遅れてほんまに申し訳ない。エタることは無いので気長に待って頂けると。
「…ん…………んぅ………んほぇ!?」
目覚めたら、隣にヴァレサが寝てた。
人生の中でも出したことない奇声を上げながら飛び起きる。流泉の衆からこっちに来てくれたのかな。俺の隣で丸くなって眠るあどけない顔のヴァレサに、人口呼吸の気まずさなんて吹き飛んでいく。
……さて、現実逃避はここまでにしておいて、そろそろ俺の右手(ヴァレサに抱かれて今や谷間に埋まっちゃってる)のことについて考えようか。
というか最初は多分腕を抱える感じだったのに、俺が飛び起きたせいで腕が抜け駆け、それをヴァレサが抱き直したせいで完全に手が彼女の胸の位置で止まちゃっている。
そして彼女の怪力のせいで手が取れない。そしてめちゃくちゃ柔らかい。
間違っても手を動かさないように気をつけながら、もう片方の手でヴァレサの方を揺する。
「…ヴァレサ…起きてくれ」
「……んぅ、……ん〜………あ…れ…?……でぃるくん?」
「おはよ」
「……んう〜…ん、…あ〜…そーだぁ。わたし、ディルくんとお昼寝したんだっけ…」
ようやく手を離してくれた。手のひらにガッツリ残る極上の感触に思考停止していると、俺はあることに気がついた。
「……ん、あれ?…なんか首すごい濡れてる」
「…ふぇ!?……ぬ、濡れてるのぉ?」
「うん…、寝てる間に仔竜にでも舐められたかな?」
首筋に手をやると、びちょびちょとは行かない迄にもなんかすごい濡れていた。よく見たらなんか身体から甘い匂いがしているようにも感じる。シロネンの香水でも喰らったか?
隣を見ると、ヴァレサの目がぱっちり開いて何やらあわあわしてる。どうしたんだろ?
「ん、あ…これヴァレサの香りか」
「ほひゅ!?…ご、ごめんね…多分途中でちょっと抱きついちゃったかも…?」
「あー、だからか。ヴァレサって抱き枕派なんだ」
「う、うん…そうなんだぁ〜」
それなら確かにと合点する。まさかヴァレサなわけないよな。だってこの子がそんなことするわけないし、ピュアの化身だろ。
「…って、結構寝ちゃったな」
「……う、うん。もう夕方だねぇ」
それを見るともう太陽が沈みかかってる。今から帰れば暗くなる前にギリ帰れそうだけど。
「とりあえず、豊穣の邦に戻ろうか。……夕飯はどうする?腹減ったろ、なんか作るかぁ」
「……うんっ…もうお腹ぺこぺこ……って、ええっ…いいのぉ?」
「いいのって、今日がシチューの日だろ?」
「あっ、そうだったぁ。……じ、じゃあ、この後…ディルくんち行くの?」
「ああ。食材買ってくか」
俺は立ち上がると、座り込んでるヴァレサに手を伸ばした。それを顔を赤くしながら取って立ち上がったヴァレサはシチューが楽しみなのか、満面の笑みを浮かべてる。
「よぉし!早く帰ろっ?」
「おう、じゃ、競走なって速っ!?」
雷元素の身体強化を舐めてました。
「とうちゃ〜く!」
「は、初めて女の子におぶられた…」
流石というかなんというか、爆走モードのヴァレサのスピードは半端なくて勝負にならなかったので、結局背中におんぶされるという男の子にしては恥ずかし過ぎる格好で俺達は豊穣の邦に戻ってきた。
「……あ、あの、降りてもいいか?…ありがとうな、重かったろ?」
「ううん、全然だよ〜。毎日ディルくんの何倍の重さのウェイトを持ちながら走ってるから」
それでも自分よりも背が低い女の子におぶられて走って貰うのは男して複雑だった。
とりあえずヴァレサから降りて自宅のドアを開く。
「よし、すぐ作るから」
「うん、お邪魔しま〜す」
部屋に入って伸びをするヴァレサとそれで揺れる彼女の胸から視線を引き剥がし、台所に向かう。食材を取り出して野菜の下ごしらえをしていると、隣にヴァレサが来る。
「わたしも手伝うよ?」
「じゃあお願いしようかな。玉ねぎ切ってくれるか?」
「は〜い♪」
俺から玉ねぎを受け取ると鼻唄を歌いながらヴァレサは皮を向き始めた。その様子を鍋に敷きつめたトマトを加熱しながら見ていたら、ヴァレサはちょっと前かがみになって玉ねぎを切り出した。どうしたんだ?
「ヴァレサ、その体勢辛くないのか?」
「ん?…あ〜、わたしこうしないと手元が見えないんだよねぇ」
「なんでまた…?」
何故かわからず反射で聞き返したところで、ヴァレサがぽっと頬を朱に染めた。包丁を置くと、胸の下で腕を合わせる。すると腕に押されて、自前の豊かな双丘がむにっと持ち上がった。
「…え、えと……その、……む、胸で…」
「…その、じゃあトマトから水分出すから鍋見「だ、だからっ、ディルくんがサポートしてくれないかなぁ?」…え、どうやって?」
まぁ、鍋は焦げないように見るだけだから大丈夫だけどさ。
俺が目をぱちくりとしていると、ヴァレサが手招きしてくる。そのまままな板の前に立たされると、そのまな板と俺の間にヴァレサが入ってきた。
「え、え?」
「…こぉして……、こうすれば一緒に切れるよ?」
えっと今の状況を説明すると。
まな板の前にたった俺がヴァレサに後ろから密着する形になって、彼女の包丁を持った手を俺が包み込むように上から握っている。
そして、この子は上もデケェ思ったら下もデケェや(煩悩)。俺の太もも辺に着弾したお尻の感触で正直手元が危ない。身長差があるから手元は見えなくは無いんだけど、それでもやっぱりお胸が視界に入るわけで。
「……じゃあ、切るぞ?」
「…んぅ、…ん、いいよ?」
だけど、それでも離れたくないのが男の性。だってしょうがないじゃん。好きな子と密着できるチャンスを、自ら逃すわけないじゃんか。
「手……気をつけろよ?」
「…ぅ、んっ…その、耳…」
「あ、ごめん。でもここからじゃないと角が…」
「あっ、あ、そうだよね。…じゃ、そのままにして?」
「わ、わかった?」
え、これほんと大丈夫?
なんか新婚さんのイチャイチャにしか見えないんだが?ただ離れようとは口に出さない。こんな男で本当にごめんっ。でも役得すぎるんじゃ。それに、何か知らんがヴァレサの尻尾が俺の胴体に回ってて離れられないし。
とん、とん…と、玉ねぎを切る音が台所に響く。
こんな状態で無心でいられる訳もなく、ちょっと息が乱れてきた。
「…はぁ、……ふー…」
「…んぅ……ひゃ…」
「ど、どうした?」
「な、なんでもないよぉ?」
ヴァレサも緊張してるのかな?…確かに手元見えないし、指切らないかドキドキもするか。
ヴァレサが食うので玉ねぎも量がある。5つ目を切り終えたところで、鍋の様子を見に離れようとしたら、何故かヴァレサも平行移動して着いてくる。その動きちょっと面白い。
「な、なんで笑ってるのぉ?」
「いやだって、…別にヴァレサはそのまま立ってればいいだろって」
「…でも、わたしもお鍋見たかったし…」
なんか続けてるうちにこの距離感も慣れてきた。玉ねぎも切り終わり、肉も適当にぶった切って多めに鍋に入れていく。それが終わって手を洗ってたんだけど、ヴァレサが袖を外してるの初めて見た。
「…んぅ?どうしたのぉ?」
「ん、いやヴァレサって手が細いなって」
「えっ、ええっ?…そ、そんなことないよぉ?」
「そうかな?」
ヴァレサは恥ずかしそうにむき出しの手をもにょもにょさせる。その手には絆創膏が何個も貼ってあってトレーニングを頑張ってるのが一目でわかった。
思わず、俺はヴァレサの手を取っていた。水に濡れて冷たくなってる手を暖めるように握る。
「……ぁ……ディルくん…」
「なんか、頑張ってる人の手って感じだな」
「それは、ディルくんだって…」
ヴァレサも手を伸ばして俺の手を包み込む。両手握手みたいになってるこの状況がなんだかおかしくて、俺たちは顔を合わせるとふふっと笑った。
俺は手を離すと、冷蔵庫を開ける。なにかつけあわせを作ろうかな。
「……ぁえ?……でぃ、ディルくんっ!?」
「うぇ!? ど、どうした?」
「そ、そのリンゴって……?」
「ああ、これ?」
ヴァレサは、目を見開き、震えた手で冷蔵庫に入っていたハート型のリンゴを指さす。
これはただ、この前集落の子に貰ったやつだ。多く買っちゃったから余分を貰ってくれって渡されたんだけど。
と説明すると、ヴァレサはさらに目を見開き口をぽかんと開けた。
「……も、もしかしてディルくん…」
「ん、どうした?…これ多分ヴァレサの果樹園のやつだよな。前にヴァレサにも貰ったやつ。綺麗なハート型だよな」
「ディルくん、もしかして知らないの……?」
「知らないのって、何が?」
え、これなんかあるの?俺が首を傾げて聞いたんだけど、ヴァレサは「そう、なんだ…」と俺をじっと見た。その顔はなんか、すごく嬉しそうで。
「…ヴァレサ?」
「…んへっ!?…な、なんでもないよぉ!」
「ほ、本当に大丈夫か?…具合悪いんじゃ…?」
「大丈夫っ、大丈夫だからっ!」
「…それならいいけど」
まぁ、シチューは煮込むだけだしサラダでも作ろうか。その貰ったリンゴをくし切りにしてると、ヴァレサが無言で肩を突っついて見上げてくるので1歩引くと嬉しそうな顔でまた密着してきた。可愛いかよ。
「ふふっ、わたし…ディルくんの作るシチューが世界一好きなんだぁ」
うん知ってる。だって俺シチューに負けたんだもんな。悲しみを堪えてそうだなぁと返すと。ヴァレサは肩越しに振り返る。
「うんっ、わたし前に言ったよぉ?このミートシチューが、今まで1番好きだって」
「…ああ、確かにあの時…………へ?」
え、いまなんて?
「え、今まで食べたのに比べて?」
「うんっ。あの時は感動したなぁ〜。色々なお店で食べてきたけど、ディルくんのが1番だよぉ」
え、……え?どういうこと?ヴァレサはあの時、俺のシチューを純粋に褒めたのか?
いやまだだ。まだ確証を得るには早い。俺はバクバクなる心臓を抑えながら恐る恐る聞いてみる。前までだったら怖くて聞けなかったあのことを。
「……その時、俺が君に言ったことって…覚えるか…?」
「あの時?………うーんごめんねぇ。わたしシチューの美味しさに感動してて、多分聴き逃しちゃってたかも…。なんて言ったのぉ?」
「……ぇ、……ま、まじ……か?」
「ディルくん…?」
こてんと首を傾げるヴァレサを尻目に、俺はあまりの衝撃に後ずさる。
う、うそだろ?……も、もしかして俺が振られたのって……!
お、おおお、俺の………勘違いだったのかァ!?
や、やばい感情ぐちゃぐちゃになりそう。……え、ええ?じゃあ俺……まだチャンスあるのか?
チャンスがある状態で俺はヴァレサと……!?
やばい、心臓破裂しそう。
ど、どうしたら………!
ど、どどど、どうしよぉ…!?
ディルくんのお家にお邪魔したわたしは彼と一緒にシチューを作っていたんだけど…。
そ、そんなことって〜!
うぅ、考えがまとまらないよぉ。ひとつひとつ整理しないと。
ええとぉ、まずディルくんの冷蔵庫の中にハート型のリンゴがあって……。それは他の子から貰ったって言ってて。ディルくんに「これなんか意味あるの?」と聞かれた。……つ、つつ、つまり…。
ディルくんはあのジンクスを知らないんだぁ!
と、ということは…!
わたし、ディルくんに振られてないんだぁ〜!!
わたし、ずっと勘違いしてたんだね。まだ、チャンスは終わってなかったんだ。
わたしはそこまで考えが追いついて、思わず座り込みそうになっちゃった。あ、安心したよぉ。
わたしはさっきよりも何倍も熱が籠った顔でディルくんを見上げる。ブレイズミートシチューを前食べた時の話をしてて、会話が止まったからどうしたのって見たんだけど。
だ、ダメだよぉ。チャンスがまだあるって思ったら、もうわたし…、平気じゃいられない。
わたしの口から猫が甘える時みたいなゆるゆるの声が出る。
「…ディルくぅん…」
「……ん、あ、ああ。大丈夫。大丈夫だから」
「ほんとぉ?……えへへ…」
「ヴァレサこそ、どうかしたか?なんかすごい笑顔だけど」
「ううん、ただの思い出し笑いだよぉ」
すごい。もう自分を制御できない。
サラダを作り終えたのに、ディルくんの腕の中から出たくないよぉ。尻尾も自然にディルくんに絡めちゃってるし。
「ね、ディルくん」
「な、なんだ?」
「あっちでちょっと休憩しない?」
「…っ、あ、ああ」
えへへ、ディルくんとゆっくり…。
わたしはディルくんを引っ張ってソファに並んで座る。じっと彼を見つめると、照れて一瞬逸らされたけど、向こうもわたしと目を合わせてくる。それがすっごく嬉しいんだぁ。
「ディルくん、背、高いねぇ」
「そりゃ男だからな。ヴァレサも角合わせたら165位はあるんじゃないか?」
「角はのーかうんとだよぉ?」
わたしは座ったディルくんを追い越すために膝立ちになる。すると丁度ディルくんの前にわたしの胸が来て……あ〜♪。
ディルくんの目線が一瞬わたしの胸に行ったのが見えた。…わたしのこと、女の子として見てくれてる。それがたまらなく嬉しいんだぁ。
わたしは調子に乗って、ディルくんの頭を撫でるふりをして少し横に揺らしてみる。
なでなで。…ゆさっ…ゆさっ。
「っ…!」
「ディルくん、髪硬いねぇ」
「そ、そうかな」
「わたしのも触っていいよ?」
えへへ、今すごい見てた。隣に座り直したわたしは髪をひと房ディルくんの膝に載せながら、さりげなく身体を密着させた。
「……っ、…か、髪柔らかいなぁ」
「えへへ、うちは1家代々そうなんだよ?」
ずっと邪魔だって思ってたこの大きい胸が今はあって本当に良かったって思うよぉ。偶然を装って身体を押し当てて見ると、ディルくんがわたしに反応してるのがよくわかった。
「け、結構髪長いよな」
「うん。……だって、長い方が可愛いってディルくんが昔言ってくれたから」
「えっ、そうだっけ…?」
「あぁ〜、忘れたのぉ?ディルくんめっ」
忘れられてたのがちょっと悔しくて、わたしはえいっとソファの上でディルくんを倒す。その上に乗ってマウントポジションを取ってみた。
これにはディルくん、慌ててる。かわいい。
「ちょ、ごめんってば。謝るからその、…降りて欲しいなって」
「ディルくんなら跳ね除けられるでしょぉ?」
わたしはもう、振られてないってわかっておかしくなっちゃってるから止められない。そのままディルくんの顔の横に手をついて四つん這いになる。そうなるとわたしのおっぱいがどうなるかなんてわかってるもん。
「ヴァレサ?…今日本当にどうした?様子がおかしいぞ?」
「……そうかなぁ?」
でも、ディルくんもわたしの背中に腕…回ってるよぉ?
それに嬉しくなったわたしは、そのままディルくんの上に自分の上半身を倒した。
「くらえ、ヴァレサポディプレス〜!」
「…ぅ、ぎ、ぎふ…!」
「10カウントまでだめっ」
わたしは10カウント取りながら、今のうちにディルくんの香りをめいいっぱい吸い込む。夢中になって吸っていると、わたしの背中に彼の両腕が回ってぎゅっと力が入った。
……ディルくぅん…!
ふと匂いを嗅ぐのを辞めると、ディルくんも耳まで真っ赤にしながらわたしの首筋に顔を埋めていた。……わたしも今どんな顔してるかわからないけど…。ディルくんも、同じなの…?
わたしは自然と、身体をむにむに彼にくっつける。するとディルくんの腕に力が入って、わたしはもっと気持ちよくなった。
だめ、とまらないよぉ。
……そのまま、わたしは10カウントなんてとっくに終わってるのにも関わらず、ずっとディルくんにすりすりと身体を押し当てながら、彼の匂いを吸い続けた。