機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE 作:meitoken
プラントが連合によって攻撃を受け、合計六基ものプラントが破壊されたことはすぐに世界中に知れ渡った。
オーブ行政府のカガリとフブキは余りの惨状に言葉を失い、アークエンジェルの誰もが戦慄する。だが、その中でシオンだけは唇を上げていた。
俺がやる手間が省けたか。
しかし、我ながら、大したゲスだ………これだけの惨状を見て笑えるとは。
その原因は分かりきっている。自分やアスランに看板を押しつけ、その通りにならないことに文句を付ける者達への裁きが下ったという喜びと嘲笑の方が勝っているからだ。イリアのいた孤児院があるヤヌアリウスが撃たれたと分かっているのに。
そして、ミネルバでも。クルー達が家族や友人を呼び、泣き叫び絶望した。
「なんで……なんで、こんな…」
「ジブリールの仕業だろう。」
シンの言葉にルゥが答え、レイが端末を操作する。シンはルナマリアと共に駆け寄り、カインとアリスも来る。
「月の裏側から撃たれた。こちらがいつも通り、表のアルザッヘルを警戒している隙に。」
レイが真相を告げ、さすがのルゥも言葉が暗い。
「こんなものをダイダロスで作っていたとはな…」
「そんな!裏側からって、一体どうやって!」
カインが詰め寄り、レイが同じ口調で説明する。
「奴らは廃棄コロニーに超大型のゲシュマイディッヒ・パンツァーを展開し、ビームを数回に分けて屈曲させたんだ。」
「ゲシュマイディッヒ・パンツァーって…あのビームを曲げる?」
「ああ、このシステムならどこに砲台があろうとも、屈曲点の数と位置次第で地球でもコロニーでもどこでも自在に狙える。……悪魔の業だな。」
アリスの問いにルゥが答え、その兵器の利点を語る。
「俺達が…俺達がジブリールに逃げられたせいで。」
カインが呟き、シンは開き直る。
「違う!それはオーブのせいだ!それに…!」
そうだ。俺達は何も悪くない!悪いのは匿ったオーブとそれに手を貸したアークエンジェルだ!
だが、カインが掴みかかる。
「結果を見ろ!俺達が失敗したせいで、こうなった!!ここにだってあそこで死んだ人の家族がいるんだぞ!!お前はそんな人達にそんな言い逃れが通じると思っているのか!?」
「なんだと!オーブみたいなことを言って!!」
「事実を言っている!シオンがここにいれば、同じ事を言ったさ!」
エンジェルダウン作戦の後からカインはアークエンジェルの肩を持つようなことばかり言っている。ロゴスのせいだということさえ自分の責任だと言っている。ロゴスが悪いんだから、俺達は何も悪くないのに何故、自分の責任になる!!
だが、レイとルゥが間に入って二人を止める。
「俺達の責任であるにしろないにしろ、撃たなければならなかったんだ。」
「撃たな、ければ…」
レイが突きつけた現実にアリスが呆然とする。
「シン、カインの言葉も間違っていない。私達のせいだ…言い逃れは出来ない。」
ルゥの糾弾にシンは反論の言葉を失った。
力が無かったから。ジブリールを撃つだけの力が無かったから、プラントが撃たれた。シンの脳裏に家族を殺された時の光景が蘇る。あの時、自分に力があれば家族は殺されなかったのでは?そう思って軍人になった。だが、また守る事はできなかった。
これ以上、あれを撃たせてはならない!プラントを守るために砲を破壊しなければ!
その思いはザフト全軍が同じであった。そして、二人のラクスの出現後に受けていた命令に従い、ミネルバは宇宙へと上がった。祖国を守るために……
アークエンジェルのブリッジには行政府から来たカガリとフブキを交え、今後の方針を話すこととなった。そこには地球軍から合流した二人のパイロット、ネオ、エリス、ザフトから来たメイリン、シオン、ミサキもいた。
「同じだ…ジェネシスの時と。もうどうすることも出来ない。」
「くそっ、ジブリールに逃げられたせいでオーブも!」
アスランとフブキが言うとおりだ。ジブリールに逃げられたことがオーブにも世界にも最悪の形で巡ってきた。世界はロゴスを憎み、そしてオーブの全てを憎むだろう。
「……余談だけど、俺のいた施設は無事だった。ヤヌアリウスつっても、ファイブだから。ただ、今頃みんな怖がってるだろうさ。」
暫く帰っていないとはいえ、やはり弟妹達の事がイリアも心配になっている。
「……でも、撃たれては打ち返し、また撃ち返されるというこの戦いの連鎖を今の私達には終わらせる術はありません。」
ラクスの言うとおり…今もう一度ラクスが訴えたところでザフトは、世界は聞く耳を持たない。デュランダルを支持しないラクスは贋者だと言ってくるのが目に見えている。
「誰もが幸福に暮らしたい。なりたい。そのためには戦うしかないのだと、私達もまた戦ってしまうのです。」
「……世知辛いわね。」
軽い言い方で返したのはクレムだが、この数日間アークエンジェルにいたことで少し心情に変化が生じたのか……声のトーン自体はやや低い。ブルーコスモスの育成パイロットなら喜んでいい光景だったのにだ。
「で、この後は?間違いなく、世界中デュランダル万歳だが?」
グレンの問いにラクスがずっと抱えているノートを握りしめる。
「議長はそんな世界に、全く新しい答えを示すつもりなのでしょう。」
新しい答え……それは。
「議長のいう戦いのない世界。人々がもう二度と決して争うことのない世界とは…生まれながらの、その人が持つ遺伝子で全てを決めてしまう世界です。おそらくは…」
「遺伝子で?」
「それがデスティニー・プランだよ。」
マリューの問いにキラが応える。そして……
「それ、メンデルで見つけたっていうノートの?」
リュウの問いにラクスが頷く。そして、その意味を察し、末路を辿ったアスランは紡ぐ。
「生まれついての遺伝子で人の役割を決め、そぐわないものは淘汰、調整、管理される世界だ。」
「淘汰…調整?」
メイリンが呆然とつぶやき、クレムが問う。
「…ねえ、あたし難しいことよくわかんないんだけど……それってつまり、古いドラマで親が子供に医者になれって勝手に決めるやつ?」
クレムの問いにシオンが頷く。
「ああ……プラントの婚姻統制も知っているな?」
「第三世代コーディネイターを産むために、相性の良い遺伝子同士で結婚しろっていうプラントの制度だろう?」
グレンが一般的な認識を応え、レナがそれを更に付け加える。
「これはそれをより極端且つ徹底的にしたものよ。結婚相手だけじゃない。仕事も、下手をしたら学校や友達とかも全部遺伝子で決めるの。」
「げ…それナンパ御法度と同じじゃない。」
軽薄な言い方だが、その通りだ。その世界では一切合切の自由がない。
「だが…そんな世界ならば、誰もが本当は知らない自分自身や未来の不安から解放されて、悩み苦しむことなく生きることが出来るのだろう。」
「自分の定め……遺伝子で決められた分だけ、っていう制約付きでね。」
「望む力を全て得ようと、人の根幹…遺伝子にまで手を伸ばしてきた僕達コーディネイターの世界の究極だよ。」
ユリとキラはそのコーディネイターの最高を目指して生み出された失敗作と成功体。だが、それはつまり失敗作のユリは生まれるべきでない、と断じられるのだろう。
「コーディネイターの世界の…究極。」
シュウがつぶやく。
より美しく、より強靱な肉体を、より多くの知識を……そうして求め続けた果てに導き出されたのがこの世界だ。正に、キラを生み出した研究を突き詰めたもう一つの形だ。
「そこには恐らく戦いはありません。戦っても無駄だと、貴方の定めが無駄だと言うと…皆が知って生きるのですから。」
ラクスの言う通り、そこに戦いはない。求めても無駄だと、遺伝子で決まっているから諦めろという世界なのだ。アスランに例えれば、ラクスと結婚して只MSパイロットをやるだけの人生を歩めばいい、というだけ。キラとカガリとユリはアスランのそのMSパイロットとしての能力を阻害するバグだと断じられる。
「そんな世界で…奴はなんだ。王か?」
ネオの問いにマリューが答える。
「運命が王なのよ…遺伝子が。彼は神官かしらね。」
「それじゃあ、西暦前の…紀元前の時代じゃないですか。」
メイの言うとおりだ。デュランダルは遺伝子という名の王の宮殿に仕えて人々のあり方を告げる神官……まるで西暦より以前の紀元前の時代ではないか。これでは紀元前の時代に逆戻りだ。
「……でも、それじゃあ!」
カガリが耐えかねて口を開いた。
「願って!望んで!頑張ることには何の意味もないというのか!?ああなりたい!こうしたいと思うのも、ただ無駄だと!」
そう、その世界では努力は意味を成さない。どんなに努力しても遺伝子がそう言っているのだから諦めろと言うのだ。そして、それは彼がこれまで歩んできた物も無駄だという事だ。キラ、カガリ、ユリとの出会いも。
アスランに限ったことではない。ラクスとキラの、イリアとレナの出会い、ミサキのシオンへの想い、ユリとシュウの夢、リュウのシンを止めようという思い、戦う人形から人である事を願ったフブキの存在その物、それら全てを否定する世界だ。
「私たちはもう!国も!世界も!ただ彼の言うままに従うしかないっていうのか!?」
「無駄、ねえ……無駄なことはしないのか?」
ネオが皮肉って問う。
無駄なこと……いや、違う!カガリとの出会いも、今ここにいるのも決して無駄なことではない!
「俺は…そんなに諦めが良くない。」
「…レナがいるのが不幸だと言われた。そんな世界滅ぼしてやる!」
「私も兄さんと同意見よ。兄さんの妹であることを、私は不幸だと思ったことはない。」
シオンが憎悪混じりで意志を示し、レナが続く。
「だよな。」
「私も無駄なことが好きよ。」
イリアとミサキが頷き、ネオがマリューを見る。
「そうね、私も。」
「人の歩みを、人生を無駄と決める権利など誰にもありませんから。」
「そうよね…言うだけなら自由だけど、決められるのは困るわ。」
同じようにナタルとエリスが頷く。
「あたしもね……生きているなら、もう一度会いたいコーディネイターがいるの。それ、無駄だと思わないの。」
「クレムもたまには良いことを言う。俺も同じだ。」
「遺伝子で恋愛御法度は、イヤだな。」
マリュー達に続き、連合から来た二人のパイロットも同意し、シュウも頷く。
「そう思うなら、僕らは誰も今ここにいないよ。きっと…」
「キラ!」
キラの言葉にカガリが希望を取り戻し、ユリも安堵の笑みを浮かべる。
「俺の、俺達がこれまで歩んできた道を…無駄とは言わせない。」
「私もよ…遺伝子じゃなくて、自分でMSに乗るって決めたんだもの。」
意志を確かめ合ったフブキとリュウに感化されたようにメイリンが手を握って意気込む。
「宇宙へ上がろう、アスラン。僕達も。」
「キラ…」
キラは静かに宣言する。
「議長を止めなきゃ。未来を作るのは、運命じゃないよ。」
「ああ…」
二人は手を取り、強く握り合った。
そう、キラが、ここにいる皆の言う通り…俺はこれまで歩んできた物を無駄と思っていない!
プランについて語るところだけは、本編とスペシャルエディション両方を混ぜ、且つ色々加えました。
アスランはラクスと結婚して、MSパイロットやるのが幸せ。シオンはレナを殺して、ミサキとも別れてMSパイロットが幸せ。
になってしまいます。下手をすればイザーク、ディアッカ、ニコルとの関係も不幸だと言われるでしょう。