ようこそ幼馴染の教室へ   作:ひなぎ

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たまごのランチパックの間にファミチキを挟むの美味しいですよ、意外とみんなやってるかな?って思ってたんですけどTwitter見てたらそこまでポピュラーじゃなかったらしくて萎えました。


#6 ランチパックが中に2枚入ってる理由は間にファ●チキを挟むため。

――― 綾小路清隆 ―――

 

 先に駆けだしていった雪と志朗を追いかけようと、オレもコンビニに入ろうとすると、幸か不幸かクラスで隣の席に座っていた堀北に遭遇してしまった。

 

 自己紹介でも学校説明でもずっと話しかけにくいオーラみたいなものを出していた堀北はずっとこの調子であり、雪や志朗と違って会話する意思もないため恐ろしいほど会話が続かない。

 

 当の2人はお菓子のコーナーでどのお菓子を選ぼうかと話し合っている。こっちに目配せしたかと思うとにやにやとした顔でこちらを見ていた。

 

「……そんなに警戒するなよ、というか、お前もコンビニに用事か?」

 

「ええ、少しね。必要なものを買いに来たの」

 

「……」

 

「……」

 

 気まずい、恐ろしいほど会話が続かない。雪や志朗に言われた会話を否定したいと思ったが、この状況でどんな会話を切り出せばいいのか経験がないのでそこで行き詰ってしまう。

 

 耐えかねない雰囲気になっているが当の堀北はそんなことは露知らず。安価な日用品を次々とカゴに入れていく。まるでオレがそこでいないかのように。

 

 この状況を見かねたのかわからないが、雪と志朗がため息をついてこっちに近寄ってきた。

 

「清隆、買いたいもの買えた?」

 

「ああ、と言いたいところだが、あいにくまだだ。」

 

「おい、かごを俺に押し付けるな、自分のものは自分で持てよ?」

 

「いやだよ、いいじゃん10万あるんだから奢ってよ?」

 

「はあ、まだ確認してないけど雪もわかってるだろ。」

 

「あーはいはい、どーせ来月は何ポイントか減るしね」

 

 かごを志朗に押し付けて手を背中の後ろで組んで訝しげにオレをみてくる雪。志朗はそんな雪に文句を言っているが、一人今の話を聞いて様子を変えたものがいた。

 

「ねえ、あなた。」

 

「うん?どうしたの?」

 

「ねえ、来月10万がなんとかっていってたでしょう?ちょっと話を聞きたくて。」

 

 少し堀北が考えるそぶりを見せると、即座に雪に対して質問をしていた。どうやら堀北には聞き捨てならない、いやほぼ全員が聞き捨てならない発言だろうが、気になったらしい。

 

「あ、」

 

 あちゃーと志朗が大袈裟に片目を手で覆うしぐさをする。確かに今の雪の発言は失言だっただろうか、まあそれを促した志朗にも幾分か責任はある気がするが。

 

堀北の発言にどうしたものかと考えている雪は、やがて何かを思いついたかと思うとまた口を開いた。

 

「うーん、質問する前に自分で考えてみたらどうかな?なんでも答えを他人に求めてたらダメじゃない?」

 

 説明を放棄した。いや説明する義務もないので別にいいと思うが、まあ理由は単純にめんどくさかっただけだろうと思う。

 

「……それは、そうね。」

 

「というより、あなたは誰?今日校門の前で清隆と言い合ってたよね。」

 

「……清隆って、そこの綾小路くんのこと?」

 

 「そこの」でひとくくりにまとめられるぐらいにはどうでもいい存在に思われていたのだろうか。堀北は雪が言っていた「清隆」という言葉を聞いて大きく目を見開いた。

 

「そうだよ?清隆もやるね、初日に女の子引っ掛けるなんて。」

 

 本心では絶対そんなことを思っていないだろうに。くすくすと笑っていたずらを考える小学生のように雪が言葉を紡ぐ、雪にとっては只の冗談だろうが、当の堀北は冗談をまともに受け取るタイプではないかと思ってしまったり。

 

「これが仲の良い男女に見えたのかしら?だとしたら病院で頭を診てもらった方がいいわよ?」

 

「あれ?ただの冗談だよ、不快にさせちゃったらごめんね?」

 

 あまりコミュニケーションが得意ではないオレでもわかる。初対面の人間にかける言葉ではどうみてもないだろう。当の雪は気にも留めていないのか、ぬぼーっと堀北の様子を気にかける言葉を口にした。

 

「というより、急に口出してきてずいぶんな物言いだね、もう1回言うけど黒髪ロングちゃんは何て名前?私は椿雪、1年Cクラスだよ。こっちの男の子は志朗で、清隆と合わせて、うーん、幼馴染ってやつになるのかな?まあ、そんな感じ。」

 

「く、黒髪ロングちゃん……?」

 

「っていうか、あなた友達がいたのね、」

 

 ひどくないか、雪の言った言葉を理解できていないのか、それとものみこんでゆっくりと言葉を咀嚼してる最中なのか鳩に豆鉄砲を撃たれたかのような顔になる堀北。今日1日散々な物言いだった堀北がこの様子になるとは、だれが想像できたんだろうか。

 

「俺にだっている。」

 

「あ、そう」

 

 どことなく興味がないようだ。

 

「あ、さっき紹介されました志朗です。1年Bクラス。よろしく。」

 

「え、あ、ほ、堀北鈴音よ。」

 

「そっか、じゃあ堀北さんよろしく、清隆と仲良くしてくれ」

 

 2人のペースに困惑する堀北。そして呪詛のように「黒髪ロングちゃん……?」と何回も疑問形でつぶやいて先に言われたことを考えている。

 

 「あ、さっき堀北さんが言ってた質問、ヒントといったらそこの無料商品じゃないかな?」

 

雪がコンビニの隅に置かれた一部の食料品や生活品を指さす。堀北はそれを見て何を思ったのか再び考え込んでいる。

 

「これは……」

 

「おひとりさま3点だって。」

 

不思議に思ったのか堀北が商品を手に取る。歯ブラシや絆創膏と言った日用品が無料と書かれたワゴンに詰められている。

 

『1ヶ月3点まで』と但し書きがワゴンの中央の網目にでかでかとアピールするかのように貼られている。

 

「ポイントを使い過ぎた人への救済措置、かしら。生徒に甘いってこと?いや……でも?」

 

 自分の中である程度の1つの持論ができたのだろうか、堀北は端末のプライベートポイントとにらめっこをしている。その様子を横目に見ている雪と志朗はまるで子供の成長を見守る親のごとしまなざしで見守っていた。

 

 今日の堀北の態度を見たオレはあのまなざしで見れる2人がすごいなと思ったが、よくよく考えればこの2人は今この場面が初対面なので仕方ないのだろう。堀北が雪に何かを聞こうと、また口を開こうとしたが、それは次の出来事で打ち消されることになる。

 

「っせえな、ちょっと待てよ!今探してんだよ!」

 

「だったら早くしてくれよ。後ろがつかえてんだからさ」

 

「あ?何か文句あんのかオラ!」

 

突如和やかな店内BGMをかき消し、やたらと大きな声がコンビニの中に響き渡る。

「なんだ?」

 

オレたち4人の視線は当然ながらそちらに向けられる。どうやら上級生と一年生の間でトラブルが発生しているらしい。

 

アイツは確か須藤……だったか?

 

「あいつはクラスメイト……だったか?」

 

「ええ、確かそのはずよ。最悪ね。あんな粗暴な人と3年間一緒のクラスなんて。」

 

長身の背丈をした須藤と上級生たちはそのまま暫く言い合って、正確にはクラスメイトを煽るだけ煽って馬鹿にしたように店から去って行った。

 

何を思ったか、雪は列の前で並んでいた須藤の前へすたすたと歩いてゆく。それを見てオレは出遅れたか、と思えば志朗もそちらの方へ雪を追うように歩いて行ったので、オレもそれについていくことにした。

 

「どうしたの?」

 

「あ、なんだお前?」

 

「うわ、睨まないでよ、いやさ?そのカップ麺が気になったってだけ。」

 

 雪的にはいつもの段取りで話しかけただけなのだろうが、須藤は敵が増えたと勘違いしたのかとキッと雪を睨み付けたかと思えば、睨んだ相手が女の子だからか、それとも睨まれて雪が委縮したのか、さっきより態度を軟化させた。

 

「ああ……なんだ、すまん、かっとなってて。」

 

「うん?大丈夫だよ気にしないで、そのカップ麺美味しいよね、私もよく食べてる。」

 

「お、ああ?そうか、これうまいよな。」

 

 話は次第に須藤の持っているカップラーメンの話へ。雪は話を広げるのがうまい、須藤の話のデッキを次々へと引き出していく。それと同時に須藤を列から自然とそらし、生徒たちの長蛇の列を流すことに成功させた。須藤の態度がさらに柔くなり、軽く笑顔を見せるようになって、雪はまた「さっきは何があったの?」と話を戻していく。

 

「学生証を忘れたんだよ。これからはあれが金の代わりになること忘れちまってたんだ」

 

「なるほどね、初日だから仕方ないよ。建て替えようか?」

 

「いや……それは……」

 

「いいんだよ、初日なんだから、助け合いって大事じゃない?」

 

 手ぶらのところを見ると1度寮に戻って忘れたといったところか、だがさすがの須藤も女の子に奢ってもらうのは気が引けるのか、困惑した様子を見せている。

 

 だがそんなどぎまぎ須藤を見かねてか、雪は須藤からカップラーメンを即座に奪ったかと思えば、空いているレジでぱっと会計を済ませた。

 

「もらえるものはもらっておかなきゃ損だよ?」

 

「ああ……その、なんだ、すまん。」

 

「こういう時はありがとうだよ?」

 

「……ありがとな、」

 

「うん!よくできました!あ、名前聞いてなかったね。私椿雪。1年Cクラスなんだ。」

 

「あ?ああ、俺は須藤、須藤健1年Dクラスだ、よろしくな。」

 

 先ほどから様子を見かねていた堀北が何かを思ったか、また口を開く。

 

「初対面から下僕になりに行って、何のつもりなのかしら?それともあれは友達を作る行動?」

 

「普通に困ってたから助けただけだと思うけどな。」

 

「彼の風貌、外見に恐怖している、という感じでもないようね」

 

「恐怖かー、あんなのかわいいもんだと思うけど。」

 

 志朗がそんなことを口に出す。さっきまでどこに行ってたんだろうか。先ほどまでは手に持っていなかったビニール袋の中にはランチパックと書かれたサンドイッチとファミチキが中に入っていた。

 

「普通の人なら、彼のようなタイプの人間とは距離を置きたがるものよ」

 

「普通の人ね、ただの偏見でしょ。堀北さんだってビビッてないじゃん。」

 

「あの手の人種を避ける人は、自分を守る術を持たない人が殆どだから。仮に彼が暴力的な行動に訴えても、私なら退けられる。だから下がらないだけよ」

 

そんな話を聞いて、志朗の目線がふと堀北をのぞいて、そしてオレと比べるように視線を交互させていた。

 

 「こいつにできるのか?」という意思表示だろうか。できないと思ってるんだろうな、オレもそう思う。オレはめんどくさくなってそんな志朗の目線から顔をそらした。そんなこんなでわちゃわちゃしていると、やがて雪と須藤がこちらに合流してきたので、オレも必要なものをある程度買いそろえた後コンビニを出た。

 

「お、赤髪くんもなんとかなったんだ?」

 

「あ、赤髪くん?」

 

「やだな、須藤君だよ志朗。」

 

 軽く笑いあう雪と志朗を横目に、須藤は先の堀北のようにあっけにとられた態度をしていた。

 

 当の志朗はランチパックを開けて、ファミチキの紙袋を破いたかと思えば、そのファミチキをランチパックの中に突っ込んでサンドしたあと、ぱくっと口に入れてもぐもぐしていた。マイペースだなと思いつつそれ美味しそうだなと思っている自分がいた。

 

「なるほど?カップ麺外で食べるんだ?私やってみたことないけど今度やってみようかな?」

 

「当たり前だろ、ここで食うのが世間一般の常識だ。」

 

「なるほど?須藤くんはずいぶん面白い世間を生きてるんだね。」

 

「何が世間よ、品位もあったものじゃないわね。」

 

 須藤は当然だと考えているようだが、オレも志朗も割と困惑していたりする。堀北は呆れたかのようにため息をついている。

 

「何が品位だよ。高校生だったら普通だろうが。それとも良いとこのお嬢様ってか?」

 

 須藤は堀北に噛み付いたが、堀北は目を合わせることすらしなかった。それが癪に障ったのか、須藤はカップ麺を地面に置いて立ち上がった。

 

「あぁ?人の話聞けよ、おい!」

 

「彼どうしたの。急に怒り出して、あと椿さんいいかしら、さっきの答え合わせをしたいのだけど」

 

「ん?いいよ、でも須藤くんの話にも耳傾けてほしいけど。」

 

「結論から言うと、監視カメラで私たちの行動は監視されていて、それによって私たちのポイントは増減するんじゃないかしら?」

 

堀北は須藤とは話さず雪に聞いてきた。須藤は声を荒げていたが、堀北の「ポイント」という言葉を聞いた瞬間に鳴りを潜めた。今日の夜にする予定だった話のすり合わせを今するのかとも思ったが、まあいいだろう。

 

 さっきから志朗はファミチキinランチパックをうまそうにむしゃむしゃして「マヨネーズとキャベツが欲しい」とつぶやいている。この会話を聞きながらどこか他人事のような様子なのはもはやすごいのではなかろうか。

 

「ふんふん、その理由は?」

 

「コンビニの中でも4つ、監視カメラが設置されていたわ。でも、店の外に出ても一定の等間隔で監視カメラはまだある。不自然なぐらいに。」

 

「この監視カメラで態度を見て、私たち1人1人のポイントは引かれていくんじゃないかしら?そのための救済措置……といったとこかしら?まだ断言はできないけど」

 

 ある程度言葉をかみ砕きながら説明する堀北。自分の中でもある程度言葉が呑み込めていないであろうに、ここまで言語化できるとは、やっぱり協調性が皆無なだけで堀北は優秀なのだろう。

 

「は?監視カメラ……?あ、ほんとにあるじゃねえか。」

 

「まあ私は先生じゃないから答えだせないから、先生に聞きに行くことをお勧めするよ。」

 

「ええ、そうね。そうすることにするわ。あなたのおかげよ、ありがとう。」

 

「ほんとは教えないつもりだったんだけどな、私のミスか。」

 

「待てよ、じゃあ来月は10万もらえないってことか?」

 

「どうかしら?でも私が学校ならあなたに10万渡したいとは思えないわね」

 

 なぜそこで挑発するんだろうか。須藤が沸点が低いんじゃないかという推測は今日の少ない情報でも十分建てられると思うんだが。普通に気に食わなかったのか、須藤は掴みかかる勢いで吠えている。

 

「こっち向けよ!ぶっ飛ばすぞ!」

 

「堀北さんの態度が悪かったのは認めるけど、須藤くんもちょっと怒りすぎじゃないか?一旦落ち着け。」

 

「そういう志朗は落ち着きすぎじゃないかな?」

 

「ファミチキinランチパックは美味しかったぞ?もう1セットあるから清隆食べていいよ。」

 

「そういうことじゃない、清隆もつられて……ああ食べてるウウウぅッウウぅッッ!!??」

 

 志朗から渡されて、既に食べられる準備が整っていたので食べてみる。

 

――――……おいしいな。――――

 

そんなこんなで、このあとは本気で堀北に掴みかかろうとした須藤を雪が宥めて、「ここは俺の場所だ」と言い張ってる先輩たちを志朗が適当に流していた。須藤も雪と話してて楽しそうだったし今日はいい日だったといえるんじゃないだろうか。

 

それにしても須藤がDクラスと知った途端2年生は急に態度を変えたということはまあ、そういうことなんだろう。

 

 ホワイトルームから抜け出して約1年、といったところか。志朗と雪と再会してからも1年。彼らの会話にたびたび目を見張るものもあり、予想外の行動をとることもある。

 

人工的な天才を作るホワイトルーム、その最高傑作がオレということになっている。そんな中で脱落していった、オレが死者と呼んでいた彼らは年相応の朗らかな笑顔を見せている。

 

終わった観察に新しく知見をもたらしてくれる興味深い存在。

 

敗者復活、死者と呼ばれた彼らは今、自由に羽ばたいているように見える。

 

 じゃあ……“オレ”はどうなるのか。オレは今、自由なのか?

 

 この2人が成長した先に、オレの想像を超える、あるいは想像できない、ひとつの答えがあるような期待感が生まれていた。

 

もう少し近くでその成長を、答えを見守るのも悪くはないだろうか、ただ学生として、成長して、前に進んでいく。

 

――――今は、オレが普通の高校生として溶け込めていることを祈ろう。

 

言葉で表せないよどんだ感情といえるであろうものが、冷えた闇の底に深く溶けていくのを感じた。

 




ちょこちょこ日間ランキング載っててびっくりしました。
初期小路くんって茶柱に脅されてなかったらどんな生活してたんでしょうね。

清雪の絡みもっとあった方がいいですか?

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