#5 綾小路清隆はポンコツ大型犬系男子。
――― 綾雪志朗 ―――
「さて清隆くん、今の気持ちを一言でどうぞ。」
「誠に遺憾です。」
「出てくるコメントが政治家の息子の鏡過ぎて涙が出てくるね。」
俺たちはある程度入学式を終え、クラス内のある程度の敷地の説明をさらーりと流した後、3人で集合した。クラス内でグループを作ってさっそく10万を使おうとカフェに行ったりする子たちや、寮でのんびりしたいと普通に帰ってく子たちいる。ってか初日にグループ作ってカフェとかカラオケ行くの強くないか。
網倉、一之瀬、神崎、柴田といったクラスメイトの子たちも例にもれずそんな感じだ。うちのクラスは仲が良い。辛気臭い雰囲気よりはいくらかよくて過ごしやすくていいなと思ったり。
仲が良すぎて同調圧力が強くなっていじめに発展……なんてことになったら笑えないけど。そんなこんなで俺たちは清隆がコンビニ行きたいというので今はついていっている最中だ。
「まあまあ清隆落ち着きなって、ぼっちなら私か志朗のクラスにいつでも来てくれたらいいんだよ?」
「そうだな、たかが自己紹介で失敗した程度だ。まだ初日なんだから焦る必要はないさ。そう、たかが自己紹介、じこしょうかい笑笑笑笑」
「じwwwwこしょうwwwwwwwwwかい笑笑笑笑笑笑笑あひゃ、ひゃ、あははははっっははあははははあはwwwwwwww」
思わず先の記憶を思い出してくすっと笑うと、雪が俺につられてまた腹を抱えて笑い始めた。こいつツボ浅すぎだろ、どんだけ笑うんだよ。当の清隆はぬぼーっと、ぼけーっとこっちをじっくり観察するかのような目だ。これだけ笑われてるんだからちょっとぐらい怒らないのか?とも思うがこれが清隆だ、仕方ない。
なんてそんなこと思ってたら清隆がじろりと目を細めて口を開いた。
「なるほど……これが……怒りか……」
「……?AIの映画にあったねそんなやつ。AIが心に芽生えるやつ、ギャグセンスも少しずつ上がってきたようで雪ちゃんは嬉しいよ?」
絶対違うと思うんだが????まあギャグセンスがあがったのは否定しない。
「志朗助けてくれ、俺は今の状況をどうすればいい?」
「例えば君が傷ついて~~~~~」
雪が鼻歌を口ずさんでスキップし始めた。どうやら今日のご機嫌はたいそういいらしい。
「それはどっちの話だ?雪のこと?それともクラスのこと?」
「両方」
「くじけそ~~~にな~~~ったときは」
「前者は手遅れだからあきらめるが吉」
「かならずぼくが~~~~そばにいて~~~~⤴」
「おい」
「嗤ってあげるよそのザマoッひでぶbッッッつ!?!?!?」
鼻歌で調子づいてグルコサミンのリズムで清隆の周りを周回してる雪を小突く。こいつ死体蹴りしてることに気付いてるんだろうか?歌をすべて終えるまで待ってあげたんだから逆に俺のやさしさに感謝してもいいだろう。
清隆がはあーっとため息をついてまた空を仰いでいた。可哀そうに、あとで胃薬を恵んでやろう。
「こうやって非リアはリア充に潰されていくんだな。」
「オレの周りには味方がいないのか?」
「ってか行事予定表みたか?」
「おい」
これ以上清隆が笑われると可哀そうなので話を変えてあげる。どこぞの朴念仁というか阿保小路清隆がじろりとこちらを見ているがシカトこいて話を進めていく。
「あー体育祭とかあったよね、文化祭はないようで悲しいけど。」
「さっそく今月はプール授業とか入ったりしてるよな、やっぱりどこか特殊な感じがする。」
「え、プール?ほんと?」
プールと聞いた瞬間、雪の反応が喜びに満ち溢れたものに変わる。ぴょんぴょんと喜んでいてうさぎみたいだ。
「ああ、ほんとだ、ついでに体力テストもある。」
「お、じゃあ体力テスト勝負しよ!基準は男子のやつでいいよ!」
「は?寝言は寝て言えよ、俺に勝てるんか?」
「は?勝てるし?少なくとも水泳なら全勝だが????私と水泳で賭けをしたら志朗の有り金はすべて私のものだからな?」
「イキれるものが1つしかないって可哀そうだな、他は全部俺が勝ってるから仕方ないか。」
「あー言っちゃいけないこと言った!一つのことでも研ぎ澄ませば立派な一つの武器になるんだよ!!!!」
「あーはいはい、じゃあ体力テストお前が負けたらペヤングの超超超、超が何回あったっけ?あれ1人で一気食いね?」
「受けて立とうじゃん?そっちが負けたらそっちがやるんだよ?」
「上等だ、男に二言はないからな、雪もだぞ?」
「私乙女なんだけど?」
「乙女の恰好したゴリラの間違いだろ?」
ぎゃーぎゃーわーわーと騒ぎ立てる横のちっこい大怪獣を横目に、清隆はまたぬぼーっとしている。天然なのか?いっつもボケーっとしてる気がする。そんなこんなで考えてると清隆が口を開いた。
「それ俺も参加していいか?負けたら2人がやってくれ。」
「「絶対にやめてくださいお願いしますそれだけは」」
俺と雪の声が被った。こいつが参加したら何も勝てない。時間稼ぎはできるが勝てはしない。そんな感じだ。こいつ1人だけで無双ゲーやってるようなものだもの。
清隆に勝つには初見の競技で適応前に吹っ飛ばすしかないのだ。この言い方だとまるで清隆がヴィランみたいじゃないか。まあ初回勝てても次から勝てなくなるんだけど!!!!
ちなみに清隆がそんな話をしだしたので俺たちの話は入試の話になった。どうやら清隆は全教科50点ぴったりそろえるという神業をやってのけた。俺たちは泣いた。泣き崩れた。全くもって才能の無駄遣いである。ちなみに容疑者はこのようにコメントしている。
「100点が満点だったから平均は半分の50点だろ?」
清隆はポンコツ大型犬系男子。その認識が俺と雪の中で根強く埋まることとなった。ちなみに雪は全教科満点の自信があるようで清隆に合わせればよかったと唸っていた。ちなみに俺はノーコメントで。点数ぐらいでクラス分けの基準があったりしないさ、うん、多分、いやわんちゃんあるかも?(確信)
―――――――――――――――――――――――
――― 椿雪 ―――
はあ~~~~と思わずため息をつく。いやさっきの私と志朗の会話のIQ低すぎてバカにできないんだけど目の前の親友2人の会話がそこはかとなくアホだ。そこはかとなくって言葉って便利だよね。肯定にも否定にも受け取られないそこはかとなく便利な言葉。あれ、そこはかとなくって形容するのは何だろう?何気ない?やばい、そこはかとなくがゲシュタルト崩壊している。どうやら私もこの2人の会話を馬鹿にできないらしい。ちくせう。
「つまりだ清隆、小学生は足が速いとモテるという法則があるんだ。」
「なるほど。」
「そしてこの足が速いという法則は高校生になってもある程度の形を持っていると考えている。」
「なるほど?」
「そして今週はプール授業がある、つまりだ。」
「つまり?」
「プールで本気で泳ぐのです。されば清隆は導かれん。」
「????導かれるのか?導かれないのか?どっちなのかはっきりしてくれ。」
「つまりプールで本気で泳げば清隆は女子にモテるということだ。」
「……なるほど?」
「会話のIQが低すぎない????」
目の前の親友たちは足が速いとモテるならプールで泳ぐのが速くてもモテるだろうという謎の理論を展開している。理屈はわからなくもない。だがなんだろう、会話から漂うアホのにおいは。これがホワイトルームの作りたかった天才の姿か……?
これが天才たちの作りたかった天才の姿か?これが?(黒死牟感)
「というか、オレは高校では事なかれ主義でいたいんだが?」
「よく言うよ、事なかれ主義じゃなくてただのコミュ障根暗陰キャなのに。」
「雪が容赦なさ過ぎてすげえ」
「……じゃあオレはどうしたらいいんだ?」
「……うーん、そうだな。」
きょとんと首をかしげる清隆、かわいい。志朗が顎に親指と人差し指をこまねて何かを考えるしぐさをしているが何も思いついてないらしい。さて助けてあげるとしましょう。
何も知らない清隆に私たちの都合のいい世情を教えて私たち好みに育てるのは楽しくて仕方ない。だから志朗に援軍を出してあげることにした。
「ねえねえ清隆。」
「うん?」
「事なかれ主義って言ってもすべてのことはそれなりにやっておいた方がいいよ?別に勉強でも運動でも本気を出せっていうわけじゃないけど。」
「それなり……か、運動でも勉強でも平均スコアを出すつもりでいるんだが、それはダメか?」
「何も突出していないってのは個性がないから逆にクラスで浮くよ?あ、もう浮いてるのか。」
「あ、清隆が心なしか傷を負った。」
「そもそも普通の学生って言うのがよくわからない。例えばだけどコミュニケーションが苦手で勉強が得意な子の普通と運動が得意で部活一筋、勉強嫌いな子の普通って一緒かな?」
「……まあ、一緒ではないだろうな。それは人それぞれだ。」
「それを踏まえると清隆の普通の学生を目指すっていうその理想がもう普通の学生じゃない、つまり破綻してるってわけ。」
「……破綻してるか?」
「私から見たら破綻してるように見えるよ?」
「まあ、その考えが普通の学生じゃないって言うのは同意だな。」
私の考えに志朗が相槌を返す。どうやら同じこと考えてたみたい。
「そこで私が志朗よりまともな意見を発表します!」
「おい、」
「おおっ」
文句言ってる変なのがいるがそいつは無視することにする。清隆はぱちぱちと無表情で拍手。あ、でもちょっと嬉しそう?意外とノリがいい、かわいい。
「それは事なかれ主義者という考えは据え置きにただの都合良い奴ポジションを目指そう!!!!」
「……うん?」
「清隆はこのままだとおそらく一人ぼっちになるでしょう。」
「はい」
「何も突出したことをしないから特にクラスメイトに話しかけられないことでしょう、」
「はい」
「なんだこの親友の会話とは思えない内容、あと清隆素直すぎだろ、ハチ公かよ。」
「そこで目指すのが都合良い奴ポジション」
「なるほど?」
「このポジションは基本的に面倒くさいことを押し付けられたりするから事なかれ主義の考えとは相反すると思うかもしれない。」
「でも清隆ならそれが解決できる。その雰囲気だけなら一匹狼感満載のオーラと調和していい感じにクラスに溶け込めるでしょう。」
「ぼろくそすぎる。まあ言いたいことはわかった。何か頼まれたら基本的に80点ぐらいで物事をこなしてどことなく頼れるやつ感を残しつつ清隆の雰囲気で良い感じになるってことだな。」
「表現がふわふわしてて意味がわからないんだが????」
きょとんとなる清隆、なぜだ、私の語彙力が遥か彼方へ行ってしまった。
「まあさっきの水泳の話で言ったら、1位には負けるけど肉薄する2位ポジションが一番うまうまで利益売れるよって話だと。」
「おお、私の言いたいことをそこはかとなく理解してくれる、さすが志朗、国語5だった?」
「お前も5のはずだしなんなら同じカリキュラムだよな?」
「脱落した1年の差ですこれが」
「何言ってんだこいつ」
「あ、ちなみに勉強も全部50~60点でそろえるよりどれか1つか2つの教科がめっちゃできるってポジションの方がいいと思うよ。」
「あ~確かに全部が60点のやつより数学がめっちゃできて他が50点ぐらいの子の方がクラスに溶け込んだりしてたな。」
「そうそうそういうこと、事なかれ主義者以前にクラスに溶け込めなきゃ問題だよねってこと。」
「あ、ちなみに男子の猥談を注意できるポジションもなかなか捨てられない。」
「……まあ、参考にしておく。」
「お、コンビニ着いた!」
「手始めに何買う?」
「ペヤングで」
「あ、あの話まだ続いてたんだ」
清隆はポンコツ大型犬系男子説が立証されたことで、腕を組んで考えている清隆を横目に私と志朗はコンビニへ入る。田舎のコンビニ並みに日用品がそろっているのだろうかと考えたりしながら店の当たりを見回す。やっぱりここにも監視カメラだ。考えてることはほぼ100であってるなあ。
「……またしても嫌な偶然ね。」
そんな声が後ろから聞こえたので振り返ると、清隆と、今日校門の前で清隆と言い合っていた黒髪美人ちゃんがいた。私と志朗は面白いことになりそうだとまた聞き耳を立てることにしたのです。
コンビ二回を書く予定だったんだ、書く前に4000文字超えてワオってなって次に投げました、後悔はないです。
清雪の絡みもっとあった方がいいですか?
-
もっとほしい
-
別に