元魔王さまのぶらり旅   作:Revak

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三十四話 アンデッド

 

 翌日の十二時半。ヴィルト、アンタレス、ローニャの三人は騎士団の詰所に来ていた。

 ヴィルトは背中に戦斧ツォルンを背負った完全武装状態である。

 

「来たか、シュヴァイン殿」

 

 そう返すのは騎士団副団長デヴィット・ルキデ。

 そして五人のフル装備の騎士団員達だ。中にはダニエルもいる。

 騎士団は全身鎧を纏いバケツ型のヘルムを被っている。

 

「我々探索班が貴殿に同行し、発見した地下ダンジョンを探索する事になった。よろしく頼む」

「お、おお。よろしく」

 

 ヴィルトは思ったより本格的な人選に少々驚きながらも頷く。

 

「足はこちらで容易しました。どうぞこちらへ」

 

 デヴィットに連れられヴィルト達は詰所を出る。

 出た場所にあったのは馬車だ。屋根の着いていない、簡素な馬車だ。

 

 馬車は二台あり、ヴィルト達と騎士団で別れて乗る。

 御者もまた騎士であり、鎧を纏っている。

 

「出発してくれ」

「はっ!」

 

 デヴィットの指示で馬車が動き出し、街中を進む。

 馬車の揺れを感じながらヴィルトは地下に着いて考える。

 探査(ソナー)が通じない空間に何があるかわからない。更に地下という空間では最悪の場合に本来の姿に戻る事も難しいだろう。

 無論本気になって何もかも消し飛ばすという愚考は出来なくもないが。

 

 そうこう考えていると目的地である物置小屋に辿り着き、ヴィルト達は馬車を降りる。

 

 ダニエルが先頭に立ち、物置小屋に入り地下への階段にかけた結界術を解く。

 

「先頭はどうする?」

「我々騎士団が先導します」

「了解した」

 

 という事で騎士団が先頭になり物置小屋の地下階段を降りて地下空間に向かう。

 

「灯りを」

 

 デヴィットの指示で騎士団の一人が聖術を行使し灯りを産み出す。

 

「よし。では行くぞ」

 

 デヴィットが号令を出し、一行は地下空間を進む。

 暫くの間、騎士団とヴィルト達の靴の音だけが木霊する。誰もこのような空間でお喋りをするような愚は犯さない。

 唯一ヴィルトは黙って進むことに寂しさを感じたが雰囲気的に喋れそうにないので黙っていた。

 

「敵影発見!」

 

 そうして歩いていると先頭の騎士団が叫び、抜刀する。

 

「スケルトンか」

 

 通路から歩いてくるのは骸骨、スケルトンだ。

 骨だけの体の魔物が騎士団に襲い掛かるも、剣の一振りで体がバラバラに砕けてしまう。

 

「結構深いのかもしれんな」

 

 そうして再び歩いていると十字路に辿り着く。

 

「分かれ道ですね……どうしますか?」

 

 ダニエルがそうデヴィットに尋ねる。

 

「普通に分かれて進めばいいんじゃないか?」

 

 ヴィルトはそう発言する。

 

「……戦力的に不安があります。どう分けるか、という問題がありますが」

「そんなの我、ローニャ達、騎士団の三つでいいんじゃないか?」

「……流石にそれは……戦力的に問題が無いとは思いますが……」

 

 ヴィルトだけ一人だが、ヴィルトの戦力はこの中でも秀でている。例え一人だとしても問題は無いだろう。

 ローニャとアンタレスも実力者である為、別れても問題は無い。

 

「……わかりました。アルテリシア殿とアンタレス殿に騎士一人を。シュヴァイン殿にも騎士ダニエルを付けます。残りは我々騎士団が進む、これでいいでしょうか?」

「構わんぞ。それでいこう」

 

 という事で三手に別れる事になった。

 

 ヴィルトとダニエルは右へ。騎士団は中央を。ローニャとアンタレス、騎士の三人は左手を通る事になった。

 

 ヴィルトはダニエルに気を使い聖術で灯りを生み出し、照らしながら奥へと進む。

 そうして暫く歩いていると、再び足音が響いてくる。

 

「敵だな」

 

 ヴィルトの視力をもってすれば接近する者を見ることぐらいわけない。

 接近するのはスケルトン六体。全て武装していない全裸の骨である。

 ヴィルトは背中からツォルンを抜き取り構え、敵陣に突撃する。

 

「はぁ!」

 

 ヴィルトが叫びと共にツォルンを横に振るい、スケルトン三体を砕く。

 すぐさま次の敵に接近し今度は縦振り、一体砕く。

 勢いを維持したまま更に突撃し、二体に斜めにツォルンを振るい砕いた。

 

「お、お強いのですね」

 

 一連の流れを見ていたダニエルがそう呟いた。

 

「我は……魔……竜殺しだぞ。弱い訳が無かろう」

 

 一瞬魔王と言いかけたヴィルトは直ぐに訂正し、魔竜殺しと名乗る。

 

「取りあえず進むぞ。まだ何かあるやもしれん」

「了解しました!」

 

 ダニエルは気合を入れ直し、奥へと進むのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 ローニャ、アンタレス、騎士の三人は殆ど問題なく進んで行った。

 道中何度かスケルトンやゾンビが襲ってきたが、ローニャ達の敵ではない。

 

「この先、広い空間がありますね」

 

 道中でポツリとアンタレスが呟いた。

 人一倍視力も良く、暗視能力を持つが故の視界の良さである。

 

「そうですか……気を付けていきましょう」

「はっ!」

 

 ローニャと騎士がそう返事をし、注意して進む。

 

 アンタレスを先頭に広間に三人は入る。

 非常に広い空間だ。百人は余裕で入るだろう。学校の体育館と同程度の広さを持つ円形上の空間だ。

 

「……特に何も無いですね」

 

 入った空間に変わった物は特には無かった。これまで通り壁に棺があるぐらいの場所である。

 

「そうでもないですよ」

 

 アンタレスはくすりと笑いながら言う。

 

「どういう──」

 

 ガタっと、音がした。

 祖漏れ一つではない、複数の音。

 

「……嘘でしょ?」

 

 音の正体は棺が開いた音だ。

 棺からアンデッドが出てくる。

 骸骨であるスケルトン。死にたてほやほやの死体がそのまま動いているゾンビ。

 共通するのはこれまでのアンデッドと違い武装している点だ。

 鎧を纏い、武器を手にしている。

 

 その数、実に百以上。

 

「死した屍をもう一度殺すとしましょう」

「ええい! やってやりますよ此畜生が!」

「わ、私も微力ながら力を出します!」

 

 三者三葉の反応を見せながらアンデッドとの戦いに挑む。

 

(さて、どうしましょうか)

 

 アンタレスは周囲のアンデッドを見ながら考える。

 アンデッドの中には実力があるモノ、強い魔力を持つ個体が何体か混じっている。

 一人ならば何の問題も無く倒せるであろう敵だが、今はローニャが居る。

 本来の姿に戻って薙ぎ払うのは簡単だが、そうすると火力が高すぎて崩落を起こす可能性がある。

 となればちまちま戦うしかなく、それだと時間をかけすぎてローニャに危機が及ぶ可能性が出てくる。

 アンタレスは魔王と同じく疲労とは無縁だが、ローニャはそうではない。長時間の戦闘では疲労困憊となるだろう。

 そして疲労した体では、弱兵の一撃でも致命傷となりうる。

 

(ま、なる様になりますか)

 

 アンタレスは人差し指から魔力の糸を生成し飛ばし、横なぎに振るう事でアンデッドを薙ぎ払う。

 ローニャと騎士は剣を抜き、その剣でアンデッドに斬りかかる。

 

「はぁ!」

 

 ローニャが掛け声とともに剣を振るい、ゾンビのアンデッドに斬りかかる。

 ゾンビは盾で防ごうとするが聖力で強化した剣によって盾事斬られ、体が縦に割れる。

 

 ローニャは勢いを維持しそのまま周囲のアンデッドに斬りかかる。

 剣で、時には盾で、更には足まで使って実戦的な戦闘スタイルでアンデッドと戦う。

 

 アンタレスは十の指先から糸を飛ばし、斬撃としてアンデッドを細切れにしていく。

 

 騎士は少々苦戦している。全身鎧なので何処を攻撃されても一定値防ぐことが出来るが、鎧を着ていなければ致命傷を受けていただろう。

 この中で一番弱いのは騎士だ。故にこの中で一番苦戦している。

 ローニャは数の多さに気遣う暇は無く、アンタレスは余裕があるが知り合いでも無いただの騎士に気を遣う気はない。

 

 三対百という通常ならばまず負ける戦いは、聖力と魔力という超常のエネルギーをもってしてせめぎ合っていた。

 

 

「はぁぁぁ!」

 

 ローニャが聖力を高め、大技を発動する構えを取る。

 

輝きの刃(グランツブレード)!」

 

 ローニャは叫び、ミスリルの剣に聖力で出来た剣を纏わせる。

 聖力による剣だ。大剣と呼んでいい長さを持つ。二十メートルはあるだろう。

 技名を叫ぶのは技を術として安定して成立させるためである。

 

 ローニャは横なぎに剣を振るい、二十体近いアンデッドを薙ぎ払った。

 

 

「死になさい」

 

 アンタレスは両手を歓迎するかのように開くと同時に指先から極小の魔力の糸を生成し飛ばす。

 その後両手を閉じる様に動かし、範囲内のアンデッド二十数体をみじん切りにする。

 

 騎士は範囲攻撃技を持たないのでちまちま攻撃していた。

 

 アンタレスが危惧したが、この程度意味が無かったか、とアンタレスは安堵するのだった。

 

 

 

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