ヒーローの味方の科学者をやってるんだが、実験が楽しくてたまらない   作:刹那木ヤクモ

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変身占士ジャスティス 最終話《森羅万象の構築者》

「……お父様が、死んだ」

 

ワタシの創造主たる人物の生命の鼓動が途絶えたのを感じる。感応能力の高い上位天使であるワタシだから感じ取れたもの。研究所で待機を命じられていたが、お父様の死によりその命に背くことが可能になる。

僅かだが、過ごした時間。そしてワタシの創造された意味。それらのためにも──

 

「……あとはワタシに、任せてください」

 

神薙創真、君の可能性を試しましょう。

 

◆◆◆◆

 

無力感。正直なところ、それが俺を支配している。天使はあらかた討伐した。先生の計画も、アセンションプロジェクトも止めたのだから、否定するなら最後まで。惰性なんかでやるわけには行かない。人を救うため、先生に託されたから、様々な理由で戦ってきた。

 

だが、現実はそう甘くなかった。

 

「……弾さん。やっぱり、あなたも──」

 

「天使は……一体残らず、殲滅しなければ……!」

 

志は同じ、天使達の殺戮を止めること。だが、その志の刃が仲間にも向いた。イカロスユニットの副作用による天使化で思考が狂化。さらに互いの中の天使を狩るべく、起こったのは殺し合い。もちろん止めるべく動いた。シフトユニットを破壊することで狂化を解こうと、何度も戦闘に介入した。しかし、いつも間に合わない。先に生命の灯火が消えてしまう。何とか間に合わせようと、しかしそれが出来ずに繰り返す。そうして残ったのは、弾さんだけ。理性を保ち、俺とともに介入していた彼は、しかし徐々に呑み込まれていき今こうして俺の前に立っている。

 

『ユニット スタンバイ』

 

『ジャスティス・フール』

 

弾さんが懐からシフトユニットを取り出す。それに、右手を掲げることで応じる。

 

「……変身」

 

「チェンジ」

 

『ゴービヨンド フール』

 

『イカロス コンバットモード』

 

互いに占士へと姿を変え、突進する。

 

拳が互いの頬へ炸裂する。だが、スペックではこちらが上。俺は微動だにせず、弾さんだけが吹き飛ばされる。

イカロスユニットが変身者の命を喰らい尽くす前に破壊しなければ──! 

 

『スタンドアップ アルカナセイバー』

 

『リーサルバースト リバイバル デス』

 

アルカナセイバーで先生の使っていた武器を生み出し、銃撃。狙いは腰のシフトユニット。黒い弾道を描きながら飛翔したエネルギーは、弾さんが取り出したウェポンユニットに阻まれ、しかしそれを貫通してシフトユニットを破壊する。

 

「ガッ……く、う……」

 

「弾さん! 」

 

変身を解き、駆け出す。……間に合わ、なかった。四肢の崩壊が始まっている。

 

「神薙、さん? 」

 

「……ごめんなさい。俺は、あなたを助けられなかった……人のために生きる、誰かを救うために戦うって言っておきながら、戦友たちを誰も守れなかった! 」

 

「……確かにそうかも知れません。けれど、あなたは確かに、俺たちを苦しみから解放してくれたんです。……ありがとう。あなたに戦友と言ってもらえて、良かった……」

 

ピクリとした後に、彼から力が抜けていく。……これが、結末なのか。先生を手に掛け、戦友を失い、そして、ほのかさえもいなくなって……それが、俺の道の果てだと? 

 

「納得が、いかない……! 」

 

違う、違う! 彼らは報われなければ。たとえ何か歯車が狂っていたとしても、誰かを想う気持ちを持った人間は報われるべきだ。この世界がこうも残酷でなければ神代一家は大量殺人犯になることもなく、弾さんたちも身を滅ぼすまで戦うこともなく、何の罪もない人間が死ぬこともなかった! 

 

「……預言を告げます」

 

そう、声が聞こえた。見上げた先にいたのは、まさしく()使()だった。

 

「……君は? 」

 

「ワタシはエクストラ。神代一真の創造物にして、今は神代勇気の代言者。あなたに、神の言葉を伝えます。《最高の研究結果だ、僕に未練はない。キミに僕の世界を委ねよう》……フールに、神権が宿っています。あなたは神となり、第二世界を自由に改変することができる。しかし、あなたの可能性はもうこれ以上はなくなる。すべてを失い、すべてを手に入れる訳です。……さて、何をなさいますか? 」

 

言われたことを、理解すると同時に直感的に感じる。フールが、冷たさを放っている。先生がもともと持っていた力からは乖離したもの。今のコイツなら、俺は──

 

「……正義の愚者は、示した」

 

右手を掲げる。

 

「この旅路に、この物語に、終わりを告げるのだと」

 

全身から光があふれる。体の末端からだんだんと感覚が消えてゆく。

 

「もし、神様がいないのなら。この瞬間を以て、俺が神の座を担おう」

 

──そして、この事件で消えた全ての命が、再び 笑って 暮ら せる よ う に──

 

◆◆◆◆

 

「……こら、神薙くん! 寝るな! 俺の研究室に入ったからにはこき使うから、覚悟しといてね! 」

 

「はーい、先生! 」

 

──新たな世界での旅路に、祝福を

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