ヒーローの味方の科学者をやってるんだが、実験が楽しくてたまらない 作:刹那木ヤクモ
「はぁ……はぁ……ッ!? 」
変身を辞めてからこの世界における体調不良と言われるもののほぼ全てを一身に受けている。正直、立っているのもやっとだ。そんな状況なのに目の前には誰かを襲っている天使。助けてやりたい。成長した個体でもないから苦戦することもないだろう。しかし戦える力──チェンジカードが、切れている。ジャスティスも、ハングドマンも、チャリオットも無い。あるのは、先生の部屋にあった空のカードだけ。……賭けは出来る。先生曰く、チェンジカードと言うのはエネルギーを圧縮したものらしい。そしてそのエネルギーというのは人の心から生まれる願いのようなものから生まれるそうだ。実際俺も、戦闘中に俺の思いの丈によって出力が上がるのを体感している。だがそれは後だ。今は目の前の人を助けなければ──
「オラァッ!! 」
体当たり。通常個体であれば生身での抵抗も不可能ではない。
「逃げて! 今すぐに──」
今にも襲われそうになっていた人は、どこかほのかに似ていて、思わず息を呑んでしまう。
「で、でも、足を捻っちゃって……」
背負って逃げようかとも思ったが、天使が立ち上がる。守らなければ。俺が、今度こそ。そう、信じられるのは俺だけなのだ。
「……安心してください。俺が、絶対に守りますから」
……息を深く吸って、吐く。そして空のカードを天にかざし、言葉を紡ぐ。
「……もし神様が居るのだとしたら。今この瞬間だけでも良い、俺に、誰かを守れるだけの力を──!! 」
そうだ、神薙創真。お前は誰かを殺すためでなく、これ以上同じ苦しみを味わう人がいないようにと、そのために戦うのだ。過去の復讐ではなく、未来の生命を守るために、戦う。
その思いに応えるかのように空のカードに光が宿る。刻まれた名は、《
……確かに、俺は愚か者だ。こんな簡単なことに気づかず、投げ捨てたり、取りこぼしてばかり。だが、そんな愚か者でも人を救うことは出来るのだと、証明してみせる──!
「俺は、本当の意味でヒーローになるんだ! 」
カードがひとりでに手元を離れ宙を舞い、右手に宿る。
なんとなくわかった。右手を掲げ、いつも通りの言葉を唱える。
「……変身! 」
『ジャスティス・フール』
「『
ガーベラの意匠が象られた赤い装甲。はためく外套。そして、深紅の剣。過去ではなく未来のために。常に前進を続けるのだ。
『スタンドアップ アルカナセイバー』
剣を構える。そして、今までと比較にならないほどのスピードに加速しながら剣に付けられたトリガーを引く。
『リバイバル ジャスティス』
「ハァ──! 」
深紅の残光を伴いながら、一閃。防御姿勢を取っていた天使を一刀両断して見せた。それと同時に、俺の心にかかっていたモヤも晴れる。そうだ。誰に指図されようとも、俺は人のために生きるのだ。
空は、心なしかいつもより明るかった。
◆◆◆◆
「……フール? 」
存在ごと消えている。馬鹿な、これは父さんが俺に埋め込んだアルカナだ。父さんの血を継ぐものでなければまず適合せず、何より父さんが選ばなければ別の人間に宿るわけもない──右手の甲を確認する。確かに、そこに宿っていたはずのフールのカードがなくなっている。
「……どういう事だ、父さん。まさか人を、この世界を信じるとでも? ここまで来ておいて? ……なら俺が証明してみせる。人の可能性なんて、ないのだと」