機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE 作:meitoken
「シン!!」
アリスはデスティニーが二機のMSに腕を切られるのを見た。援護に行こうとしたところでシオンのMSが現れた。ビームバズーカで攻撃するが、シオンはそれを躱してビームサーベルを抜いた。接近戦かと思われたとき、腰の大型ライフルの銃剣を出して右肩のミサイルポッドを突き刺した。
そのまま銃剣が抜かれ、アサルトシュラウドごと右腕が吹き飛ばされた。
「う、嘘…」
こんなにあっさりと?
〈さて、死んでもらおうか。〉
あっさりと自分を殺そうとするシオンにアリスは恐怖するが、フェイブルがドラグーンの攻撃でシオンを牽制した。
〈アリス!まだやれるか!?〉
「や、やれるわ!」
ビームバズーカを捨て、ビームサーベルを抜いてシオンと再び斬り合う。
カインはブレイブと斬り合っていた。接近戦ではこちらに分があるが、相手は手慣れている。トリケロスの実験対艦刀で斬りかかったところを右腕で受け止められた。そのタイミング右手のビームサーベルも止められた。
四本のクローで攻撃しようと思ったところで、ブレイブが頭突きを喰らわせた。
「ぐ!!」
体勢を崩し、背中のクロービーム砲を撃とうとしたところで先にビームライフルでクローを破壊された。更に接近され、クローサーベルで応戦しようとしたところを反転されて逆にビームサーベルで腰のクローも二本とも破壊された。
「こ…ここまで差が?」
セイラン家の所有シャトル発着場でジブリールはセイラン親子を待っていた。いざという時は脱出する手はずになっていたというのに、待てど暮らせど来ない。
「もう、待てん!シャトルを出せ!」
「し、しかし…」
セイラン派の将兵達は主を待たずして脱出するのを迷っていた。しかし、そんな悠長なことを言っている場合ではない。
「重要なのは私だ!セイランではない!お前達にだって分かっているだろう…私が月へ行かねばならないのだ!」
先ほど、こいつらに撃ち殺させた警備兵が捜索していることからもセイランの政権は既に崩壊しているとみて良いだろう。つまり、オーブもこちらを探している。ザフトとオーブの両方に囲まれていては、いずれここも見つかる。そうなれば、逆転はなくなる。大体、こいつらとてもう後戻りは出来ないのだ。
沖合でシン達が交戦していた頃、ミネルバと撃ち合っていたアークエンジェルがもう一機のスカイグラスパーを収容して潜航した。狙いを海中の旗艦に変えたのだ。
まずい。水中のMS隊はアビスによって打撃を受けており、上陸したアッシュやゾノも新型とM1隊に押し戻されている。このままでは上陸部隊と領海の部隊が分断されて各個撃破もされうる。
「司令!状況は我が軍に不利です!一時撤退を!」
だが、セントヘレンズの司令は撤退をあしらう。
〈何を言うか!ここでジブリールを逃がしたら、またどれほどの事態になることか!〉
「ですが!」
確かにジブリールを月に行かせたらどうなるかは判らない。しかし、このままでは損害が増すばかりだ。水中の部隊は今もアークエンジェルとアビスに次々と討たれている。加えて、シン達はデスティニー、リドレス、クリエイターが損傷して押されている。このままだとあの五人もやられかねない。そうなれば、本当にあの五機だけで全滅させられる。そうなれば、元も子もない。
タリアが反論した直後、モニターが真っ白になった。
「旗艦セントヘレンズ、シグナル消失!」
遅かった…セントヘレンズはアビスかアークエンジェルに沈められたのだ。シン達もフリーダムら五機に抑えられている。旗艦も沈められ、遠からず指揮系統に混乱が生じる。このままでは押し返されるどころか全滅する恐れもある。
「本島三区に発進する機影!これは……セイラン所有のシャトルです!」
「何!?」
第三区……先程異常なしと伝えられた場所だ。そこからシャトルという事は…カガリは直ぐさまソガに命じる。
「ムラサメを向かわせろ!撃ち落としても良い!絶対に宇宙へ上げるな!」
〈俺達も行く!〉
フブキが進言し、ツキユキとカオスがムラサメと共にシャトルを追う。
〈ルナマリア、発進!今上がったシャトルを止めて!〉
ブリッジのタリアから上がったシャトルを止める命令がきて、ルナマリアはすぐにコアスプレンダーの準備を進める。
〈ジブリールの逃亡機の可能性が高いわ!最悪の場合は撃墜も許可します!〉
「はい!」
ルナマリアは僅かな時間のドッキングを終え、シャトルを追う。既にオーブの新型とカオスがビームライフルを撃っている。ルナマリアも負けじとライフルを連射する。しかし、三機のビームはシャトルをかすめることなく、ただ空を駆けただけであった。
「ああっ…!」
ルナマリアはただシャトルのブースターが残した煙をただ、呆然と見上げた。
シャトルが離脱して間もなく、ミネルバから帰還信号が上がった。MS隊が撤退していき、損傷したデスティニーもレジェンドに続く形で母艦へと向かう。
いけない…シンと、話さなければ…!
後を追おうとアスランは機体を動かそうとするが、身体に激痛が走り、アスランは意識を失い、ジャスティスは海に落下していった。
ジャスティスをフリーダムが受け止め、シオンは後退していくミネルバの五機をにらみつける。もう、シオンは彼らを完全に見限った。
戦争をしている以上、自分が悪くないなんて理屈は通用しない……銃で人を撃つこと自体悪しき選択だ。それをしたのは自分自身で、他人のせいにできるわけがない。だが、連中はそれが通じると思い上がっている。もう彼らどころかザフト全体がそうなっていると見ても過言ではない。もう誰にどれだけ憎まれようともかまわない。奴らを俺の手で殺す…!
リュウも後退していくデスティニーを見つめる。弟はもはや完全に駄目になってしまった。少なくとも、守りたいものがあるから…自分のような子供を作りたくないから戦っているのだと思っていた。だが、シンはもう自分は何も悪くなく、その結果も他者のせいにしている。他人のせいにすれば、自分の言い分は全て認められて当たり前だと喚いている我が儘な子供だ。
死んだと思って、諦めてしまったツケだろうか?
シン…もう貴方は自分に都合の良い物しか見てない。それなら…もう殺すしかないの?……
こうなってしまってはもう弟を止めるには本当に殺すしかない。リュウは覚悟を決めた。せめて、自分の手でシンを殺す。それが、姉としての最後の愛情だった……
オーブ領海の外へと退いたミネルバはジブラルタルのデュランダルと連絡を取っていた。
〈では、ジブリールはそのシャトルに?〉
「確証はありませんが、私はそう考えます。」
〈…いずれにしても、彼を捕らえられず、君達はオーブに敗退したと…そういうことだね?〉
辛辣な評価にアーサーが息を詰まらせる。
「はい。オーブ軍の中にあの強奪部隊の新型とセイバー、カオス、アビスが確認され、更にアークエンジェル、フリーダム、ブレイブ、アフェクション、そしてジャスティス、トゥルースと言って差し支えないでしょう。」
フリーダム、ジャスティス、ブレイブ、トゥルース、アフェクション。伝説の五機が勢揃いだ。そうなると、おそらく五機のパイロット…特にジャスティスとトゥルースのパイロットは……そう思いながらタリアは報告を続ける。
「それらの参入によって状況は不利となり、その上……依然として彼が国内にいるという確証も得られませんでしたので、あのまま戦っていても、ただの消耗戦になるだけでした。」
だが、タリアは疑っていた。デュランダル自身はオーブを討つことが狙いで、ジブリールは只の口実に過ぎないのかもしれないと。
〈いや、ありがとうグラディス艦長。判断は適切だったと思うよ。〉
「いいえ。」
〈シャトルの件については、こちらでも調べてみるよ。オーブとは、何か別の交渉手段を考えるべきかな?〉
「……私はそう考えます。」
アスランはベッドから起き上がろうとするが、まだ思うように動けない。
「さっき傷が開いたばかりだってのに……あんたは手錠と足枷でもしないと安静にすることも出来ないの?」
ユリが半分、本気で怒っていた。ミサキがメイリンを見る。
「メイリン、貴方もアスランにくっつきすぎると、怖い王子様が来るわよ?」
「え?」
フブキのことだろう。確かに、彼はカガリのことを溺愛している。護衛をしていた頃はカガリに言い寄るユウナのことで愚痴を聞かされたこともあった。そのフブキは今、カガリと共に行政府に戻っていた。
「それにしても、コーディネイターでも怪我して無茶すれば傷が開くのね。」
「当たり前よ……ナチュラルより頑丈でも限度があるんだから。」
「なるほど……コーディネイターでも無理は禁物、ということか。」
連合のパイロット二人と別名で潜入していたレイラ・ウォンも現れた。
「ったく、派手にやられたと思ったらまた派手にぶっ倒れて………本当に営巣にでもぶち込んで大人しくさせるか?」
イリアにまで言われ、流石にアスランも大人しくすることにした。これだけの人数にこれだけ心配されると、もう逆らう気力も出ない。
「テレビ、付けるよ?カガリが声明を発表するんだ。」
キラの提案にアスランは「ああ。」と答える。
「まずは意志を示す。後は、それからだって。」
キラが電源を入れ、フブキがうつる。
〈オーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハです。今日私は全世界のメディアを通じ、先日ロード・ジブリールの身柄引き渡し要求と共に我が国に侵攻したプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダル氏にメッセージを送りたいと思います。〉
ミネルバでのレクルームにもカガリとフブキの声明は流されていた。今、カガリの横に立つフブキがマイクを手に取る。
〈代表補佐フブキ・クラ・アスハです。まず……先日我が国がロード・ジブリールを匿っていたという事実は既に皆さんもご存じのことと思われます。一部の氏族が氏を匿い、それにより国民の命が危険にさらされ、今の情勢下で世界を敵に回すこととなってしまったことは国民の皆さんにも、そして議長を支持する世界の方々にも弁解のしようもありません。〉
一部の氏族……セイラン派は父が行政府のシェルターに逃げ込んでいたが、ザフトのMS隊が突入した際に崩落して全滅、息子も国防本部から連行されたところを逃げようとして死んだらしい。
〈ですが、これはあくまでロゴスと癒着がある一部首長家の独断であり、オーブ政府の総意でないことをこの場を借りてお伝えします。そして、同時に最も重大な論点。ロゴス打倒についての我が国の見解を、代表からお伝えいたします。〉
この声明には意味がある。少なくとも、カガリとフブキが出て行った時点でオーブは大西洋連邦寄りのセイランが牛耳っていた。そして、セイランがジブリールを匿っていたことをザフトは知っている。行方不明になっていたカガリが共謀したとするには弱い。
そして、再びカガリにマイクが返される。
ミネルバでもカガリの声明をクルー達は見ていた。
〈過日、様々な情報と共に我々に送られたロゴスに関するデュランダル議長のメッセージは確かに衝撃的な物でした。〉
カガリは以前会った時とは違う雰囲気をまとい、意志を継げる。
〈ロゴスを討つ、そして戦争のない世界にという議長の言葉は、今のこの混迷の世界で政治に携わる者として…また、生きる一個人としても確かに魅力を感じざるを得ません。ですが、それが……〉
突然画面がぶれた。そして、間もなく連合とプラントの旗の間に立つラクス・クラインが現れた。
〈私はラクス・クラインです。過日オーブで行われた戦闘はもう皆さんもご存じのことでしょう。プラントとも親しい関係にあったかの国が、何故ジブリール氏を庇うという選択を取ったのか、今もって理解する事はできません。〉
ラクスは毅然とした態度でオーブを非難する。
〈ブルーコスモスの盟主、プラントに核を放つことも、巨大兵器で街を焼くことも、子供達をただ戦いの道具とすることを厭わない人間を、オーブは何故戦ってまで守るのでしょうか?〉
クルー達がラクスの言葉を肯定するが、再び画面がぶれた。そして、現れたのは同じ顔の少女だ。ただし、その人物はカガリを挟む形でフブキと反対の位置に立っていた。
〈その方の姿に、惑わされないでください。私は、ラクス・クラインです。〉
カガリの声明に妨害をかけ、ミーアの声明でオーブを悪役に仕立て上げるシナリオがうまく行ったと思われたとき…デュランダルは我が目を疑った。
「馬鹿な…!何故、彼女がオーブに!?」
シャトルを奪って、宇宙へ上がっていたはず。一体いつの間にアークエンジェルと合流していたのだ!?
シオンは悪であることを承知で、もうシン達を見限っています。
遅かれ早かれ、『ロゴスが悪いから自分は悪くない。悪いのはジブリールを匿った政府だから自分達ザフトを憎むのは見当違い』、アスランにいったように『アークエンジェルと一緒に戦ったアスランが悪い』、『クルーゼ隊にいたシオンが悪い』になっていたでしょう。
こういう奴らは、絶対に自分がそっくりそのままやり替えされても自分だけは良いと喚くのが大体相場が決まってますが。
リュウは自分がシンを殺すことにしました。そうすれば、少なくとも自分がアスランやシオンを憎まずにすむから。ただ、それでシオンはともかくアスランやミネルバのクルーが自分を憎む可能性も考えてはいます。
尚、ファントムペインのグレンとクレムは無茶をして傷が開いたアスランを見て、『コーディネイターでも無茶すればナチュラルみたいに倒れる』、『頑丈でも限度がある』と一つ勉強しました。
そして、ジブリールに逃げられたということは…アレです。