ヒーローの味方の科学者をやってるんだが、実験が楽しくてたまらない   作:刹那木ヤクモ

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彼の興味は誰がために

バン! 扉が開け放たれる音で目が覚める。鍵を閉めてないとは言え朝から忙しいな。誰かは見当がつくが──ビンゴ。ドタドタと階段を駆け上がってくる音で確信を持つ。

 

「先生! 来ましたよ! 」

 

「早いねぇ創真くん……。お兄さんまだ眠いよ……」

 

椅子に座りながら寝ていたようで、白衣がしわくちゃになってしまっている。まあいつも通りか、そんな気にすることでもない。あくびを一つしながら創真くんの方を見ると、少し困惑した表情をしていた。

 

「お、お兄さん? そんな歳でしたっけ」

 

「シャラップ! 29はギリお兄さんでしょ! おじさんのさんは30のさんだからね……ま、それはさておき。見回りに行くのね。じゃあ、はい。チェンジカード、補充しときな」

 

使い切りなのは考えものだ。今後戦闘回数が増えるほど戦闘不能のリスクが上がる。この辺も要改良、って感じか。

 

「ありがとうございます。じゃあ俺は行ってくるんで! 」

 

「はいよー、気をつけなねー」

 

ドタドタ、キィー、バタン。嵐のような子だ。さて、俺は創真くんが天使に出くわすまでデータ整理の続きといきますか。

天使について今わかっていることの大きなもので言えば、人間を殺しているということ。天使の行為だと発覚したのは十年ほど前。それまでもチラホラそれっぽい報告は上がっていたらしいが、俺が確認できた中ではその十年前の事例が最も古い記録だった。頭の上に光輪を冠した、白い衣の翼を持つ人型実体。それが現場に駆けつけた警察官に目視されたことで判明した、通称《天使》。感情はなく、言葉を話すが『神の命令のもと殺した』という旨を言うだけ。

いやはや、迷惑極まりないねぇ。データは先の一戦と過去のものも合わせてそこそこ、って感じだ。いろいろ発明はしてきたが、今のところ一番の成功はシフター。倒せたのはあれしか無い。マシンポテンシャルなのか、それとも創真くんの実力なのか。まだ不明なことは多いが、その分そこが明瞭になれば能力の向上も可能かどうかがわかる。

……お、シフターがアクティブになった。座標は──それほど遠くないな。ここなら歩いていけそうだ。さて、武器が残ってると良いんだが──

 

◆◆◆◆

 

『ジャスティス・キック』

 

「ハァァァァ!! 」

 

着いた時にちょうど飛び蹴りが炸裂していた。前回よりも出力が上がっているので、当然爆散。辺りをよく見ると、槍が半分に折れて落ちている。よし、これさえあれば良いかな。ジャスティスが足早に現場を離れたのを見て、警察の介入前に穂先側と柄側両方回収する。

創真くん的には天使が出処の武器なんて使いたくないと思うが、それはしゃーなし。これも目的のため。まあ負い目はあるので黙っておこう。いずれ感じ取るかもしれないけど、その時はその時だ。

 

仮住まいの方は創真くんが知っている。見られると面倒なことになりそうだから実験室に向かうとしますか。

 

◆◆◆◆

 

カードキーをかざし、ロックの外れたドアが滑らかにスライドする。ここ最近は誰も立ち入っていなかったから少し埃っぽいな。外そうと思っていたマスクはつけたまま実験室に入る。

真っ黒な袋の中に入った、半ばから折れた槍を取り出し、作業机の上に置く。

初めて回収できた貴重なサンプルだ。丁寧に扱うとしよう。興味深い点は、二つ。どのような素材で出来ているのかと、何故ジャスティスならば破壊できたのかだ。槍を解析機に入れ、解析中の時間に思考を巡らせる。ジャスティスの初回戦闘時は、真っ向からでも破壊できていた。腕を貫通されることなく、ましてやダメージを負うことすらなかったのだ。これまで、俺の知識の中では破壊は不可能だったものだ。やはり、()()か。培養液に浮かぶ光の輪を視界の隅に入れながら、解析が終わり、出力された槍の情報を閲覧する。

 

「……やっぱりね」

 

槍の素材は、光輪と同じ。人間の──

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