ヒーローの味方の科学者をやってるんだが、実験が楽しくてたまらない 作:刹那木ヤクモ
『ジャスティス・スラッシュ』
「喰らえ──ッ!! 」
うんうん、調子は良さそう。想定外の訪問客が来て2ヶ月が過ぎ、あれ以来、やる気が増し増しって感じだ。その訪問客も経過は順調。ハングドマンの生産も問題なし。今俺がやるべきは次のフェーズへの準備かな。
そうと決まれば善は急げ、さっさと取り組みますかね。計画の成就のために。
◆◆◆◆
仮住まいでデータ整理をしていると、扉が開く音がする。おかしいな、創真くんはさっき出ていったばかりなんだが──いや、彼女か。そろそろ成る頃だ。階段を駆け上がってきたのは、
「……はぁ、はぁ……あなた。私に、何を──! 」
槍を生成して投げてくる天使。それを白衣で弾く。
「さあ、何をしたと思う? 」
「答えてください。さもなくば──」
「俺は、副作用がキツイって、ちゃんと言ったでしょ? 」
「──ッ」
飄々とした態度で応じる。苛立ったのか、槍を持って突貫してくる。が、力がうまく入らないのか、途中で倒れる天使。それを見て俺は、
『ウェイクアップ シフトマグナム』
机の上に置いていた、近未来的な造形をした大型の銃をゆっくりと右手で持ち上げる。
「変身、ってね」
『ファイア
引き金を引くと、半透明のカードが薬莢のように排出され、鎌を持った死神のようなビジョンが天使に向かって飛んでいく。
驚いた様子で槍を生成し、咄嗟に防御姿勢をとるが、振り抜かれた鎌はそれをすり抜け、無慈悲に天使に致命の一撃を与える。
そして天使に一閃した死神が俺の背後に回り、マントで俺を覆い隠すと、黒い装備をまとった占士へと身を変える。
「あなた、それは──」
「創真くんが集めてくれたデータのおかげで、ある程度の知見を得られたからね。それを活かして計画のために新しい昇華装置を、と思って」
「やはり、創真を利用して! 」
「そこはお互い様。俺は創真くんに計画を手伝ってもらってて、創真くんは俺を天使を倒すために利用してる。持ちつ持たれつ、ってやつじゃない? と言うか創真くんを名前で呼ぶようになったんだ。もしかして俺の知らないところで会ったりしてるのかな。うーん、青春ってやつだねぇ」
ペラペラ喋ってみたりして。だけど、創真くんが帰ってくる前に終わらせたいんだ。そろそろご退場願おうか。
『リーサルバースト スタンバイ』
銃身をスライドさせ、伸ばす。そして必殺技の待機状態に移行させ、照準を合わせる。
「あなたなんかに、殺されてたまるものですか! 」
天使は拙く翼を動かして逃げようとする、が、速度がまったく出ていない。本能的に理解できてない、つまりまだ低次元にいるって証拠。要改善、ってことだ。
「じゃ、さよならだね」
『デス・ブラスト』
銃弾に死神が巻き付くようにして射出され天使を貫き、何事もなかったかのように辺りを沈黙が支配する。
『リリース』
「……ふぅ」
変身を解除し、シフトマグナムを机の中にしまう。フォーチュンでの実験は完了した。あとはこれを改造して新たな占士を作るとしよう。なんて、思っていると、再度扉が開く音がする。創真くんが帰ってきたのだ。危ない危ない、ギリギリじゃないか。遊ぶクセは直さなきゃな。
「先生、戻りました! 」
「おお、お帰り」
だが、一先ず俺はいつもと変わらず、迎え入れるだけだ。
そう言えば、彼女の名前すら聞いてなかったな。ま、良いか。