ようこそ幼馴染の教室へ   作:ひなぎ

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#11 レッツ勉強会、助けて!綾小路くんのお悩み相談会

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――― 綾小路清隆 ―――

 

 今日は5月7日木曜日、Sシステムの詳細について発表されたときはひと悶着あったが、今はなんとか全員落ち着いて授業を受けている。

 

 授業が終わり、昼ごはんの時間になったとき、平田が今日から毎日、5時から教室でテスト本番まで勉強するから、良かったら参加してほしいという話になった。

 

 誰でも歓迎すると平田は言っていたが、平田を嫌いな須藤、池、山内の3人組はあまり気が乗らないようで、女子に群がられている平田を見て嫉妬の目線を向けていた。

 

 本当に嫉妬か定かではないが、須藤が直前まで迷っていたと考えると、須藤に何か心境の変化があったんだろうか?そういえば雪とたまに電話しているのを聞くが、まあそれは置いておくとしよう。

 

「お昼、暇?もしよかったら一緒に

 

「綾小路くん、今日も一緒にお昼食べよ!」

 

 今日は昼食をどうしようか、志朗と雪と一緒に学食に行こうか、そんなことを思っていると、金髪ポニーテールのギャル風の女子、軽井沢に話しかけられた。堀北が話しかけたかと思ったが、気のせいだろうか……?

 

「軽井沢さん、私が先に誘ったのだけど?」

 

「え?知らない。でも綾小路くんは私たちといた方が楽しいと思うけど。」

 

 少し挑発するような言葉を紡ぐ軽井沢に、ムッとした顔をする堀北。「私たち?」と聞いて軽井沢の後ろに目線を向けると、平田や佐藤、松下といった先の勉強会に参加すると言っていたメンバーがオレの方を見て手を振ってきた。

 

 振り返さないのも癪なので振りかえしてみたら佐藤が頬を赤らめていた。

 

 軽井沢や佐藤といった女子グループから話しかけられるようになったのは4月の水泳で平田と水泳の勝負をした時だった。そこから平田とよく話すようになり、女子グループから話すのが顕著になったのは5月にSシステムが説明され、小テストの結果が発表されてからだ。

 

 最初はクラス内にも友達がいた方がいいんじゃないかと思って堀北に話しかけたりしていたが、雪や志朗と他クラスに友達がいるから無理して友達を作る必要はないだろう、そんなことを考えるようになったのと、櫛田が堀北と仲良くなりたいとカフェに誘って、堀北が不機嫌な態度をあらわにして帰ったのも相まって、そこから疎遠になりつつある。

 

「すまん堀北、昼食の誘いだったか?今日は軽井沢や平田と行くから、また誘ってくれ」

 

「……そう。」

 

 ムスッとした顔を隠す様子もなく、また自分の席へと座る堀北。何のことだったんだろうか、と考えていると、茶髪のロングの髪をした女子、松下が顔を覗きこんで話しかけてくる。

 

「何ボケっとしてるの?早くいこ?」

 

「……ああ、そうだな。」

 

 そんな様子の堀北を気にも留めない女子グループを見て、オレもまあいいか、と思い学食へ向かった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

「須藤たちを来させるためにはどうすればいいか、ってことか?」

 

「そうなんだ、反応もいまいちみたいで、あの3人は点数が1番危ないから、何とかしてあげたいんだ。」

 

「平田は優しいんだな。」

 

「ううん、優しくないよ。ただクラスメイトとたった1ヶ月でお別れって言うのはあまりにも残酷じゃないか。」

 

「そうだな、まあ何とかできるように頼んでみる。」

 

「うん、そうしてくれるとありがたいよ。」

 

 平田、オレ、軽井沢、松下、佐藤、篠原、この6人で学食に来て、各々メニューを頼む、席に着いて平田が持ち出したのは、やはり中間テストの話題だった。残念そうにしているので励ましのつもりで言葉を交わすと、平田は心が軽くなったのかふにゃりと口元を緩めて笑った。

 

「平田くん優しいよね、私だったら放っておいちゃう。」

 

「私も同意かな、綾小路くんはどう思う?

 

「相手側から頼ってきてくれたら助けるが、そうじゃなかったら放置ってところか。」

 

「まあ大体の人はそんな感じだよね。」

 

 篠原の言葉に佐藤が相槌を返してオレに意見を聞いてきたので、オレもさりげなく同意する感じで言葉を返す。ちなみにここにいるメンバーのうち、オレと平田以外はほぼポイントが残っていないので山菜定食である。

 

「軽井沢も参加するんだな、てっきりこういうの参加しないかと思ったんだが。」

 

「げ、あたしのことなんだと思ってるわけ?あのまともじゃない3バカと一緒にしないでくれる?」

 

 5月初めにポイントをカツアゲしていた女子にそんなことを言われたくないと思うが、どうやら軽井沢は3バカと一緒にされるのが相当気に食わないらしい。

 

「……なに、その目。」

 

「いや、学力がまともじゃないヤツがまともって言葉を使ってるのが面白かっただけだ。」

 

 面白いなんて微塵も思ってないが、興味深くはある。ポイントカツアゲ女なんて言ったらオレの首が飛びそうだったので、さりげなく小テストの結果の方に話題をすり替えていく。

 

 論点のすり替えで沸点をリセット、これは常識だと志朗が自慢げに語っていた。雪も満足げに「うんうん」と頷いていたのでこれは世の中の常識なのだろう。オレの親友2人は博識である。

 

「学力がまともじゃない……ぷはっ笑笑笑」

 

 オレの言葉に松下が吹き出した。つられて佐藤と篠原も肩をぷるぷると震わせて笑えるのをこらえていたが、ついに我慢できなくなって吹き出した。ちなみに平田が頬をひくひく動かして舌を噛んで笑うのを堪えていたのをオレは見逃していない。

 

「ほらみんな笑うのは失礼だよ、軽井沢さんがかわいそ……ぶはっっっっっ笑笑笑笑笑」

 

 どうやら平田も限界だったらしい、佐藤も篠原も松下も超えうるゲラ笑いである。当の軽井沢はどうなってるんだろうか?と思って目を向けると涙目で右手拳を握り締めてわなわなと震えている。さすがにやりすぎたか。

 

「落ち着けよ軽井沢、確かに赤点ギリギリだがこれから見返していけばいいんだ。47点でも大丈夫だ。逆に考えるんだ。部分点の2点を取ってる時点で最後まで解くのを諦めていないじゃないか。確かに2倍してもオレに勝ててないが……?軽井沢?」

 

「うわああああああああああああああああああああああんみんなのばかあああああああああああ」

 

 軽井沢がギャン泣きした。おかしい、テストの点数弄りは定番だと雪と志朗が言っていたのに。この2人の説を立証するかのように佐藤や篠原たちにはウケているのに。

 

「あはは、さすがにやりすぎたね、ごめんね軽井沢さん。」

 

「うん、軽井沢さんごめんね。私それより点数低いから全然馬鹿にできないや。」

 

「ううう……」

 

 涙目で突っ伏している軽井沢に各々が謝罪の言葉を述べる。軽井沢も「うん、うん。」と平田や松下の言葉をゆっくり吞み込んでいるようだ。

 

「オレもすまん軽井沢、確かにオレは言いすぎた。さすがに2倍しても勝てないが事実だとしても直接言う必要はなかった、すまん。」

 

「グハッ!!!!」

 

「あ、軽井沢さんが沈んだ。」

 

「だめだよ綾小路くん、軽井沢さんがもうサイヤ人編のヤムチャみたいになってるから。」

 

「既にそれ死んでないかい?あとそれなら軽井沢さんの心が角砂糖のように脆いのほうが的確じゃないかい?」

 

「ひでぶっ!!!!!!」

 

「追い打ちに追い打ちをかけるドSスタイル、彼氏とは思えないわ。これがイケメンランキング2位と5位の力ね。」

 

「もうやめて平田くん、軽井沢さんのライフは0よ。」

 

「軽井沢は置いてきた、あいつはこの先の戦いについていけない。」

 

「えぐちっ!!!!!!」

 

「綾小路くんってもしかして火に油を注ぐの得意だったりする?」

 

「火に油を注ぐ?危なくないか?」

 

「ああ……これ、」

 

「(((天然もの……かあ。))))」

 

 平田たちが何を言っているのかわからないが、とりあえず死に体でくたばっている軽井沢を横目に、昼の時間は過ぎていった。軽井沢を傷つける要素があったのなら気をつけるか、堀北が近くにいるのでオレにあいつの性格が感染したのかもしれない。つまり=新種のウイルスと同類という結論が出た。やっぱり人間観察は興味深いな。

 

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「あなたたちを否定するつもりはないけど、あまりにも無知、無能すぎるわ。」

 

 翌日放課後、図書館で事件は起きた。今日も彼女を中心に世界は回っているらしい。堀北が15世紀のヨーロッパにいて、天文学を学んでいたのなら、こいつは自分の性格と似たり寄ったりな天動説を唱えているに違いない。

 

 今日も今日とて教室で勉強会、のつもりだったが、今日は職員会議があるらしく、勉強するなら図書室で、ということだった。昨日の昼食で軽井沢が相当悔しがっていて、「勉強教えて!」とせがんできたので今日は図書館で勉強会をすることになった。だがまだテスト期間2週間前ということもあってか、あまり他クラスの姿は見受けられなかった。

 

 堀北はオレに協力を得られないことを悟り、観念して櫛田に勉強会に池や山内、須藤ら3人を連れてきてほしいとお願いしていた。これも1つの成長だろうか、そんなことを思っていた矢先の出来事だった。

 

「あ、軽井沢、ここの数式途中で間違えてるぞ、だから解けないんじゃないか?」

 

「あ、ほんとだ!ありがとう綾小路くん。」

 

 「ぐぬぬ」と苦悶の表情を浮かべていた軽井沢に、数式のミスを教えてやると、ずっと苦労していたところが分かって嬉しいのか、喜びを隠せない表情をしていた。

 

 ぱーっと顔を輝かせてふにゃりと笑う姿は、あの図書館の隅の地獄の雰囲気と対照的である。

 

「ねえ綾小路くん、あれ止めにいかなくて大丈夫?」

 

 松下が堀北たちの方を探るような視線で見つめる。図書館の隅、つまり堀北、櫛田、須藤ら3人たちの方の雰囲気は最悪に近い形だ。もう勉強会が崩壊していると言っていい。

 

「止めに行ったらこっちが被害を喰らいそうだからな、櫛田とかが危ないと思ったら止める。あと松下は何で小テスト80点なのに教えてもらう側なんだ?」

 

「う~ん、綾小路くんにあの3問のうち1問だけでも教えてもらおうと思った、じゃダメかな?」

 

 あざとさ全開の目線と言葉でオレにそんなことを話す松下、はっきり言って今のところ勉強会のメンバーはオレ、平田、佐藤、篠原、軽井沢、松下、王、井の頭、佐倉、本堂、宮本、伊集院といった12人、教師役はオレ、平田、王、伊集院と4人でもう少し頭数が欲しい。1人で2人見る形なのだができればもう1人欲しい。

 

「あとで教えてやるから、佐倉の方を見に行ってくれないか?孤立してる感じだから任せたいんだが。」

 

「う~ん。」

 

 松下は視線を向けると、少し距離を置いて離れた佐倉を見つける。少し考えると、オレの提案に同意してくれたのか、「わかった」と笑顔で言うと、すたすたと歩いて行った。

 

 さっきから見ていて佐倉があからさまに孤立しているが、松下とマンツーマンなら多分大丈夫だろう。。

 

 さっきも思ったが、松下の机上の消しカスの数が異様に少なく、ミスも不自然さは少ないものの、わざとミスしてるような形跡が見られた。あまり口に出して言えるものでもないので、とりあえず放っておくか、そう考えていると、

 

「今すぐ勉強を……いいえ、学校をやめて貰えないかしら?そしてバスケットのプロなんてくだらない夢はやめて、惨めにアルバイトでもして過ごすことね。」

 

「はっ……上等だよ。やめてやるこんなもん。ただ苦労するばっかりじゃねえか。わざわざ部活を休んで来てやったのに、完全に時間の無駄じゃねえか、あばよ!!!!」

 

 そう啖呵を切って、図書館を後にしようとする須藤、先の会話が節々聞こえていたが、お互いの言うことは一理ある。が、感情的になるあまり冷静に物事を考えられていないように見えた。苛立ちを隠さないまま教科書をカバンに詰め始める須藤に、堀北はなおも追い打ちをかけた。

 

「かまわないわ、やる気のない……ここまで勉強のできない人間に構うだけ無駄よ。退学がかかっているというのに、学校に対する執着心なんて欠片もないんでしょうね。」

 

 堀北たちの勉強会は、オレ達とほぼ同タイミングで始まった。しかし、1時間もたたないまま崩壊が始まっている。あの平田でさえ、思うところがあるのか静観を決め込んでいるし、王、井の頭、佐倉に至っては教えるどころではなく怯えてしまっている。

 

 普段ひょうきんな池、山内などもさじをなげ、それにつられるまま沖谷も流れに逆らえないのか席を立って須藤と一緒に図書館を出て行ってしまった。

 

 残ったのは櫛田と堀北だけ、だがその櫛田も、すでに限界のようだった。堀北と櫛田が何か言いあっているが、櫛田の声はところどころ小さく拾えない。だが櫛田の表情には陰りが見え、やがてカバンを持って立ち上がった。

 

 堀北はもう興味もなくなったのか、勉強道具をカバンに詰めると、またすたすたと図書館を出ていった。櫛田は堀北が出ていったのを確認すると、オレたちの方へ歩いてきた。

 

「綾小路くん、平田くん、見苦しいところ見せてごめんね。良かったらこっちの勉強会にだけでも参加させてもらえないかな?」

 

「櫛田さん、さっき大丈夫だった?」

 

「さすがにさっきのはかわいそうだよ、堀北さん何様って感じ。」

 

 櫛田がこっちの勉強会に参加したい、というと、佐藤や篠原、宮本といったメンバーは口々に櫛田を擁護する。そして勉強会の参加について平田は少し考えると、

 

「うん、ぜひお願いしたい。教える方の頭数がもう少し増えたら楽だなと考えてたんだ、やってくれるとありがたいよ。」

 

「うん!ありがとう!がんばるね!」

 

 櫛田が満面の笑みで教師役を引き受け、こうして櫛田を追加した13人で今日の時間は過ぎていった。強いて気になると言えば、堀北や須藤達がどうなったかだが、波風を立てたくはないので、オレの知るとこではないだろう。

 

―――――――――――――――――――――――

 

「来たか、上がってくれ。」

 

「お邪魔します。」

 

「おじゃましま~す。」

 

 そうして勉強会を終えたその日の夜、平田から相談があるということで、話がしたいとメッセージが来た。今日のご飯担当はオレ、どうしたらいいかと思い、雪と志朗に聞くと、普通に呼んで一緒に晩ご飯を食べればいいというので、素直にそうした次第だ。

 

 でも、なんで軽井沢がいるんだろうか?

 

「えっと、平田、なんで軽井沢がいるんだ?」

 

「なによ、来たら悪いわけ?」

 

 ムスッとした顔になる軽井沢に、それを横目に見て苦笑する平田、まあ彼氏彼女だしいても不自然さはないか、どうしたものかと悩んでいると、奥から志朗と雪が顔を覗かせた。

 

「あれ?男の子1人来るんじゃなかったっけ?」

 

「わ!かわいい!」

 

 訝しげな目をする志朗と対照的に軽井沢を見て、爛々と目を輝かせる雪、自分とは系統というか毛色が真逆だから、惹かれて映ったんだろうか。

 

「あはは、この人たちが綾小路くんの幼馴染かい?」

 

「か、かわいい!?え、えーっと。」

 

 頭から「ぷしゅ~」と擬音が聞こえる。軽井沢を見れば目をぐるぐるにして混乱していた。しかし雪はそんなのお構いなしにタッタと駆けよれば。

 

「私椿雪っていいます、1年Cクラス、よろしくね!」

 

「え、えっと1年Dクラス、軽井沢恵です?」

 

「なんで疑問形なんだ?」

 

「うっさい!いいでしょ!」

 

 ひどくないか、視線を横にずらせば、次は平田と志朗がかしこまって挨拶をしていた。

 

「1年Bクラス、綾雪志朗です。」

 

「1年Dクラス、平田洋介です、よろしくね。」

 

「……食材足りたか?」

 

「今日はハンバーグにしようかと思ったけど、急に1人増えたとなるとな、」

 

 志朗がそんなことを聞くので、オレも冷蔵庫に今何があったかと思いだす。2人して考えていると、平田が申し訳なさそうに口を開いた。

 

「ごめんね、急に1人増えて、最悪僕の分は大丈夫だから。」

 

「そういうわけも行かないよ、来たからには楽しい思い出にしてほしいしね。」

 

「そうだな、お、清隆、冷蔵庫にこの前のレバニラで使ったニラ余ってるぞ。」

 

「ニラか……確か明日雪が使おうとしてたキャベツも冷蔵庫にあるよな?」

 

「うん、あるはずだよ。どうする?」

 

「思い切って今日は餃子にするか。」

 

「お、いいな、手伝うぞ。」

 

「ねえ志朗、この前買ってきてタコ焼きに使ったデスソースまだあるよね?あれ餃子1個に入れてまたジャン負け食べよ?」

 

「前回負けた癖に挑戦できる雪の胆力を尊敬する。あーどこにやったっけ?めんどくさくなって冷凍庫入れた気がするぞ。」

 

「は!?冷凍庫?冷蔵庫じゃなくて!?魚でも肉でもないのに!?まさかのアイス枠ですか?」

 

「何言ってんだ、いざとなったら電子レンジで解凍すればいい」

 

「容器が爆発するわボケ!!!!」

 

「ボケといったほうがボケだよ!!!!」

 

 志朗と雪の会話をガン無視シカトこいて言葉のキャッチボールを数言交わせば今日のメニューの変更が決まった。ハンバーグから餃子である。牛肉はまだいいとして、豚肉は賞味期限が切れかかってたので、ちょうどよかったかもしれない。

 

 平田と軽井沢は、それをぽかーんとあんぐりとした表情でオレたちを見ていた。

 

「平田?軽井沢?どうした?」

 

「いや、あんたたちこれが日常なの?」

 

「……?これが普通だろ?」

 

「う~ん、まあ普通?かな?賑やかでいいと思う、ね、軽井沢さん?」

 

「あ~うん、そうね!楽しそうでいいと思う。」

 

「綾小路くんの言葉のセンスがどこから来てるかと思ったらここからだったんだね。」

 

「あはは」

 

「なんか言ったか?」

 

「「なんでもない(よ)」」

 

―――――――――――――――――――――――

 

「堀北がいじめられるかもしれない……?」

 

「うん、ちょっとね。今日の勉強会の雰囲気は見ただろう?」

 

「ああ、櫛田がかわいそうだったな。」

 

「それなんだ。」

 

 餃子が出来て焼きあがったのを机に持っていく、軽井沢や雪が目を輝かせている横でのっしのっしと志朗が米をよそって平田がそれを受け取って配膳するバケツリレースタイルである。

 

 雪や軽井沢もそれに気づいた後は味噌汁を配膳してくれて、いただきますとなったあと、平田が今日オレを呼んだ本題になった。

 

「その櫛田さんがかわいそうっていう雰囲気で、堀北がいじめられるかもしれない……か。」

 

「私と志朗他クラスだけど、それは話して大丈夫なやつ?」

 

「そもそもそれ以前の問題だから、いいんじゃないか?」

 

「それもそっか。」

 

 さばさばとした態度の2人と対照的に、平田は真剣な様子である。軽井沢はどこ吹く風やら餃子をもぐもぐと食べている。雪がジローッと見ているが呑気だなとでも思っているのだろうか、多分気分である。

 

「佐藤や池がLINEグループで堀北のことを愚痴ってたが、櫛田のことを出したから多分止まると思うが、どうだろうな。」

 

「僕は、絶対にいじめなんて起こしたくないんだ。」

 

「……なるほどな、」

 

 鬼気迫る表情の平田に若干気圧されている軽井沢、思わず食べる腕を止めるぐらいである。腕を止めてやっと雪の視線に気づいたのか、言葉を投げかけた。

 

「椿さん?そんなにジロジロ見てどうしたの?」

 

「いや?もしゃもしゃ食べてる様子がかわいいなって思って。」

 

「たうわっっ!?!?」

 

 にやにやと意地悪な笑みを浮かべて言葉を述べ雪に対して動揺する軽井沢。その様子を見て面白がっているのか、はたまた達観しているのかわからないが志朗が慈愛の目で見ていた。

 

「……あえて平田のことをいうなら、それは逆効果だと思うけどな。」

 

「……え?」

 

「堀北を思って行動に移せば移すほど、堀北の周りに対するイメージは悪化していく、それが分かってる以上、逆効果なんじゃないか?」

 

「……それは、何もしないで傍観者でいろってことかい?」

 

「そういうわけじゃない、もともと1人でいたがってるのに何かをするのが余計なおせっかいだってことだ。何もしなければ周りから興味はなくなる。本人が何かをしたいと思ったときに手を差し伸べるぐらいでいいと思うんだがな。」

 

 こちらを探るような目線の平田に、言葉を投げかけてみる。余計なおせっかいと聞いて思い当たる節があるのか、平田は苦悶の表情を浮かべていた。

 

「今までやったことが悪いって言ってるわけじゃない、堀北も平田や櫛田の行動は余計なおせっかいだとは思っているが、自分のことを思ってくれているってことはわかっているはずだ、だから助けてくれって言ったときに助けてあげる、それぐらいの距離感でいいと思うんだ。」

 

「……う……ん、そうだね、僕は考えすぎだったのかもしれないね。」

 

「雪?志朗?どうしたんだ?」

 

「人の相談に乗ってるのが新鮮味あってな、親目線で見てた。」

 

「気色悪いよ?自覚してる?」

 

「酷くないか?」

 

「にしても堀北さんってそんな感じなんだ、コンビニで会ったときは高嶺の花って感じだったけどね。」

 

「とげとげしいって感じだったよな、外見と相まって、例えるならハリネズミ」

 

「なるほど、言い得て妙だね」

 

 志朗の言葉に平田、軽井沢、雪がクスッと笑う。確かにかわいさと裏腹に触ったら大けがするようなやつなのであながち間違いではないかもしれないがさすがにそこまでひどくはない……よな?

 

「うん、綾小路くんに相談してよかったよ。」

 

「そうか、そこの夢中にご飯にかぶりついてる軽井沢が何を思ってるかは知らないがよかった。」

 

「綾小路くん?酷くない?雪ちゃんどう思う?」

 

「まあ、ノーコメントで恵ちゃん。」

 

「あはは、もう下の名前で呼び合うようになったんだね、」

 

「俺のことも志朗って呼んでいいんだけどな、なんならここの全員呼び捨てでいい」

 

「さーんせーい!洋介くんと恵ちゃんでよろしく!」

 

「雪ちゃんと志朗くんと洋介くんときよ……たか?」

 

 女子陣の打ち解ける速度が早くて驚いたが、まあ、たまにはこういう日があるのも悪くないだろう。この後、雪がデスソース入り餃子を引き当てて悶え苦しんでいるのを恵が指を指してお腹を抱えて笑っていたのは、ここだけの秘密である。

 




友達欲しさに堀北と会話してただけであって、すでに友達がいるなら堀北に話しかけに行かない気がする、と思っています。櫛田さんは屋上にいかなかった模様です。テストの点数と水泳の影響で周りの人間関係が多少。

清雪の絡みもっとあった方がいいですか?

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