元魔王さまのぶらり旅   作:Revak

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二十四話 魔竜ジャガーノート

 

「GYAAAAA!」

 

 己の背を斬られた事に気づいた魔竜ジャガーノートが絶叫を上げた。

 

 ヴィルトはすかさず真上に上昇。ジャガーノートから距離を取る。

 

「GURURURU……」

 

 真上に跳んだヴィルトをジャガーノートが恨めしい目で睨む。

 

 ヴィルトは片手でツォルンを持ち、左手で指を動かしこっちにこいと挑発する。

 

「GOOOO!」

 

 ジャガーノートはその安い挑発に乗り、翼をはためかせ飛ぶ。

 

(速い!)

 

 その速度は速かった。

 少なくともヴィルトの人間形態での飛翔よりは速い──つまりは最低でも時速五百キロを超えている。

 

 頭を使った突進をヴィルトはその身で受けてしまい、遥か遠くまで飛ばされる。

 ヴィルトは空中で縦に一回転しながら魔力を放出し無理矢理止まる。

 

「GAAAA!」

 

 そこにジャガーノートが口を大きく開く。

 黒い炎がジャガーノートの口に集う。

 

「ブレスか!」

 

 ヴィルトが叫んだ瞬間、黒い炎がヴィルトを襲う。

 

 皮膚が焼かれる事は無い。だが服は燃えて無くなってしまう。

 炎が酸素を奪うが、ヴィルトにそれは関係ない。そもそも呼吸不要の怪物だ。

 

「せぇ!」

 

 ヴィルトは戦斧を振り落とし、ブレスを斬り裂く。

 戦斧から黒い魔力で出来た斬撃が生じ、飛ぶ斬撃となってジャガーノートを襲う。

 

「GYAU!」

 

 斬撃を顔面に受けたジャガーノートは一瞬目を閉じてしまう。

 

 その隙を逃さずヴィルトは高速で飛翔。戦斧を構え正面から堂々と斬りかかる。

 直ぐに目を開いて視界を取り戻したジャガーノートは腕を掲げ戦斧を防ぐ。

 

 ギャリギャリという硬い金属同士がぶつかり合う嫌な硬質的な音が響いた。

 其処にヴィルトは魔力を籠める事でツォルンを強化。少しずつジャガーノートの腕を斬り進んでいく。

 

「GYAU!」

 

 ジャガーノートは空いている左手で攻撃。ヴィルトは真下に飛んで回避。

 

「GAAAAAA!」

 

 ジャガーノートはすかさず下を向いて口を開き吐息(ブレス)

 黒い炎がヴィルトを襲う。

 

「ちっ!」

 

 ヴィルトは吐息(ブレス)を横に飛ぶ事で回避。真下に撃たれた事で下の森に炎が迫る。

 

 遠くに居たソフィラが思わず叫んだ。

 

「うわぁぁぁ森火事! 消火しないと!」

 

 偽竜や竜の吐息(ブレス)は魔法と違い本物の炎だ。

 燃やしたいものだけ燃やせるような便利なものではないし、吐息(ブレス)終了後も効果は持続する。

 つまり放置すれば森が焼け落ちる。

 

「仕方ないですね。全員ここから出ないでくださいよ」

 

 アンタレスはそう言い翼をはためかし飛翔。炎が着弾した場所へ飛んでいく。

 轟々と燃え始めた森に着くとアンタレスは両手から水の魔法を行使し消火に当たる。

 

「すまん! 気を付ける!」

 

 その様を見たヴィルトはやっべと思いながら次から気を付けようと思い全裸で上へと飛んでいく。

 

 ジャガーノートはすかさず追い、直ぐに追いつかれる。

 ジャガーノートが右腕を振るい、ヴィルトに襲い掛かる。それをヴィルトは戦斧で防ぐ。

 

「ぐわぁ!」

 

 そしてノックバック。ヴィルトは吹き飛ばされる。

 

「舐めるな!」

 

 そのままヴィルトは空間移動の魔法を行使。黒い靄と共に掻き消える。

 ジャガーノートの背後に転移したヴィルトは右翼に向かって戦斧を振るう。

 魔力で強化した戦斧は根本を攻撃し、断ち切る事に成功する。

 

「GOOO?!」

 

 翼を斬り落とされた事で一時的に飛行能力を失ったジャガーノートが地面に向かって落下する。

 だがジャガーノートもまた魔法を行使し、飛行能力を会得。滞空する。

 

「せーの!」

 

 ヴィルトは斧を振りかぶり、勢いよく虚空に向かって振り落とす。

 巨大な──ヴィルト本来の身長、三十メートルはある巨大な黒い三日月上の刃が形成されジャガーノートを襲う。

 

「GAAAA!」

 

 回避が間に合わないと悟ったジャガーノートは防御にリソースを割く。

 魔力で自らの体を強化し、バリアを正面に展開する。

 

 だが虚しくもバリアは一瞬で砕け、ジャガーノートの体は斬られてしまう。

 斬撃はジャガーノートの身体を斬り裂くと斜め下に飛んでいき、森に直撃し森の一部を消し飛ばした。

 

 

「タフだな」

 

 身体を大きく斬られても、ジャガーノートの戦意は失わない。

 それどころか自らを傷つけた矮小なモノ(ヴィルト)に対し殺意を滾らせる。

 

「いいぞ、とことんやりあおうじゃないか!」

 

 ヴィルトは顔を獰猛に歪ませ、ジャガーノートに向かって突進した。

 

 

 ■

 

「うわぁぁ……魔竜と正面切ってやりあってる……こわ……」

 

 アンタレスが張った結界の中で、ソフィラはそう呟いた。

 

 結界の外では今も元気にヴィルトとジャガーノートがぶつかりあっている。

 

 ヴィルトの戦斧ツォルンが確実にジャガーノートの体を削り、ダメージを蓄積させていっている。

 勿論ジャガーノートもやられているだけじゃない。時に吐息(ブレス)を、時にはその爪や尻尾をもってダメージを与えていく。

 だがヴィルトには再生能力がある為一撃で削り切れないジャガーノートでは倒しきれないだろう。

 ジャガーノートの攻撃が弱いという事は無い。ジャガーノートの爪だってオリハルコン程度ならば斬り裂けるだけの威力を持つし、尻尾だって城壁を砕く事が出来るだろう。

 単純に人の姿になっても尚ヴィルトが規格外に強いというだけなのだ。

 余談だがこの世界には幾つか現実には無い鉱石がある。

 硬さで言えば硬い順にヒヒイロカネ、アダマンタイト、オリハルコン、ミスリルという具合だ。勿論ミスリルでさえ鋼鉄以上に硬い。現実世界には無い有り得ぬ硬度を持つオリハルコンを裂く爪を持つジャガーノートは強いのだ。

 

「只今戻りました」

「おかえりー」

 

 森の消化を終えたアンタレスが結界の中に戻って来た。

 

「しかしヴィルトさん強いですね……! 流石は魔王……人の姿になっても健在だという事ですね……!」

 

 ローニャがヴィルトの強さに圧倒されながら、ぐぬぬと言う。

 

「魔王?」

 

 突如として出た魔王と言う単語にソフィラは疑問の声を上げる。

 あ、とローニャが口元を抑えた。

 それを見たリアはあちゃー、と顔を覆う。

 

「ヴィルト・シュヴァイン様は魔王なのです。隠す事でもないでしょう」

「……魔王、まぁ何でもいいや。あんだけ強いと些細なことに思えるし」

 

 結界の外ではヴィルトが戦斧を振り落とし、上空からジャガーノートを地面に向かって叩きつけていた。

 

 

 ■

 

 なんだ! なんなのだこいつは! この小さきモノはなんなのだ!

 

 ジャガーノートの心境を表すのならば、そうであった。

 ジャガーノートにとって人間とは取るに足らない存在だ。

 食べても旨くないし、そのくせ数だけはいる。

 だからジャガーノートは人に関わる気は無かった。だが住処にした人が作った古い砦は好みだった。

 

 それがジャガーノートとゼーティ王国の不幸だろう。互いに関わる気が無いのに近くに居たせいで関わらず負えなかった。

 

 人の大群が来た時は面倒であり、それ以来ちょくちょく人間が来るのもジャガーノートにとってはいい迷惑だった。

 

 だから今回も、命知らずが来ただけだと思っていた。

 

 だが、今回の人間は違った。強い。圧倒的なまでに強い。

 

「GAAAAAA!」

 

 自分が人間という小さいモノに劣っている。それを認められずジャガーノートは叫んだ。

 

 対しヴィルトは戦斧を振るう事で返答とする。

 ヴィルトの戦斧がジャガーノートの左肩を斬り落とした。

 斬り落とされた左肩から先の腕が地面に落下する。

 

「せぇい!」

 

 ぐるりと回転しながらヴィルトは戦斧を振るい、横なぎに戦斧を振るう。

 ジャガーノートの胸に横一線に深い傷が入り、ジャガーノートは大地に落ちていく。

 かと思えば片翼を動かし気合で耐え、空に向かって吐息(ブレス)を吐く。

 

「くぁ!」

 

 ヴィルトは口を大きく開け、捕食に入る。

 黒い炎が全てヴィルトの口へと入りこみ──全てを飲み込んだ。

 

「げふっ」

 

 ヴィルトが持つ能力、あらゆる遠距離攻撃の吸収だ。

 例え竜の吐息(ブレス)だろうと遠距離攻撃に分類されるならば吸収できない道理はない。

 

 自らの吐息(ブレス)が飲まれたことに呆気に取られているジャガーノートに向かってヴィルトは急降下。

 

「せぇぇぇぇ!!!」

 

 そして勢いよく戦斧を振り落とし──遂にその首を斬り落とした。

 

「勝利!」

 

 いえい! とヴィルトはブイサインをするのだった。

 それと同時にジャガーノートの死体が地面へと落ち、音と共に落下した。

 森の木々をへし折り、死体は森を飾る。

 

 結界からソフィラが飛び出した。それと同時にアンタレスは結界を解く。

 ヴィルトに近づくと拍手をし、ヴィルトを称える。

 

「いやー、すごかったよシュヴァインくん。まさか魔竜を倒してしまうなんてね……」

「はん、あの程度我の敵ではないわ!」

 

 とは言うが、ヴィルトにとってもジャガーノートは強敵だった。

 無論本来の姿になれば敵ではないが、それでも人の姿で苦戦する程度には強い。

 ヴィルトの評価で言うならば、勇者の仲間程度には強かったことになる。

 

「それで……なんだけど……とりあえずジャガーノートの死体はこっちに任せてくれないかな?」

「? どういうことだ?」

「いやぁ、変異した偽竜の死体って結構な金になるけど、それをいったん辞めておいて欲しいんだ、勿論後で素材の代金は渡すよ」

「ああ、構わんぞ。金さえ貰えるなら我は余り気にせん。好きにすると言い」

「よかった、ありがとう。それと……少ししたら、君は表彰される事になると思う。それに出て欲しい」

「ひょうしょうとはなんだ?」

「……えーと、偉い人が君を褒めてくれるの」

「褒めても何も出んぞ」

「いや偉い人として褒めないといけないのよ」

 

 其処に助け舟を出すかのようにリアが飛んでくる。

 

「いいじゃないヴィルト。出てあげなさいよ。というか出ないとまずい奴よ」

「そうか、お前がそういうのなら受けよう」

「ありがとう! 多分報酬三百万ぐらいじゃ無くてもっと出るから、それだけでも受け取ってね!」

 

 胃が痛くなりながらも、ソフィラは何とか受け答えするのだった。

 

「取り合えず帰るか」

「あ、ちょっと待ってね」

 

 ソフィラはそう言うとジャガーノートの死体の前まで飛んで降りていく。

 

 

「清浄結界」

 

 ソフィラが簡易的な詠唱をするとジャガーノートの死体の周りに球体状の青白い結界が張られる。

 結界によってジャガーノートの死体は守られ、他の獣が荒らすことは無くなった。

 

「それじゃあ、帰ろうか」

 

 一行は空を飛び、帰路に着くのだった。

 

 そして王都に戻った一行は、もう遅いからと眠るのであった。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 その日の夜。

 ヴィルト達はジャガーノートの死体に結界を張り獣に食われたりせぬように処置をした後、宿に戻って眠っていた。

 

 そしてソフィラは一人、王城に来ていた。

 

 王城の上階の一つ。

 高貴なる者しか入れぬ部屋に、四人の男女が集まっていた。

 

 部屋は広い。王城の部屋というだけあって置いてある家具も高級な物であり、茶器一つとっても高い。

 

 窓からは月の灯りが差し込み、その光を聖具が増幅する事で部屋は明るくなっている。

 

 ソファに向かい合うように四人の男女が座って居る。

 

 一人は当然、ソフィラ。王城でも変わらず陰部だけを隠した布のような服を纏っている。

 

 残る三人はそんな服ではなく、きちんとした服だ。

 

 一人は顔からして高貴なる雰囲気が漏れ出ている男だ。

 歳は四十代ほどだろう。金髪碧眼の一般的な貴族と同じ容姿をしている。

 名をグヴィン・ヴェル・ゼーティ。この国の王だ。

 

 もう一人は同じく四十代ほどの老人。金髪碧眼の切れ目の男である。

 モーテル・クヴァン。この国の宰相だ。

 

 最後の一人は二十代前半程度の女だ。

 頭部からは狼の耳が生え、臀部からは同じく狼の尻尾が生えている。

 動きやすいへそが丸出しの服を着ているが、美人というのもあって様になっている。

 銀髪赤目の女、名をヴォルフ・リッター。

 

 このうちの三人、モーテル以外の三人はかつて冒険者として活動していた時の仲間である。

 

「早速本題です」

 

 静寂の中、ソフィラが口を開いた。

 

「ジャガーノートを倒した冒険者が現れました。マジヤバいです」

 

 その言葉に、またしても沈黙が訪れる。

 

「……マジ?」

 

 普段のキャラを忘れ、国王グヴィンが言葉を漏らした。

 

「マジです。マジの大マジです」

 

 すぅー、とグヴィンは息を吐く。

 

「……胃が痛くなるような報告は辞めて欲しい……」

 

 胃痛に悶える様な表情でグヴィンは言う。

 

「だけど報告はしないといけないので」

「わかってはいるけども……!」

 

 魔王関連の話があるのに更に厄介事とか勘弁してほしいとグヴィンとモーテルは表情で訴える。

 

「それで、その冒険者の名は?」

「ヴィルト・シュヴァインだって。ルテンラの街で偽竜の群れを倒したという話もあるぐらいには最近有名な冒険者だよ」

「……ヴィルトだと?」

 

 その名に、グヴィンは眉を顰める。

 

「魔王と同じ名だな……」

「魔王? 魔王って、おとぎ話の魔王の事?」

 

 魔王については知る人ぞ知る、程度の知名度だ。

 一応魔王という概念自体は絵本にも出てくるが、名前や所業を知ろうと思えば図書館に行って調べるまでしないと知ることは無い。

 絵本などでも精々が悪いことすると魔王に連れ去られてしまうよ、程度にしか書かれていない。

 

「あぁ。暴虐の王。破滅の主。魔の世界から地上を滅ぼさんとした悪しき落とし子。それと同じ名とは……これは偶然か?」

 

 グヴィンの言葉にモーテルが返す。

 

「……偶然かと。真に同一の存在ならばこの国がまだ存命なこと事態有り得ない。伝承の通りならば魔王であるならば地上を焼き払っているはずです」

「で、あろうな。ならば有り得るのは……完全な偶然の一致……か?」

「いえ。魔王の子孫という可能性もあるのではないでしょうか?」

 

 モーテルの言葉にこの場の全員が絶句する。

 

「子孫? 魔王が子をなしていたと?」

「はい。魔王の眷属とされる魔族も生殖能力を持ちます。魔王も生殖能力を持っており、子をなしていた……その可能性も捨てきれません。子孫が祖先の名を継いだ、という方が偶然にも同じ名になったというより信憑性があるでしょう」

「成るほど。報告ではヴィルト・シュヴァインは巨大な姿に変身したとも言う……そちらの方が可能性は高いな」

 

「であれば、その者をどうするのでしょうか?」

 

 黙っていた今代の騎士団団長ヴォルフが問いかける。

 

「……そうだな。騎士爵を与え、褒美として……五千万ルエ程だし、国賓として国で最大限の歓迎の宴を開くしかあるまい」

「相手は平民……それも冒険者ですよ? 前例がないとは言いませんが、他の貴族から反発があるのでは?」

 

 ヴォルフが最下位とは言え貴族位を与えることに危機感を覚える。

 この国の爵位は七段階だ。

 王、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵の七つである。

 モーテルは子爵、ヴォルフは一代限りの騎士爵であり、ソフィラに爵位は無い。

 

「そこは、魔竜討伐を大々的に宣言するしかないな。相手がこの国を滅ぼしうる怪物と知れば、貴族たちも馬鹿な真似はしまい」

 

 現状ゼーティ王国側が把握しているだけの情報でも、ヴィルト・シュヴァインは一国を滅ぼしうる力を持っていると分かっている。

 何しろ当時の国の最高戦力が敵わなかった魔竜ジャガーノートを単独で討伐しているのだ。つまりそれは国の軍事力を上回っているという何よりの証拠だ。

 どれほど楽観視しても、国との相打ちに持っていけるかどうか、の力をヴィルト・シュヴァインが持っているという事になる。

 

 つまり下手をしなくとも国がヤバい。

 

「国中の貴族にも知らせねばならんな……今、我が国はある少女の機嫌次第で滅ぶかもしれないという事を」

「ですな。そのシュヴァインとやらを歓待するパーティは何時開きます?」

 

 モーテルが王に問いかける。

 

「我が国に留まって貰う必要もある。出来るだけ早い方が良いだろう。一週間後だな」

 

 モーテルが独自の諜報機関で集めた情報を王に提言する。

 モーテルとグヴィンは二人だけで会話を進めていく。

 

「我が国に留まって貰うとのことですが、それは難しいかと。シュヴァインとやらは魔王城を目指す旅をしているとのことです」

「……ますます子孫の可能性が高いな。先祖が没した地を求めているとでもいうのか? しかし魔王城を目指す旅ときたか……他国に取られる可能性は?」

「その可能性は低いかと。騎士の誘いも断っているようですし、誰かの部下に成るというのを嫌っている可能性もあります」

「ふむ……であればいっそのこと、地位を作るか」

「と、いいますと?」

「名称はのちに決めるとして、事実上ヴィルト・シュヴァイン専用……いや今後も同じような超越者が現れた時用に取っとくとして、国として全面的にあらゆる行動をバックアップするような役職を与えるのだ。勿論その者の行動は一切咎めず、止めもしない」

「……そんなものを与えればますます国中の貴族は反発しますよ」

「他国にヴィルト・シュヴァインの能力が知られれば同じような事をして取り込もうとする者も現れるだろう。先手を打って此方が取り込んでいるという事にするのだ」

「…………そう言う事でしたら、よろしいかと思います」

 

「よし。早速明日から動き出すぞ。なんとしてもヴィルト・シュヴァインの機嫌を取らねばなるまい」

 

 緊張した顔でグヴィンはそう告げるのだった。

 

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