機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE 作:meitoken
ヘブンズベース戦が終結し、ロゴスの幹部達は逮捕された。が…
「ジブリールがいない!?」
「いないって、そんな!」
「基地が降伏する直前に一人だけこっそり逃げたらしい。」
レイが淡々とジブリールがいない理由を述べ、ルゥがため息をつく。
「呆れた物だ。自分一人だけ、他のロゴスの老人達を見捨てて逃げようとは。逃げ足だけは宇宙一か?」
「けど、そうなるとどこへ逃げたんだ?」
カインの問いにアリスが応える。
「やっぱり、月のアルザッヘル基地へ行くつもりじゃないの?パナマか、ビクトリア。」
どちらも連合のマスドライバー施設だ。パナマは元々南アメリカ合衆国が管理していたが、独立と引き換えに連合に管理権を委譲している。ビクトリアに至っては前の戦争で何度も連合とザフトが奪い合っていた。
「その二つが最有力だろうな。」
レイが頷き、ルゥが付け加える。
「高雄はないだろう…あそこは既に同盟からの離脱で軍も政府もバラバラだ。」
「起きてたか……大丈夫か?」
医務室を訪ねてきたカガリにアスランは答えた。
「ああ、死にたいような気分だが…残念ながら、大丈夫みたいだ。」
カガリが顔をしかめた。
「やめろよ、そういうこと言うの。誰も嬉しくないから…」
「ああ……ごめん。…メイリンは?」
「今ちょっと、熱出してる。でも、大丈夫だよ。ミリアリアが少し、話聞いたって。」
メイリンの容態は回復しつつあるようで、アスランは安堵するがまだ罪悪感を感じていた。
「ミネルバに…乗ってた子だよな?管制の……」
「ああ、助けてくれたんだ……殺されるくらいなら、行けって。………殆ど、話した事もないのに…俺甘えて、巻き込んで…」
カガリが少し寂しげに呟く。
「お前のこと好きなんだろう…きっと。」
好き?ならば、それこそ何故?まともに話す機会なんて話した記憶があるとすれば、以前シンとオーブについて揉めた後くらいだ。なのに…何故助けてくれたのか?
「大丈夫だよ。彼女のことは…心配するな。ちゃんと私が面倒見るから。」
カガリはどこか変わったような気がする。
「……それで、あの…私のことは許してくれるのか?」
「………それは俺の方だろう、謝るのは。クレタでキラに言われたことを、俺は…シオンとミサキにも言われたのに。」
連合が各地で行う非道を…ロドニアのラボを見て、自分は正しいという考えにしがみついた。人間は自分が正しいと思いたがる生き物だ。間違いを認められる強い者はそういない。
だが、シオンは自分達の間違いの可能性をディオキアで疑い始めていた。それに引き換え、俺はああなってようやく気づいた……どうしようもない馬鹿だ。
「私は……結婚しようとした。お前に…何も言わずに。」
カガリの左手にはあの指輪が光っていた。あの時も着けていた。
「守りたかったんだろう、オーブを。」
望まぬ結婚をして、彼女は国家元首として国を守ろうとして同盟にサインした。暫くして、フブキとユリにも手ひどく叱られた。ユリからは「肝心なときにいなかったくせに」、フブキに至っては「殴る気も起きない馬鹿」とまで言われてしまった。ぐうの音も出ないとは正にこのことだった。
「俺は…焦ったのかな。嫌だったんだ、何も出来ない自分が。カガリもフブキも、国という重い責任を背負って毎日死に物狂いだったのに。」
だが、セイランに言いくるめられるばかりで…フブキは意見を封殺される。孤立に追いやられるカガリを前にして、アスランは何も出来なかった。
「何かしたかったんだ……!でも…」
それを付け込まれた。結果、彼女の苦渋の決断をなじることしかせず、踏みにじって、泣かせて……挙げ句にアレだ。あの時、セイバーがあればキラとカガリを殺すために戦わなければならなかった。助けたいのに、助けるための力をそのために使えない……アレックス・ディノとして燻っていた頃と変わらない。
「…難しいな。みんな、そうそういってるのに。なんでそうならないんだろう………やっぱり、ロゴスのせいなのか?しょうがないのか?もう本当に…」
アスランの脳裏にシンの顔がよぎった。シンもまた、力を欲してその意味を考えない。只力に酔いしれている。
「そんなはずない……絶対に。」
ユリは入り口でアスランとカガリの話を聞いていた。もう少しばかり、耳にたこができるくらいに文句を言ってやろうと思った。
「無粋ね…」
もう少し、カガリに甘やかしてもらおう。その後で、昔キラが宿題に行き詰まって泣きついたときの何万倍もこき使ってやる。
ネオは同室の少年がカガリと話しているのを黙って聞いていた。あのザフトの少年はどうやらインパルスのパイロットの上官だったようだが、何かしらの理由で脱走して撃墜されてここに運び込まれていたことは知っていた。
しっかし…見たところ、あの二人はそういう関係みたいだな。
ナチュラルとコーディネイターと言うよりもザフト兵とオーブの代表が深い関係にある。ネオにとってはそちらの方が驚きであったが、何故かこういう組み合わせに何の驚きも感じない。むしろ、当たり前のように思っていた。まるで、以前も同じものを見ていたかのようだ。
フブキは例のパイロットの一人グレンと会っていた。彼らはレイラが持ってきたデータにあるエクステンデットではなく、洗脳教育と通常訓練による兵士……つまりフブキと同類だ。
「何故、オーブの氏族がコーディネイターと当たり前のように接している?」
「オーブはコーディネイターを拒否しない。知っているだろう?」
グレンの問いに端的に答えるフブキだが、一拍おいてあの施設で聞かされたものを復唱する。
「『僕達、私達のお父さん、お母さんを殺したのはコーディネイターです。コーディネイターは宇宙の悪魔です。平和のためにコーディネイターを皆殺しにしよう。正義のため、青き清浄なる世界のためにコーディネイターを抹殺しよう。』」
グレンが目を見開いた。なぜ、それを知っていると言わんばかりの顔だ。やはり彼らは自分と同類のようだ。
「俺は確かに両親を殺された。だが、殺したのはコーディネイターじゃない。連合の兵士だ。」
グレンが更に目を見開いた。
「信じられない、という顔だな。お前たちはユーラシアで同じ事をしたくせに。」
「それはコーディネイターに肩入れをしたから……」
だが、フブキはそれすらたたみかける。
「俺の両親もそういった理由で殺された。プラントに好意的な政治家だったから目障りだったのだろうな。そして、俺はあの施設の連中に言った。『両親を殺した人達は青き清浄なる世界のためにと言っていた』ってな。そうしたら俺は鞭で打たれた。親を殺したのはコーディネイターです、と言うまでな。」
「それは冤罪だろう?」
グレンの言い様はもっともだ。しかし…
「だな。さて…一番聞きたいことだが、この艦のコーディネイターが宇宙の化け物や悪魔っていう風に見えるか?」
グレンはすぐに答えられなかった。確かに、あのフリーダムのパイロット達は自分より少し年下であり、当たり前のようにナチュラルが主のこの艦でなじんでいる。そして、ディオキアの彼女もナチュラルと同じように振る舞っていた。
「連合の兵士でいたいのならそうすればいい。まさか同類に会えるとは思わなかったよ…」
そう言って、フブキは立ち去っていた。
「良いコーディネイターは死んだコーディネイターだけ……本当なのか?」
クレムは青髪のザフト兵とカガリの話を聞いていた。随分と難しい話をしているのは分かるが、男女の仲なのは分かった。
どういう神経してるの?あの二人も、この艦の連中も。
この艦はクレムにとって、正に未知の世界だった。ナチュラルとコーディネイターが当たり前のように一緒に会話して、もう一人のザフト兵の世話をしている。それどころか、一緒に担ぎ込まれた二人に至ってはまるでここで生活していたかのような様子だった。聞いてみれば、前の戦争でこの艦に乗っていたザフトの脱走兵だった。それならば、確かになじんでいるのもうなずけるが…
あたし……そういえばあの子がコーディネイターって知った後もここの連中と同じことやってたっけ。生きてるのかしら?
別の医務室でシオンはベッドに横たわりながらデュランダルの世界についてもう一度考えていた。
『本当に不幸だった、彼は…いや、彼に限ったことではない。彼の姉のユリ・ヤマト君、シオンの妹のレナ・クールズ君に至っても同じだ。彼らがもっと早く自分を知っていたら。君達のようにその力と役割を知り、それを活かせる場所で生きられたら……彼ら自身も悩み苦しむこともなく、その力は讃えられて幸福に生きられただろうに。』
自分を知り、その力と役割を活かせる場所……シオンやアスランの場合はキラと同じ、MSパイロットとしての人生を歩む。
つまり、人はあらかじめ決められた人生を生き、世界のシステムとなる。それがデュランダルの求める世界だ。そんな世界なら確かに戦争は起こらないのかもしれないが、自分はそんな世界が良いとは思えない。シオンの脳裏に再びデュランダルの言葉がよみがえる。
『人は自分を知り、精一杯できることをして役立ち、満ち足りて生きるのが一番幸せだろう?』
MSのパイロットとして人を殺し、讃えられて満ち足りた自分。想像した瞬間、レナを討った時の記憶が蘇り、吐き気がした。そんな世界もそうして生きる自分もお断りだ。
俺はそんな世界は認めない!そんな生き方も…!
デブリの中に隠れているFFMH-Y101エターナル……核動力搭載機の専用運用艦として開発されたザフトの高速戦闘艦で宇宙におけるクライン派の拠点だ。地球から上がったラクス、イリア、バルトフェルドは戦後も宇宙に潜伏していた元バルトフェルド隊のマーチン・ダコスタとクラウド・デゼルトの二人からデュランダルに関する情報収集のためにかつて自分達が潜伏していたコロニー・メンデルから持ち帰った成果を聞くためにブリッジに上がっていた。
「いや、もう!参りましたよ!コロニーの中は空気も抜けちゃってて、荒れ放題だってぇのに!」
ダコスタがうんざりし、クラウドも浮かない顔をしている。
「遺伝子研究所は、データからなにまで綺麗に処分されてました。」
イリアは大きくため息をついた。
「先手を打たれたな…」
DNA解析の専門家であるデュランダルはメンデルの研究所に在籍していた。そこに何かデュランダルの目的について手がかりがつかめると思ったのだが、既に手を打たれた後であり、二人が持ち帰ったのは一冊のノートと余りに頼りない。
振り出しに戻ったと思われた時、ダコスタがめくったページに三人は注目する。
「でも、ここにですね。多分、当時の同僚か何かが書いた物だと思うんですが……」
ダコスタがなぞる文章をバルトフェルドが読み上げる。
「『デュランダルの言うデスティニー・プランは、一見今の時代に有益に思える。だが、我々は忘れてはならない。人は世界のために生きるのではない。人が生きる場所、それが世界だという事を……』。」
「『デスティニー・プラン』……?あんま良い響きじゃないが。」
イリアが冗談交じりの懸念を口にした時、警報が鳴り響いた。いくつもの映像がモニターに映り、一つにイリアがよく知るMSがライフルを構えていた。それを最後に、映像の一つは映らなくなった。
「偵察型ジン……付けられたのか!?」
クラウドが声を荒げ、イリアは舌打ちをしてエレベーターへ向かう。
「試運転も込みで撃ち落としてやる!」
エレベーターに入ろうとしたところで
「待って!待ってください!」
「待ってって…!」
「もう間に合いません……追尾してきたというのなら、母艦もそう遠くはないはずです。」
彼女に言われてイリアは少し冷静さを取り戻し、状況を考える。
今、あのジンを撃っても撃たなくても遠からず攻め込まれる。今エターナルにあるのは切り札の五機、ザフトからクライン派の協力で流れたガイア、同様に連合やクライン派の協力者を経由してパーツの状態で送られて先日組み立てられた三機。パイロットはイリアとバルトフェルドの二人だけでファクトリーで開発している機体もまだ使えない。
「どうするよ…攻め込まれたら守り切れないぞ。」
「…艦を出しましょう、今すぐ。」
「それは危険では?発見が早まります。」
クラウドの意見にラクスは首を横に振る。
「だからこそです。攻め込まれる前に出て、少しでも有利な状況を。」
「しかし、本艦にはナスカ級どころかローラシア級一隻と戦うことも心許ないんですよ?」
「勝ちたいわけではありません…アレと、このファクトリーの方々を…そしてこれを。」
ラクスは覚悟を決めている。ここで自分が死ぬことになっても、この資料とファクトリーを、そしてあの五機を守ればキラ達が引き継いでくれると。
ラクスは艦長席へ向かい、イリアを見る。
「私達がでればザフトはそれを追うでしょう。ファクトリーはその間に対応の時間を稼げます。我々は最悪の場合降下軌道まで逃げて、あの五機と貴方達の三機、資料をアークエンジェルに向けて射出します。」
それまで黙っていたバルトフェルドもラクスの意志を理解し、艦長席へ飛ぶ。
「よぅし…分かった。エターナル発進準備!ターミナルへ通達!ファクトリーには俺が話す!回線を回せ!」
今回はアークエンジェルとファントムペインがメインです。グレンは同じ教育を受けたフブキと出会い、クレムはコーディネイターとナチュラルで仲良くする変な連中と同じ事をしていた自分を変だと感じ始めています。