機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE 作:meitoken
プラント本国の軍本部にいるイザーク達も突然現れたラクスに唖然とした。今、プラントにいるはずの彼女が何故オーブにもう一人?
〈私と同じ顔、同じ声、同じ名の方がデュランダル議長と共にいらっしゃることを…知っています。ですが、私シーゲル・クラインの娘であり先の大戦でアークエンジェルと共に戦いました私は今もあの時と同じかの艦と、オーブのアスハ代表の元におります。〉
オーブのラクスは静かに語り、画面の隅に映るプラントのラクスは困惑し、手に何か持っている。おそらく、原稿の類だろう。
〈彼女と私は違う者であり、その思いも違うという事を、まずは申し上げたいと思います。〉
「おい、なんだよこりゃ!」
たまりかねたディアッカが問うが、イザークも訳が分からず、ニコルが恐る恐る自分の考えていた可能性を口にする。
「もしかして……こっちが贋者?」
そうだ。自分が知る範囲で考えればいくら不測の事態といえど、ヤキン・ドゥーエの後にも顔を合わせたあのラクス・クラインがあそこまで狼狽えるとは考えにくい。そして、手に持っている紙をちらちらと見ている様子も映っていては、どちらが本物か察しが付くだろう。
〈私は、デュランダル議長の言葉と行動を支持しておりません。〉
〈え?ええぇ!?〉
今また、プラントのラクスはうろたえ、間もなくこちらの放送が切られた。
〈戦う者は悪くない。戦わない者も悪くない。悪いのは全て、戦わせようとする者、死の商人ロゴス。議長の仰る言葉は本当でしょうか?それが真実なのでしょうか?〉
画面の中でオーブのラクスは堂々とデュランダルに異議を唱える。その言葉はリュウに言われた言葉と通じた。
『全てをロゴスのせいにするのは間違っている』とリュウは言っていた。
〈ナチュラルでもない、コーディネイターでもない。悪いのは彼ら、世界…貴方ではないのだと語られる言葉の罠にどうか陥らないでください。〉
今まで、そう信じてきた。全てはロゴスのせいだ。だから、町を破壊し尽くしたステラは悪くない。自分は何も悪くない、と。そう思って知らん顔をしてきた。だが、彼女の言葉がそれを打ち崩していく。
なんで?なんで姉さんと同じ事を言うんだ?
〈私たちは、もっとよく知らなければなりません。今進む道、その先にある世界を…〉
演説が終わり、クルー達がざわめきだした。
「どういう事だよ?」
「贋者って、一体どっちが?」
ざわめくクルー達をよそに、レイとルゥはレクルームを出ていった。シンは慌ててその跡を追い、ルナマリア、カイン、アリスも後に続く。
「レイ!ルゥ!待てよ!」
「何だ?」
レイの問いにカインが戸惑いながら自分と同じ疑問を口にする。
「何だって…あのオーブのラクス・クラインだよ。どう思ってるんだ?」
「どう、だと?」
ルゥが問い返し、カインが詰まった。何故そうして落ち着いていられるのだ?ラクス・クラインが二人というとんでもない事態に!
「どっちが、本物って話?」
「なんだ、お前達まで。」
ルナマリアの話にもレイとルゥは淡泊な反応を示し、進む。
「そうやって、我々を混乱させるための心理戦だろう。大した策士だ、向こうも。」
ルゥに言われてシンはようやく二人が落ち着いている理由を悟った。
そうだ。オーブのラクスが本物というわけではない。何かしらの理由でこちらは贋者を使わざるを得なくなったという事だってありうる。
「だが、何故だろう?何故そうやって真偽を気にする?」
「全くだ…本物なら全て正しく、贋者が悪というのか?そして…完璧な物だけ必要で、不完全な物なら何の戸惑いもなく捨てるのか?」
ルゥの後半の言葉はよく判らないが、二人は議長が正しいと信じているということだろう。だが、シンの霧は晴れない。
「そんなことより、俺達には考える事があるだろう?」
「ああ、アークエンジェル…フリーダム、ブレイブ、アフェクション……そして、アスラン・ザラ、シオン・クールズ…」
シンは肩がびくりと震えた。自分の手で殺したと思っていたアスラン…またも立ちふさがる姉……
「ア、アスランと……シオンって、どういう事なの!?」
ルナマリアが驚愕し、彼女の問いに対して壁により掛かったアリスがボソリと言う。
「二人共…生きていたわ。」
「ええ!?」
レイが端末を操作し、画面をシン達へ向ける。
「この二機に乗っていたのは……奴らだ。」
画面にリフターを背負った赤い機体と頭部にフェイスガードを装備し両腕に大型のライフルを持った緑の機体が映る。あの二人でとなれば、もはやジャスティスとトゥルースとみて間違いない。
「じゃあ、メイリン……メイリンとミサキも生きてるの?」
「それは判らない…が、生きているのならばアークエンジェルにいるだろう。」
ルナマリアが唖然としシンを見るが、シンはその眼を見る事が出来なかった。彼らの困惑を気にしないかのようにルゥが次の議題を持ち出す。
「更に、奴らはこんな物まで所持していた。」
アスランとシオンの機体が画面から消え、セイバー、カオス、アビスが映る。
その内の一機をシンはよく見ていた。なにしろ、実の姉が乗っていた機体なのだ。
「何で…こんな物がオーブに?」
「判らないが、ザフト内部に彼らの協力者がいるのだろう…」
レイが可能性を述べ、ルゥが締めくくる。
「少なくとも、セイバーは奴らがリークした可能性もある。」
ルゥの言葉にシンは息をのみ、顔を上げる。確かにセイバーはアスランの機体だ。そのデータを纏めて送る事など容易い事だろう。しかし、シンはまだアスラン達がスパイである事が信じられなかった。
判らない……訳がわからない。自分が信じていた物が揺らぎ、自分の求めた物がなんなのかさえ。何故、リュウが自分を認めないのか。
シンは再び頭を抱え、うずくまるしかなかった。
なんで…!なんで、姉さんは俺を認めないんだ。全部ロゴスが悪いんだから、俺達は悪くない。なのに、なんで姉さんはあんな現実を見ない奴らと同じ事を言うんだ!
今までロゴスという悪のせいにしてきたものがシンの中で根本から覆されてきていた。
ダイダロス基地、レアメタルの採掘場として建設された月の裏側に位置する連合軍の拠点で、表側のアルザッヘルに比べると戦略的価値も薄い基地だ。オーブとザフト、双方の追撃を逃れたロード・ジブリールはそこへ逃げ込んでいた。
現在、この基地の司令室であるシークエンスが進められていた。ジブリールの、連合の切り札と言うべき物である。
「しかし、本当に撃つのですかな?貴方はこれを。」
「当たり前だ。そのためにこちらに上がったのだからな。」
あの二人のラクスには驚かされたが、ジブリールはすぐに逆転のための策の実行に移った。
「それは頼もしいお言葉だ。嬉しく思いますよ…ならば、我々も懸命に働いた甲斐があるというものだ。」
「ん?」
司令官の言葉にジブリールは思わず聞き返す。
「いえ…最近は必要だと巨費を投じて作らせておきながら、いざという時に撃てない優しい政治家が多いもので。それでは我々軍人はなんなのだと、つい思ってしまうのですよ。」
「ふ……私は大統領のような臆病者でもデュランダルのような夢想家でもない。撃つべき時には撃つ。守るためにね。」
あのオーブのラクスが本物か、贋者かは分からない。だが、オーブが既にセイランのものでないのならば邪魔であることは明白。プラントの後でベルリンで邪魔をしてくれたアークエンジェルごと消してしまえば良いだけ。
ジブリールの地球脱出後、連合に不穏な動きが確認された。廃棄されたオニール型コロニーが連合の艦隊に護衛されて移動を開始していた。これまで発見が遅れていたのは、プラント本国の防衛警戒エリア外だったという事もあるためだ。それを確かめ、状況次第では止めるためにジュール隊がその任務に当たった。
イザークは白いグフ、ディアッカはダークグレーのブレイズザクファントム、ニコルは前と同じと色のスラッシュザクファントムに乗っていた。
グフのイザークがコロニー周囲の艦隊を見て舌打ちする。
「チッ、報告通り結構な数だぞ!」
〈そうですね。〉
〈けど、一体何でこんな所に?〉
ニコルが頷き、ディアッカが疑念を口にするが、こちらに砲撃をする艦隊と接近するMSとMAを見れば一つだけは明らかであった。
「さあな、友好使節で無いことだけは確かだろうな。行くぞ!」
〈はい!〉
〈おう!〉
グフがウィンダムを両断し、ビームガンをユークリッドに撃つ。リフレクターに阻まれるが、その死角…機体の真下からニコルのザクがガトリングで撃ち抜いた。
ディアッカのザクはビームライフルで一機ずつウィンダムを撃墜し、ミサイルでドレイク級を沈める。
だが、連合の部隊はコロニーに近づかせまいと必死に抵抗を続けていた。
デュランダルはジブラルタルから宇宙に上がり、移動要塞メサイアへ入った。
「ジェセックは来ているか?」
「はい。」
最高評議会のパーネル・ジェセックが呼出に応じ、デュランダルは彼を伴いメサイアの司令室へ向かう。
「先の動くコロニーについての続報は?」
「未だ何も…目的が不明ですので、ジュール隊には停止を第一にと命じてありますが。」
デュランダルも彼の判断に「そうだな。」と頷き、司令室へ入った。
MSやMAの相手をしている時、イザークは連合が運ぶコロニーの動きの変化に気付いた。スラスターを操作し、制動をかけていた。
「制動をかける?こんなところで?」
同じく、この動きに気付いたディアッカとニコルも不信の声を上げる。
〈なんだ?何をやろうとしている!〉
〈プラントにぶつけるのが目的じゃない?〉
「分からんが、とにかく止めるんだ!エンジンへ回り込め!」
〈MSとMAは僕達が抑えます!ディアッカはエンジンを!〉
〈わかった!〉
イザークが指示を飛ばし、コロニーを守ろうとするMSと艦隊の攻撃をイザークのグフがビームソードでネルソン級のブリッジを潰し、ニコルのザクがビームトマホークを投げつけて妨害するザムザザーのリフレクターを破壊した。その間に迎撃を潜りぬけたディアッカのザクと後ろのザクウォーリア部隊がビームライフルやグレネードをスラスターに撃った。
ダイダロスの司令室で司令官が問う。
「照準はどこに?」
「アプリリウスだ、決まっている。これは警告ではない。」
ジブリールの命令を受けて、照準が入力される。
「さあ、奏でてやろうデュランダル……お前達のためのレクイエムを!」
月の方で巨大な閃光が走り、それは何かを経由してこちらへと向かってきた。
〈あれは!〉
〈イザーク!〉
ニコルとディアッカが反応し、イザークは叫ぶ。
「全軍回避ーーーー!!」
閃光の正体は巨大なビームだった。ビームはコロニーの近くにいたイザーク達の頭上を通過し、コロニーの中を通る。すると、ビームはコロニーを通過する頃にその軌道を変えた。
「なんだ、これは!?」
〈ビームが曲がった!?〉
そして、そのビームが向かった先はプラント本国だった。
コロニーを経由したビームはプラントの一基を貫いた。ビームはそのまま他のプラント三基を切り裂き、大穴が開いたプラント内部の住民は外の宇宙へ吸い出され、破壊されたプラントの一基が無事だったプラントに衝突し、二基が崩壊した。
メサイアの司令室でもそれは確認が出来た。無惨に崩壊し、漂うプラントが映った光景に皆が言葉を失う。
「これは…?」
「一体、何が?」
「こんな、馬鹿な……!」
皆が唖然とする中、デュランダルの怒声が飛ぶ。
「どういうことだ!どこからの攻撃だ!」
隣のジェセックが思わずデュランダルを見る。
「一体、何が起きたというのだ!?」
軌道間全方位砲レクイエム……それがジブリールの最後の切り札だった。プラントから見て、表に位置するアルザッヘルに建設したのでは警戒される。それを考慮してこれは裏側に位置し、戦略的価値の低いダイダロスに建設されたのだ。
ゲシュマイディッヒ・パンツァーを廃棄コロニーに展開すれば、プラントは勿論連合に与しない地球の国も攻撃できるブルーコスモスの切り札。その結果を見て笑うジブリールに結果が報告される。
「ヤヌアリウスワンからフォー、直撃。ディセンベルセブン、エイト…ヤヌアリウスワンの衝突により崩壊!」
「ヤヌアリウスだと!?」
アプリリウスに照準を入力したはずのビームは別のプラントを直撃していた。
「どういう事か!?」
「は!グノーの射角が計算外にずれたようです。戦闘の影響かと思われます。」
「ち!アプリリウスを撃ち損じるとは…!
先程、最終中継点であるグノーの護衛艦隊がザフトと交戦中との連絡はダイダロス基地にも入っていた。おそらく、攻撃を受けたせいで照準がずれたのだろう。
まずい…こうなればザフトは間違いなくグノーを潰す。そうなれば、今度は一次中継点のフォーレが狙われる。司令室の誰もが悟った。これは時間との勝負だ。
ダイダロスから撃たれた突然のビーム攻撃によってプラントが撃たれた。ボルテールから届いたその被害を見ても、イザークは呆然としていた。
「な、何だ?一体…」
〈ヤヌアリウスが……ディセンベルもか?〉
〈もっと、コロニーを攻撃していれば……〉
ディアッカとニコルも含め、皆がこの状況に唖然としていた。
「くぅ……くそぉっ!!」
イザークは自分の無力さをかみしめてコンソールを殴りつける。
〈月の裏側から、こんな方法で…〉
〈アルザッヘルに気を取られすぎていたんだ。〉
ディアッカとニコルが後悔をにじませるが、イザークは隊長として指示を出す。
「ディアッカ、ニコル!こいつを落とす!二射目があったら今度こそプラントはおしまいだ!何が何でも落とすぞ!」
イザークの叱責に立ち直ったMS隊が再び展開する護衛艦隊へと突っ込む。
グフがスレイヤーウィップでアガメムノン級のブリッジを破壊し、ディアッカはミサイルで接近を阻むMS隊を牽制する。その迎撃をくぐり抜けたウィンダムをニコルがビームアックスで両断し、シホ・ハーネンフースが率いる部隊がコロニーに近づいていく。
それを阻もうとしたザムザザーが後ろからMS隊を狙うが、ニコルとディアッカが投げたビームトマホークがリフレクターとクローを傷つけ、怯んだところにイザークがビームソードで両断した。
その隙を突いて、ボルテール以下三隻のナスカ級が主砲、副砲と共にありったけのミサイルを撃ち、更にガナーザクウォーリア隊が一斉射撃を行う。戦艦三隻と対艦攻撃用の砲撃を受けたコロニーは外壁部分から崩壊していった。
遂にレクイエムで、最終局面に突入します。
今回も間を置いて、後半も一気に行きます。