見た目は寝取り側に居そうな筋肉モリモリマッチョマン、中身は愛妻家……そんなキャラがアダルト作品にいても良いと思います。
体育教師・
前世の彼は病に伏せており、それが理由で痩せ細っていった。彼が最期に見たのは、涙を流しながら自分の名を呼ぶ妻と娘。
「病に負けない頑丈な体を作らなくては!」
前世での後悔から鍛えに鍛え、そうして手に入れた頑強な肉体。今では片手でリンゴやスチール缶を握りつぶせる程の力を手に入れた。しかし――
「ゴリ山よ……」
「目を合わせちゃ駄目。寝取られるわ」
「部室で犯されるわ。離れましょ」
女子生徒から避けられてしまっていた。
「(僕は妻一筋だ……!!)」
盛山は、ツゥ……と一筋の涙を流した。筋肉ゆえの高い体温ですぐ蒸発した。彼の見た目は、アダルト作品において運動部の少女を彼氏から寝取る側となってしまっていたのである。
だが、彼は前世の妻と娘を今でもなお愛しているのだ。頭の中にあるのは、今世での生徒たちの成長と前世の妻子の幸せであって、部活女子への肉欲ではない。
「(……クヨクヨしていてもしょうがない。あぁ言ってるけど、あの子達も部活ではアドバイスとか聞いてくれてるしな。……本当に渋々とだけど)」
小さくため息を着くと、授業の準備の為に職員室へと歩みを進めるのだった。
病室にけたたましく響くアラーム音。心拍数が徐々に下がっていき、周囲では看護師と医師が懸命な処置を行なっている。
『パパ! パパ!』
必死に父を呼ぶが、その反応は弱々しい。
『あなた! あなたぁ!』
母も泣きながら愛する男を呼ぶが、アラームは非情にも鳴り止まない。その時、酸素マスクを着けられていた男は、枯れ木のように痩せ細った腕を懸命に伸ばした。
――ありがとう
――愛してる
――幸せだ
微笑みながら娘を撫でる男。既に体力も限界で、呼吸も苦しいはずなのに、男は最期の言葉を残す。
そしてとうとう心電図から発せられる音が――
「……ヒロ! チヒロ!」
「う、うぇ!? は、はい!」
「何ボーっとしてんのよ。今はパトロール中よ」
前世の記憶から意識が戻り、今世の光景が目に入る。自分を呆れたように見る同い年の少女は、レモンイエローを主体としたドレスを纏っている。さながらアニメや漫画のような魔法少女だ。
そして自分も、色こそワインレッドであるものの、意匠は少女と同じものだった。
「(転生して魔法少女になる、かぁ。本当に漫画みたい)」
思いに耽る少女の名は、盛山チヒロ。彼女は転生者である。しかも母親と共に転生した。死因は、高齢者の運転する暴走車に親子共々巻き込まれた形である。よりにもよって、父親を亡くした当日に、であった。
「今のところ異常は無いけど、油断はしないこと。魔物は突然現れるから。その原因となるポータルの出現は、貴女なら感じ取れるはずよ」
「はい!」
レモンイエローの少女、武中ユリはチヒロにとって魔法少女の先輩である。隣町の高校に通っており、陸上部という事もあって俊足を武器としている。猛スピードから放たれる蹴り技は強烈だ。チヒロが初めて魔物と遭遇した時に助けてくれたのも彼女であった。それと同時に、魔物から放たれるエネルギーに当てられてチヒロは魔法少女に覚醒。放課後はユリの下で修行中である。
「……はぁ。明日の部活が憂鬱よ」
「……人間関係ですか?」
「似たような感じ。私たちの事をいやらしい目で見てくる顧問がいるのよ。筋肉モリモリマッチョマンの変態。今は手を出していないけど、油断ならないわ。良いチヒロ? 男って生き物はケダモノなのよ」
「は、はぁ……?」
ユリの言葉に曖昧な返事しか出来ないチヒロ。目の前の先輩は、スレンダーではあるものの可愛らしさがある。それ故の異性トラブルによる発言かもしれないと考えてはいた。しかし、自分にとって男性とは、今は亡き父親のイメージが強いために完全に理解は出来なかった。
「(もし私やママのように生まれ変わってるとしたら……会いたいな。パパ……)」
不定期とはなりますが、息抜きとして投稿していきますので、次回もお待ち下さい。