「え、あ、え、嘘ぉ!?」
「そんなに驚く事無いと思うんだけど……」
「いやいやビビるだろ!? 何でお前俺から生命力吸われて死んでないんだよ!?」
「そんな事、僕が知るか!」
淫魔から生命力を吸われたはずの転生者、太田。小太りだった彼は大きく見た目が変わっていた。
伸びていた前髪の隙間からは、クリクリという言葉が似合うほど綺麗な瞳が見える。顔の輪郭も童顔寄りだ。可愛い系男子と言われても違和感が無い。その変貌に、対魔忍の百花だけでなく淫魔すら驚愕していた。
「あーもう。制服ダボダボ……」
小太り故に暑がりで、制服のシャツのボタンはそれなりに開けるタイプだった太田。その為胸元が全開である。そんな彼が痩せた今、その絵面はかなり艶やかであった。
前述したように、今の彼は「目隠れ可愛い系男子」。やや幼気で中性的な彼が、今はシャツの胸元が全開である。
「お、太田くん! ボタン閉めて! 見えちゃう、見えちゃうから!」
「え?」
「(嘘でしょ!? 太田君って痩せたらこんなに可愛いの!?)」
なんの事か分からないと首を傾げる太田に、思わず赤面する百花。
「テメェら無視すんな!」
あまりにも緩んだ空気に、声を荒げる淫魔。その声に百花はハッとして淫魔に向き直る。
「忘れていたわ……!」
「そりゃあんな光景に出くわせばな!」
掌に魔法陣が展開される。だがその陣は大きく、百花と太田を消し去るには十分だった。それも太田からエネルギーを吸い取った影響だろう。
「俺をおちょくりやがって……! 犯すこと無く消し飛ばしてやるよ!」
その瞬間、淫魔の身体に変化か起きた。
「なっ、何だ!? 身体が重い!」
淫魔の身体が見る見る横に広がっていく。腹が飛び出し、指も太くなっていく。整っていた筈の顔面も、漫画にあるような肥満キャラのように変貌していった。
「なっ、何だと!? どんどん太っていく!?」
「……もしかして、僕の生命力というか、カロリーを吸い取ったから太ってる?」
「要するにチャンスってことね!」
自分が痩せた代わりに相手が太った事から推測する太田。百花は訳の分からない展開に若干ヤケになりながらも刀を構える。
「ひいい!?」
「天誅!」
「ぎゃあああぁぁぁ!?」
そのまま淫魔の首は刎ねられた。断面から勢い良く血が噴出する。
「退魔完了!」
改めて太田の無事を確認する百花。だが、助けられた側は顔色が悪く口を押さえていた。
「えっと、助けてくれてありがとう。本当に助か……あ、駄目だコレ」
「待って、嘘でしょ!? ここ一般道……!」
「オロロロロロロロロ!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!?」
生で見た相手の死体に、太田は嘔吐した。少女の悲鳴が夕焼けの空に響いた。
こうして、太田のスマホから催眠アプリは消え去った。だが彼が知らない事がある。
この世界は、アダルト世界である。しかしそれは、性に関することだけではない。
人体欠損・廃人化・性のない暴力のみの拷問なども存在する、所謂エログロな世界なのである。
今回太田を救った、不知火百花。彼女の『本来の運命』は悍ましい。先ほどの淫魔に敗北し、スタイリッシュな肉体を買われて淫魔の世界に拉致される。その後は徹底的に凌辱され、最終的には廃人化する運命だったのである。
知らず知らずのうちに、一人の少女を太田は『本来の運命』から救っていたのだった。
不定期更新ではありますが、次回は4人の転生者のうち、ガテン系教師編を予定しています。