恋敵はブレイズミートシチューでした。   作:猫好きの餅

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 遅れて申し訳ない。


弟子に優しいギャルは実在します

 

 

 

 

 

 

 

「…師匠ぉおおおおお!!!」

「わっ、びっくりしたぁ……マジなんなの急に…?」

 

 ヴァレサに人工呼吸されるという大事件があった翌朝。俺は流泉の衆を出てこだまの子に突撃、師匠に泣きついていた。

 

 まぁ師匠っつても同い年だけど。

 

 師匠……もとい、シロネンは突撃してきた俺にびっくりしながら風船ガムを膨らませる。

 

「シロネンっ、俺はどうしたら…!」

「はぁ、またヴァレサのことでなんかあったわけ?…これやってくれたら聞いたげる」

「御意」

 

 寝起きらしいシロネンはごろんと寝返りを打つと、俺にブラシを投げ渡してきた。俺はうつ伏せに寝転んだシロネンの尻尾にブラシを通し始める。

 

 尻尾はしなやかで、毛も柔らかい。優しめにブラシを通していると、シロネンは満足そうな息を吐いた。

 

「……で?一体何が」

「ああ。……昨日、ヴァレサに人工呼吸してもらったんだけど。起きたあとから、ヴァレサの態度が全然される前と変わらないんだ。キャンプした時は前と後であんなに変わったのに……」

「へー」

「なぁちゃんと聞いてるか?」

「…あー、やっぱディルガにやってもらうのきもちーから…。……きーてるきーてる。……ヴァレサと人工呼吸して、それから……………

 

 

 

 

 人工呼吸っ!?」

「うわ、びっくりした」

 

 寝ぼけ眼でブラッシングされてシロネンが飛び起きた。翡翠色の目をかっぴらきながら俺に詰め寄ってくる。

 

「マジ何があったワケ?……ってか、アンタ心臓でも止まったってこと?大丈夫?」

「ああいや、別に止まった訳じゃないんだ。ただ泳いでたら両脚つって悶絶してたら、溺れたと勘違いしたヴァレサに人工呼吸と心臓マッサージされただけ。いやー、アレ起きてる時にやられるとマジえぐいな。逆に死ぬかと思った」

 

 実際、人工呼吸に驚いたのは一瞬で吹き込まれる息に呼吸が封じられて窒息しそうになったのを覚えてる。心臓マッサージも、心臓動いてる時にやられたらもうただの攻撃だし。

 

「……だけど、その……ヴァレサの様子が全然変わらないんだよ」

「…それは別によくない?悪くはなってないっしょ?」

「そうなんだけどな。……うーん、なんて言ったらいいか…!」

 

 頭をわしゃわしゃかく俺の頬をシロネンが指先で突っつく。

 

「要するに…いじけてんだ〜?」

「ちっがうわ。………はぁ〜、……悩んでたら眠くなってきた」

「ならウチの寝床使っていいよ」

「まじ?助かるわ」

 

 悩んでて昨日はまともに寝れてないんだ。お言葉に甘えて彼女のベッドに寝転がると、掛け布団をかけてくれた。

 

「ど、どう?」

「どうとは?」

「なんか、色々と……やっぱなんでもないし」

「なにが?」

 

 意味がわからず聞き返すとそっぽを向いてしまった。

 

 そういやブラッシングの途中じゃん。俺は後ろを向いたシロネンの尻尾を優しく手に取る。びくっと反応したシロネンに構わず、ブラシを通した。

 

「ごめん、途中だった」

「べ、別にもうやんなくてもいいし…。寝たら?」

「…ん」

 

 布団にくるまると早速まぶたが重くなってきた。そのまま眠気に身を委ねていると、俺の頭が撫でられる感触。

 

「……ばーか」

 

 なにおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅうぅう…」

 

 ディルくんと一緒に泳いだ日の次の日。わたしは寝床枕に顔を埋めながら唸っていた。

 

 わ、わわ、わたし………なんてことしちゃったんだろぉ…。

 

 昨日、ディルくんと一緒に泳いでた時に、彼からわたしを女の子扱いする理由を聞いたんだぁ。さも当たり前みたいに、わたしのことを褒めてくれて、認めてくれて。すっごく嬉しくなって恥ずかしくなったわたしは思わず逃げるように泳ぎ出した。

 

 ちょっと進んでからディルくんはどの辺か見ようと思って後ろをみたら、彼が居ない。でも、そう遠くない位置からぷくぷくって空気が浮かぶ音がしたから、潜ってるのかなって思ってわたしも水の中を見ていたら、沈んでるディルくんが見えた。

 

 よく見ると、苦しそうな顔をして脚を抑えてる。もしかしてつっちゃった!?

 

 ディルくんが溺れる。

 

 そう思ってからのわたしは無我夢中だった。

 

 即座に反転してディルくんを引き上げて岸まで一直線。砂浜に寝かして呼びかけたけど、ディルくんは返事をしない。

 

 ディルくんが死んじゃうっ!

 

 わたしはそのままディルくんを助けようと彼の気道を確保して、……く、唇を……!

 

 

 

 

「あぅぅぅ〜!…わたしのばぁかぁ〜!」

 

 結果から言うと、ディルくんは助かった。わたしが人工呼吸を3回くらいしたあたりで咳き込んで、目を覚ました。結構激しく咳き込んでたから、やっぱり溺れる寸前だったみたい。

 

 人工呼吸って言っても、唇を当てちゃったことには変わらない。起き上がってお礼を行ってくるディルくんは、人工呼吸されたことに気がついてないみたいだったからわたしは必死にいつも通りに彼と接した。

 

 

 それで翌朝。今に至るわけだけどぉ〜……。

 

 

 わたし、何しちゃってるのかなぁ!?きゅ、救命とはいえ、ディルくんと…き、き、き、……っ!

 

 わたしの顔はどんどん熱くなる。ばたばたと脚を動かしてごろごろと寝床を転がったところで。わたしは自分の唇に指で触れた。

 

「…………もう、いっかい………はっ!?」

 

 な、なに言ってるのわたし!?キスはもっとこう、気持ちを伝えあってお付き合いしてから………って、わたしもキャンプの時にディルくんにしてるじゃん…。

 

 わたしはムクリと起き上がると早鐘を打ってる胸を抑えた。こんなに恥ずかしいのに、こんなに胸が熱いのに。

 

 やっぱり、ディルくんに会いたいよぉ。

 

 い、一緒にご飯とか……?まだ流泉の衆のいるよね?

 

 わたしは鏡を見て身だしなみを整えると、ディルくんを探して宿を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えぇ〜?もう、出ちゃったのぉ?」

「うんっ。なんか朝イチで用事があるって言ってたけど…?」

 

 集落で彼を探して歩いていたらムアラニちゃんに会った。

 

 話を聞くと、ディルくんはこだまの子に向かったみたい。

 

「うーん、そっかぁ………」

 

 会いたかったのになぁ。………会いたいなぁ…。

 

「…ヴァレサちゃん……しょんぼりしてる?」

「…えっ、……う、うん」

 

 ムアラニちゃんはわたしにうんうん頷く。

 

「…そーだよね〜。ディルガ、あと何日かはいるって言ってたんだけど」

「何かあったのかなぁ」

「うーん…………ね、ヴァレサちゃん」

「ん〜、なぁに?」

 

 ムアラニちゃんはちょっと周りを気にすると、わたしの耳に口を寄せた。

 

「……その、ヴァレサちゃんとディルガって……つ、つきあってるの?」

「つ、つきっ!?」

「けっこう、…仲良いみたいだし…?」

 

 びっくりしたわたしはその場であとずさる。ま、まだ付き合ってないよぉ?……ふ、振られちゃってるけど…ね…あはは……。

 

 半笑いで顔に影が指したわたしにムアラニちゃんは首を傾げど、何やら羨ましそうな顔でつんつん自分の指を突っついてる。

 

「…つ、付き合っては無いけどぉ〜…その、……まだ…」

「ま、まだ…。…ヴァレサちゃんたち、…すごいね」

「ムアラニちゃん達はどうなのぉ?」

「ふぇ!?…あ、あたし達ってな、なんの事!?」

 

 あれぇ?昨日いた男の子とすっごく仲が良かったから…てっきりわたし…。

 

「昨日の…えっと、ウルくん?…と付き合ってるんじゃないの?」

「ウルはあたしの友達だからぁ!……べ、べつにそう言うんじゃ…!」

「あれ〜、そうなんだぁ」

 

 友達……なのかな?…あ、でもわたしとディルくんもいろいろしちゃったし、人の事は言えないかぁ。

 

 ムアラニちゃんと別れたわたしは歩きながら考える。これからどうしよっかなぁ。昨日いっぱいトレーニングしたからコーチからはおやすみを貰ってるけどぉ〜。

 

「……よぉし」

 

 ディルくんに会いに行こう。会いたい。すっごく会いたいよぉ。

 

 そう決意したわたしは、コーチに報告しに宿に戻るのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん」

「……あ、起きた?」

 

 ぼんやりと目を開けると横から声が聞こえる。

 

 視線をやると、この家とベッドの持ち主が呆れた目で俺を見ていた。

 

「……どんくらい寝てた?」

「3時間くらい?」

 

 シロネンに礼を言い起き上がると、彼女は俺の弓の手入れをしてくれていた。なんなら何か改良もしてくれてる様でテーブルの上に部品がいくつか転がっている。

 

「おー…メンテしてくれたのか?まじ助かる」

「元々コレが目的っしょ?………あー、やっぱりヘタってる。ディルガの射撃に耐えられる弓作るのぶっちゃけちょーめんどいんですけど」

「まじ助かる」

「ボキャ貧過ぎない?」

 

 シロネンと話してると、なんか言葉選び似てくるんだよね。

 

 俺はむくりと起き上がり。欠伸をしながら体を伸ばした。さすがにずっとここにいる訳にも行かないので、弓を受けとって立ち上がる。

 

「寝床ありがとう。マジ助かった」

「はいはい〜…ま、またなんかあったら来なよ。仕事のついでにきいてあげっから」

「おう」

 

 いつものようなドライな反応を返してくるシロネンにお礼を言い、掛け布団を畳もうとすると「やんなくていーよ」と言われた。

 

「じゃ、俺はいくよ」

「じゃねー」

 

 外に出るとナタ特有のぽかぽかした日差しが体を温める。

 

 3時間は寝たとはいえまだ寝不足。おまけにこの日差しでまた眠くなってきた。今から帰るのもアレだし、ちょっとそこらで昼寝でもしようかな。

 

 七天神像の近くにいい場所があるんだよ。俺は欠伸を噛み殺しながらそこに向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっほ、えっほ〜」

 

 ディルくんっ……ディルくんっ〜!

 

 コーチに言って流泉の衆を出たわたしは、こだまの子を目指してランニング中〜。ほとんどナタを横断する感じだから、わたしが走っても結構時間かかっちゃったなぁ。

 

 あんまり急いで走っちゃうとクビナガライノがびっくりしちゃうから、テケメカンの谷に入ったあたりで走るのをやめた。てくてく歩きながら豊穣の邦とは違う景色を眺める。

 

「……ここは静かだねぇ〜」

 

 日差しは暖かいし、そこら辺の原っぱでお昼寝したら気持ちよさそう。

 

「………あっ」

 

 そんなことを考えてると、向こうで昼寝をしてる人を見つけた。…そして、その人は見間違えるはずもなく。

 

「ディルくん…」

 

 わたしの会いたい人がそこにいた。

 

 わたしは足音を立てないように彼に近づく。どうやらぐっすり寝てるみたいで、気持ちよさそうな寝顔をしていた。

 

「…ふふっ」

 

 そんな彼に思わず笑っちゃう。寝顔…かわいいなぁ。

 

 ディルくんの柔らかそうな亜麻色の髪がそよ風で揺れる。顔にかかっちゃってたから、そっと取ってあげた。

 

 ふふっ、こんなに気持ちよそうに寝てたら、わたしまで眠くなっちゃうなぁ。ディルくんに会いたくてここまで来たわけだど、彼と話してもいないのに彼の顔を見れただけでなんかすっごい満足。

 

 そんなふうに思いながら、わたしも彼の隣に寝転がろうと腰を下ろしたところで。

 

 

 

 

 

 

 ディルくんから、女の人の香りがした。

 

 

「…ぇ」

 

 もう一度嗅いでみる。……うん、絶対にディルくんの香りじゃない。爽やかな、ミントみたいな香り。多分こだまの子の人の誰か……。

 

 ディルくん、その人となにしてたのかなぁ?

 

 わたしの中に、むくむくと感じたことの無い感情が湧いて出て来た。

 

 

 

 なんか、やだなぁ……。

 

 

 

 ディルくんから女の人の匂いするの、なんか……すっごくいや…。

 気づけば、わたしディルくんに顔を近づけていた。

 

 すんすんと彼に鼻を近づけて、色々なところの香りを嗅ぐ。特に身体の方に女の人の匂いが付いてるみたい。改めて見ると、気持ちよさそうに寝てるディルくん。

 

 ディルくん、……わたし以外にも、女の人の友達いるのかなぁ…?

 

 その人にもシチュー作ったりしてるのかなぁ。

 

 

 ゃ……やだ……なぁ……。

 

 

 ……やだ。

 

 

 ……………やだぁ。

 

 

「…ディルくぅん……」

 

 この体勢、昨日もあったなぁ…。昨日の人工呼吸が頭から離れない。覗き込むようにディルくんを見つめて落ち着かせようとするけど、その度に香ってくる匂いがわたしの神経を逆撫でする。

 

 ……どうしたら、この香りが無くなるのかなぁ?

 

 

 

 わたしの行動は早かった。昨日…しちゃってるし、1度も2度も同じ……だよね?

 

 そんなふうに彼に覆い被さるわたしは心の中で言い訳するけど、それに言い返す人も、文句を言う人もこの場にはいない。

 

「ディルくん……」

 

 起こさないように……。

 

 わたしはそのまま止まらずに、彼の唇に自分の唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

「…ちゅっ」

 

 長いと、起きちゃうよね…?

 

 1秒にも満たない、当てるだけのキスをして顔を離す。…………でも、彼からする香りは全然治まらない。

 

 あと1回…あと1回だけ……。いいもん、後悔は後でするもん。

 

「…ディルくぅん……、…んっ」

 

 今度は3秒くらい。でも香りはまだ治まらない。

 

 もう、この時のわたしを止めるものは何も無かった。

 

 今度は、彼の頬にキスをする。顔を離す。香りは取れない。

 

 ……次は、おでこにキスする。……ダメだなぁ。まだダメ。

 

 今度は、首にする。ここは唯一邪魔な匂いがしないところ。ちょっと長めにして深呼吸もする。

 

「……ディルくんっ、おきて?」

 

 ちょっと突っついてみるけど、彼はまだ起きない。寝不足なのかなぁ?

 

 ……まだ彼が起きないことをいいことに、わたしは彼に体重を掛けないように覆いかぶさった。まるで自分の香りで上書きするみたいに、身体をこすりつける。

 

「……いま、起きたら……」

 

 わたし、どうしちゃったんだろう。なんかもう、このまま起きて、バレてもいいやって思っちゃった。わたしにこんな一面があったなんて…。

 

 何回も、何回もキスしてすりすりしてたら、彼の邪魔な香りが無くなっていった。でも、その代わりに彼から自分の匂いがする。

 

「……えへ…」

 

 これで、よしっ。

 

 隣で寝てれば言い訳……つくかなぁ?

 

 わたしは、ディルくんの横に寝転がると、腕をとってそれに抱きついた。離れないように、脚で挟んでっと。…えへへ。

 

 わたしは彼が起きるまで、そのままじっと寝顔を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 卑しっ


 エロく書いちゃう癖治し(殴

ヴァレサは……

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  • 卑しか女
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