ヒーローの味方の科学者をやってるんだが、実験が楽しくてたまらない   作:刹那木ヤクモ

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少女被検体への施策

時間はかかったが、武器の製作は上手く行った。槍先を薄く引き伸ばし、縮めた柄をいい感じに装飾してさらに鍔のところにエネルギー充填のためのカードリーダーを取り付けた漆黒の剣。それをカード1枚から展開できるよう、新たに製作した《ウェポンカード》。その名は、《ハングドマン》。

まだ使い切りを脱してはいないが、槍の複製は成功したので数を確保することで問題を解決している。

 

今日はこれを創真くんに渡すべく、仮住まいで集合と告げていたのだが、まだやって来ていない。

 

あれ以来、創真くんはひたすらに天使を狩っている。ネット上ではジャスティスに救われた人が情報を発信していたりする。今まで現場に居合わせた目撃者は全員殺されていたため、ほとんどの人が確認しようがなかった情報が一般にも流れ始めている。これに対して政府はできる範囲で天使の情報を開示し始めた。そこには俺も知らない、この《佐門(さもん)市》以外では天使が出てないことなども含まれていた。持っている情報からなんとなく推察はできていたが、こうして答え合わせすることも大切だ。何より、計画通りに物事が進んでいるのが目に見えて分かるのも大きい。

 

……お、扉が開いたな。しかし妙だな。足取りが重いようで、ゆっくりと登ってきている。 

 

「先生! この人の手当てを! 」

 

声が届くか届かないか、そのギリギリのラインから大声。なるほど。そういう訳ね。ヤブだが、医術も履修しているので対応は可能だ。器具もある。そして、万が一のためのものも。

 

こちらの用意が終わると同時に、創真くん、そして彼と同じくらいの年齢に見える少女が背負われてやってきた。

 

「ゆっくり、落ち着いて運んで」

 

「天使にお腹を刺されています。……間に合うでしょうか」

 

「どうにかしてみせるさ。もしもし、意識はあるかい? 」

 

創真くんが手術台の上に優しく横たえた少女にそう問いかける。微かに目を開け、震えながら口を開くが声が出ていない。重傷だな。天使にやられたから当然とも言えるが。

 

「……手段は選んでられないか。《フォーチュン》を使おう」

 

「フォーチュン、って……? 」

 

「ジャスティスの試作品さ。廃棄せずにとっておいてよかった。創真くん、ちょっと離れててくれるかな? 」

 

「はい、わかりました」

 

創真くんが離れてから、少女に一つ、質問をする

 

「命には代えられないとは言え副作用はキツイけど……それでも、良いかな? 」

 

弱々しく頷く少女。交渉成立だ。ぐったりと倒れた少女に対して、あるものを傷口に埋め込みながらシフターを取り出す。

 

『セットアップ シフター』

 

旧式のシフターを少女の腹部に当て、ベルトが巻かれるのを確認してから《フォーチュン》のチェンジカードを滑らせる。

 

『スキャン フォーチュン』

 

純白の騎士がビジョンとして浮かび上がり、剣を一度振る。その後、剣を少女に突き刺すと、先ほどの騎士と同じような美麗な装甲が彼女を覆う。

 

「はぁ……はぁ……これは、先ほどのお方と同じ……? 」

 

「先生、これが旧式の? 」

 

「そう、占士フォーチュン。多機能にしすぎて負荷がキツイやつだから創真くんには渡せなかったの。初期段階から剣と盾を持ってて──あ、そうそう。思い出した」

 

白衣のポケットからウェポンカードを取り出す。

 

「次の機会に使ってみてよ」

 

「これは、例のヤツですか! 」

 

「そ、武器。名前はハングドマン。試験的なモノだから過信しないで欲しいんだけど、それでも君の力になれるはずさ」 

 

「あ、あの……」

 

フォーチュンがおずおずと手を挙げる。そう言えば彼女の事情を何も聞いてなかった。シフターの下部にあるボタンを押し込みながら引っ張る。するとシフターが外れ、服こそ破れているが傷は見当たらなくなった少女が姿を現す。

 

「傷が……! ありがとうございます」

 

「大したことはしてないよ。これは回収させてもらうね」

 

ホッとした様子で笑顔を見せる少女。こちらとしてもデータ取りと経過観察が上手く行けば何も言うことはない。あとは創真くんに任せて、上着だけ貸して家に戻ってもらうことにしよう。

 

「じゃあ先生、また明日」

 

「おー、気を付けて送っていってあげな」

 

階段を下っていくのを見送った後、心のなかで拳を突き上げる。

フォーチュン。あれを試す機会に恵まれて良かった。前任は負荷に耐えきれずすぐに成ってしまったから、装備したのが短時間の彼女なら十分に経過を見られるだろう。

 

「……これで、計画が進むと良いんだが」

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