機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE 作:meitoken
〈市内はどこもパニック状態です!とても収拾の付けられる物ではありません!〉
何の勧告もなしに受けた攻撃にプラントは完全に混乱し、軍も評議会もパニックになり、今デュランダルが話しているノイ・カザシェフスキーも同じであった。
「分かっている!だが、それを何とか収めるのが仕事だろう!泣き言を言うな!」
現在ゴンドワナを中心とした月軌道艦隊が砲の第一中継点に向かい、先の攻撃の直後に中継点の一つを破壊したジュール隊もゴンドワナとの合流のために急行していた。
「ともかく、救助を!」
「いや!残る都市の避難の方が先ですよ!」
官僚達も対応に追われ、デュランダルも声を荒げてカザシェフスキーをしかる。
「そうしている間に二射目を撃たれたらどうする?」
カザシェフスキーが縋るように提案する。
〈何か、和解…停戦の手段などは?〉
「停戦?これは戦争ではないのだぞ!テロリストと何を交渉しろと言うのだ!命乞いでもしろというのか!?」
先の攻撃も何の勧告もなしに受けた。そんなことをする人物が話を聞くはずもない。何しろ相手は最後のロゴスにしてブルーコスモスの盟主なのだ。
「救助の手立ても探す!だがまずは、月のあの砲を墜とさねば!ザフト全軍、どうか全力で事態に上がってくれ!」
カーペンタリアから月に上がったミネルバに司令部からの通達が来た。それは、特命コードであった。
「〈既にゴンドワナを中心とした月軌道艦隊が砲の第一中継点にて交戦中、ミネルバは合流予定を変更し直ちに敵砲本体排除に向かわれたし。〉…ええぇ!?」
電文を読み上げたアーサーがまたもや大げさに反応した。
それは、呼び出されたシン達も同じ反応をした。
「砲の本体を俺達だけでですか?」
「だけかどうかは分からないけど、そういう事よ。」
タリア自身はそう言ったが、援軍は期待しない方が良いだろう。
「確かに、ここからならダイダロス基地が近い…との判断でしょうね。」
ルゥがその理由を続ける。
「パワーチャージサイクルが分からない以上、駆けつけても間に合わなければ意味がありませんからね。」
「敵が月艦隊に意識を向けている現在なら、陽動と奇襲になるという事でしょう。」
「奇襲……」
レイが作戦の有効性を語り、カインが呟く。
「厳しい作戦になることは確かよ。でも、やらなければならないわ。」
タリアの脳裏に本国にいる息子の姿がよぎる。あの砲を撃たねば、次に撃たれるのはあの子かもしれない。やらねばならないのだ。
「はい、分かっています。」
「あ…はい。私達も!」
レイとアリスが答え、ルナマリアも表情を引き締める。
「またあれを撃たれることなど、あってはなりません。」
ルゥの言葉にルナマリアが一瞬顔を引きつらせる。オーブで撃てなかったことが相当堪えているようだ。
「頼むわね。」
「は!」
パイロット達が答え、六人はブリッジの外へ出た。
ミネルバが月に向かっている頃、既に第一中継点では戦闘が開始されていた。地球軍はリフレクターを装備したドレイク級を中心にした艦隊で徹底的に守りを固めていた。最終中継点を破壊したジュール隊もようやく到着し、発進する。
ディアッカのザクの攻撃をザムザザーがリフレクターで止めるが、その隙を突いてグフがスレイヤーウィップでリフレクター発生装置を破壊し、そのままニコルのザクと共にザムザザーを切り刻む。
しかし、基本的に数で勝る連合はまだ粘り続けていた。
「第二射までに月艦隊が中継地点を墜とせれば、かろうじてプラントは撃たれない。」
「だが、敵のチャージが早ければ艦隊諸共消える。トリガーを握っているのはそういう人間だからな。」
レイとルゥの言葉にシンは強く頷く。
「全ての元凶はあいつだ!ロゴスの…ロード・ジブリール!」
デストロイによる破壊とヘブンズベースのレーザー攻撃がシンの脳裏に蘇る。自分の利益のために命を弄ぶ悪魔!これ以上好きにはさせない!
「私が、オーブで討てていれば……」
「そんなに自分を責めるな!」
「そうよ……責任は私達にもあるんだから…」
後悔するルナマリアをカインとアリスがフォローし、シンはジブリールを匿ったオーブへの憎しみを募らせる。
そうだ!俺達は何も悪くない!全てオーブのせいだ!そこにいるラクス・クラインが本物なはずがない!姉さんも騙されているんだ!この後でオーブとあの贋者とフリーダムを倒して姉さんを取り戻す!
「なんであれ、時は戻らない。そうしたくないのなら成功させるんだ。」
「…っ、分かってるわ!」
ルゥの傷を抉るような言葉をルナマリアは受け止め、レイがモニターを操作する。
「無駄口は終わりだ…作戦を話す。」
ダイダロス基地第六区に存在する試掘鉱が砲の本体に近く、そこを通れば内部に辿り着くというデータが存在する。
レイの作戦はブラスト装備のインパルスが試掘鉱に入り込んで砲の本体を叩く。デスティニー、レジェンド、フェイブル、リドレス、クリエイターはその間敵を引きつける陽動作戦だ。この作戦のポイントはルナマリアが飛び込むタイミングだ。もしも試掘鉱に着く前に見つかり、ルナマリアが討たれれば終わりだ。
「では、良いなルナマリア。タイミングを誤るな。」
「え、ええ…」
「私達も援護はするが、期待はするな。すれば隙が生ずる。」
「分かってるわ、ご心配なく。」
ルナマリアが強気に出て、ルゥはアラートへ向かう。
「ルナ…」
シンがルナマリアを呼び止める。雰囲気を察したカインがレイを、アリスがルゥの背中をエレベーターへ押し込んだ。
「気を遣ったの?」
アリスの問いにカインは「悪いか?」と問い返す。
「いいえ、別に。でも…私もそういう風になりたい人はいるのよ。一応ね…」
カインはアリスがそう望む人に心当たりはシオンしかいなかった。しかし、今彼はオーブにいる。だとすれば一体誰が…
「ディオキアで会った人…今どこにいるか分からないけど……この戦争が終わったら、会いに行きたいの。会えるかどうかも、分からないけどね…」
「奇遇だな。俺もディオキアである女の人にあった。少々派手だけどな。」
ディオキアで不良四人を軽くあしらった派手な外見の女性。しかし、眩しく良い人であるとカインは思っていた。
クレム…今、どこで何をしているんだ?
カインとアリスが惹かれつつあった人は確かに地球にいた……しかし、二人にとっては最も辛い立場で………
「十字方向より接近する艦影あり!」
「距離50、ザフト軍ミネルバです!」
司令室でオペレーターが艦影を報告する。しかも、よりにもよってミネルバだ。ジブリールは忌々しい艦を思い浮かべた。
奴らがユニウスセブンで余計なことをしたせいで地上の被害は減ってしまった上に各地で民衆を味方につけ、ベルリンでアークエンジェルと共にデストロイを撃破した挙げ句にヘブンズベース、オーブにも現れた。正にミネルバはジブリールにとってデュランダルお抱えの死神だった。
だが、今度は単独のようだ。幸い、この基地にもデストロイがあるし、まだ充分なMSとMAがある。撃破できなくても、撤退させれば一次中継点の艦隊ごとプラントを撃てる。そうすれば、勝ちだ。
インパルスがブラストシルエットに換装して一足先に発進し、指定されたルートを進む。それからさして時間を有さずに基地からザムザザーやゲルズゲーを中心としたMA群、ウィンダムが発進した。
デスティニーとレジェンドが先陣を切り、フェイブルとクリエイターが続き、リドレスはバズーカを両手に持ち発進する。
〈攻撃開始!〉
タリアの号令と同時にミネルバからミサイルが発射され、MS隊も攻撃を開始する。デスティニーの投げたビームブーメランが二機のウィンダムを切り裂き、戻ってくる際にウィンダムを更に一機切り刻む。ブーメランをキャッチしたデスティニーはサーベルモードでユークリッドの外装甲を切り裂き、露出した内部に頭部バルカンを叩き込む。ユークリッドは内部から爆発し、離脱したデスティニーは背後から迫るウィンダムをビームライフルで撃ち抜いた。
レジェンドはドラグーンを射出し、ザムザザーを撃つ。リフレクターの展開が早く、ビームはMAの本体を前にはじき返された。しかし、真下から大型の二基がビームスパイクとなりザムザザーを貫いた。更に八基の小型ドラグーンがミネルバに迫るウィンダムを一斉に撃ち落とした。
リドレスはビームバズーカを連結し、チャージを開始する。接近するウィンダムをミサイルで撃ち落とし、臨界に達したところでトリガーを引いた。高出力ビームは七機のウィンダムとリフレクターの展開が遅れたゲルズゲーを塵に変え、バズーカの連結を解除したリドレスはビームサーベルを抜き、砲撃で損傷したユークリッドを真っ二つにした。
クリエイターは背中のクローで二機のウィンダムを掴み、コクピット部分を握りつぶした。コクピットを握りつぶすその間にもビームライフルで他のウィンダムを撃ち、接近する機体をクロービームサーベルが両断する。
フェイブルはドラグーンのビームスパイクでウィンダムを次々と串刺しにし、本体は対艦刀を振るいユークリッドを鉄屑に変えていく。取り囲むようにウィンダムが接近してくるが、フェイブルはドラグーンのビーム砲とビームライフルで包囲網を破る。
〈生体CPU、リンケージ同調率84%。システムオールグリーン、X1デストロイ発進スタンバイ!!〉
「ひひひひ……思いっきりやるよ!!」
ダイダロスのデストロイの内一機に乗っているのはアウル・ニーダだ。ベルリンでスティングと共に改修された後、アウルはダイダロスに移動になり再調整でネオ、エリス、スティングの記憶も消されてデストロイのパーツとして組み直された。
相手がたった一隻と数機のMSというのが不満だ。が、モニターに映ったグレーの艦を見て妙な既視感を抱いた。きのせいか?
「いっけええええ!!!」
他のMS隊と共に背中のビーム砲を発射した。
ミネルバがタンホイザーを機動し、発射する。しかし、陽電子砲は前面に出たゲルズゲーのリフレクターに阻まれ、基地へ打撃を与えるに至らなかった。そして、間もなく基地から見覚えのある機体が現れる。デストロイだ。
〈シン!〉
「分かってる!あいつら、性懲りもなくまた!」
六機のデストロイが同時に背中のビーム砲を発射する。シンは六機の砲撃をくぐり抜け、パルマフィオキーナをMA形態のコクピットに叩き込む。
リドレスもデストロイにバズーカを発射するが、リフレクターによって防がれる。しかし、MA形態の真上に回り、連結形態でビームバズーカを撃つ。ゼロ距離からの砲撃にはリフレクターも耐えきれず、デストロイのボディは円盤ごと焼き尽くされた。
クリエイターはMS形態になったデストロイの腕をビーム砲で撃ち抜き、首をトリケロスの実剣対艦刀ではねてその露出した首にビームライフルを撃ち込む。ビームがコクピットを焼き、デストロイは中から爆発した。
レジェンドはMA形態のデストロイをビームスパイクで貫き、フェイブルもビームスパイクを展開し、機体を貫いたドラグーンがUターンして再び貫き、八基のドラグーンはデストロイの巨体を文字通り蜂の巣にした。
ルナマリアはインパルスを試掘鉱へ向けていた。しかし、こちらに気付いたウィンダムが接近してきた。
「えぇい!」
ビームライフルでウィンダムを屠るが、狙いに気付いたMSが集結し、インパルスを取り囲んでライフルによる集中砲火を浴びせる。
〈ルナーっ!〉
シンの叫びと共にデスティニーがビームブーメランを投げる。二つのブーメランがウィンダムを切り刻み、月面からビーム攻撃を浴びせるゲルズゲーをアロンダイトで両断する。
「シン!」
〈急げ!試掘鉱はすぐそこだ!〉
〈ここは俺達に任せろ!〉
〈あなたは行って!〉
リドレスとクリエイターも合流し、残っていたウィンダムに牽制の砲撃をする。残った最後の一機のデストロイもレジェンドとフェイブルのドラグーンから放たれるビームの嵐によって全身を撃たれ、月面に倒れ込んだ。
シン達の援護でルナマリアは試掘鉱を発見した。
「あれだ!」
迎撃をかいくぐったルナマリアは試掘鉱に飛び込んだ。
「第六区に新たな敵MS!」
「デストロイ、二号機も沈黙!」
「レクイエム、稼働率61%。」
「第八機動隊、応答ありません!」
新たな敵の出現と防衛部隊が次々と突破される報告を聞き、ジブリールは決断した。
「レクイエム発射だ!フルパワーでなくても良い!撃て、奴らをなぎ払うんだ!」
60%あれば月艦隊にダメージを与えられるし、例え全て出なくてもアプリリウスのプラントを一基か二基は破壊できる!そうすれば、内政にもダメージを与えて時間を稼げる!!
司令官が発射を命じようとした時…
「駄目です!フォーレに異常発生!ポジション、取れません!」
最悪だ…数秒の差でザフトの攻撃でフォーレが攻撃を受けた。これではアプリリウスを狙うことも出来ない。
「駄目なら、それでも良い!フォーレの奴らだけでも!」
「それでは終わりです!次のチャージまではとても…」
そんなことは承知だ。
「良いから撃て!その隙に脱出する。」
ジブリールは司令官にささやきかける。
「私が生きてさえいれば、まだいくらでも道はある。基地を降伏させ、同時に撃つんだ。」
降伏と同時に撃てば一瞬だが隙は生じる。その隙を突いて月艦隊を壊滅させれば、本国に艦隊を差し向けられる。アルザッヘルは幸いにもまだ無傷だ。
「言い訳はいくらでも出来る。君は良くやってくれた…共にアルザッヘルにでも逃げればまだ…」
ミネルバのMSが増えた分、ダイダロスのデストロイも増えて、こちらでは明確に死んだと言われていなかったアウルがダイダロスのデストロイです。
実は掲示板時代、イザーク、ディアッカ、ニコルはガンダムに乗ってアウルのデストロイを撃破するという展開だったのですが、FREEDOMに合わせて三人はザクとグフ、アウルはフォーレに一機だけ派遣されたデストロイという展開でした。
気になったけど、プラント本国を攻撃するコンセプトならアルザッヘルにもデストロイはあったのだろうか?