「ドキがムネムネ」とか「世界平和ってすばらしい」って言ってるの面白すぎますねって思ったんですけど2年生編9.5巻のヨーグルトメーカーのくだり思い出すと元々こんなもんだったかもしれないと思ってしまったり。
――― 綾小路清隆 ―――
登校すると、いつもは遅刻常習犯な池と山内が誰よりも早く来ていた。続いて博士も来た。今日に限ってやたら早いと思ったら、今日の水泳の授業が楽しみすぎる、というのが理由らしい。
「博士、女子の水着ちゃんと記録してくれよ?」
「任せてくだされ、体調不良で授業を見学する予定ンゴ。」
オレの脳裏に「きっしょ」という雪の声が響いた気がする。博士は女子の水着の写真を撮影しておっぱいランキングなるものを作るらしい。盛り上がってる博士と池、山内を横目に、これまた同じように最近雪と仲良くなった須藤は一歩引いた目線で見ている。
「哀れね。」
「……おまえも来てたのか、堀北。」
俺の横に目線を向けると、そこには汚物を見るような黒ずんだ眼をした堀北がいた。あのコンビニの一件のあと、茶柱先生に質問しに行ったがこれまた雪が言っていたようにのらりくらり交わされたらしい。
態度がポイントに影響する、ということを意識して自分だけでも真面目に授業に受けている堀北にとってはあいつらは多分視界にもうつしたくないのだろう。クラス単位、という発想に転換はできなかったらしい。
「未練がましく見てると思ってたけど、そうでもなさそうね。他クラスに友達がいるから余裕でもあるのかしら?」
「それはまあ……そうだろうな、もう少し友達が欲しいとは思うが。」
雪や志朗がいるとはいえ、もう少し普通の高校生らしい友達が欲しいとは思う。普通の高校生らしく……いや、池や山内はその限りだろうか……?
脳内にいる雪と志朗がおもむろに拒絶反応を示した。この後、池がオッズ表のエクセルファイルを見せてきて「お前も参加しようぜ」と言ってきたが、これまたのらりくらりとかわしてプールへ向かった。
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「な、なんでだよ……これ、どういうことだよ!」
「巨乳が、巨乳が見れると思ったのにっ!思ったのにい!!!!」
更衣室で着替えを終え、まず男子、女子と中へ入っていく。しばらくしてふと、一歩俯瞰して周りを見てみる。周りの女子たちはまるで汚物を見るかのような目で池たちを見ている。あれに気付かないとはどれだけ頑丈なメンタルをしているんだろうか。
それともただの痴呆か、周りの女子の反応を見ていると、オレは参加しなくてよかったと思えた。あの集団と同じに思われるのは少し遠慮願いたいところだ。
にしてもここの屋内プールは広いな、おまけにスゴイ綺麗だ。
「驚いた、あなたは参加しなかったのね。」
「……友達欲しさで女子からの信頼をなくす真似はしない。」
「最低限の分別はあるようだけど、そもそも女子に相手にされてないんじゃないかしら?」
「自己紹介か?」
「上手く切り返したかったんでしょうけど残念ね。私は好んで1人でいるの。自称事なかれ主義者の人でなし小路くんと一緒にしないで。」
ホントに鏡を見て欲しい。普通に攻撃したら10倍以上鋭い切り返しが入ってきた。堀北はいちいち人の言うことに否定をしないと死んでしまう人間なのだろうか。
淫らな妄想に夢を膨らませている池たちに近寄る人間は今のところ1人もいない。平田でさえ即座に彼らと距離を取っていた。できる男っていうのはこういうところから違うんだろうか?
「よーし、お前ら集合しろ!うーん、見学者は16人……か、随分と多いがまあ、いいだろう。」
やっぱりこういうところでも教師の目線は不自然に映る。なにかを紙に記録したかと思えばまたしまう。クラスに関して仄めかすような発言がなかったのでどうか、といったところだが。
「準備が出来たらさっそく泳いでもらう。いいな?」
「あの~おれ、泳げないんですけど。」
「安心しろ、オレが担当するからには必ず夏まで泳げるようにしてやる。後で必ず役に立つからな、必ず、な。」
念押しをするように言葉を紡ぐ教師、必ず……か。学校の先生がそう発言するのは少し不自然で違和感がある。
「やっぱりか……」
「綾小路、どうした?」
「いや、大丈夫だ。それよりも須藤は池たちの賭けに参加しなかったんだな。意外だ。」
「意外だ……って、オレを一体何だと思ってるんだよ、さすがに俺にだって分別ぐらい……ある。」
言いよどんだのはコンビニの一件が尾を引きずったりしているのだろうか。明らかに言葉を出すのを躊躇した。 隣の須藤に聞かれたことを、少しごまかして答えたところで、準備運動を終えたらみんなそれぞれ泳いでいった。最初は各々の運動能力の確認……といったところか。
「とりあえず大体のものは泳げるようだな、それでは早速競争をするぞ。男女別50m自由形で1位になった生徒には5000ポイントを贈呈する。1番遅い奴は逆に補修だから、頑張ることだ。」
そんな感じで快活な声で笑う先生に、泳ぎの得意な生徒は歓声を、苦手ない生徒は苦悶の表情を浮かべていた。まあ無理もないか。
そこそこのタイムを取って補習を避けとこう、そんなことを考えていると、ふとこの前雪と志朗と話していた話題がフラッシュバックする。
自称ことなかれ主義者のコミュ障……か。
『足が速いとモテるんだから、水泳で泳ぎが速くてもモテるはず。』
『1位には負けるけど肉薄する2位ポジションが一番うまうまで利益売れるよって話』
雪や志朗以外の友達も欲しい、水泳で話題作りをして交流を広げるのも悪くないだろうか……?波風立てないって意味では目立たないほうがいいんだろうが……
そんなことを考えていると、女子の第1レースと第2レースが終わっていた。どうやら1レース目は堀北、2レース目は小野寺という水泳部員が制したらしい。
「何位だったんだ?」
「あなた見てなかったの?2位だったわ、28秒ギリギリ切るぐらいかしら、さすがに現役の水泳部員には勝てないわ。」
「おどろいた、てっきり悔しがると思ってたんだが?」
「別に、勝ち負けは気にしてないから、それよりあなたはどうなの?」
「雪や志朗にクラス内で友達作れって言われたのを思い出したからな、そこそこで済ませる。」
「……そう。」
次に男子の番になるのでオレは指定された2コースへ、須藤は1コースか。合わせることもできるが、予選突破することを考えたらこの体格がいい三宅……?だっただろうか?より少し早いぐらいで抑えた方がよさそうか。
そんなことを考えてスタート台から飛び出す。そういえば、雪は水泳部に入ったんだろうか?そんなことを疑問に思いながら俺は泳ぎ切った。
1位は須藤、そして少し遅れて2位、3位でオレ、三宅と続いた。
「綾小路やるな、27秒だ。」
27秒というと、さっきの堀北より早いな。合わせる相手をミスっただろうか?ちなみに須藤は25秒を切っていた。速い。
「次は平田だな、綾小路速いじゃねえか、すげえな。」
「たまたま今日は調子よかっただけだ。それに須藤の方がすごいじゃないか。水泳部に誘われてたしな。」
「はっ、まあ水泳部は入らねえな、オレはバスケ一筋だからよ。あと平田意外と速いな。」
ぷはっ!と水面から顔を出す平田に女子から黄色い歓声が上がる。正統派のイケメンらしく肉体は綺麗に研ぎ澄まされている。ちなみにタイムは26秒と少しだった。
「よし須藤!お前なら勝てる!正義の鉄槌を下してこい!それと綾小路もな!」
「任せとけ……徹底的につぶして人気を地の底に落としてやる。」
たとえ平田の人気が地の底になってもすでにそれ以下まで落ちている池と山内には関係ないと思うが、まあ気にしないことにした。後オレはついでらしい。
「なあ綾小路、なんで高円寺のやつブーメランなんだ?」
「……さあ?」
きょとんと首をかしげる須藤だが、オレもわからない。高円寺のブーメランパンツは学校の指定で認可されているが、わざわざ学校指定の水着じゃないのはよくわからない。
それに股間の存在感が強すぎる。女子たちは顔を背けていた。スタート前の作りこまれた姿勢はアスリートのように鍛えこまれている肉体でさらに際立つ。
「23秒22……だと?」
「いつも通り私の腹筋、背筋、大腰筋は絶好調のようだ。悪くないねぇ」
ざばりと上に上がってきた高円寺は余裕の笑みを見せ、髪をかきあげた。息が切れている様子もない。
「燃えてきたぜ・・・・・・!」
須藤は負けたくないのかメラメラと闘志を燃やし始めた。さて、決勝レースが始まるのでオレもいくか、と思い、指定されたレーンに並んだ。
やる気をたぎらせる須藤に余裕の笑みを見せる高円寺、それを見て苦笑する平田、という構図である。やがてレーンにみな構え、そしてやがてホイッスルが鳴った。
「ちくしょお、ちくしょおおおおおおおおおお!!!!!!」
その1分後、床に膝をつき右手を叩きつけ悔しがる須藤と、それを見て宥める平田の姿が観測された。オレは……
「勝てると思ったんだけどね、綾小路くん速いな、負けちゃった。」
「平田こそ速かった、今日は調子が良かっただけだ。」
「それにしてはフォームが崩れる様子がなかったけどね。」
「疲れが家に帰ってから出るタイプなんだ。」
「あはは、綾小路くんって意外と面白いね。これを機に仲良くなれたらうれしいよ。」
平田に辛勝……といったところだ。タイムは平田が25秒95、オレが25秒25だ、なにも笑えない。
「平田くん、すごくかっこよかったよ!」
平田の頑張りに女子たちが言いよる、奮闘した須藤と圧勝した高円寺には見る目もくれないようだ。
「あ、綾小路くんすごいね。」
池たちには残念だが、平田の人気は落ちなかったな、と思っているとふと女子に話しかけられた。
「えっと……佐藤……だったか?」
「え、あ?うん!」
急に話しかけてくれた佐藤はオレのことを労ってくれた。通りがかった堀北に
「ことなかれ主義者が聞いて呆れるわ。」
と毒づかれたが、まったくもってその通りだったので何も言い返せなかった。先生に水泳部に誘われたが、明日の受け持つCクラスにもっと良いやつがいますよ、と言ってごまかした。こうして今日のプール授業は終わった。ちなみに平田に勝ったことで池と山内には感謝された。
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――― 綾雪志朗 ―――
いつもの授業、4月末、来週から5月が始まる。入学式からだいぶ時間がたって俺は弛緩した雰囲気の中で3時間目の準備をしていた。
「はあ~来週から5月か、早かったね。」
「ほんとな、外部との連絡が取れないってわかってはいたけど、意外とすぐになれたよな。」
「ね!また来月10万もらえるし!」
「はいはい、一之瀬に来月10万もらえる確証はないから無駄遣いするなって言われただろ。」
前の席の麻子が俺の机に肘をついてだらーんとそんなことを言う。その隣の渡辺……じゃなかった紀仁もそんな雰囲気を見て苦笑している。帆波は4月の2週目ぐらいに雰囲気がだらんとなってきたクラスを見てもう少し真面目に授業受けよう、じゃないと来週ポイントが減るかも、みたいな感じでクラスに話していた。
監視カメラについては気づきつつ、先生に質問しに行かないあたりなんでだろう?とは思うが、違和感に気付けてる時点で普通に優秀だと言える。だがこの雰囲気に一人、異彩を放つのが……
「あ~ユキさん?どうした?」
「ん?あ、志朗くんか、いや次星之宮先生の授業でしょ?またダル絡みされるのきついなって。」
隣の姫野がため息をつく。このちょっとツンとした態度の目つきが鋭い女の子は姫野ユキ。同調圧力最強!仲良しこよし最強!協調性ウェイウェイウェイ!って感じのこのクラスを一歩引いた目線で見ている女の子だ。
こういう風にクラスから一線を引いて客観的に見れる人は貴重だと思う。個人的に神崎もそんな感じだが、役職上そういうわけもいかないようだ。このユキの落ち着きよう、同名のCクラスにいるやつも見習ってほしい。
ユキがため息をついている理由は授業。次の授業は保健である。はっきり言って定期考査の教科でもないので肩の荷が軽い教科だが担任のダル絡みはきついものがあった。
中学の復習から始まって子供の話になったときにキスの話になってまた彼氏に振られたと言って1時間元カレとの会話使った件で男女を困惑させた件は記憶に新しい。ちなみにまた最近彼氏ができたらしい。次はいつまでもつかな。
「いい先生なんだけどな。酒癖がな。」
「いや、それ以外にもっとあるでしょ、ねえ?網倉さん?」
「あはは、二日酔いで教卓着いた瞬間ゲロるのはちょっとね、せっかくの美人が台無しっていうか。」
「残念美人って感じだよな、志朗はどう思う?」
「もうちょっと落ち着いてほしいかなと思う。普通に良い先生だと思うし。」
あはは、と会話に花を咲かせていると、Bクラスの雰囲気が一瞬で締まった。
その原因は入ってきた先生の面にある。星之宮先生がいつもより真面目な顔をして入ってきたからだ。フレンドリーな先生に限ってまじめな時は怖いからみんな静まるってやつである。
「はいはい授業を始めますよー、今日はちょっと真面目に授業受けてもらうからねー」
「どういうことですか?先生。」
真面目な感じのインテリメガネ、浜口くんが先生にそんなことを聞く。先生は疑問に答えるように言葉を述べた。
「月末だからね、小テストを受けてもらおうと思って。安心して、成績には関係ないよ、成績には……ね。」
この念押しするセリフ、まったくこの学校の先生たちは言葉遊びが好きなのだろうか。まあ思っててもいわないが。この含みのある言い方に疑問を持てる人がいればいいが……
流されるままに俺たちは先生につられ、やがて小テストが始まる。隣のユキが「ええ……?」と苦しんだ声を上げているのがおぼろげに聞こえた。1科目4問、20点で、それが5教科で100点。ほぼすべての問題は恐ろしいほどに簡単だ。中学の授業をまじめに受けていれば解けるだろうし、このクラスだったら平均80は堅いだろう。だが。
「最後の3問が意味が分からない……」
解けないことはないが、高校で出るレベルでは明らかにない。雪は解いてくるだろうが。清隆は知らん。雪に点数が下だと馬鹿にされる未来が見えて癪に障ったのできっちり全問解いた。一番最後の数学の問題に別解をつけるおまけつきで。隣のユキも苦しみながらも途中まではペンを滑らかに進めていたので大丈夫だろう。
そんなことを思いながら、残りの時間は片手間に見直しをしつつ時計の時間の進みをぼーっとながめてテストは終わった。
そして、5月1日がやってくる。端末の額面から増加したポイントは65000ポイント。大きくため息をついて俺はベッドから顔を出した。
1巻の「友達が欲しい」って言ってる綾小路くんがかわいい。
星之宮先生は普通に好きです。アニメの教卓に突っ伏してるやつ好き、愉快な性格してると思います。茶柱先生の過去知った後は両方の気持ちがわかるし辛いってなりました。和解ルートください……
清雪の絡みもっとあった方がいいですか?
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もっとほしい
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別に