機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE   作:meitoken

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あのバカ親子の醜態とカガリ、フブキの再起です。


PHASE-33 黄金と白銀…前編

ヘブンズベース戦後、その功績をたたえられたミネルバのパイロット達には勲章が授与された。誰もがそれに疑問を抱かなかった。実際に彼らがいなければ良くて撤退、悪くて全滅させられていたのは明白だからだ。

 

そして、中でも単独でデストロイを何機も撃破して友軍の士気回復に貢献したシンにはネビュラ勲章が授与された。これでシンはオーブ沖海戦を含めて、二つ目の勲章。着実に実績を重ねている。

 

更には、デュランダルはレイとルゥ、シンの三人をFAITHに任命した。正にエリート中のエリートと呼ぶに相応しい立場に立った。

 

だが、タリアはシンについては懐疑的だった。度重なる命令違反や軍紀違反……しかも、それがお咎めなしだから増長の一途を辿っている。今は落ち着いているが、それを考えるとFAITHにするには早すぎる気がするのだ。

 

それを見透かしたかのようにデュランダルがささやく。

 

「キミが何も聞いてこないのは怖いね、タリア。」

 

「聞く気がないだけです………アスラン・ザラ以下四名の件も私はまだ納得していません。」

 

デスティニーの件もだが、デュランダルはまるでレイとルゥを通してシン…カインとアリスを自分の影響下において動かそうとしているように見える。まさかとは思うが、アスラン、シオン、ミサキの三人は自分達もそれになるのを恐れて逃げようとした。或いは……『ダーダネルスの時にシオンが言っていた我々が知らない何かに気づいて口封じされたのでは?』という疑念さえある。

 

が、その疑念を吹き飛ばす報告が来た。ロード・ジブリールの所在が判明したという報告がカーペンタリアから上がってきた。カーペンタリア…ジブラルタルから遙か彼方のあの基地から、報告が来る場所。それは、オーブだった。

 

 

 

「なんだと!ジブリールがセイランに!?」

 

「何かの間違いじゃないのか?」

 

カガリはキサカの連絡に血相を変え、流石のフブキも今回は動揺している。

 

〈いや、間違いない。そしてそれはザフトにも知られたようだ。〉

 

「そんな……」

 

同じく、メイも青くなっていた。

 

〈既にオノゴロ沖合に艦隊が展開している。〉

 

最悪だ……ザフトにも知られて既に艦隊が展開しているとは。

 

「ウナト…何故、そんな!」

 

今世界は完全にロゴス打倒で一致しており、それに与する存在は敵だとされている。只でさえ、オーブはまだ大西洋連邦の同盟国という状態が続いている。それだけならば、まだ圧力で加盟させられたという認識も成り立ち、静観を決め込めば火の粉が飛ぶことはなかった。なのに……

 

「この情勢でジブリールを匿えばどうなるか、分からないはずないだろうに!!」

 

フブキがコンソールを殴りつけた。

 

そう、カガリでも分かること。同盟国の要人であるジブリールを招き入れるのはおかしな事ではない。だが、今のこの情勢で匿えばオーブはプラントどころか反ロゴスに流れている連合にさえ目をつけられてしまう。既にロゴスは連合とプラントの共通の敵となっているのをセイランが理解できないはずがないのに。

 

 

 

デュランダルはジブリールがオーブを掌握し、月基地の連合と合流するのを懸念してミネルバにもカーペンタリアの艦隊への合流を命じた。ザフトは既にオーブはロゴスについている、と見なしつつあった。

 

「何が中立国だ。」

 

「最初からロゴスだったんだな、あの恩知らず姫。」

 

「そうだと決まったわけじゃないだろう!」

 

カインが反論した。

 

「な、なんでそうなるんだ。」

 

「本当にオーブがロゴスなら、なんでベルリンにアークエンジェルがいたんだ!俺達が代表を殺したせいで、こうなったかもしれないんだぞ!!」

 

クルー達は既にアークエンジェルがベルリンにいたことさえ自作自演、挙げ句の果てには『お姫様の気まぐれ』などという暴言まで吐いていた。いや、もしかしたらベルリンにいたということ自体既になかったことにしているのでは?だとしたら、ゲスの極みだ。

 

熟々思い知らされる…こんな体たらくではシオンに俺達が見限られるのが当然だ。

 

そう、漠然とだがアスランやシオンが今もいたならばそう言っていた気がする。今もアークエンジェルがカガリとフブキを連れていれば、まだ彼女を引き込んで正統なオーブ政権の協力者になって、オーブをロゴス打倒……それは無理でも中立国に戻る手助けをすることは出来たはずなのに。

 

だが、流石に今回ばかりはエクステンデットの件以来険悪になっているシンが心配になった。

 

 

 

アリスはオーブを許さない。シオンを唆し、裏切らせたロゴスに着いたオーブ。

 

「そうよ…オーブにいる家族もきっとシオンをおかしくしたんだわ。」

 

地球にいるという家族……両親はモルゲンレーテに勤務しているという。そうだ、国営企業のモルゲンレーテの社員ならロゴスの先兵だ。

 

シオンだけプラントに留学したから難を逃れたのに、アークエンジェルに乗った妹がおかしくしたんだ。

 

せめて、シオンをおかしくした仇を取らないと。そうよ、そうすればシオンも喜ぶわ。

 

未だにアリスはシオンを自分に都合のいい男として解釈するのをやめていなかった。

 

 

 

キラ達が上がった後、エターナルから降下ポッドが降ろされていた。オノゴロから離れたアカツキ島だった上にこちらに構っている余裕もザフトにはないのが幸いした。そして、そのポッドに三機のMSが収容されており、その中から一人の人間が降りてきた。

 

「よう、ただいま。」

 

「イリア!」

 

シオンとミサキが出迎えたのは、イリア・カシムだった。

 

「話には聞いていたが、派手にやられたみたいだな。」

 

「ああ、最初から間違えた。」

 

シオンがうんざりした口調で答える。

 

「宇宙土産だ……ミサキとリュウ宛て。」

 

親指で後ろを指すと、そこには二機のMSがたたずんでいた。それを見たミサキは息をのんだ。

 

「うそ……」

 

「ターミナル様々だよ、連合やプラントの反主流派から送られてきたのを組み立てた。俺のアビスと一緒にな。」

 

軽口を叩いていたイリアだが、突然表情を引き締める。

 

「セイランがどう動くか分からないんだ。これだけでも動かせるようにしておこうぜ。」

 

 

 

「カガリ様、フブキ様!」

 

アマギがカガリとフブキを呼び止めた。

 

「分かっている!まだ戦闘になるとは限らない。むやみに飛び出すな、ウナト達の対応を待てというのだろう?」

 

「はい、キサカ一佐も。」

 

「分かっているさ!」

 

カガリは辛い。それはそうだ……自分がサインした同盟のせいでダーダネルスとクレタに続き、こんな事態になってしまったのだ。それをセイランに抑えられていたとはいえ、何も出来なかったフブキにも責任はある。

 

「フブキ……」

 

リュウが不安げにフブキを見つめ、背中に縋り付く。振り返って彼女の頭を撫でながら、フブキは自分に言い聞かせるようにリュウを宥める。

 

「ああ、判っている……万が一にエターナルから来たMSの準備はしておこう。奴らとて、迂闊な手は打つまいが。」

 

そうだ、いくら保身や利益が最優先のあの親子でも軽率な真似はすまい。国が攻め滅ぼされればそれこそ保身どころではない。自分達の本物の命だって危ないのだから。

 

 

 

「まあ、ちょっとは物の分かった人間ならすぐに見抜くはずだ。あんなデュランダルの欺瞞は…」

 

「え、ええ……」

 

ウナト・エマ・セイランはブルーコスモスの盟主ロード・ジブリールの言葉に怯えながら頷いた。

 

ヘブンズベースでデュランダルが死ねば、ロゴスの件は有耶無耶になってセイラン家のロゴス幹部との関係も深く追求されないはずだった。

 

が、予想に反してヘブンズベースが陥落して寄りにもよってジブリールがオーブを頼ることになるとは。

 

「だが、心配しなくとも我々はすぐに反撃に出る。」

 

反撃?まだ、何か手があるというのか?

 

「私が月へ上がり、レクイエムが流れれば全ては収まる。」

 

「…レクイエム?」

 

「その時に勝ち残っていたければどうするべきか、聡明な貴方にはお分かりであろうな…ウナト・エマ。」

 

レクイエム……死者への鎮魂歌とは、何かの比喩表現か?だが、まだジブリールには逆転の手があるようだ。ならば、安心だ。

 

カガリとフブキがいれば責任を擦り付けられたのだが、悪いことに二人共アークエンジェルと共に行方不明だ。今ここで責任を問われるのはセイラン派の首長家全てだ。

 

何もかもが狂った。アークエンジェルにカガリが連れて行かれ、ダーダネルスとクレタで中立維持派としてカガリとフブキが出てきてしまった。しかも、黒海の連合部隊を通じて連合司令部やプラント政府にも二人がロゴス派でないことは知られているはず。大西洋連邦同盟国としてのオーブの指導者のセイラン派が全てを背負わされる。

 

だが、大丈夫だ。ヘブンズベースが潰れても、まだ月基地があるし核ミサイルも充分にある。勝てるに違いない。

 

 

 

「オーブ政府からの回答文、発進されました!」

 

待ちかねたミリアリアの報告にブリッジに集まっていた皆が通信席を振り返り、ミリアリアがスピーカーを操作する。そして、すぐにカガリが聞き慣れた声がスピーカーから出た。

 

〈オーブ政府を代表し、通告に対し回答する。〉

 

声の主にリュウが顔を上げて反応する。

 

「ユウナ・ロマ…」

 

〈貴官らが引き渡しを要求するロード・ジブリールなる人物は我が国内には存在しない。〉

 

「はい?」

 

イリアが素っ頓狂な声を出し、傷が癒えたシオンも「何?」と眉をひそめる。

 

〈また、このような武力を持っての恫喝は、一主権国家としての我が国の尊厳を著しく侵害する行為として、大変遺憾に思う。〉

 

「ちょっと…何言ってるの、こいつ?」

 

ミサキが呆然とし、カガリも手を握りしめる。

 

〈よって、直ちに軍を退かれることを要求する。〉

 

それで生命は終わった。つまり、ジブリールはいないというのがオーブの正式回答なのだ。カガリは拳を更に強く握りしめた。

 

「そんな……!そんな言葉が…この状況の中、彼らに届くと思うのか!?」

 

「…っ!少しでもマシな判断を期待した俺が馬鹿だった!!」

 

フブキも舌打ちをして吐き捨てる。セイランはまるで状況が分かっていない。あの通告は連合とザフトの正式な要求だ。既に領海ギリギリに大規模艦隊が展開しているということは、その事実を掴んでいるという証拠だ。

 

百歩譲って、本当にジブリールがいないとしても明確な証拠もない。攻められるのは明白だ。

 

「これって…もしかしてアスラン達がアークエンジェルを追っていたっていう時の焼き直しのつもりですか?」

 

リュウの怒り混じりの問いにナタルが頷く。

 

「ああ…あの時我々がオーブに匿われた回答と同じだ。だが、あの時とは訳が違う!」

 

そう、ナタルが言うようにあの時はウズミの中立政権であったからこそ通った理屈……だが、今のオーブは大西洋連邦の同盟国である事に加え、ロゴスのメンバーにしてブルーコスモスの盟主を匿っている事実まである。

 

二年前とは情勢も、政府も、軍の規模も何もかもが違う。

 

目の前に映った状況さえ分からないセイランと現首長家にカガリは本気で怒りを抱いた。

 

「くそっ、俺達の時と全然状況が違うだろうが!!」

 

シオンが怒りを露わに吐き捨てた。連合の核攻撃の後、大西洋連邦との同盟を主張するウナトは『情勢を見据えて、理念より国民を取るべき』と言った。だが、実際はどうだ?当の本人が情勢をまともに理解していない。

 

いや、ウナト達はロゴスとの癒着がばれた危機程度にしか映ってないんだ!

 

ロゴスとの繋がりが明らかになった非難を恐れて、ウナト達は最悪の選択をした。こんなことをすれば、オーブは人類の敵になってしまうということさえ………国際社会からも完全に孤立してしまうことさえ分かっていないのだ!そうなれば、失脚では済まされない!オーブという国がこの地上から本当に消されてしまうというのに!!

 

 

 

「なんと、馬鹿にした!」

 

「そう言えば撃たんと、高をくくっているんだ!!」

 

ジブラルタルの司令室で将校達も怒りを露わにした。実際に、馬鹿にしているにも限度があるのだ。中立国であった時ならいざ知らず、大西洋連邦との同盟さえ解消されていない今の立場でこんなことを言えばどうなるかなど少しは軍事や政治に通じた人間なら、情勢を見て分かるはず。

 

「もはやどうにもならんようだな。」

 

デュランダルにとって、この回答は実に好都合だが同時に呆れ果てた。

 

「この期に及んでこんな茶番に付き合えるわけもない。我らの想いに、このような虚偽を持って応ずるというのならば私は正義と切なる平和への想いを持って断固これに立ち向かう!ロード・ジブリールをオーブから引きずり出せ!!」




カインだけは、自分達が見限られたと改めて思い知らされます。実際のところ、

「全てロゴスが悪いから自分は悪くない。それを否定するのはロゴス。違うとしても頭の悪い愚か者」

が、あの頃の世界の言い分でしょう。行き着く極論はこの後、シンがアスランやシオンと会う場面でやります。
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