『操られ先生』   作:狂いぬこ

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ようこそ。


♯10「暖かい記憶」

 

先生の精神世界へとはいる準備は瞬く間に進んだ。

あれから誰が入るかで揉めていたが

キヴォトス最強に決まった。

 

 

ヒナ「私が、せんせいを、目覚めさせる…!」

 

 

せんせい、あなたの心の中、優しくて、暖かい。

私の心が擽られているようだ。

記憶、せんせいの精神表層からまるで泡の中に浮いて

そこから景色が写し出されている。

その一つに触れてみる…。

 

 

?「せんせい!」これは…わたし。

先生「お待たせ、空崎さん」これは…せんせいと、一緒にお茶した時の、記憶、

ヒナ「…せんせい、あの…」「…なんでもない。」

先生「…?」この時、ちょっと悲しかったけど。

先生「…言ってみて、空崎さん。大丈夫、私は先生、だからね。」

「それに、貴方には笑っていて欲しい。」

私、顔が赤い、こんな恥ずかしい顔してたんだ。

ヒナ「…せんせい、私…」先生「うん」

ヒナ「…名前で…呼んで欲しい」

これは記憶なのに…記憶の私と同じく…顔を、伸びた髪で少し隠してしまう。

先生「…っぷ、アハハ」せんせいの笑う顔、安堵する顔。

「ご、ごめんね…心配し過ぎてしまったようだ。」

ヒナ「…やっぱり、だめ…?」少し恥ずかしくて少し目を湿らせる。

先生「そんなことないよ。いつでも、何度でも呼ぶよ。ヒナ。」

ヒナ「…せんせい、みんなにも、名前で呼んだ方がいいよ…きっと」

先生「…そうかな?ハハ、ヒナの頼みなら、そうしようかな。」

これは間違えたかも、みんなにも、なんて

私だけ、あなたの大切な人に成れたような気がしたのに。

幸せな記憶から離れる。

 

ヒナ「せんせいを、助けなきゃ。」

締め縄がより締まるような感覚。

すでに覚悟していた気持ちをより強固にした。

 

より記憶の深くへと、せんせいの、精神の奥底を目指す。

 

暗い。記憶の灯りだけが。私を照らした。

暗闇の中に浮いている。

灯りがまるで星の様に漂う。

あともう少し、そう思った。

奥底に、より強い灯りが見える。まだ小さい。

もっと潜る。落ちる。

 

ゾクリ 

 

なにか、今までの暖かさではない。

包み込んでくれるような優しさではない。

突き放すような寒さ。

あらゆる方向から

私の身体を、襲った。

唐突な感覚に身体を縮めた。

ふと、目を開く。

 

 

なに、これ。

 

せんせい?

 

先生「…ヒナ!…やめてくれ!」せんせい!!

先生「…うわぁあぁあ!!」!?

せんせいの足に…鉛筆が刺さってる。それも、何本も。

血が滲んでる。許せない赦せない許さないユルサナイ!!

誰がこんなことを…せんせいの視線の先には…

 

な…え?

 

ワタシ??

 

私がいた。私だ。間違いなく。

記憶の中の私が、せんせいに近付く。

わたしは咄嗟にせんせいを庇おうとするが

身体は宙につるされた人形のように、その場所には辿り着けない。

 

先生「ヒナ…どうして…」せんせい…せんせい…!

ヒナ「…汚い声ね、喋らないで、唾がとぶわ」あなたこそ喋らないで!

ヒナ「…はぁ、貴方には騙されたわ、もう二度、口を拓けなくしてあげようかしら…」

先生「…ヒナ…君は、な-」せんせいが拘束された椅子ごと蹴りとばされて壁に叩きつけられる。

ヒナ「…言葉も分からなくなった?」滲む。殺意。

せんせいは動かない。痙攣している。

誰か!助けて!

アコ、チナツ、イオリ!

側に立っていた彼らがせんせいに近付く。

はやく!みんな!せんせいをたす…え…

 

ドカ!

 

イオリ「おい!起きろ!せんせい!!」お腹を蹴られてる。

チナツ「…やはりもう、壊れちゃいました?」冷たい目。

アコ「…失礼な方ですね。せっかく委員長がお話をしに来たの、に!」せんせいを踏みつける。

ヒナ「…もういいわ、あとは『イデアの日』を楽しみにしましょう。」

せんせいは、動かない。口からは、血と唾液が混じり、溢れている。

 

せんせい!!!!!!

 

はぁ…はぁ…あぁ…

 

その記憶の中から…抜け出す事が…出来た。

こ、これが…せんせいの…記憶…?

どういこと…。

せんせいは、外の世界の人。だから?

わ、分からないけど…し、知らなきゃいけない。

 

より深くへと潜る、耳も、目も、塞いじゃだめだ。

これが、先生の記憶。

先生の傷。

 

 

 

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