機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE 作:meitoken
インパルスはアーモリーワンの外へ出た。だが、既に四機の姿は見えない。
〈シン、戻れ!インパルスのエネルギーも残り少ない!〉
ルゥに呼ばれて、モニターを見る。確かにエネルギーが残り少ない。
〈闇雲に出ても無意味だ!一端…!〉
レイも制止してくるが、突然言葉が止まった。
「レイ?」
〈動け!〉
レイとルゥが同時に叫んだ。シンはそれが分からなかった。だが、突然何かが飛んできた。
「ど、どこから!?」
撃ってきた相手は分かった。MAだ。赤紫と青紫の同型が二機。だが、二機だけのはずなのに四方八方から撃ってくる。
「くそっ…一体、どこに!?」
捉えられない…いや、何なのかは見えてきた。カオスの機動兵装ポッドと同じ……ドラグーンシステムだ。アレは元々連合で運用されていたものだとアカデミーの座学で習った。
そして、レイとルゥが前後に回った。
〈何をしている!ぼーっとしていたら只の的だ!この敵は普通とは違う!!〉
ネオは誰かの声が聞こえた。敵の通信が流れ込んできたわけでもない。そう、まるで頭に響いたかのようだ。
何だ、これは?
あの白い新型…ザクからだ。あの白いザクから妙なものを感じる。
なんなんだ、あの機体は?いや、パイロットは?
あの機体と会うのは初めてのはず……なのに、妙な気分だ。
〈お前は下がれ!こいつらは別格だ!〉
「…え?」
エリスは呆然とつぶやいた。あのダークブラウンのザクから妙な気配を…いや、エリスはこの気配を知っている。
奴ではない。奴はもう死んでいる。むしろ……
なんで?どうして、あの機体からあの子達を感じるの?
分からない。だが、あの二機は間違いなく、情報に漏れていたあの新型よりパイロットの能力は上だ。
白いザクはネオのガンバレルを一機撃ち落とし、もう一機もエリスのオールレンジ攻撃に対応する。だが、同時にエリスもまたこのザクの動きが見えた。
「気密正常、FCSコンタクト。ミネルバ、前ステーション異常なし。」
「索敵急いで…インパルス、ザクの位置は?」
タリアの問いにバート・ハイムが答える。
「インディゴ53、マーク22ブラボーに不明艦1。距離150。」
「それが母艦か?」
「諸元をデータベースに登録。以降、対象をボギーワンとする。」
ボギーワン…正体不明の最初の敵を意味する呼称だ。それに間をおかずして、メイリンが報告。
「同157、マーク80アルファにインパルスとザク。交戦中の模様。」
「呼び出せる?」
「駄目です、電波障害激しく通信不能。」
「敵の数は?」
「二機です。でも、これは……MAです!」
MA?前大戦の核攻撃部隊を最後にほぼ姿を消したMAをこの情勢で?まだ地球軍かは分からないが、三機がかりで落とせないとなると……相当手強い相手なのかもしれない。
「ボギーワンを撃つ。ブリッジ遮蔽。」
ミネルバの特徴の一つ、ブリッジの遮蔽機能が働いた。これによって、戦闘中のブリッジの損害を少しでも防ぐためだ。下には操舵のマリク・ヤードバーズと火器担当のチェン・ジェン・イーが普段着いている。
「針路インディゴデルタ…加速20%。信号弾及びアンチビーム爆雷、発射用意。…アーサー、何をしているの!?」
「は、はい!」
タリアに急かされ、ようやくアーサーは自分の指揮所に座った。
レイとルゥの援護に行こうと思ったら、シンはまるで役に立てなかった。MAのオールレンジ攻撃に対応しても自分がやられないようにするのが精一杯だった。アカデミーの頃から二人はずば抜けていた。今でも差が顕著だ。現に二人はMAの遠隔武器を何個か落としている。
それからすぐに二機のMAは撤退した。
〈ミネルバ?〉
母艦が出港していたのも驚いたが、信号弾が上がった。帰還命令だ。
「帰還信号?なんで!!」
〈命令だ…それとも、エネルギー切れで撃ち落とされに行くか?〉
「…分かったよ。」
ルゥが脅すように窘め、シンは頷いた。
新造艦ミネルバがガーティ・ルーを攻撃してきたため、ネオとエリスは撤収のために帰投した。二人はエグザスをメカニックに預けて、すぐにブリッジへ上がる。
「大佐、中佐。」
「ごめんなさい、ちょっと熱くなったわ。」
「敵艦、なおも接近!ブルー0、距離110!」
かなりの高速艦のようね……あの艦と同等かそれ以上かも。
ビーム砲がかすめ、ブリッジを揺らす。
「両舷の推進剤予備タンクを分離後爆破!アームごとで良い!鼻っ面に喰らわせてやれ!」
ネオの大胆な指示にエリスは聞き入り、リーも唖然とする。
「同時に上げ舵35、取り舵10!機関最大!」
なんて大胆……船体の一部を武器にして逃げるなんて。戦術の常識に囚われない柔軟な発想だ。
シオンとミサキはカガリを医務室に案内した後、ブリッジに上がっていた。MSはまだ動けない以上それしかない。既に強奪部隊の母艦をボギーワンと呼称し、追撃しているのは聞き及んでいる。
「状況は?」
「は、はい!現在、敵艦が離脱したところです!!」
メイリンの報告にシオンはモニターを見る。どことなく、あの艦に似た形状をしたスチールブルーの艦が離れていく。が、両舷にあるパーツを分離した。
「ボギーワン、船体の一部を分離!」
船体の一部を分離……まさか!?
「攻撃をやめてください!」
「っ、撃ち方待て!面舵15、機関最大!」
だが、遅かった。船体の一部がミネルバに直撃し、爆発した。
シオンは指揮官席につかまり、衝撃に堪える。やはり……船体の一部それ自体を武器にしてきた!
この奇襲から一気に逆転を狙う?そう思われたが、ボギーワンは全く違う方向へ向かっていた。
「逃げた……!なんて、大胆な指揮官なの。」
ミサキが言うとおりだ。シオンの知る限りで、こんな大胆な手を考える指揮官はそうはいない。緻密な作戦を得意とする、かつての上官で戦争を裏で操ったラウ・ル・クルーゼとは真逆の指揮官だ。
そして、強奪された四機の奪還或いは破壊を目的にボギーワン追撃に移行した。
「進水式を済ませずに出撃か……全く、あの艦と全く同じ。歴史は繰り返す、か。」
まさかとは思うが、これが次の戦争の引き金になる…等ということは?条約締結からまだ一年も経っていないし、連合もプラントもその傷が癒えたわけではないのに。
「それでシオン…貴方とミサキは?何か報告が?」
「は!それは…」
シオンが答えようとするより先にルナマリアがモニターに映り、報告をした。
ガーティ・ルーにはある特殊な施設を設けており、そこにある四つのベッドでは任務を終えた四人が眠っていた。
それをネオとエリスは見つめていた。仮面とバイザーでその表情は見えないが、エリスは研究員に聞こえるようにため息をついて出て行った。
「彼らの最適化は?」
「みんな気持ちよく寝ているわ……夢の中くらい、戦争なんてして欲しくないわね。」
「…中佐。」
ネオが窘めるが、エリスは「聞かない」と言わんばかりだ。
「ただ、アウルがステラにブロックワードを使ったのがちょっとね。」
「…何かあるたびにゆりかごに戻さなければならないパイロットなどラボは本気で使えると思っているのでしょうか?」
「それでも、前よりマシじゃないかな?こっちの言うことや仕事をちゃんと理解してやれるだけ。」
ネオはその具体例を資料でしか知らないが、前のは短期間で高い戦闘能力を獲得できた反面……定期的な薬物投与が必要な上に自制などは全く効かない。それに対し、あの四人は薬物投与と訓練、暗示によって恐怖心を抑え込んで完成度を高めている。二年前の戦争で実戦に参加したパイロットと違い、今回のようなデリケートな作戦にも使える。そういう意味では前より完成度が高いのだ。
「……なら、まず人として扱うべきじゃないんですか?」
「中佐のいいたいことも分かるけど……今はなにもかもが試作段階のようなものさ。艦も、MSも、パイロットも、世界もな。」
「ええ。」
リーも疑う様子もなく頷いた。
「いずれ、全てが本当に始まるときが来る。我らの名の下にね。」
「その時、あの子達が人として扱われる日が来るのを祈りますよ。」
ブリッジクルー達は三人の上官のやりとりにやや緊張していた。飄々としながらも優秀な指揮官のネオ、あの訳ありのパイロット達を人として扱うエリス、そして上に忠実なリー。だが、敢えて言えばエリスが二人と言うより、上に懐疑的だ。こんな人選であの新型艦を振りきれるのか?
そんな不安さえ抱く者もいた。
ミネルバではカガリとフブキをデュランダルの元で艦内を案内していた。イリアはその采配を疑っていた。
なにを企んでいるんだ?いくらオーブの代表家でも外国人に進水式前の艦を見せびらかすなんて?
しかも、MSデッキまで見せようなどと……中にはアーモリーワンで見た三機もいた。
「随分と嬉しそうですね…」
フブキの言葉にデュランダルは柔和な笑みで向き合う。
「王子にはそう見えますかな?」
「…ええ。代表も遺憾の意を示しておられるようです。」
フブキはそう思うが、イリアも元ザフトとしてはここまでMSが発展したのは凄いと思った。同時に複雑だった……カガリはあの地獄を見て、過敏な軍縮志向になっている。
「争いがなくならぬから、力が必要……ですが、私はうなずけません。」
イリアも同調する。
「ええ……私もヤキン・ドゥーエで見ましたから。指に力を込めるだけで、地球を滅ぼすあのミラーを。」
そう、争いがなくならぬら力が必要だというが……そのための力を互いに持った結果がアレだ。
「そもそも、何故必要なのだ?そんなものが今更!我々は誓ったはずだ!もう悲劇は繰り返さないと!互いに歩んでいくと!」
「しかし、姫…」
「流石きれいごとはアスハのお家芸だな!!」
一つの声が聞こえ、カガリとフブキをにらみつけてくる。
「シン、あんた!!」
聞こえていたミサキが掴みかかり、レイも飛んでくるが二人を払いのける。そこへシオンもやってくる。
「申し訳ありません、姫。彼はオーブからの移住者なの…よもやあんなことを言うとは思いもしなかったのですが。」
オーブの移住者。それを言われ、イリアはなんとなく察した。
間もなく、ボギーワンを補足したミネルバは戦闘準備に入った。デブリに向かっているボギーワンを追撃するためにミネルバはインパルス、アナー、グラウンド、ルナマリア、そして先の戦闘では機体の不具合で出られなかったシオンとミサキがザクで出撃することとなった。
ブリッジにはデュランダル以外にフブキ達が招かれていた。まるで何かを見せびらかしたいように。
「ボギーワンか……本当の名前は何というのだろうね、あの艦は?」
「は?」
「名はその存在を示すものだ……ならば、もしそれが偽りだったとしたら?」
哲学的な話をするのか?フブキは訝る。
「それが偽りだとしたら…それはその存在も偽りと言うことになるののかな?アレックス…いや、アスラン・ザラ君。」
フブキは息をのんだ。気づかれていた!いや、現在の議長でクライン派に近い考えなら彼女の婚約者だったアスランのデータくらい見つけられるだろう。
その名を聞いて、ブリッジの空気が静まり返った。
大雑把に行きましたが、次はデブリでのあの戦闘。
掲示板時代はスペシャルエディション準拠だったので、省いていました。