悪役天才道術士の憤怒 破滅確定だった転生悪役、隠された才能で原作を蹂躙する   作:稲荷竜

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第102話 仲間入りの儀式

 帝の祖が挙げた功は、大きなもので二つある。

 

 まずは戦乱であったクサナギ大陸の統一。

 そして、統一されたクサナギ大陸を襲った氾濫(スタンピード)の鎮圧。

 

 大陸統一のさいの相手は、人であった。

 だが、氾濫のさいの相手はといえば、現在、『妖魔』とひとくくりに呼称される存在だ。

 

 妖魔というのは『人類の敵』の総称である。

 

 たとえば(ドワーフ)天狗(エルフ)河童(ウンディーネ)などは『亜人』であり、『人類の一種』とみなされるのが普通だ。

 しかし一部の鬼や天狗などは妖魔扱いされることもある。

 

 また、海神(かいしん)の巫女どもやその信徒どもは、その多くが人間だ。

 しかし操る海魔(かいま)ともども『妖魔』と呼ばれることがある。

 

 妖魔というのはその時の人類のマジョリティ視点で『自分たちを脅かす脅威』を指す呼称でしかない。

 

 ゆえに……

 

「氾濫の主に仕えた四体の妖魔は……」

 

 ヒラサカが口を開き、けれど、口ごもる。

 そこから先を現代の人間に言っていいかどうか、そういう迷いが彼女にはあるのだろう。

 

 だから氷邑(ひむら)梅雪(ばいせつ)は、言ってやることにする。

 

「異世界人」

「……!? な、なんで、それを……」

「俺は氷邑梅雪。かつて帝の祖とともに旅をした、氷邑道雪(どうせつ)の子孫だぞ?」

 

 もちろん梅雪が『四体の妖魔の正体』を知っている理由は『ゲーム知識』である。

 だが、道雪の子孫という要素が、ヒラサカの中で勝手に理由を組み上げたらしい。「なるほど」とうなずく彼女は、梅雪のことを『隠された歴史を知っていても無理のない人物』と認定したようだった。

 

「確かに道雪に似てるんだけど……っていうかよく見たらそっくりだわ……ミニマム道雪だわ……」

「……」

「なんかムカムカしてきたんだけど」

 

 ヒラサカと道雪との関係性について、ゲーム知識にはない。

 だが神器三種が帝の祖の味方だとすると、伝え聞く道雪はだいぶ、こう……帝の祖に対してツンデレだったようなので、神器からの印象もよくないのだろう。

 

 理解はできる。

 だが梅雪、煽りとみなす。

 

「ずいぶんな物言いだなァ、神器ヨモツヒラサカ。いきなり『ムカムカする』などと言われて、この俺が傷ついたらどうする?」

「うーん……確かに今のはヒラサカが悪かったかしら……道雪とは別人なのよね……いやでもこのまま大きくなったら道雪になりそうな……性悪なオーラを感じるのだわ……」

「そもそも、貴様らは今、この俺に命脈を握られているのがわからんのか?」

「はい?」

「貴様は神器だ。そして、そこにいるのは、神器を奪った、死罪になってしかるべき罪人だ。そして俺は、帝に忠を尽くす御三家の後継者」

「……」

「ヨモツヒラサカ、貴様がそこの青い毛玉の助けになりたいという意思を持っているのはわかる。だが、貴様、そのような自由が許される立場と思ってか?」

「な、なによぉ……! ヒラサカが何をしようがヒラサカの勝手でしょ!?」

「どうやってこの『大嶽丸(おおたけまる)ざぶざぶランド』に入った?」

「……………………」

「ここは貴人か大商人しか入れない──それらしか、『招待権』を持っていないはずだが……さて、蔵に入れられていた神器がいつどのように『招待権』を手にしたのだろうなァ」

 

 実は梅雪、こう詰めてはみたものの、どうやって獲得したのかはさっぱり見当がついていない。

 しかし、まっとうでない手段であることは確実だ。なので、その弱みを責める。

 

「大嶽丸ざぶざぶランド内での争いは禁じられているし、外の争いを持ち込むことも禁止されている。だが……不正入場客の扱いはどうかな? 貴様らがまっとうな手段で入ったかどうか、水辺守(プールガード)を呼んで調べてもらうこともできるのだが……」

 

 ヒラサカがわかりやすく目を泳がせる。

 

(恐らくは帝の祖の時代の招待権でも引っ張り出してきたとか、そんなところであろう)

 

 大嶽丸ざぶざぶランドが今の形式になる前……

 帝の祖および御三家が、ここの形成に尽力したという歴史を、梅雪は知っている。

 

 だからこそ御三家のお膝元、特に氷邑家と七星家の間という位置にこの隠れ里は存在できるのだ。

 そしてその当時は今のような『券』によって権利を証明するのではなく、合言葉を告げるといった形式で身元確認を行っていたという。

 

 その合言葉が未だに使える可能性も、その合言葉を帝の祖とともに旅をした神器ヒラサカが知っている可能性もある。

 が、その合言葉はあくまでも帝の祖のためのものであり、勝手に使ったらなんかまずいのだろう。

 

 少なくともヒラサカの様子からは、そういった事情が読める。

 

 梅雪はなぶるように笑った。

 

「で?」

「…………『で?』?」

「この俺に見逃してもらい、この俺にあわよくば手伝ってもらおうというのが、今の貴様らの状態なわけだが……その俺にいきなり『ムカムカする』だったか? 暴言を吐いてくれたなァ。繊細な俺はいたく傷ついたぞ」

「……」

「傷つけた相手に言うことが、何かあるのではないか? それとも、神器に人間関係の常識はわからんか?」

 

 ヒラサカは助けを求めるように、夕山(ゆうやま)を見た。

 

 夕山はうなずく。

 

「今、すごくいいところだね!」

「…………」

 

 これは『梅雪の土下座強要ターン、キター!』という梅雪推しに狂った女の妄言なので、梅雪のことも夕山のことも知らないヒラサカからすると、何を言われているかまったくわからない。

 

 ヒラサカは一生懸命考えて……

 

「…………あ、謝れ、ってことかしら?」

 

 梅雪はにっこり笑った。

 

「土下座」

「そこまでするほどぉ!?」

「いやいや、考えようだぞ。ヒラサカ。……それから、そこの、青毛玉、貴様は故郷を救いたい。そのために力が欲しい。そうだな?」

 

 急に話に加えられたイタコのサトコは「え? そ、そうかな?」と自信なさげに答えた。

 梅雪は「であれば」と言葉を続ける。

 

「手伝ってやること、やぶさかではない」

「……」

「貴様は神器を盗んだ大罪人だ。しかし、夕山様が貴様らを俺に引き合わせ……確か、『悪いようにしない』と保証したのだな?」これはウメが耳打ちで伝えた情報である。「……であれば、俺は夕山様の意向を汲み、貴様らに『悪いようにはしない』という方向で対応する気持ちがある」

「……ほ、ほんとに?」

 

 サトコが目を見開く。

 梅雪はサトコの顔に浮かぶ喜色に、「ただし」とストップをかけた。

 

「それも貴様らの心がけ次第だ。人間関係の第一歩。『あいさつ』『感謝』、そして『謝罪』だ。この俺が気に入れば、貴様らのために力を尽くしてやらんこともない。さて、貴様らは、この俺と『人間関係』を始められるか?」

 

 サトコがその場に片膝をつきかける。

 その時、ヒラサカがサトコの肩を掴んで止めた。

 

「サトコ! ダメよ! こいつ、謝罪要求だけして力なんか貸さない悪い顔してるんだけど! 弱みにつけこんで何を要求してくるかわかったもんじゃないわ!」

「で、でも、ヒラサカちゃん、手伝ってくれる人がいたら、先輩たちを助けられる可能性が上がるんだよ」

「手伝ってくれる人は選びなさいって話をしてるんだけど!?」

 

「選ぶ?」

 

 梅雪が鼻で笑う。

 

「貴様らにそんな猶予があるようには思えんなァ? 貴様らの前には、二つしか選択肢がない。『水辺守に突き出されて帝のもとに強制送還、加えて神器盗みの罪で極刑』。あるいは『この俺の機嫌をとる』の、二つだ」

「……」

「簡単だろう? 『首を落とすか、頭を下げるか』だ。どちらでも構わんぞ」

 

「ヒラサカちゃん……」

 

 サトコが切なげな顔でヒラサカを見上げる。

 

 ヒラサカは……

 

 ゴージャスな顔立ちで「ぐぬぬぅ……」とうなり、

 

「言っておくけど、ヒラサカは、サトコのためにやるんだから」

 

 その場に両膝をつく。

 

 梅雪が顎を上げて見下す前で、ピンクのフリルの水着を着たゴージャスな巻毛の金髪少女と、もこもこした青髪のスクール水着の女の子が、両手、両膝と順番についていき……

 

「謝罪……します……」

「力を貸してください」

 

 土下座した。

 

 梅雪は「ふぅむ……」と顎を撫で……

 

「まあ、とりあえず、『妖魔』への対処までは手伝ってやるか」

 

 大嶽丸に恩を売る結果にもつながりそうだし──

 

 というわけで、神器ヨモツヒラサカおよび、イタコのサトコを仲間に加えたのだった。

そろそろストック尽きるので、この章終わったら時間稼ぎにside掲載しようかどうしようか

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