CICのナタルが指示を出し、CICに座るアマギ一尉も人員不足を補うべく座っていた。余りに唐突且つ大規模な敵の襲撃を前にシュウも予備機として残っていたフレイムに乗って後部デッキからガトリングストライカーで迎撃に出ていた。そして、今副操舵席にカガリが座ってノイマンと共に操艦している。
「どういうことなの、これは?」
「まずいですよ、奴らの言いように追い込まれている!」
アマギの言うとおりだ。明らかに誘導されている。が…
「しかし…何故、今になりザフトが?本艦など、ロゴスに比べれば取るに足らぬ少数部隊ではないか。」
ナタルの言うとおりだ。あれだけの演説をしたならば、討つべきはロゴスとそれに与する連合のはず。アークエンジェル一隻にこれだけの規模の部隊を派遣する余裕などないはずなのに。
フリーダムが砲撃でバビ部隊を戦闘不能にし、ブレイブがアークエンジェルの砲撃を躱したバクゥ隊を対艦刀とビームサーベルで前足や頭部を斬って戦えなくする。アフェクションもバクゥの後ろから追ってきたガズウートの砲撃を防ぎ、レールガンとビームライフルでキャタピラや火器を撃つ。
イージスとデュエルペイルはフレイムと共にアークエンジェルの防衛に専念し、コンプトン級もミサイルを撃った。アークエンジェルのイーゲルシュテルンが撃ち落とし、更に撃ち漏らした分をイージスがスキュラで撃ち落とした。
「艦長、直撃が不可能ならばアマギ一尉の進言に従いムラサメ隊を出しますか!?」
以前であれば、ナタルは直撃の許可を求めていた。だが、今度は違う。情勢が前より複雑であるからだ。
「今はヤマト少尉達がいるから大丈夫です。しかし、長期戦になれば機体のエネルギーは持っても、彼らが持ちません!」
ナタルの言うとおり……まだ大丈夫だ。だが、このまま長期戦になればいずれキラ達が消耗してしまうし、艦の損害も大きくなる。
「分かっているけど…キラ君にも言われたでしょう!?そうして、撃たせるのが目的かもしれないって!」
今ここでダーダネルスやクレタ以上に表立ってザフトを攻撃すれば、下手をすればロゴスと見なされかねない。所属不明となっているアークエンジェルやイージス、ペイルはともかく正式なオーブ軍所属となっているムラサメ隊がザフトのMSを攻撃すれば、最悪だ。
「なんとか海まで逃げ切れれば……それまで頑張って、みんな!」
司令部から来た命令を知ったアスランはシオン、ミサキと共にタリアに抗議しにきた。
「議長がおっしゃったのはロゴスを討つという事です!なのに、何故アークエンジェルを討つ事になるんですか!!」
あのデュランダルの演説の後、司令部から〈『エンジェルダウン作戦』を支援せよ。〉との命令がミネルバに伝えられた。エンジェル、それはつまりアークエンジェルを討てという命令だ。これを聞いたアスランは最初耳を疑った。そして今、ミサキが机を叩きタリアに詰め寄る。
「明らかにこの命令は矛盾しています!司令部に作戦の停止と命令の撤回を!その作戦の意義の確認も!!」
ミサキの進言にタリアは怒鳴り返す。
「そんな事はもうやったわ!でも、返答は同じよ。〈その目的も示さぬまま、オーブの代表兄妹の贋者を担ぎ、ただ戦局を混乱させ戦火を拡大させるアークエンジェル並びにフリーダム、ブレイブ、アフェクション。今後の情勢を鑑み、放置できぬこの驚異を取り除く。〉…これは本国の決定よ。」
「彼らが驚異な物か!大体あのカガリさんとフブキが贋者な訳が無いだろう!大体、司令部や政府が誘拐の件を知らないわけがないだろう!!」
シオンが上下関係も忘れた口調で抗議するが、タリアは更に強く出た。
「いい加減にしなさい!もうどうにもならないわ!既に作戦は始まっているの!」
馬鹿な!いくら何でも話が早く進みすぎている!これは明らかに最初からアークエンジェルを敵と見なしている。本物のラクスの力を借りたいと言っていた議長が?アスランの脳裏にキラが口にしていたデュランダルの疑いの言葉が蘇った。
まさか…自分にかけてくれたいたわりの言葉も、最初から嘘?
シンはカイン、アリスと共に最後の打ち合わせを行っていた。あの後、レイとルゥを交え連日連夜重ねた対策。カインとアリスも強引に引きずり込む形だが、これでいい。
ステラ、敵を必ず取るよ。そして、姉さん。もうすぐ目を覚まさせてあげるから!
そう、全てはあいつらのせいだ。家族を失った姉さんに甘い言葉を囁いて戦わせ、何も知らないステラを殺したフリーダムとアスハ。ステラはもう戻らない。だが、あいつらを倒せば姉さんは戻ってくる!
呪詛に近い決意を秘めてシンはインパルスへと向かった。
そう、俺は正しい。俺は何も悪くない。だからこんなに早く、フリーダムを撃つ機会が巡ってきたんだ。
前半はロゴス打倒でのミネルバの様子。シオンもまた、アスランと違う形でミネルバで孤立し始めました。そして何より…ザフトひいてはプラントそのものへの不信感がアスランより酷い形になり始めています。
慎重論を述べたのに、臆病者呼ばわり。この時点で既に「戦わない者は臆病だ」、「従わない者は裏切りだ」をこいつらが実践している始末。
銀河英雄伝説風に言えば、「自分達は腐敗するわけがない」と根拠のない自信を述べてそう。