ヒーローの味方の科学者をやってるんだが、実験が楽しくてたまらない 作:刹那木ヤクモ
ありがとう、ありがとう。
「⋯⋯で、なぜか旧世界の記憶を取り戻したわけですが⋯⋯」
死んだことも、その後の仕込みも覚えている。よって、生きていることには違和感はない。だって俺が、父さんの運営してた新世界の全権を預けたからね。《エクストラ》の反応は感じ取れない。完全に一般人になってしまったから、そりゃそう。そして何より、記憶が戻ってきている。ここには流石に疑問が湧いてやまない。創真くんがわざわざ大罪人たる俺の記憶を戻すとは思えないからである。それに、新世界を作るうえですべての記憶をリセットしてある筈だし。
「ま、順当に考えれば創真くんになんかあったとしか考えられないよなぁ⋯⋯」
俺はもう、夢破れた敗北者だ。探求心はあるが、父さんの使命、アセンションプロジェクトも別の形で成ったわけで。なら、今を生きる彼の力になってやりたいと思うのは、それほどおかしなことだろうか?
「⋯⋯《スター》は、まだだったね」
研究対象は未定。どのような生体反応が起こるかも不明。しかし、おれの感情は高鳴っている。
どうやら、俺は彼が好きらしい──
◆◆◆◆
「はぁ、はぁ⋯⋯」
逃げる。記憶が戻り、作った新世界の法則や枷と言ったものが何故か破壊され、謎の《悪魔》のような生物に追われている。それは俺以外の人間もそうなのだろう。街は再び、恐怖の夜を過ごすことになったのだ。
チェンジカードも、シフターもない。フールの権能こそあれど、《ジャスティス・フール》は連発が効かない。こうも無力感を感じるのは、チェンジカードが切れた時以来だ。
あてもなく逃げ続け、ついにたどり着いたのは、先生の仮住まい。⋯⋯先生という職業になっていたのは驚いたけれど、その姿も最近は見当たらない。巻き込まれたのではないかなどと考えてしまう。
「⋯⋯いつぶりだろうな」
ドアノブを捻り、階段を登る。⋯⋯脳に入ってくる情報すべてが懐かしい。先生を手に掛けてから、色んな人と戦ってから、世界を作ってから。様々な光景が今や遠い記憶になってしまった。そうして感慨に浸っていると、先生の机──その上に、光るものが見える。
「これは──」
シフター、チェンジカード、そしてメモ書き。誰が残したかなんて、語るまでもないだろう。紙の切れ端に書かれた文字を読む──
『応援してるよ』
「はは、そうか⋯⋯俺が、受け継いだんだもんな」
それらを手に取り走る。真実という獲物を追い、逃さぬ狩人のように。
◆◆◆◆
『スキャン・《スター》』
『ジャスティス・フール』
「変身! 」
『
ガーベラの意匠に、マントと黄金のラインを持つ占士が、巨大な悪魔を圧倒している。世界の癌。悪性の情報が滲み出たそれに立ち向かうには十分だ。
「俺は俺で、やるべきことをしますかね」
目の前には似たようで、少し小型な悪魔の群れ。数はざっと──千は超えるかな。やれやれ、骨が折れるね。
『ウェイクアップ シフトマグナム』
「へーんしん」
『ファイア デス』
無造作に放った弾丸が迫りくる一群を吹き飛ばす。そして、装束をまとう──変身占士デス。急造品でどれだけ持つかは分からないが、持てるすべてを投入しよう。
『ウェイクアップ テンパランス』
無限のエネルギー供給をし
『ウェイクアップ デビル』
それを食い潰すように強化を施し
『ウェイクアップ タワー』
さらには速度も上昇させ
『ウェイクアップ ストレングス』
圧倒的な火力も付与する
「さぁ──盛大なカーテンコールにしようか」
演者は一人。それで十分だ、と思っていたのだが──
「ええ、それはもう盛大にしましょう」
「⋯⋯いいのかい? 彼のところに行かなくて」
「たとえ新しい世界で出会っていたとしても、それは別の私。私たち死人は、創真の枷にしかなりませんから」
『スキャン《フォーチュン・ジャスティス》』
そう言い、隣に純白の騎士が降り立つ。
「じゃ、行こうか」
「指示は不要です。一番槍は私が──! 」
こうして、ふたりぼっちの戦いのゴングが鳴る。
顛末? それは死人の口から語るべきではない。けれど、そうだね。確かに、ハッピーエンドになった筈さ