#9 5月1日、ドラゴンボーイのクラス掌握術
――― 椿雪 ―――
朝起きて、学校から支給された端末の画面をのぞくと、そこには私のもともと持っていた額から49000プライベートポイントが振り込まれていた。
49000しか残らなかったのか、それとも49000も残ったか、それはまあ受け取る人によりけりかもしれない。最初の締まった雰囲気から徐々に弛緩していったクラスを見れば後者と受け取るべきなんだろうけど。
「皆さんおはようございます。今日から5月ですね。今月も頑張っていきましょう。では、朝のホームルームを始めます。」
教室に入り、伊吹さんやアルベルトくんと話をして、しばらくしていつもどおり先生が入ってくる。そして先生がホームルームを始めようとしたタイミングで、石崎くん?だったか、が先生に口をはさんだ。
「先生、今朝確認したら振り込まれたポイントが半分以下だったんですけど。」
「いい質問ですね石崎くん、それについては今から説明します。」
いつもより真剣な雰囲気の先生は、右手に持った丸まった白い厚手の紙を取り出すと、それを黒板に張り付けた。
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第一学年クラスポイント一覧
Aクラス:940cp
Bクラス:650cp
Cクラス:490cp
Dクラス:0cp
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やっぱり……490クラスポイントだから振り込まれたポイントは49000プライベートポイントってことか、
どのクラスも最初から10万渡されるけど授業態度とかでどんどん差し引きされてくってことね。やっぱりポイントゲームのクラス対抗戦か。
ってかDクラス0ポイントってまじ?うそでしょ?
堀北さんは個人での態度と考えてたみたいだけど、実はクラス単位でしたって話、どんな気持ちなんだろうか?
そこからSシステムの詳細が開示された。ポイント数がAクラスを上回っていたら自分たちはAクラスだったこと。そして進学率・就職率100%はAクラスにしか適用されないと。なるほど、試しにAクラス全員退学させたらどうなるんだろうか?下のクラスに横流れするんだろうか。
部活の活躍や貢献度がクラスポイントや個人のプライベートポイントが支給されたりするケースもあること。2000万ポイントを払えば好きなクラスへ行けることなど学校のシステムを告げられると、クラスが一層ざわめいた。
「ちょっと綺麗に分けられすぎ……と思ったけど、意図して分けられてるってこと?」
「そうみたいだね、にしてもDクラスの0ポイントがすごいな……」
隣の伊吹さんが何度も紙を見て考えてはぐぬぬと唸っている。後ろのアルベルトくんはずっと顔をしかめているらしい。厳しい現実だよねえ。
「それと、これは先週末受けた小テストの結果です。赤点はいなかったですが石崎くんギリギリでした。本番で赤点だったら退学になるので励むように。」
「は!?え!?」
急にぶっ込まれた爆弾発言に困惑を隠せない石崎くん。急に次赤点とったら退学ねって言われるんだから気持ちはわからないでもないけど。ちなみに点数の詳細としては1位に100点で私、2位に90点で椎名さん、金田くんと続いた。バチバチの個人情報だけどどうやらプライバシーはお構いなしだった。伊吹さんは75点、簡単な問題2問落としてるなあと思ったがまあいいだろう。アルベルトくんは65点、もうちょっと頑張ってほしい。クラス平均は74点、赤点は37点以下らしい。
「先生、質問があるんですがよろしいでしょうか?」
テストの結果を見てまず挙手をしたのは銀髪文学少女椎名さん、こういう場面では目立つのが嫌いな子だと思ってたんだけど、案外違うんだろうか?ちなみに椎名さんの話は面白い。この前結構マニアックな本を紹介してくれて面白かった記憶がある。波風立てたくないとか抜かしていた清隆とは気が合うと思う。最近そうでもないが。
「はい、椎名さん、なんでしょうか?」
「先ほど平均が74とおっしゃいましたが、赤点はもしかして四捨五入でしょうか?あと他クラスの小テストの点数などは見れますでしょうか?」
「ふむ、四捨五入ですか……はい、その通りです。平均点÷2の点数が赤点のボーダーラインになります。他クラスの小テストの詳細ですが、全クラスまとめて上位5名のみ公開でこちらになります。」
あれを見ただけで平均点の詳細に気付くとは、椎名さんは結構頭の回転が速いらしい。他クラスの小テストの点数だが
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1位 坂柳 有栖 100
綾雪 志朗
椿 雪
4位 葛城 康平 95
綾小路 清隆
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ふむふむ?見るまでもなかったけど私と志朗が1位か、清隆はどういう風の吹き回しだろうか。後で問い詰める必要がありそうだけど。このあと金田くんがクラスポイントの増減の詳細についての質問をしたが、これまたのらりくらりとかわされていた。そして中間テストの発表をして先生はクラスを後にした。
中間テストについても必ず全員が乗り切れると断言をしていた。志朗も昨日言っていたけどここの先生ってよっぽど言葉遊びが好きなんだね。
坂上先生の説明に、ショックを受けるもの、現実を受け止めて奮起するもの、不敵に笑みを浮かべるものなど、クラスメイトの反応はいろいろだ。教室内は、統率とは程遠く、まとまるとはいいがたい。明確なリーダーってものが必要だろう。
その日の授業は、各自身に入るわけもなく、注意が散漫になっていた。希望する進路に行くにはAクラスに上がらなければならないと言われたら、仕方のないことだと思う。
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そして放課後、一人の男が教室内の空気を変えた。
はあ~とため息をついて龍園くんを一瞥すると、彼はさっそく動き出した。それはそれは悪い笑みをしている。私に気付くと前を向いてろとでも言わんばかりに顎を振った。成り行きを見守ってろってことらしい。
「おまえら、席につけ。」
休み時間となり、グループごとにまた固まろうとしているクラスメイトを龍園くんは静止する。クラスメイトの視線は声を上げた龍園くんに集中し、やがて教壇に上がった。
ざわざわするクラスメイト、らちが明かないから援護するとしよう。
「あ~みんな、よかったら龍園くんの話を聞いてくれないかな?」
「は?椿あんた何言って。」
「ごめん伊吹さん!この時間だけだから!」
両手をすり合わせて頼み込む私に、伊吹さんはしょぼしょぼと自分の席にまた座った。私は面白くなりそうと思いながら机にひじをついてだらーんとする。
「お前ら、よく聞け。この高校の恩恵を受けるにはAクラスに上がらなきゃなんねえってのは今朝聞いた通りだ。オレがこのクラスを勝たせてやる。その代わり、お前らは全員オレの駒として働け」
「オレがCクラスの王だ。」
龍園くんは迷いなく自分が王だと言い切った。ちょっと恥ずかし気とかないんだろうか?それもまた彼の良さかもしれないけど。やっぱりあの時言ってたようにクラスをまとめるらしい。まあ確かに、烏合の衆じゃ話にならないからね。
「なんだと? 誰が駒だ。そんなやり方で俺たちがいうことを聞くと思うか?」
まあ確かに、駒って言い方はいろいろ問題だよね、時任くん?だったかが必死にかみついている。
「文句が言うならオレにかかってこい。」
挑発するかのような言葉をチョイスする龍園くん、どうやら彼は暴力でクラスをまとめるようで、時任くんはそれにピキっと来たのか今にも殴りかかろうとしている。
……助けるか?
「まあまあ時任くん落ち着いてよ、龍園くんはリーダーに向いてると思うけど。」
「あ?椿、お前何言ってるんだ。」
「だって彼はSシステムに4月はじめぐらいから気づいてたもの。」
「「「……は?」」」
私の発言に静まる教室、ま、ブラフだけど。全部気づいてるかって言われてもそうでもなかったし。私の発言に時任くんは何かを考えるしぐさをすると、また口を開いた。
「それじゃなんでオレたちに教えてくれなかったんだよ!龍園のせいでポイントが減ったようなものじゃねえか!」
「減ったじゃなくて、減らさなかったが正しいと思うけど。あと責めるのはお門違いだと思うけど?ここは高校だよ、義務教育は終わってる。言われないと時任君は何もできないの?」
私の言葉に言いよどむ時任くん、まあ気持ちはわからんでもないし、私の発言にはフェイクが混ざっている。まあ、気づけるのは龍園くんだけだと思うけど。そんな私の発言を見かねてか、女子グループのリーダー真鍋さん、じゃなかった志保ちゃんが私に口を開く。
「でも雪、雪がそれを言うってことは雪も気づいてたってことでしょ?なんで私たちに言ってくれなかったの?」
「う~ん、それを言うと苦しいけど、私結構な回数真面目に授業受けようって言ったよね?それを無視したのは志保ちゃんたちだと思うけど。」
志保ちゃんの発言にすかさずノータイムで返す。自分たちがポイントを減らした自覚があるからこそ、他の人をターゲットにして共通の敵にすることで自分からそらそうとする。だから隙を見せた瞬間終わりなのだ。
「そ……それは。」
「は、まあそういうこった、おまえらがオレたちを責めてる時点で、私たちは自分で考えることができませんって証明してるようなもんなのさ。」
煽る煽る、刺されたいのかな?ものすごい数のとげとげしい視線が私と龍園くんを突き刺している。援護射撃ありがたいけどもうちょっと言い回しあるんじゃないかな?
「そこまで言ってるわけじゃないけど、龍園くんがわざわざ言わなかったのはこの中でどれだけ自分から動ける人を見極めたかったからだと思うよ、これからのクラス対抗でそう言う人間は重要だしね。」
「ポイントが減るリスクよりこれから使える人材を見ることに時間を割いたってこと……?」
「そういうことだ、わかったか?これからオレがCクラスの王だ、黙って従うんだな。」
「く、でもおれはお前みたいなやつがリーダーになるのは認められない、どうせなら同じようにシステムに気付いてテストも100点だった椿の方がリーダーにふさわしいと思うんだが?」
「う~ん、私はリーダーって柄じゃないしね、それにSシステムに気付けたのもたまたま龍園くんが監視カメラの数を確認してる場面に出くわしたからだし。私はなるにしても影の裏方に徹したいかな。」
「そ、それは……」
「そもそも、発言を抜きにして時任くんはSシステムに気付けて監視カメラの数の把握にまで行動に移せる行動力と判断力の高さを持つ龍園くんはリーダーにふさわしくない?私はふさわしいと思うけど。」
私の言葉に口をつぐんだ時任くん、伊吹さん、志保ちゃん。後ろのアルベルトくんは「確かに」と頭を唸らせている。正確には私は龍園くんより先に気付いてるけど、言わなくていいことは言わない主義だ。
「は、まあ納得いかねえ奴はオレにかかってこい、いつでも受けてやるからよ。」
龍園くんの言葉を皮切りに、総意が固まったようだ。なんとかまとまってよかった。あのままだと暴力でクラスがまとまってクラスメイトの体のいたるところに青あざが出来ていた未来が見える。まあそれでも何人かは反骨精神の極みで襲い掛かりそうだけど。
「話は以上だ。そして椿、椎名、伊吹、石崎、山田、金田、お前ら6人は集まれ、まだ話がある。」
そう言って、クラスメイト達はそれぞれ解散していく。形だけでも方針が固まったのはいい傾向かもしれないけど、まだ苦労しそうだなあと思いながら、龍園くんの部屋に向かった。
『1年Dクラスの綾小路くん、担任の茶柱先生がお呼びです。職員室まで来てください。』
気になる放送を後にして。
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「わ、スゴイ汚れてるね龍園くん、どうしたの?」
「あ?あのあと時任がモノ言ってきたからな、黙らせてきた。」
「うわ~えげつなー」
多少よごれた服のほこりを玄関でぱっぱと落として龍園くんが入ってくる。少し崩れた制服をした龍園くんをアルベルトくんと椎名さんはちょっと避けた目で見ている。この2人は気質が穏やかだから、仕方ないか。ちなみにこの2人は椎名さんが立てたお茶を飲んでいる。美女と野獣の癒し空間は様になっている。アルベルトくんと椎名さんは清涼剤だ。
「それで、椿や椎名、金田はわかるけど、私とか石崎を呼んだ理由って?」
「は、使えそうなやつを集めただけだ、今後のためにな。」
「なるほど、今後のクラス方針について会議をするというわけですね。」
「くく、その通りだ金田、テストの点数通り頭が回るらしい。」
おかっぱメガネの金田くんが意見を述べる。石崎くんはちょっと話についていけないっぽい?かわいい。角テーブルを囲んで正面に龍園くん、そして伊吹さんと椎名さんの間に私はちょこんと座っている。青髪とちょっと水色じみた銀髪の女の子2人に挟まれる金髪の私。オセロ方式で私もグラデーションの青髪になったりしないだろうか?
「言っとくけど、私はあんたに従いたくないから。」
「ほう?」
「私はあんたじゃなくて椿の意見なら聞く。」
「らしいですよ王様?」
「くっはは、まあいいさ、最終的にオレの駒になるんだからな。」
「あっそう。」
ちょっと龍園くんをからかってみるけど、まるで通用しないみたい、王様は寛容なのかな?と思ったら伊吹さんが視線を下に向けた瞬間、龍園くんの手が動いた。捉えた先は伊吹さんだ、ここで喧嘩なんてたまったもんじゃないと思い、気づいたその瞬間、即座にその手を少し強めにつかんだ。
「いてえな、がり勉かと思えばそっちもいける口かよ、伊吹よかったな、ボディーガードがいてよ。」
「ボディーガードじゃなくて友達だけど?ちょっと私の前でそう言うのはいただけないな。」
「つ、椿あんた……」
「あ、伊吹さん大丈夫だった?あと前から思ってたけどそろそろ雪って呼んでほしいな。」
困惑する伊吹さんに、愉快そうに笑う龍園くん、椎名さんとアルベルトくんは驚いたように目を見開いている。
「え、あ、ありがと、わたしの事も澪って呼んでいいから、」
「あれ?私のこともひよりって呼んでほしいです。」
椎名さんが横からちょこんと飛び出てきた。かわいい。女の子が3人いるのに2人だけで話してるのにちょっと疎外感を感じたのだろうか。
「は、人のことをダシに交流を深めるとか肝が据わってるな」
「会話の基本でしょ?」
「状況が違うと思うぞ……?」
私の発言にそれは違うと釘を刺す石崎くん、アルベルトくんも「うんうん」とうなずいている。何も間違ってないと思うんだけどな?
「まあ、今月の目標は大きく2つ。話を戻すと中間テストでは退学者を出さない。そしてBクラスに仕掛ける。」
「仕掛ける?どういうことよ。」
「なるほど、龍園くんはBクラスの実力を見ておきたい、というわけですね。」
「実力もそうだけど、どれぐらいの態度でクラスポイントが増減するのか、その詳細を知りたいって言ったほうが正しいんじゃない?」
「頭がいい奴は話が早くて助かるぜ雪、まあひよりの言ったことも同じだ。2人まとめて合格だ。」
「ありがとね85点のインテリドラゴンボーイくん」
「「「「ぶはっっっっっ」」」」
私の発言にこの場にいた私と龍園くん以外の5人が吹き出した。なんか文句言う要素あったかな?完璧だと思うんだけど。
「おい雪。」
「なに?」
「そのドラゴンボーイってのやめろ。」
「いいじゃんインテリドラゴンボーイ、見た目と点数のギャップ萌えに容姿が相まって的確な表現だと思うんだけど?」
おどおどしてるアルベルトくんと石崎くんに肩をプルプルと震わせこらえる澪とひよりと金田くん。なにがおかしいんだろうか?あの小テストで龍園くんは85点、なんとクラス内4位である。あのヤンキー風の風貌にこれはギャップ萌えと言わざるを得ないだろう。
「まあ嫌なら言うのやめるよ、よろしくね翔くん。」
「はあ、もうそれでいい。」
大きく虚空を仰いでため息をつく龍園くん、そのあとは中間テストとBクラスへの対策について軽く話した後解散になった。
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――― 姫野ユキ ―――
「あのさ、」
「なんだ?」
「志朗くんは何してるわけ?」
「のぞきだけど。」
「だけど、じゃないわよ、そもそもなんで指導室前に張り付いてるわけ?」
「俺の親友が呼び出された。内容を聞きたい、以上だ。」
「はあ?」
脈絡とか何もかもぶっ飛ばして意味が分からない。私が今話してる子は綾雪志朗、運動もスポーツもうちのクラスで勝てる子はいない。私としても基本的に距離感を大切にして話しかけてくれるのでうざったさはない。クラスに溶け込みつつ、私と同じような価値観を持っている気がする。
そんな志朗くんはSシステムについて公開されたBクラスについて一之瀬さんに全部ぶん投げて、親友が呼び出されたんだけど面白そうだから行かないか?と私を誘ってきた。特にやることもないからいいかーと思って暇つぶしで来たけど彼の考えることはよくわからない。
「思ったんだけどさ、終わった後に聞きにいくっていうのはダメなの?」
「それじゃスリルが足りないだろ、盗み聞きするからこそ後で話のネタにしたときあいつにダメージを与えることができる。」
「屑じゃん。」
頭がいい人は何を考えてるかわからない。とりあえずもう聞き耳を立てる志朗くんに続いて耳を傾けようとすると、
「……あんただれ?」
「おやおや姫野ユキでしたか、私は森下藍、今は指導室の扉の音に耳を傾けています。」
「……は?」
変人と変人は惹かれあうのだろうか、新しい変人が出てきてしまった。志朗くん助けてと思って目を向けると彼は目もくれずただただ聞き耳を立てるのに集中していた。集中力の無駄遣いだと思う。
「指導室の扉の音……?」
「指導室の扉の音に耳を傾けるのです。木の材質に考えを持っていくことでより理解が深まり、木の音を理解できるでしょう。さあ姫野ユキ、耳を傾けるのです。」
「……は、はあ。」
いわれるがまま目をつむって扉に耳を傾けてみる。……何も感じないけど?と思っているとふとカメラのシャッター音が響いた。なんだ?と思って目を開けると森下さんが端末を持って私にかざしていた。
「ありがとうございます。間抜けな姫野ユキが撮れました。」
「……うざ、」
「でもリフレッシュになったでしょう?それに私も室内の会話は気になります。」
「は?どういうこと?」
「個人的にあの小テストで100点を取った綾雪志朗に興味が湧きました。あと今呼び出されている綾小路清隆も。うちのクラスにも坂柳有栖がいますから。」
「あ、ああ。なるほど。」
まあ確かにリフレッシュにはなったけど、森下さんも一応個人的な意見はちゃんと持ってたらしい。確かに今会話に出た3人はトップ5に入っていた。にしても私をはめたのはなんでだろう?と思うけど。まあいいや、会話に耳を傾けようと思って私は森下さんとまた耳を傾けた。
『でてこい綾小路、でてこないと退学にするぞ。』
え?耳傾けて開口一番の言葉がこれ?横暴すぎる。うちの担任の方がましじゃないかと思うレベルだ。驚きを隠せなくて周りの森下さんと志朗くんに目を向けるけど何もなかったかのように瞑想している。あの2人気が合うのでは?
会話に耳を傾けていると、まずお互いの名字いじりからはじまり、綾小路くん?の入試結果の開示から始まった。今日の小テストの結果発表から思ったけどこの学校にはプライバシーの保護という概念が存在しないんだろうか?
「え?全教科50点ちょうど?」
「だれだ。」
あ、やべ会話が聞こえていたらしい。扉がずざざと開くと茶柱先生と堀北さん?だったっけ、あと件の綾小路くんがいた。
「Aクラスの森下にBクラスの綾雪に姫野か。何の用だ?」
やばい、どうこまかそうか、そう考えていると
「親友が放送で呼び出されたのを聞きまして、面白そうだなと盗み聞きを考えました。」
どうやら志朗くんは突撃する構えらしい。もうわたしはあきらめた。
「そうか、愉快な奴だな、お前らは理事長からCクラスの椿と3人で幼馴染だと報告されている。椿はまだいいとしてお前ら3人はテストの点数で遊んだりするのが好きなのか?」
「……は?」
テストの点数で遊んだ?いや綾小路くんはさっきの会話からふざけてたからわかるけど綾雪くんに至っては何かわからない、今回も100点だったし。
「綾雪、お前の合計点は385だ。」
「……はい?」
「数学77、英語77、国語77、理科77、社会77、なんだ、舐めてるのか?」
「お茶目でしょう?この時占いにハマってたんです。ラッキーナンバーに合わせてみました。」
ちょっとよくわからない、入試でふざけたの?隣の森下さんが困惑している。変人でも困ることがあるんだね。
「そうか、お前ら2人はよほど点数で遊ぶのが好きなようだな、まとめてEクラスに降格だ。」
「おい志朗、Eクラスってどういうことだ?」
「おれ等はelegantでexcellentだ、つまり上品で優れたEクラス配属になるわけだ。特権だな。」
「なるほど、理解した。」
「綾小路清隆に綾雪志朗、それは意味をはき違えてる気がしますが?」
絶対に違うと思うけど。2人ともやっぱり馬が合うってことは性格も似通うのか?もう考えないほうがいい気がしてきた。
「愉快な思考回路だ、Expelled、退学だ。覚えとけ。私は職員会議へ行く。」
「先生も大変ですね。」
「君たちに言われたらおしまいじゃないかな?」
心なしか茶柱先生の気苦労が絶えない。隣の堀北さんに至っては空気だ。茶柱先生がいなくなって静まる空気内を堀北さんが打ち破った。
「ねえ綾小路くん、さっきの点数って偶然なの?」
「当事者が言ってるだろ、それとも意図的だって根拠があるのか?」
「小テストであなたはクラス内1位だったわ、それに綾雪くんの点数も聞いたらそう思うのも仕方ないでしょう?」
「志朗は特殊だ、一緒にしないでほしい。」
「堀北鈴音もですか、ここの人たちは見ててあきませんね。」
ここに来ても自分のペースを崩さない森下さん、もうつかれた。この後は志朗くんが綾小路くんは「点数が取れればそれで人が話しかけてきて友達が増えるんじゃないかと思った説」を推していた。だとしたらけっこうかわいい気がする。前提がテストの点数を調整したことなのはおかしい気がするけど。
ここまで人と話したのはいつぶりだったか、こういう日も悪くないと思っている自分がいることに驚く1日だった。
初めて3人以外の視点を書いてみました。森下さん出しとけば大体ボケになる気がします。原作をなぞりつつ少しずらしながら。小テストの点数はもう捏造です。宝泉くんが意外と勉強できるのでOAAがC+の龍園くんも高1ではもう少しできたんじゃないかと思って。清隆くんの点数はこの前の水泳しかり多少変化。公式サイトでどんな問題出したのか教えてほしいと思ったり、解いてみたいです。
清雪の絡みもっとあった方がいいですか?
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もっとほしい
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別に