悪役天才道術士の憤怒 破滅確定だった転生悪役、隠された才能で原作を蹂躙する   作:稲荷竜

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第60話 帝都騒乱・カーテンコールの二

「お宝ちゃ~ん。お宝ちゃ~ん。おっほぉ~。見っけた~」

 

 蒸気塔、地下。

 

 そこには三種の神器のうち一つが安置されている。

 

 現代日本における三種の神器と言えば勾玉、剣、鏡である。

 剣桜鬼譚(けんおうきたん)においてもそれは同じである。

 

 ただし、剣桜鬼譚の三種の神器は、それぞれが即物的かつ強力な効果を秘めるアーティファクトであった。

 

「おぉ~……あたりぃ。勾玉ゲットだぜ~。これでウチの学校も立て直せるよ~。みんなも喜んでくれるかなあ」

 

 てくてくと、小さな人影が。勾玉を手に歩いていく。

 

 その人物、東北荒夜連(こうやれん)が一人。

 

 荒夜連というのは恐山を中心として複数の学校から成る学園都市であり、この都市では主に妖魔たちと親しむ方法が研究されていた。

 梅雪(ばいせつ)が内心で『バケモンゲットだぜの連中』と荒夜連を称した通り、彼女らは妖魔を特殊なボールで捕らえることによって使役し、戦うという方法をとる。──もちろん、外部の者は知らぬ秘伝である。

 これを降霊者(イタコ)と呼ぶのは色々な方向に怒られそうだが、彼女らは兵科としては道士であり、スキルとしては降霊者なのだ。

 

 その荒夜連がうち、廃校となりそうな学校の生徒にとっての起死回生の一手。それこそが帝の神器を奪うこと。

 これで愛する学校を立て直せる、先輩を救える、と少女はスキップしながら蒸気塔の外を目指していく。

 

 愛とは盲目であり、エモとは他者への迷惑を顧みない。

 彼女たちの青春は、今まさに始まったばかりであった──

 

 

 また別の神器の安置場所。

 

「……ようやく、ようやく、たどり着いた」

 

 総白髪を肩口で切り揃えた、奇妙に落ち窪んだ目をした男がいた。

 

 そいつは荘厳そのものといった空間──蒸気塔神器の間と呼ばれる、来賓を招くこともある『見せる神器』の安置された場所にたどり着いた。

 

 夕山を狙うという偽装によって注目を集め、昨今発生の気配があったすべての事件を一気に同時に起きるように調整し、そうして作り上げた隙の中で、ようやく手を伸ばせる。

 

 彼は手練れの剣士でもあるが、さすがに、このぐらい帝都がバタバタして、神器の間が手薄にならないと、ここの警備をうち倒して神器確保は困難であった。

 そもそもにして帝に対応されてしまえばどうにもならない。ゆえに、何より帝を軍議の間か、あるいは他の場所に釘付けにする必要性があったのだ。

 

 長かった。計画の立案から執行まで、家老になって二十年。

 自分主導で計画を実行しようとしたことも幾度もあった。だが占い師を信じて良かった。待っていれば本当に機会が訪れるものだ。あの占い巫女にはいずれ感謝をせねばなるまい。

 

 長い長い階段をのぼり、そのてっぺんで安置されている剣に手を伸ばす。

 

 それこそが三種の神器のうち一つ、帝の祖が使っていたと言われる聖剣・アメノハバキリ。大陸にはびこる脅威を一切合切根切りにしたと言われる武の象徴にして、帝の権力の象徴。

 

 これを手にし、帝やその一族が不在であれば、帝を僭称することも可能であろうほど、クサナギ大陸において帝を象徴する神器──

 

 それに今、家老の手が伸び……

 

 

「オォイ」

 

 

 ……伸びかけた、というのに。

 

「あ、れぇ……? 我が、剣、が、遠ざか、り……?」

 

 家老、七星(ななほし)義重(よししげ)は、ずるずると、剣が遠ざかっていく光景を見せられている。

 いや、剣が遠ざかっているのではなく……

 

 この老人が、ずるずると、剣の乗った台座に手を滑らせるようにしながら、崩れ落ちていっているのだ。

 

 その老人の背には……

 

 刀が、突き立てられていた。

 

 その刀の持ち主は、「くそ!」と吠え、野望の目前に迫りながらも息絶えた老人の体を蹴とばす。

 

 そいつは、黒髪をざんばらにした、小柄な……しかし、成人している女であった。

 

 帝内(ていない)という地域において彼女以上に有名な山賊はいないだろう。山賊団『酒呑童子』がリーダー、イバラキ。

 

 彼女は、

 

「クソ! あいつはどこだァ! あの、仮面の、銀髪のクソガキィ!」

 

 荒れ狂い、老人の死体に八つ当たりを始めた。

 

「このオレを! このオレを見下しやがって!」

 

 ……梅雪が蒸気塔に侵入する時に、ひと悶着あった。

 

 蒸気塔正面入口で、侍大将と、イバラキとが、兵を率いて戦っていたのだ。

 

 なので梅雪、邪魔だから進路上の者を斬り捨てつつ、塔の中へと入っていった。

 

 その時に斬ったが、殺すまでには至らなかったうち一人にイバラキがおり……

 

 梅雪はイバラキを見て、『え? 酒呑童子のリーダーまでこの騒乱に噛んでるの?』と驚きの視線を向けた。

 

 だが、仮面を被った男の驚きの表情など伝わるわけもなく。

 イバラキの視点では、突然現れたガキが、自分を斬ってからチラりと見て、そのまま無視して塔の中に入っていったということが起きた。

 

 イバラキは偉そうな侍が大嫌いであり、これを見かけたら必ず惨たらしく殺してやるという決意をしている。

 

 そして自分を見ながら、剣でほんのひと撫でしただけで、あとは有象無象の雑魚がごとく、一瞥するだけして去って行くという行動をとった銀髪の子供を許すことができない。

 

 ゆえに塔の中に入って探したが……

 

 塔の下層は迷宮であった。

 

 だが運がいいのか悪いのか、イバラキは迷いに迷った末、ここにたどり着いたのだ。

 

 意味ありげな七支刀(しちしとう)が台座に突き立てられている空間。

 

 その刀は、お宝を奪い続けてきたイバラキのお眼鏡に適った。

 

「お、い~い鋼じゃねェか。製法も現代のもんじゃねえなあ?」

 

 (ドワーフ)というのは鍛冶や治金の才能を持つ者が多い。イバラキは半鬼だが、その目は生来の素養と山賊稼業とで、なかなかに肥えていた。

 

 ゆえに、それが三種の神器と知らないまま……

 

「オレがもらっていってやるか」

 

 あのムカつくクソガキをぶち殺せなかった代わりだ、とばかりに、七支刀を抜き、自分の物とした。

 

 ……かくして歴史は変わっていく。

 

 剣桜鬼譚本来の流れより十年早く起こった帝都騒乱。

 

 滅びるはずであった帝都は存続。

 族滅されるはずであった帝の一族も存続。

 

 助けを求めて落ち延びるだけであったはずの夕山姫の嫁入りも成るし……

 

 家老が奪うはずであった七支刀は、イバラキに奪われた。

 

 かくして帝都騒乱、完全終結。

 

 梅雪という存在が変えた歴史がどう流れていくのか、それは、梅雪でさえも、まだ知らない。

そろそろストック尽きるので、この章終わったら時間稼ぎにside掲載しようかどうしようか

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