機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE 作:meitoken
「このぉぉ!!」
アウルは赤い翼の機体に胸のスーパースキュラと腕のビーム砲を一斉に撃つ。だが、赤い機体は分身でもしたかのように素早い動きで捉えられない。
剣で左腕を切り裂かれ、相手を追う。
「いい加減に落ちろってんだよ!!」
口のビーム砲を撃つが、それも躱されて敵がビームブーメランをサーベルモードにしてコクピットに突き刺した。ビームに焼かれる瞬間、知らない顔の誰かが三人見えた。そして、もう一人……
「か、母さん?」
ああ、会えた。やっと母さんに……
ルナマリアは試掘鉱を通り、シャフトをミサイルで破って砲の本体の前に出た。
「これね!」
焦りを押さえながらインパルスを砲台のコントロール室の前に向かわせ、ケルベロスを構える。
「ええい!」
ビーム砲はコントロール室を焼き払い、ルナマリアは砲の蓋から抜け出す。
シンは最後のデストロイを撃破し、レイとルゥが呼びかける。
〈シン!俺達は基地の司令部を!〉
「ああ!!」
〈残りは俺達に任せろ!〉
〈砲台を潰せば、降伏もしてくれるわ!!〉
カインとアリスはまだ抵抗をするMSとMAを迎撃しており、レイとルゥは砲台の上に陣取って、シンは艦隊の発着場に飛び込んだ。
そこにはまだ停泊中の戦艦が何隻かいた。
「てぇぇい!!」
長距離ビーム砲を連続で停泊中の戦艦にたたき込んだ。
コントロール室と港口の破壊で司令室は巻き込まれ、降伏と同時に発射するより先に中にいた人間は全滅した。
ジブリールはかつてネオ・ロアノークがアーモリーワン襲撃に利用したガーティ・ルーで脱出しようとしていた。出港とほぼ同時に砲台と司令室の区画が爆発するのが見えた。
「えぇい!」
フォーレの艦隊だけでも潰そうとしたが、それさえ潰えた。だが、まだだ!アルザッヘルには充分な艦隊戦力があるし、核ミサイルもある!
だが…ミラージュコロイドを展開するより先に死神が現れた。ミネルバの新型MSが二機、現れた。
レジェンドのドラグーンがボギーワンのブリッジを破壊し、更に艦隊をビーム攻撃し、フェイブルのドラグーンもビームスパイクでボギーワンを穴だらけにする。アーモリーワンを襲撃したボギーワンは遂に沈んだ。
ブルーコスモスの盟主にして、最後のロゴス……ロード・ジブリールの棺となって。
ダイダロス陥落を聞いたデュランダルは最後まで献身的に協力してくれた男に感謝した。
「ありがとう、ジブリール。そして……さようならだ。」
アークエンジェルの後部デッキでアスランは夜空を見上げていた。
「アスラン。」
キラが外へ出てきた。
「ここにいたの?もう寝ないと、また傷に障るよ。朝には発進なんだから。」
「ああ……」と答え、再び月が輝く夜空を見上げる。今、あの月で激しい戦闘が行われているのが嘘のように綺麗だ。
「ここは、こんなに静かなのにな…何で俺達は、ずっとこんな世界にいられないんだろう……」
同じ頃、展望デッキで月を見上げるシオンが図らずもアスランと同じ疑問を口にしていた。隣に立つレナが外を見つめて呟く。
「それは…夢があるからじゃないかしら?」
夢…?シオンはレナを見つめた。
「願いとか、希望とか……」
「悪く言えば、欲望……ってこと?」
上部デッキでシュウが少し悪びれて答え、ユリは頷く。
「……そういうことなのかもしれないわね。」
ああしたい。こうなりたい。そう願うからこそ、人は一つの場所にとどまれないのだろう。一度道を違えたアスランとてそれは同じだ。
「僕もそうだし…カガリやラクスも、みんなそうだと思うよ。」
そうだ。間違いを正したい…そう願ったからこそカガリは戦場へ出た。ラクスもまた、自分に出来ることを探して宇宙へ上がった。罪滅ぼしのために再び軍服に腕を通したイザーク、力を欲したシン。誰もが同じだ。
「そして議長の言う世界には…それがない。」
「そうね、ある意味ずっとここに……ていうか、ずっとここにいろって事だから。」
「だな…」とシオンは答える。
「それなら、何も起きないから戦争が起こることもないけど…私は……」
「俺もごめんだ。大体、俺の場合はお前と二度と会うなって言うのと同じだ。」
口ごもるレナをシオンが制する。
「これ、とんでもないワガママね。」
ユリが自嘲するように呟き、シュウも「だろうな。」と答える。
「だが、それが人を今日まで引っ張っていき、俺達は出会えたんだろう?」
その通りだ。そのワガママがあったからこそ、コーディネイターが生まれ、戦争のない世界を望んでナチュラルとコーディネイターが共に戦うという自分達がいる。
「難しいな…戦ってはいけないのか、戦わなきゃいけないのか。」
「うん……みんなの夢が同じだと良いのにね。」
アスランは真の姿を思い出す。何も失わないと力を望んでそれに飲まれた彼は……
「いや、同じなんだ多分。でもそれを知らないんだ…俺達はみんな。」
翌日、アークエンジェルの格納庫に全クルーが集められた。アスランやグレンはオーブ軍の制服に身を包んでいるが、シオンとミサキはザフトの軍服のままだ。シオンにとって、クルーゼ隊時代からの赤服には強い思い入れがあるからだ。
「月の情勢もまだあまり詳しいことまでは分かっていない。」
「時期が時期なので、何のトラブルもないと保証は出来ないがアークエンジェルには正式にオーブ軍第二宇宙艦隊所属として出来る限りのサポートを約束する。」
カガリとフブキが激励を送る中、アスランはカガリの左手に今まではめていた指輪がないことに気が付いた。
「プラントの受けた被害もあって、今やデュランダル議長は世界最強のリーダーだ。どうしても彼は正しく、また全てを知って揺るぎなく見える。」
フブキがいつもと同じく落ち着いた口調で述べるが、カガリはそれを凌駕するとも思える雰囲気と力強さを感じさせる。
「だが、我々と同じくその強大な力を危惧する国もある。オーブが何よりも望みたいのは平和だが、だがそれは自由、自立での中でのことだ。屈服や従属は選べない。アークエンジェルはどうかその守り手として頑張って欲しい。」
カガリとフブキが敬礼し、クルー達もそれに答える。皆が手を下ろし、マリューが一歩前へ出る。
「本艦はこれより月面都市コペルニクスに向かい、情報収集活動の任に付く。発進は三十分後、各員部署に着け。」
「では、父の形見のMSを頼む。」
「は!」
「お任せを!」
カガリとフブキはオーブに残り、二人が乗っていたアカツキとツキユキにはネオとエリスが乗ることとなった。
「代表、そろそろ。」
地上での連絡役になったクラウドが促し、カガリとフブキは去って行く。
「アスラン、良いの?」
ミサキが問い、キラやラクスも同じ様子だ。
「良いんだ、今はこれで。」
そう、今はこれでいいんだ。
「焦らなくていい、夢は同じだ。」
想いは同じなんだ。だから、今は…もう指輪に頼らなくても良いんだ。
メイリンはカガリとフブキを見つけた。
「一緒に行くそうだな。」
「は、はい…」
言葉が出てこない。あの時、世間知らずの恩知らずだと思った。だが、違った…ザフトを離れて気づいた。英雄だから出来て当たり前だと勝手に思い込んだ。カガリだってまだ18歳だ……プラントだってその年齢で政治の世界に入るのは困難だ。フブキもまた、おのれのしたいことを出来ずに苦しんでいた。
それだけじゃない……リュウ・アスカ。死んだと思われたシンの家族が生きて、ヤキン・ドゥーエを戦った。そして、フブキと恋仲である事も聞いた。
あの頃、自分やシンがアカデミーで学んでいた頃に彼女は既にメイリンが記録でしか知らない地獄を戦い抜いていた。だからこそ、彼女は身をもって知っている。「この世に絶対正しい戦争などありはしない」と……連合の非道を見て、正しいと思っていたメイリンの認識はこの艦で完全に覆され、誤りだと悟った。
アスランはこんな凄い人達を殺されて絶望し、シオンはそれを侮辱されて自分達を憎んだ。そして、カガリの存在……
既にメイリンはアスランとカガリの仲を察していた。自分が入り込む余地などない。初めから、勝ち目がないのを思い知らされた。
「あいつ、頼むな。」
「え?」
「私達は一緒に行けないから。」
「……シオンから、少しは信用される努力だけはしておけ。」
フブキが肩を叩き、去って行った。
そうか……二人共、本当は一緒に行きたいんだ。ヤキン・ドゥーエでも二人はMSに乗ったし、ダーダネルスやクレタ、ベルリンでもそうだった。
目の届かないところで好きな人が死んでしまうかもしれない。そんな不安を抱えて、あの人達はオーブに残ることにしたんだ。ジブリールを匿って、国際的な立場が危ういこの国を守るために。
出港直前、カガリはキラ、ラクス、ユリと抱擁を交わして次にアスランの前に立つ。数秒見つめ合った後、アスランがカガリを強く抱き締め、カガリも腕を回してそれに答える。キラもラクスもユリもそれを微笑んで見つめ、安心していた。
同じように、フブキもシオンとレナ、そしてリュウと強い抱擁を交わした。
「帰ってこいよ?」
「うん…父さん達にもちゃんと知らせたいから。」
アークエンジェルはカガリとフブキを始めとしたオーブ軍の面々に見送られ出航した。
ジブリールが死んで、カガリとフブキは戦線離脱です。以後は離れて、キラ達と共に戦います。