ヒーローの味方の科学者をやってるんだが、実験が楽しくてたまらない   作:刹那木ヤクモ

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酸いも甘いも誰かの

「……最後の、変身だ」

 

ドクン。負荷と、未知への期待で心臓が高鳴る。リミッターをすべて取り外したシフトマグナムならば、父さんが選んだ創真くん相手だろうと十全に戦うことが出来るだろう。俺の血が混じっているのだから、創真くんもまたフールに適性がある。それは計画にも必要な要素だったから理解はしていたのだが、父さんが彼を選んだという確証はなかった。だが、持っているならば話は早い。

 

「先生、あなたも変身を……? 」

 

「創真くんのおかげさ。昇華装置がここまでの出力を発揮できるのも君の得たデータがあってこそだ」

 

「……先生がさっき言っていた事、詳しく説明してもらいますからね! 」

 

『リバイバル ハングドマン』

 

見慣れない剣とハングドマンの二刀で攻め立ててくる創真くん。対して俺も左手にハングドマンを展開し、弾きながらシフトマグナムの一撃を入れるタイミングを見計らう。

 

「援護します! 」

 

しかし、警官による空中からの射撃がそれを阻む。舌打ちが思わず出てしまう。大きく後退、そして天使を3体呼び出し迎撃に向かわせる。

 

「弾さん! 」

 

「天使は任せてください! あなたは神代(カミシロ)一真(カズマ)を! 」

 

向き直る。天使と警官の戦闘音が鳴り響く中、俺と創真くんは静かに互いの距離を少しずつ詰めていく。

 

「……神代、一真。それは先生の名前なんですね」

 

「いつか話そうと思ってたけどね。そう、一つの真と書いて一真。真理を探求し、人の革新をもたらす。それが俺の使命」

 

「なら、先生。人の革新について授業をお願いしてもいいですか? 」

 

「良いとも。戦いながらでいいならねぇ! 」

 

エネルギー弾を放つ。それを難なく打ち落とした創真くんはジグザグに移動しながら目の前まで迫ってくる。二振りのハングドマンが鈍重な音を鳴らしながら鍔迫り合いを起こす傍ら、接射を試みるが蹴りで吹き飛ばされることでその目論見は失敗となった。

地面に打ち付けられた痛みを気にせず、俺は口を開く。

 

「アセンションプロジェクト。これは父さんが提唱した人類進化の計画だ。人の身を上位存在にすることで永遠の生を手に入れる事ができる。しかしこれには欠陥があった。たとえ永遠の生を手に入れたとて、人間は争いをやめない。争いは絶えない。完成された自己を持っても、他人を妬むことを人間はやめない」

 

「……だから先生は、楽園計画を始動させた」

 

「そう。どんな人間も好きな夢を見ながら眠る、永遠が保証された楽園。個人個人で完結する理想郷。実際それは世界の内界として完成した。しかしそれにも欠陥があった。それは、世界の内界から生まれた者に導かれないとそこに辿り着けないこと。だから、俺たち、と言うか父さんは天使を作った。一足先に世界の内界へと辿り着き、楽園の管理者、神となった父さんのデータを用いて。その後は天使により人の肉体を強制的に昇華させ、世界の内界へと送っていたのさ」

 

「ならなんで、俺に天使を殺させていたんですか? 」

 

「ああ、それ? それはねぇ、

 

 

 

 

君たちが天使に見えていたのもまた、人間なのさ」

 

驚愕したのか、息を呑む創真くん。

 

「佐門市が一番世界の内界に近い場所だから、天使に連れて行かれたけどその通路が狭すぎてあぶれた連中がでてきたのさ。はぐれ天使、と仮に呼ぼうか。はぐれ天使は本来の天使の役割として人を内界に連れて行こうとするけど、通路の先が分からないから同じようにはぐれ天使を増やすだけ、内界には到達しない。そこで、俺たちが背中を押してあげることで本来の軌道に乗せ直すってわけ」

 

「……待ってください。なら、天使たちを押し戻していた俺は──」

 

「うん、俺が作った、天使の要素を含むクローンだね。本来の神薙創真は、元の君の家族と共に死んでる」

 

「な──」

 

天使を狩れるのは、天使だけ。警察勢力も、父さんの残したデータから抽出した天使化のノウハウを学習して作られた別の装置に過ぎない。

天使を狩っていた自分もまた天使。その事実にアイデンティティが揺らいでいるようだ。それも仕方がない。だが。

 

「俺が作ったのは肉体だけ。だから君の意志だけは、たとえ複製されていたとしても本物だ。そして、父さんは君に人類進化以上の可能性を見た。だからさ。ここでどっちの意志がより優れてるか検証して、勝ったほうで次のステップに進まない? 」

 

「……終わらせます、ここで。たとえ俺が天使だとしても、あなたが言ったように意志が本物ならば、俺はこれ以上、先生に殺しの片棒を担がせるわけにはいかない! 」

 

『リーサルバースト リバイバル ジャスティス』

 

『リーサルバースト デス』

 

「「決着を」」

 

数秒の緊張。その後、斬撃波とエネルギー弾がぶつかり合う。

だが、その競り合いは勝負にもならなかった。

 

斬撃波がいとも容易くエネルギー弾を引き裂き、そして俺に迫る。

 

覆面の下で笑いながら、俺は銃を下ろす。

 

「……合格だ。よく、その意思で、人類進化を──俺たちを止めて見せた」

 

フールが創真くんを選んだことによる、アセンションプロジェクトの中止。それに伴う世界の内界の消失。よって、導き出されるのは、本当の死。

 

久世にも思える無の空間に、全身を支配された。

ああ、まったく──思い通りにならない実験が、一番楽しかったな。

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