ようこそ幼馴染の教室へ   作:ひなぎ

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なんか違うなと思って結構変えました。


#7 BクラスとCクラス

――― 綾雪志朗 ―――

 

 学校生活2日目、今日から本格的に授業が始まる……と思っていたが案外そんなことはないようで、授業の大半は勉強方針の説明などをして終わった。

 

 先生たちは進学校とは思えないほどフレンドリーと思ったが、案外逆なのかもしれない。進学校だからフレンドリーなのだろうか。うちのクラスメイトも拍子抜けしていた。

 

 まだ学校生活が始まったばかりだからか、みんな真剣に授業を聞いているが、たまに眠気に襲われている子もいて、ふと眠りこけたりしていた。

 

 すると教師たちは何かをメモしだしたかと思えば、また何事もなかったかのように授業を進めていく。

 

 これが普通の学校なのか、それともここが特殊なだけなのか、多分後者だと思う。小学も中学もある程度の規律は保たれていたし、ここまで一切生徒に注意しないのは明らかにおかしい。

 

 自主性を促す……にしては不可解な点が多い。教師たちの目線が呆れではなく、憐れみを込めたような目であるのも……

 

 やっぱり情報が必要だ、結局はそこに行き着いてしまう。まだ二日目なのでそこまで焦る必要もないのかもしれないが、先生に聞きに行ったりするべきなんだろうな。

 

―――――――――――――――――――――――

 

 そんなこんなでお昼になったので職員室にでも行こうと立ち上がると、ふと後ろから声をかけられる。

 

「綾雪くん……だよね?」

 

「え?ああ。」

 

 声がした方を振り返ってみれば、クラスメイトの一之瀬、神崎、網倉、柴田、渡辺、安藤といった昨日ハイスピードで形成されたであろう陽キャ集団がいた。

 

「えっと、一之瀬さん……だっけ?」

 

「うん!覚えててくれて嬉しいな。あのね、よかったらお昼一緒に行かない?」

 

 うわ、笑顔が眩しい。この笑顔にやられる男子は多いんだろうな。まあ、職員室へ行くのは後でもいい、クラスメイトとの交流を深めるのも大事か、そんなことを思って言葉を返す。

 

「誘ってくれて嬉しいけど、他のみんなは大丈夫なのか?俺がいて邪魔だったりしないか?」

 

「え?全然邪魔じゃないよ?昨日みんなで自己紹介してた時気になってたし、あの後すぐにいなくなっちゃって残念だったんだ。ねえ神崎くん?」

 

「そこで俺に話を振るのか……?まあ、2日目だし邪魔だとか考えてる方が珍しいんじゃないか?話すのが苦手な俺としては今のうちに友達を作っておきたいし、仲良くしてくれないか?」

 

 邪魔じゃない、仲良くしたい、そんなことを口々に言ってくれる網倉さんと神崎くん。こういう雰囲気なら堅苦しくなくていいな。せっかく誘ってくれてるなら行ってみよう。

 

「そう言ってくれるなら嬉しいな。お言葉に甘えて行かせてくれ。」

 

「おう、これからよろしくな!」

 

 そんな柴田の快活な声に励まされ、俺たちは食堂に行くことにした。

 

―――――――――――――――――――――――

 

「そういえば、今日は部活動説明会があったけど、誰か行く人はいるのか?」

 

 食堂について、メニューを眺めながらみんなと話をしていると、そんなことが気になったので話を切り出してみる。手を挙げてっていうと小さく全員手を挙げた。どうやら全員部活動説明会に行くらしい。

 

「驚いた、皆行くんだな、何か入りたい部活でもあるのか?」

 

「おう、俺はサッカー部に入ろうと思ってる。ずっと昔からやってるしな。」

 

「私は生徒会入ろうかなって思ってるんだよね。」

 

 柴田くんと一之瀬さんがそんなことを言うので、他のみんなも同じか?と思うとどうやら興味ある部活があったら入ろうかな?と検討するぐらいのものらしい。まあ、それが普通か。

 

「綾雪くんは何か部活入る予定あるの?」

 

「あー、どんな部活があるのかにもよるな、それこそ網倉や渡辺みたいに興味があったら考えとく、ぐらいのものだけど。」

 

「ま、大体の人はそうだよな、逆に学校入ってすぐ部活動に入りたいって思う柴田とか一之瀬は立派だと思うぜ。」

 

 俺の言葉を引き出しに、渡辺がそんなことを口に出す。柴田くんと一之瀬さんは褒められたかと思えば、少し照れくさいのか、頬を人差し指でかくしぐさを何回かしていた。コミュ力は高いのにこういうところが初心なのが少しギャップだな、と思っていると網倉さんの言葉にちょっとだけ意識が向く。

 

「パンフレットには水泳部とか陸上部、柔道部とかがあったよ。」

 

「……水泳、柔道……か。」

 

「お、何々?昔やってたとかそんな感じ?」

 

 口に出てたのか、と思えば話題を見つけて嬉しいのか安藤が話にかみついてきた。

 

「うーん、まあ一通りある程度はやってたって感じだな、基本的に平均以上はこなせると思ってる。」

 

「すごい自信だな。いや昨日の自己紹介で勉強もスポーツもある程度はできるので仲良くしてくださいって言ってたし綾雪にとってはそうでもないのか?」

 

「あはは、まあ、そうかな。」

 

 神崎の話に相槌を打つ。水泳か、雪は水泳部に入ったりするのだろうか。入ったら入ったで面白そうなことになりそうではあるが。柔道か、清隆に最初のカリキュラムで勝って以降ボコボコにされた記憶が蘇ってくる。懐かしいな。結局脱落するまで一回も勝てなかったっけか。ほんとに最初に勝ったときの味をもう少しかみしめておけばよかった。

 

「綾雪くん?」

 

「え?あ、ごめん。何の話してたっけか?」

 

「部活動説明会の話でしょ?綾雪くんから話始めたのに、面白いね。」

 

「なんか過去を懐かしむかのような顔してたぞ?」

 

「あはは、まあ気にしないでくれ。」

 

「そうか?」

 

 網倉と柴田の訝しげな目線から逃げるように目をそらす。そろそろ話題を変えようか、と思えばメニュー表にひときわ目を引くものがあった。

 

「山菜定食、0円?」

 

「わ、ほんとだ。なんで0円なんだろうね?」

 

「運動部用とか?メインのものにこれを足していっぱい食べろってことじゃないか?」

 

「あはは、なにそれ、柴田くんって食いしん坊?」

 

「おいおい、意外と運動部の食事量ってバカにならないんだけどな。」

 

 運動部らしい柴田の言葉に妙なおかしさを感じつつ柴田と安藤の会話のキャッチボールを見守る。網倉と神崎もそれを見てつられて笑っており、一之瀬も同じかと思えば山菜定食の方に目線を向けながら何か考え事をしていた。おいおいまさか……

 

「一之瀬さん、食べる気なんだな?」

 

「え?」

 

「10万もあるのに最初の学食で山菜定食を食べに行くハングリー精神、良いと思う。オレは見習いたい。」

 

「え?違うよ?」

 

「え?違うのか?」

 

「ぷっ、なにそれ。あはは」

 

 何かがツボにはまったのか一之瀬はくすくすと顎に指先をこまねて笑った。美人ってホント絵になるなと思いつつ、少しボケを挟むのはやめとこうと思って山菜定食のチケットを押してカウンターのおばちゃんに渡した。

 

「あ、自分は食べるんだね、山菜定食。」

 

「一之瀬さんを見習ってかな?」

 

「う~ん?おかしくない?あと呼び捨てでいいよ、堅苦しいし。」

 

 きょとんと首をかしげる一之瀬さん。普通ならぶりっこみたいで嫌味になる絵なのかもしれないが、一之瀬さんだと不思議とあくどさがない。なぜだろう?

 

「ありがと、じゃあ俺のことも志朗って呼んでくれ。」

 

「あ、私のことも麻子って呼んでね!」

 

「あー、柴田でも颯でもどっちでもいいぞ?」

 

 一之瀬さん、いや許可が出たから呼び捨てで行こう。一之瀬の呼び捨て許可宣言を皮切りにオレもオレも!といった感じでここの6人全員呼び捨てで行こうという話にいつの間にか切り替わっていた。ファーストペンギン一之瀬恐るべしである。

 

「……?志朗くん電話来てない?」

 

「え?あ、ほんとだって雪か。」

 

「え、女子?なになに、ちょっとその話詳しく教えてほしいな。」

 

 恋バナ見つけたり!といった感じで網倉が話にかみついてくる。やっぱり女子は恋バナが好きなんだな。

 

「ただの幼馴染だ。Cクラスにいるからよかったら仲良くしてほしい、バターブロンドの、肩より少し長い髪をした少し背丈の低い女の子だ。」

 

「なるほど、雪ちゃんか、機会があったら話しかけてみようかな。」

 

 なんというか、こういうのが人と早く打ち解けるコツなんだろうなとみててひしひしと感じる。一之瀬、網倉、安藤といった女子陣はもう仲良くなる気満々だった。

 

「というより、通話出なくていいのか?」

 

「あ、たしかに。」

 

「あはは、結構しっかり者っぽそうな雰囲気してて案外抜けてるとこあるんだな?」

 

「そういうとこがある方が親しみあっていいだろ?あ、雪?」

 

「え、なに?あ、うん、わかった。」

 

 簡潔に雪の言葉を脳内でまとめ、軽く言葉を交わすと雪は通話を切った。どうやら失敗したようである。あまりにも簡潔だったのか、一之瀬たちは拍子抜けしているようだ。

 

「なんかずいぶん短かったね?どうしたの?」

 

「あ~まあ、端的に言えば部活動説明会一緒に行かない?って話だった。」

 

「お、いいね。私志朗くんの幼馴染みてみたい!」

 

「俺も見てみたいな。」

 

「わかった、仲良くしてほしいな。」

 

 うん!と笑顔を見せるBクラスのメンバー、ほんといいクラスだな~とのんきなことを考えながら昨日のことを思い出すのであった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

――― 椿雪―――

 

「ところでSシステムってお前らどのぐらい見抜いたんだ?」

 

「ノーコメント、清隆は?」

 

「めんどくさい、ノーコメントだ。」

 

「だめだこいつら話にならない。」

 

 私たちはコンビニである程度の買い物を終え、堀北さんや須藤くんと別れた後、あきれた様子の志朗を横目に、私たちは我が物顔で志朗の部屋に居座っている。

 

 なんでいるかと思えば、志朗が鍋を食べたいと言い出して、1人では食べきれないからだ。清隆も私も自炊するタイプではないので、ある程度の材料費は折半、というか清隆と私が少し多めに払って3人で鍋を囲むことにしたのだ。

 

「うそうそ、まあある程度は、ってところかな?」

 

「はあ、それでいいだろ、どうせここの3人で話しても困るようなことじゃないんだし。」

 

「まあ、それはそうだけど。じゃあ清隆くんから発表おねがいします。」

 

「?なんでオレなんだ?」

 

「自己紹介失敗した罰と思えばいいよ!」

 

「それいつまで弄るんだ……」

 

 両手で顔を覆う清隆。そんなに心に来たんだろうか?私にはよくわからない。

 

「はあ、まあ来月10万はもらえないだろうな。」

 

「だよねー、ちなみに上級生に質問しても君には関係ないよね?って感じでふんわりと跳ね返されちゃった。」

 

「行動力の塊過ぎて怖いわ。まあある程度監視カメラの位置は把握したけど。」

 

「人のこと言っといてちゃんと行動してるじゃん、違和感は?」

 

「監視カメラ以外は特になし。メガネの黒髪の上級生に変な目線で見られた以外は。」

 

「じゃあやっぱり堀北さんが建てた推測はある程度正しいかな?まあ個人じゃなくてクラス単位だと思うけど。」

 

「そこまでわかってるのか、さすがだな。じゃあ、もう話のすり合わせはしなくていいな。」

 

「「ん」」

 

 志朗の言葉を皮切りに、私と清隆の言葉が合う。私たちは鍋から食材をよそっていく。ここでいやがらせのように私の嫌いなにんじんを清隆に押し付けていくのがミソだ。話のすり合わせはもう済んだけど、私は一応職員室に行こうかな~なんて思いながら1日を終えるのです。

 

―――――――――――――――――――――――

 

「はあ~あ、そううまくいかないか。」

 

 私の足取りは重い、昨日志朗達と会話したことを今日職員室で先生に質問しに行ったら「それは答えられません」の嵐。監視カメラは何のために設置されてるんですかとか、1組2組じゃなくてアルファベットで分けられてるのはなんでですか?とか普通の学生らしい警戒心を抱かせない質問もしてみたのに、まるで効果なしだった。

 

あれは聞かれたらペナルティでもある感じかな。上級生の反応見た感じもそうだったし。

 

 こんなことなら放送室を使う権利でも買って先生を脅してプライベートポイント巻き上げでもすればよかったかもしれない、だが時すでに遅しといった感じだ。今考えたらいくらでもやりようはあった気がするけど、あいにく目立つ気もないからいいと思っていたりする。まあわかってもクラスに共有する気はないのだけど。

 

 私の目的は、また別のことだ。

 

さてBクラスかDクラスにでも行くか、と思うと廊下の監視カメラを見て、ふと紙にメモしている長髪の男の子を見つけた。

 

「えーっと……龍園くん?だっけ?」

 

「あ?おまえは……?」

 

「椿雪、Cクラス、同じクラスだよ。それは何をしてるの?」

 

 自己紹介するとじろりと目を合わせてきた龍園くん、紙にチェックが数十個、それも敷地外もか……なるほどなるほど?

 

「施設の数がどのぐらいあるか数えてるんだよ。」

 

 ノータイムでそんなことを返す龍園くん、でも残念。この学校の施設の数とその紙に書かれたチェックの数は不自然だよ、嘘をつきなれてるのかな。

 

「嘘、監視カメラの数でしょ?」

 

「ちっ、その様子もうわかってる口か。つまらねえな。」

 

 意趣返し、といった感じでこっちもノータイムで返答すると、つまんなさそうな口ぶりを見せる龍園くん、でも目は笑ってるからなんだか楽しそう?

 

「まだ2日目なのに気づいてる方がすごいと思うけど、」

 

「は、なんだそれ自己紹介か?」

 

「どう受け取ってくれて結構、にしても随分書き込んでるね。なんか収穫あった?」

 

 もう知ってる情報もあるけど、紙を見れば私も知らない情報が割とあった。努力は嫌いって感じの顔をしてるけど意外と努力家なのかもしれない。

 

「そうだな、特別棟には監視カメラがなかったってことか、不自然なぐらいにな。くくっ。」

 

「……なるほどねえ、努力家だね。ちなみにそれクラスに公表する気はないの?」

 

「は、努力家?努力なんざ無駄でしかねえだろ、あとオレが動くのは5月からだ、ああいうやつらは1回地獄を見た方がいい。今は使える雑魚を見極める時期なんだよ。」

 

「そっか、地獄を見た方がいいかについては私も同意かな、それ私はどうなるの?」

 

「食えない女だ。」

 

「合格なようでなによりだよ。」

 

 ぴくっと眉を動かす龍園くんに対してくすくすと笑う私。結構おもしろい子だ。努力が嫌いなのに学校中探検してるのはちょっとかわいいな。矛盾してて。清隆が気に入りそう。

 

「クラスをまとめるっていうけど、みんなそう簡単に従うかな?」

 

「それこそ従わないやつは特別棟で従うまでやるまでだ。あの黒人の雑魚は手がかかりそうだが。」

 

「ああ、アルベルトくんのこと?面白い子だよね。結構穏やかだからSシステムに気付いてることを仄めかせば簡単に仲間になってくれると思うけど。」

 

「はっ、もう駒にしてやがるのか。」

 

「そういうわけじゃないけどね、友達だよ友達。あ、龍園くんのやることは邪魔しないよ。たいして興味もないし。」

 

「くくく、おもしれえ」

 

「まあ、5月次第かな?みんなの反応が楽しみだよ。」

 

 小悪魔のように笑みを浮かべる私の言葉に、龍園くんはさぞ愉快そうに笑った。

 




1年生編3巻を見ると龍園くんの入学時の能力値と挿絵で「君誰?」てなりました。今と全然違う。ビジュアルめっちゃ変わったなあとふと。

清雪の絡みもっとあった方がいいですか?

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