機動戦士ガンダムSEED DESTINY REVERSE   作:meitoken

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議長とキラの対面です。


PHASE-42 選ばれた未来…中編

キラはメサイアの司令室に入った。既に司令室は壊滅状態だが、奥の椅子に座る男を見つけた。

 

「君がここまで来るとは、正直思ってもみなかったよ。キラ・ヤマト君。

 

プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダル………彼が自分の名を知っていたとアスランやシオンから聞いたときには驚いたが、オーブや連合の内通者から聞いただろうし、それ以前にメンデルの遺伝子研究所にいたという。なら、父の研究を知っていてもおかしくはないだろう。

 

だが、今キラがするべきはそんな世間話ではない。キラは無言で銃を向ける。

 

「なるほど……だが、本当に良いのかな?それで。」

 

デュランダルも銃を向けた。両者は睨み合い、デュランダルから口を開く

 

「やめたまえ、せっかくここまで来たのに。そんなことをしたら、世界はまた元の混迷の闇へと逆戻りだ。」

 

キラは応えない。

 

「私の言っていることは真実だよ?」

 

「そうかもしれません。」

 

キラもそれは分かっていることだ。世界は今、デュランダルの元でデスティニープランを導入する道を取りつつある。今ここでその先導者たる彼を殺せば、その道は閉ざされる。そうなれば、また元の泥沼の殺し合いになる。

 

「でも、僕達はそうならない道を選ぶことも出来るんだ。それが許される世界なら。」

 

デュランダルの言う世界では、それは許されない。全て、遺伝子の…彼の言うとおりにするべきと。平和の押しつけだ。

 

「…だが、誰も選ばない。人は忘れる。そして繰り返す。」

 

そう、繰り返す。たった二年でまた戦争を始めてしまったのだから。

 

「こんなことはもう二度としないと、こんな世界にはしないと。一体誰が言えるんだね?誰にも言えはしないさ。君にも……無論彼女にも。やはり何もわかりはしないのだからね。」

 

そう、キラもラクスも予言者などではない。もう二度と、こんな戦争は起こりませんと誰にも断言することは出来ない。

 

「でも、僕達はそれを知っている。分かっていけることも、変わっていけることも。」

 

この時、キラは気づいていなかった。ミネルバのパイロットが一人、後ろにいることに。

 

「だから、明日が欲しいんだ。どんなに苦しくても、変わらない世界は嫌なんだ。」

 

そう、人は変化を求める。変化のない日常など、それは死も同じ。例え苦しくても、今より良い明日が欲しいと抗う。欲望だ。だが、それが人だ。

 

「傲慢だね、さすがは最高のコーディネイターだ。」

 

「傲慢なのは貴方だ!僕は只の一人の人間だ!どこもみんなと変わらない!ラクスも!」

 

そうだ。例え父の研究で生み出された最高のコーディネイターであろうと、自分は一人の人間だ。他の誰かと同じように泣いて、笑って、撃たれれば死ぬ。

 

「でも、だから貴方を撃たなければならないんだ!それを知っているから!!」

 

また一人、入ってきたがキラはそれに気づいていない。

 

「だが、君の言う世界と私の示す世界。皆が望むのはどちらかな?」

 

分かっている。人々が望んでいるのがどちらかを。自分が彼らからそれを奪うことも。

 

「覚悟はある!」

 

「キラ!」

 

アスランの声が聞こえたが、キラは揺るがない。

 

「僕は戦う!!」

 

もう一人入ってきたが、キラは既に引き金をかけた指に力を込めた。

 

銃声が一発響いた。

 

 

 

飛び込んできたアスランは目を見開いた。キラは撃たれていない。撃ってもいない。撃たれたのはデュランダルだ。

 

さしもの彼も信じられないような表情で倒れ込んだ。横を見ると、そこにはレイがいた。そして、近くにたりあがいて…もう一人。ルゥが呆然としていた。

 

「あ……お父さん!」

 

ルゥが飛び出し、駆け寄った。やや遅れて、タリアも駆け寄った。

 

「やあ…タリア。撃ったのは君か?」

 

「いいえ…レイよ。」

 

そう、撃ったのはレイだった。

 

「ギル…!ごめんな、さ……でも、彼の…明日!!」

 

アスランも信じられなかった。まさか、デュランダルに最も忠実なレイが撃つなんて。だが…それでも望んだものをレイも見つけたのだろうか?

 

「ルゥ…今、お父さんと…」

 

「あ…わ、わた…」

 

「いや……悪くない響きだ。」

 

もう一人の忠臣とも言うべきルゥが泣き崩れている。まるで父親に甘える子供のようだ。

 

司令室が爆発し、キラもアスランに気づいた。だが、今はそれどころではない。

 

「グラディス艦長!」

 

ここももう長くは持たない。全員を連れ出さねば!

 

だが、タリアが銃を向けてきた。

 

「貴方達は行きなさい。」

 

何?まさか…

 

「この人の魂は私が連れて行く。」

 

やはり……彼との関係はよく分からないが、個人的に親しい間柄だったのは以前から感じていた。だから、か?

 

「ラミアス艦長に伝えて……子供がいるの。男の子よ、いつか会ってやってねって。」

 

我が子を残して、死ぬつもりなのか?

 

アスランは思いとどまらせようとするが、キラが先に応える。

 

「分かりました。」

 

泣き崩れるレイを見やる。アスランは手を差し出すが、レイは首を横に振った。

 

もう、レイもここで死ぬつもりなのか。だが、アスランには彼ら四人が家族のような姿に見えた。

 

 

 

二人が去って、残るは彼らだけになった。

 

「すまないね、タリア。でも……嬉しいよ。」

 

「しょうのない人ね…でも、本当。仕方がないわ。」

 

本当に仕方がないことだ。この人の理想を歪めたのは私だ…そのくせ、彼が亡くなってこの人とよりを戻した。

 

そして、今もまたこの人を裏切ってまで得た我が子をまた裏切って、死のうというのだから。

 

「お父さん……私…負けて…」

 

「……いや、良いんだ。」

 

デュランダルはどこか満足げだ。そう、この人がお父さんと呼ばれる光景を夢見ていた。自分の身勝手がそれを潰した。

 

レイを呼び、タリアの傍にやってきた。

 

「貴方も、よく頑張ったわ。だからもういい、もう良いのよ?」

 

タリアは幼い子供をあやすようにレイを抱き締めた。そして、タリアは心の中で本国に残した息子…ウィリアムに詫びた。

 

ごめんなさい…こんな勝手なお母さんで。

 

 

 

タリアに抱き締められた時、レイは彼が見えた。どこか穏やかな表情……ああ、あそこから彼が連れ出してくれた後、なでてくれた。それとは違う……

 

これが…

 

「お、かあさん…」

 

ああ、これが母なんだ。

 

クローンとして生み出され、もう間もなく死んでしまうもう一人のラウとして生まれた。だが、人生の最後でようやく得たんだ。母を……

 

 

 

ルゥはレイがタリアをお母さんと呼んでいるのを見て、穏やかに目を閉じたデュランダルを見た。

 

私…ギルのこと、ずっと……

 

そうだ…ずっと呼びたかったんだ。お父さんと……でも、タリアとの関係やラウやレイスとの仲を見て、どこか引いていたのだろうか?それとも、きょうだい同然に育ったレイからこの人を取りあげると思ったのだろうか?

 

ふと、誰かが頭をなでているような気がした。

 

振り返ると、そこには彼女がいた。あの研究所の人間達を殺して、引き取ってくれた彼女……

 

お疲れ様……

 

そう、言っているような気がした。

 

レイス……私…

 

司令室が爆発し、四人は炎の中に消えた。

 

 

 

メサイアが月面に落ちる直前、フリーダムとジャスティスがメサイアから飛び出してきた。

 

戦場にいる誰もがその光景を見守り…中でもザフトは絶望に立たされていた。レクイエムを破壊され、メサイアも陥落した。もはやデュランダルが死亡したのは明白……自分達はロゴスに負けたと思い知らされたとき……

 

 

 

〈こちらはエターナル、ラクス・クラインです。ザフト軍現最高司令官に申し上げます。〉

 

エターナルからゴンドワナに通信が来た。オーブのラクス・クラインからだ。

 

〈私どもはこの宙域でのこれ以上の戦闘継続は無意味と考え、それを望みません。どうか、現時点をもっての両軍の停止に同意願います。〉

 

司令官は悟った。自分達の過ちを……

 

議長こそが絶対の正義であり、それに従う自分達は正義の戦士。それを認める…否、自分達を肯定するラクスこそが本物の正しいラクスだと決めつけて、ラクスが自分達を否定するわけないと。

 

賛同しない者は全てロゴスで、人類への裏切りだと決めつけた。

 

敗北して、今の彼女を見て悟った。

 

なんと傲慢で、下劣だったのだ。我々は……我々自身が『従わない者は裏切りだ』というロゴスの論理を実践していた。議長の言葉とラクス・クラインの存在でそれが許されると、思い上がっていた。

 

そして、現状ゴンドワナが健在であっても既にメサイアとレクイエムの陥落で全軍の士気は崩壊している。もはや、戦っても勝てる道理などない。これ以上は将兵を無駄に殺すだけだ。まして、相手もこれ以上の双方の犠牲を望まないのであれば。

 

 

 

ゴンドワナから信号弾が上がった。司令官が戦闘停止に同意したのだ。間もなく、アークエンジェル、エターナル、クサナギからも信号弾が上がった。それに合わせてザフト、オーブ軍、連合、クライン派の艦隊からも信号弾が上がった。

 

それに合わせて両軍の損傷したMSを艦へ運んでいく。

 

 

 

信号弾が上がる前、シオンは月面に落ちたデスティニーとインパルスを見つけ、その近くにいる人影を見つけた。そこにライフルを向けた。

 

その前に、ブレイブが割って入った。

 

〈兄さん、やめて!これ以上は虐殺よ!〉

 

「分かってるよ…どけ。」

 

〈どかない!例え、兄さんに殺されても!!〉

 

強情だ…前の時もそうだった。仲間と一緒に何度も来いと言ったのに、譲らなかった。

 

「ちっ…!お前とアスランに免じてやる!」

 

間もなく、信号弾が上がったためにシオンは先にアークエンジェルへ向かった。

 

 

 

レナは帰還するトゥルースを見届け、胸をなで下ろした。なんとか、兄が最悪の一線を踏み越えることだけは避けられた。だが、それでもレナの中にも彼らへの怒りがあった。最愛の兄の心を土足で踏み荒らした者達に……

 

次にあの子達を助ける自信はないわね…流石の私も。

 

あの先遣隊の時に自分達を罵倒した避難民が死んで喜んだ。ヤキン・ドゥーエの後にデュエルのパイロット、イザーク・ジュールに始めて会ったときもイリアやシオンの前で自分の代わりに勝手なことをいった奴らを殺してくれたお礼のキスをしたい気分が再燃したのだ。あの折り紙の花をくれた名前さえ聞けなかった女の子を殺したのもイザークなのに。

 

フレイ・アルスターが死んだと聞いたときも喜びの方が先に出た。

 

この性からは一生逃れられないだろう。

 

そして、ジャスティスがデスティニーとインパルスの方へ向かったのを見つけた。

 

 

 

ユリはキラとアスランが無事に戻ってきたのを見て、安心した。

 

やっと、終わった。ユニウスセブンの落下から……否、あのアーモリーワンで発生した強奪から始まった二度目の戦争。

 

連合の有利から始まったかと思えば、いつの間にかプラントが正義になって、賛同しないものは全て悪になった……連合がオーブに攻め込んできたときと全く同じ様相になって。

 

だが、それでも終わることが出来た。

 

今はそれに対する安堵を優先した。上官のムウとレイラも無事に帰ってきて、キラもアスランも、シュウも無事だったから。

 

 

 

カインはクレムの機体、ミントシューターのコクピットでその光景を眺めた。

 

負けた……完全に負けた。だが、負けて当然だったかもしれない。

 

最初から、持ち合わせているはずもない理性や良識を求めて…ミネルバでシン達がシオンやアスランを嘲笑した時点で分かっていたことだったのに。半端な気持ちでここまで来てしまった。

 

これで、シオンが再起不能にしたクルーやその家族がシオンを逆恨みするような事をしたら、自分が引導を渡してやろう。それが共犯者としてのせめてものけじめだ。

 

「どうかした?」

 

クレムに問いかけられ、彼女を見る。

 

「…何でもない。」

 

「そう、とりあえずゴンドワナとアークエンジェル、どっちにする?」

 

「ゴンドワナで。」

 

 

 

グレンの機体、ブランフレイムのコクピットからアリスはメサイアの陥落を見て、うなだれた。

 

結局…私はシオンのことを何もわかっていなかった。自分が好きだから、自分が一番相応しいなどと自惚れて……妹や恋人を自分の男を取る魔女だと決めつけた。

 

本当の魔女は私だ。

 

挙げ句、彼の家族までも悪だと決めつけてそうすれば自分を見るなどと都合の良い妄想に入り浸った。

 

シオンに完膚なきまでに叩き潰され、ようやく理解した。

 

「負けた挙げ句、ナチュラルに助けられた感想は?」

 

グレンに問われ、アリスは答えた。

 

「分からない…自分が最低な女だったって事が分かったくらいしか、まだ。」

 

「そうか…」

 

 

 

シンはメサイアの陥落を見た後、デスティニーを…自分が得た力を見た。

 

力があれば、守れる。そう、信じて入隊した。そして、インパルスという力を得て議長に認められた。

 

だが、何も見ていなかった。分かっていなかった。分かろうとしなかった。

 

アスランもシオンも、もっと多くを見ていた。

 

結果、『自分は正しい戦争をしている正義の味方だ』。そんな風に酔いしれていた。

 

最低なヒーローごっこに興じていた。何でも自分の思い通りになり、自分が認められて当たり前。だから、認めない姉さんは悪…否、認めないならリュウは贋者かアークエンジェルに操られていると決めつけていた。

 

姉さんも、アスランも……俺なんかより沢山のことを見てきた。なのに、俺は……

 

自分に都合の良いようにしか物事を見なかった。負けて、当然だった。リュウが言ったように、自分はオーブで戦争を余所の出来事だと思っていたあの頃のままだった。

 

最初から、勝てるわけがなかったんだ。全てを他者に擦り付けて、ヒーローごっこをしているだけの我が儘な子供の自分が………

 

最初から、全てにおいて負けている。アスランにも、リュウにも……

 

自慢の力を完膚なきまでに破壊し尽くされ、シンは悟った。

 

只、力を振り回していただけだということを。

 

そんな心境を察したかのようにルナマリアが背中に寄り添ったとき、ジャスティスが月面に降りて手を差し出した。

 

 




ようやく、メサイア陥落まで行きました。

カインは自分がありもしないものを信じ、最初からシン達がそんなもの持っていない事に気付いていた自分から目を背けていたと思い知りました。



アリスもまた、自分が結局シオンの気持ちなど考えず……自分が相応しいという自惚れに浸かっていたと思い知らされました。



シンも小説版でどんな心理描写か覚えてませんが、私なりに……ここでようやく、自分が我が儘な子供だったことを思い知りました。



シオンとレナは自分達の醜悪な部分は一生このままだとある意味、達観しました。シオンもレナも、ミネルバの連中を未来永劫許さないし、信用しないでしょうね。


あと、司令官にも自分なりに入れました。小説版は読んだことがあり、ステーションワンの司令官の馬鹿ぶりは今でも覚えてます。
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