哲学者カール曰く——「万人は元は盲目な過去の故人であり、思考を止めなかった者だけ晴眼を手に出来る。」
その言葉の真意は彼にしか分からない。無名な物理学者を経て世間に知られる哲学者となった異色の経歴を持つカール。
その言葉は学者人生を終えてから言い残した言葉。それは彼が数多の研究の果てに得た、最後の研究結果だった。
理論物理学者ライトは、盲目とは不可視の未来を指し考えの果てには絶対的な未来予測も可能だろうと考えた。その後に彼女は其についた書籍を出版した。
「今の文明が過去のものとなり先史文明へと変換した後に、銀河を跨ぐ者があれば、新人類及び知能生命体は其を称えなければならないだろう。」
ネズミが一匹配管の中を這い回る。何本も繋がれた配管の全貌を理解するには設計者ですら書類を持ってやっとの芸当。たかがネズミにそれを超えた能力は持ち得ない。
右へ左へ……行き止まり。これで三桁目を突入した。何度も何度も迷う、ああ……ここはさっき通った所だろう。子供がいたずらに書いた迷路よりもタチが悪い、なんせ答えを知るものは既に死んでいるのだから。
ネズミの向かう場所は、目的地は他の者には理解できない。言葉を介さないネズミは他の者とコミュニケーションが出来ないので当然だ。
…ネズミはどうだ彼自身は自らの目的地を理解しているのだろうか。
ここは名も無き惑星、ナンバリングは有っても誰も覚えてすらいない。この星の名を知る者は居ても理解する者もしようとする者も居ない。何の価値もない星。
独自の構成物質も特別な文明もない。
有るのは数km上空で巡航するガスを突き抜ける異常に発達した樹木と苔で彩られた直径30cm程の鉄パイプ。ここにはそれらが至る所で地に埋まっている。
緑に囲まれた星には似合わない銀色。それだけが他とは違う生まれなのは言うまでもない。突如として現れたそれは無からこの地にばら撒かれた。
同時に人並みの高さを持つ長方形が着陸した。それには何かの文字が書かれている、番号ないし名前と推測できる。
…動物は一種しかおらず多少の違いはあれど、全てが四足歩行で歩き全長3mの草食動物。基本的に大木になる木の実を食べ生活する。岩石の様に硬い灰と黒の中間の皮膚をした四つん這いの人型の体、頭部には根の様な物が髪の毛の如く垂れ下がり、頭という概念が彼らにあるかは曖昧である。胴から左右二本ずつの腕、少し上部にあり二本の腕の間から伸びる腕、前者は足の役割、後者は腕の役割をしている。背から尻までは純白の短い翼が生えている、そして首裏には人工物の様に見られる緑と黒の菱形が生えている。
植物は高木層は一種、低い層には多彩な植物が植生している。丸い頭部、翼もなく手から異を放出する訳でもない、真なる人類が住み着いていた大地の植生と似つかわしくあった。過剰な栄養が木を急激に発達させているだけに過ぎない、かの者からすれば馴染み深い景色であろう。しかしそれの全てがかの環境と完璧に等しい事は当然なかった。
少女は見上げた、椅子に腰をかけ隣に居るペットの大型犬の目の前でジャーキーを振っている。
ゴーグルをかけ、いつかの日半分冗談で母に言った言葉を思い出した。——私が飛行限界高度を引き上げると。
天才の父を持つ少女は常に劣等感を抱えた。学校一の脳を持っても父には届かない、少女が例えそこらの大人を凌駕する知を携えても父には敵わない。
実際に父が自らを貶した事は一切ない、叱ったこともない。だけど逆に、それがより一層自分に興味がないという事を表す事だと少女にはそう思えて仕方がなかった。
父は父自身の研究ばかり考えていた、事実人生の半分以上を研究所で寝過ごした。
父と直接会ったのは…何才の頃だっただろうか。
空高く舞い上がるロケットとパイロット、それを見たのはいつだっただろうか。
化学工場での頻発するくだらないトラブル、それを聞いてクスッと笑う私はどこへ消えたのだろうか。
表情筋を使う機会は今ではゼロに等しい。
あの頃の空は、晴天が絶えなかった。
宇宙ステーションヘルタ
ヘルタ人形の定期メンテナンス、ステーションの書類を読み漁り記録する、朝早く彼女を起こす。それがアルベルトの日課だった。ヘルタは彼を右腕だと言ったが、側から見ればお世話係である。彼もこの状況に違和感を持ってはいるが、彼がここに居れる大半の理由が彼女の助力のおかげで有るためとやかく言うつもりはなかった。
ロボットの機械であるアルベルトには睡眠は不要なもの。ヘルタを起こすのは彼が適任だった。人形を使えば良いがヘルタはそれをしようとはしなかった。本人が言うには天才を自分の私利私欲に使うのは気分が良いとの事。
彼女は天才にリスペクトはあるのは事実だが、それは尊厳を無視しているのでは。…矛盾している様に見えても彼女には一貫した他人には預かり知らないポリシーがある。それとも、その天才が何でも要求してくれと言ったのが全ての間違いだったのか。
『ミス・ヘルタ、起床時刻だ』
『いつもありがと、ふぁ〜。……睡眠しない生活ってどうなの、快適?」
『もう慣れたよ、一日が長いから有意義だ。それより人形に世話してもらう感覚はどうなんだ、今も人形にお世話して貰っているんだろう』
『私の幼少期に似てて可愛い、完璧の具現化を仕えて最高の気分。くらいしか思った事ないけど』
『いつも通りの自尊心で安心したよ。書類棚の論文、他にもあったら教えてくれ、僕はいつもの部屋にいる』
僕が何故、書物を読み漁っているのか。単なる知的好奇心を埋めようとしている訳ではない。
彼女の研究に役立つ為だ。
子供の閃きは時に天才を上回る。なら麒麟児は頻繁に現れないのか。それは彼らには知識が足りないからだ。知なき想像はただの夢想。
この事は今の僕にも当てはまる、今まで証明ないし仮定された理論を知らなければ土俵には立てない。僕の言葉を野次から弁論へと進化させるには知が不可欠なんだ。
僕が紙を通して調べている理由は主に二つ。一つはインターネットの情報では不充分であろうから、もう一つはヘルタがデータを持っていなかったから。もし彼女がデータを全て持っているのなら、そのままダウンロードすれば良かったのだが。そこまで都合は良くなかった。
次の論文は…スクリューガムの物。ここからは彼の分野か。それにしても高いな。…本棚の事だ。
僕には腕という機能がない、強いて言えるというのは前輪部分とボディの中間前方にある受け皿部分の様な物、これが唯一の手足…ここに置けば快適に書類を読むことができる。他にも物を運ぶときとか、取り敢えず動かない腕と見てもらっても変わらない。ああそうだ、一番似てるのはカンガルーの育児嚢みたいな物だ。そしてそれが僕の正面を示す。僕のメインボディは水平回転するからね。
こんな不便な腕のおかげで僕には本棚の上の方が触れない。
……だから彼女が居るんだ。…そう、人形ヘルタ。
彼女はAIとして機能している、だからマスターの接続が不要だ。接続は可能と言っていたがなるべく使用しないでくれと、そう注意させてもらった。いきなり目の前の人の精神が変われば誰だって驚くだろう、その驚きは僕は好きじゃない。
彼女が僕に貸してくれた人形ヘルタ。いつかの日に名前、せめてナンバリングが欲しいとミスヘルタに許可を貰いに行ったが。案外楽に許可された、言われたのは一つだけ。ダサい名前はつけるな、と。
僕のネーミングセンスにかかれば失望させる事は難しい。
そうしてこの人形ヘルタの名前は”Echo”となった。命名が完了したという事はやはり僕のセンスは随一という事。Ratsって名をつけたのも僕だ、中々良い名だろう。
「Echo、スクリューガムの研究についての物は全て取ってくれないか」
「了解。しかし懸念点が一つ、恐らく今日中に読み切る事は不可能でしょう」
「そんなに——」
Echoが要求された全ての書類を机に置いて、すぐに事の重大さを理解した。…これは確かに今日中に読み切れそうにない。でも結局全部読むつもりだから何を考えても無駄。それに彼で最後だ。少しでも頑張って早めに読み通そう。
しかし安心だ、ヘルタの論文よりは少なかった。彼女を超える量だったら、読み通すのを断念してしまっていただろう。
あの時は常識を知らなかったから、この時代の学者はあの量が当たり前だと思っていたが。案の定彼女が異端だっただけだった。
…それじゃあ読もう。こういうのは思い立ったが吉日だ。
…長い…もう何時間経った?
『4時間22分です。』
まだそんな時間か、体感はその倍は経ってる。Echoも壁に寄りかかってスリープモードに移行している。
けれどもスクリューガムの論文は面白いな。
…はあ、やっと終わった。これにて目を通すべき資料は無くなった。
これからはヘルタの研究の手伝いをする事にしよう。
「Echo、ヘルタにメッセージを」
「了解———メッセージを受信:私の体は数分後ミス・ヘルタの精神接続がなされます」
との事だから、暫くは此処で待とう。
『定期探知執行:——失敗』
……やっぱりまだ、Ratsがどこに居るかは分からないか。実はヘルタにも分からないのかも知れない、彼女が此処に来たら聞くのも有りだろう。
ステーションの図書室と言うべき場所。そこにはヘルタが集めた資料などがある。
資料はコピーの物や本物の作者が書いた物もある。機械紳士や、かの生命学者の物は実物である。勿論ステーションの製作者の物も。
此処の扉は天才クラブの者でも開ける事は出来ない、開ける事が出来るのはヘルタとヘルタが許可した人物のみ。それと…彼女の人形。
図書室には100を超えた数の重要書類があるので、セキュリティー性が高いのは当たり前である。
そしてこれら全てを数日足らずで読み切った僕は中々の根性を持っているのではないか。
…そろそろ。
「あー、あー。聞こえてる?」
「ああ、聞こえているよ」
「私も私の仕事があるから手短に。あなたの脳にはこの星海の常識を知ってもらった。当然、ただあなたの知的好奇心を満足させた訳じゃない。これからあなたにして貰いたいのは大きく二つ。一つは私の重大プロジェクトを手伝ってもらう事。…そして二つ目はあなたがこの図書室で知った全ての常識をあなた自身の手で壊し、覆して貰いたいの」
「一つ目は最初から聞いていたけど…問題は二つ目だ。常識を壊す?覆す?それはつまり僕が#3と同じ様にすると言う事なのか」
「正解。理論をより正確に、真理へと近づける為には何が必要か知ってる?それは“信用と懐疑”なの。これはパラドックスであり、一見矛盾している言い分だけど。私が最初に導き出した絶対的で唯一の理論。探究にはその二つが不可欠という事」
僕も知っている。最も知識人同士が全力で相反する論文を否定するために反証を用意する。その過程で理論は進化する。それが絶対の真理かどうかは定かではないが、少なくとも反証のある理論は絶対ではない。
自らの行いと考えを信じ、今までの刷り込まれた常識を疑う。それが不完全な人類が持つ真理への近道。それは僕らの文明では“討議”が行っていた。
「言いたい事は分かったが、僕にそれが可能かどうかは不安だ」
「それは百も承知、だから出来るだけで良いの。メインはあくまで一つ目の方」
「それでメインのプロジェクトの詳細を説明する。結論としてこれは不明瞭な人物の歴史を演算する為の物であり、これはβ版。私が最終的に到達するのは内部宇宙、矮小なる宇宙を機械に内包しそこからデータを得る、そして星神と運命の謎を解き明かす。これはそれの前段階なの。宇宙全体を作り出すより人物個人を作り出す方が何倍も簡単、当たり前でしょ。……はい、これが今回の目的。——そしてその道筋は。ある人の記録をデータベースに挿入し、人物の演算AIと生み出す。そしてそのAIを自由行動させる。まあ、大まかに言えばこんな感じ。天才のあなたなら理解できたでしょ」
つまり彼女が言いたいのは。1、これは演算宇宙を作る前の必要研究である事。2、機械にある人物の記録をダウンロードする。3、そして人物AIをの行動を観察する。4、観察結果を記録する。5、記録情報を元に演算宇宙を作り出す。
今回僕に求められたのは、人物の方だけで宇宙の様な規模の大きい方は頼まれていない。恐らくそっちの方はとてつもない時間を要する為である、彼女なりの僕への優しさだろう。
「了解した。研究場所はあの機械がある君のオフィスで良いかい」
「うん、じゃあそういう事で——」
「ちょっと待ってくれ。……君にRatsの居場所は分かるかい?」
「…申し訳ないけれど、分からない。そもそも彼がこの地を踏んだのは一回切りで、それっきり顔を合わせた事は一切ないの。どうやって私が貴方が眠っていた場所を知ったのか。言ってなかったよね。…それはRatsが教えてくれたの。それまで私は貴方の存在も貴方の文明の存在も一度も聞いたことがなかった」
「彼は謎で溢れた機械だけど、自身のマスターのアルベルト、貴方の事はとても気に掛けていた様子だった。あの感じならマスターの再起動を知ったら戻ってくると思う。私に言えるにはそれくらい」
「そうか、伝えてくれてありがとう。君の計画の力になれる様に精進する。………いつかは僕が君の完璧な理論を否定して見せよう」
「……じゃあ頑張って、私の理論を覆すのは無理だと思うけど」
そうして、ミス・ヘルタは人形との接続を切った。
…無理だと否定した、彼女の声は文面とは裏腹に少し嬉しそうだった。表情は伝わらなかったが、僕が彼女の好敵手として生まれ変わることが出来るなら。それを彼女も望んでいることだろう。
あの完全な魔女に追いつくには途方もない努力と能力と時が絶対。彼女に追いついた時、僕は先史文明の天才ではなく。この銀河文明の天才に昇華するのだ。
この現代には天才が多い、本当に困る程に。
図書室のゲートは静かに開き、静かに扉をロックした。
今までなら資料室から出た時は自動音声が書類を持ち出すなと警告してきたのに、それがなかった事に違和感を持った。しばしば慣れない事はあっても、いつかは慣れるだろう。…慣れるという行為が過去の忘却を意味するのなら、彼はいつまでも慣れない方が良いと少し考えた。彼が旧文明を忘れた時、真に旧文明は消えるのだから。
一人の自律機械は使いのヘルタ人形に抱えて貰いオフィスへと向かった。
犬のペットがひとりでにその二人を横目で見る。動く物をじっと見るのは彼らだけで良い。
もう既にアルベルトは此処に住む人の目には馴染んでいる様だった。
ヘルタのオフィスには様々な物があるがそれら全てはもう見慣れた物だ。
「これが…その装置」
前に来た時は制作途中だった大規模マシンは完璧な見た目をしている。正面から見るとひし形の弁が花咲く様だ。隣にはデータファイルが纏めてあるコンピュータ。これにデータを挿入し、後に人工人格を作るのだろう。
僕は人工人格を作る事には長けている。何故なら僕自身が人工人格だからだ、僕あるいはAlbert-C3と言うべき個体は生前のアルベルトが自らを分析し数十年の年月をかけて生まれた、AIだからだ。僕の僕自身への理解は、他の人間が自らの考えを自覚するそれとは訳が違う。
アルベルトは若くして存在について疑問を持っていた。だからこそ自分が思考すること、思うこと、感じること、全てを重要視し。最も直感的で難儀な”自分“の完全理解を遂げた。僕と僕の行動理念や思考性は100%、それだけの為に僕は時間を犠牲にしたのだから。
自己存在理解の分野においてどの時代になっても僕の右に出る者は居ない。
自分が二人いる感覚は慣れなかったからか、肉体があった頃は一致率は90%を限度にしていたんだ。今ではその心配は不要になったのだけれども。
…他人の人格を作り上げた事は一度もないが者は試しだろう。記録されているデータだけはヘルタのおかげで無尽蔵にある、その為僕を作った時よりか時間は掛からない可能性もあるが。その逆、他人を作ると言う観点で見れば今まで以上の時間が必要になるのかも知れない。
自分を理解するのも、他人を理解するのも表面的には簡単でも芯まで見る事は難しい、深淵はいくら見ても深淵で際限がない。境目もない証明もないから、目標と人工人格の対比検証するまで正確かどうかは推し量れない。
データファイルには行方の分からない天才クラブのメンバー、メモキーパー、カンパニー、ナナシビト、多様な派閥の記録が映されている。
この中から誰のAIを作るのか決めようか。手始めにデータの多い者からやれば良いだろう。僕の能力が劣ってないかを確かめる良い考えだ。…そうすればあまり時間もかからない、重要な人物、再現困難な人物は再現力が上昇した暁に執行する。不完全な力で不適当な鏡像を作るのは明らかに良くない、lそれは人物解釈への誤認を生むに違いない。
最初が最も繊細な挙動を必要とする。それを念頭に入れて考えなければならない。
『人物データベース起動。——機密レベル:秘——以下のデータベースへの閲覧は適当なアクセス権限を必要とします。』
『アクセス権限認証——ID CONFIRMED:#C3。……権限確認、アクセスを承認します』
ヘルタに権限を登録してもらったおかげでセキュリティゲートを通ることができた。#C3となっているが彼女が勝手に名付けた物だ、僕の正式名称から引用したのだろう。
コンピューターには所属、年代、功績、様々なカテゴライズが可能である。数千人程の人事プロファイルが記録されていて、一部の物は閲覧が不可になっている。プロファイルに書かれたすべての人物がヘルタに協力しているのかと言えばそうではないないが、深く書かれている人物は協力者であろう。その協力者が百人を超えている、そのことだけで彼女のカリスマ性を示すのには十分だ。
彼女は最高峰の頭脳を持つだけには留まらず、観衆の目を惹く何かを常に持つ。美の魔と言える容姿、彼女を信じたいと思わせる言動、そして自らへの圧倒的な自信。一見自分勝手とも思える行動も彼女が行えばそれは、人類の未来を照らし学問の発展を促す崇高なる妙手。
彼女に近づけば近づく程、底知れぬ何かが次から次へと溢れ出てくる。
創造対象に選ぶ人物は……博識学会の属するアッシュ・プレーマン。彼はヘルタの才に惚れていた凡人の一人であり、人事プロファイルの文字数も多い。天才の力になれるのならそれを惜しまない、そんな人物だったのだろう。…真実と真意は僕に創られた彼が教えてくれる、前情報の推測は不要だ。
オフィスにある名も無き巨大な機械にEchoは近づいた。
「準備が出来ました。」
これから僕がEchoに指示を出して、彼女にデータを挿入してもらう。僕には手足がないから彼女に基本的に操作してもらう、権限が必要な時は僕が顔を出せば権限は通過できる。
環境は整った、それではプロジェクトを正式に開始する。
…一応明日までに一人目を完成させれば上出来だろう。
そういやこのプロジェクトの名前はどうしようか……人物の歴史を辿り、仮想の未来を作り出す。
…そう……言うなれば。
——————軌跡演算
何てどうだろうか。
人事データベース:アッシュ・プレーマン
博識学会、通感学派に属し。#56イリアスサラスの発明を復元させるに至った者達の一人。
博識学会は一般的に天才になれなかった凡人、天才の紛い物。そう呼ばれる者たちの集まりと言われているが、彼は紛い物にも到達することが出来なかった。
コンプレックスを抱く彼に同情する者は居たが、同情した者は彼が尊敬する者たちではなかった。彼が崇拝する者は天才、そしてヘルタであった。彼女の功績は言うまでもなく、彼も魔女の知を醜い大地から見上げる一人。ヘルタが作られてからは、時折ステーションへやって来ていた。
彼の功績は数多くあるが、彼だけの功績は一つもない。時代が違えば天才であり、時代が違えばまた凡才以下にもなり得る。そんな、時に弄された者だった。
*博識学会に属する以前の彼については、アッシュ・プレーマンVol.2にて記載。