ヒーローの味方の科学者をやってるんだが、実験が楽しくてたまらない 作:刹那木ヤクモ
「そういや先生、俺以外に天使を倒しているのがいるっぽいんですよ」
「……なんだって? 」
ふと創真くんが発した言葉に耳を疑う。天使には通常兵器は効かないはずだ。となると、俺と同じような手法で天使対策を講じた組織がいるという訳だ。おそらく、警察か。
想定外。ヤツらが天使を捕縛し解析できたなんて。計画にも影響が出るかもしれない。
「まあ、良いことじゃないですか! 天使を殺して市民を守れる人間が増えるんですから! 」
呑気にそう言っている創真くん。だがこの事態は俺の想定している《一騎当千》のコンセプトに反している。プロジェクトそのものの破綻もあり得る。計画は軽微な修正で済むだろうか。これが警察の介入だとすると、ヤツらがどれほど深くまで知っているかによっては撒かれた種が芽吹く可能性もある。しかしそれ以上に、連中を知らなければならない。
「そうだ、創真くん」
ふと思い立ったように、そう言う。
「なんですか? 」
「その新しい戦士に接触してみてくれないかな? 俺たちが知らない情報とかあるかもしれないし」
「良いですね! まだ現場で遭遇したことはないんですけど、会ったらいろいろ交流を図ってみます。じゃあ早速行ってきますね! 」
手を振って見送る。さて、クローンはあと少し。新しい武器は難航している。創真くんからの情報次第で俺もより暗躍する必要が出てくるため、作業時間が少なくなってしまう。《世界の日》までに間に合うか……。
……このプロジェクトは崩壊させる訳にはいけない。これは、父さんの──
◆◆◆◆
「……よし、出来た。これに試作品の《テンパランス》を付けて、取り敢えずは完了かな」
クローン、完成。うんうん、悪くない出来じゃないか。初めてではなかったから成功するだろうとは思っていたが、サンプルの量的にも失敗はできなかったから一先ず安心だ。
そして、テンパランス。これは無限エネルギーを実現するための装置で、いずれこれの完成品を使う機会がある。計画上、絶対に必要なのでね。この試作品のテンパランスにより生命維持を行う算段だ。まだ完成品ではないので、何度か止まることもあるだろうが、そうなれば俺が修理すれば良いだけのこと。さて、そろそろ起動するか。
「起きて、ほのか」
眠っていたクローンが瞳を見せる。あたりを数度見回した後に、こちらに気付くと
「──ッ!! 」
目の前から消えた。
「……は? 」
おかしい、何が起きた。まさか上位天使の権能を? 何より、複製前の記憶が残っていたというのか。転移先はおそらく、いつも会っていたという例の公園。面倒なことになった。カード化してないからかさばるが、長距離狙撃用の《ストレングス》を持って荷物をまとめる。
「……まったく、今日は想定外ばかり起きるねぇ」
苛立ち。それと同時に、予想を超える事態に興奮もしていた。
◆◆◆◆
創真くんの座標はもうとっくに公園の中だ。……見つけた。クローンとの接触阻止は間に合わなかったか。会話は不可能だから何かを伝えるとかは出来ないはずなんだが、先ほどの想定外もある。今は遊ばず、さっさと仕留めるに限るな。
『ウェイクアップ シフトマグナム』
「変身」
『ファイア デス』
変身を済ませ、そしてストレングスをシフトマグナムの銃身に接続し、伸びた銃の照準をクローンが装備しているテンパランスに合わせる。ここまでの動作を手早く行う。
『リーサルバースト スタンバイ』
そしてレバーを下げ、エネルギーをチャージする。銃口に集まったドス黒い粒子が臨界点に達したのを見て、引き金を引く。
『ストレングス・ブラスト』
轟音を響かせながら、銃からエネルギーの塊を吐き出す。そのエネルギーは軌跡を残しながら、しかしエネルギーの塊そのものは目で追いきれないほどの速さで飛翔し、テンパランスごとクローンを粉砕した。文字通り、跡形もなく。創真くんも少なくないダメージを負ったようだ。ま、シフターの回復強化機能で頑張ってもらおう。
さて、退散退散。使い切りのストレングスは塵となって消え、シフトマグナムのボタンを押し変身解除をしよう、そう思ったところで迫ってくる気配に気付く。創真くんではない。と言うことは──
「こちら、警視庁天使対策課です。少々お話よろしいでしょうか? 」
3人の、装甲をまとった警察に囲まれてしまった。