一泊二日でレッドもホワイトも両日行きましたが、めちゃくちゃに貢いできました。
イベントを通してシュテルに脳を焼かれました…kawaii!!
フェイトたちの控室を後にし、俺とヴィータは特務隊の控室へと戻ってきた。
シグナムはというと――いまだはやての“魔の手”の中。今日中に無事に帰還できるよう、そっと心の中で合掌しておく。
扉を開けると、すでにティーダさん、ヴァイス、そしてクイントさんが揃っていた。
相手チームのことを説明しつつ作戦を考える。
「なるほど。相手チームは全員、ユウトくんやヴィータさんの知り合い……しかも相当な実力者揃い、というわけですね」
クイントさんが軽く額に手を当て、冗談めかした笑みを浮かべる。
「ま、自分で言うのもなんだが……相手はそれぞれがあたしやシグナムにも劣らねぇ強い連中だ。特に現役執務官のクロノは厄介だぞ」
ヴィータが腕を組み、どこか真顔で言い放つ。
「……素の実力だけで見たら、お前らじゃ役不足感は否めねーな」
「え、えぇー……つまり俺たち、最初から“負け確定”ってことですか?」
ヴァイスが心底げんなりした声を漏らす。
「ばーか。“素の実力”だけで見たら、って話だ。実力差をどれだけ埋めれるか。カートリッジの可能性を見せる。そのための公開演習だ。お前ら、なんのためにこの半年、地べた這いずって鍛えてきたと思ってんだ?」
「……じゃあ、勝てる可能性はあるってことっすか?」
ヴァイスが期待を込めて問いかけると――
「……まぁ善戦くらいは、できんじゃねーの?」
「無責任すぎません!?」
ヴィータは肩をすくめる。
「だってなぁ。ユウトはこの一週間毎日しごいてたけど、お前らは直接見てねーし。成長も確認してないのに“絶対勝てる”なんて言う方が無責任だろ?」
「理屈としてはわかりますが……逆にプレッシャーきつくないですかね?」
「ま、伸びしろ完全に伸びきってりゃ何とかなるくらいだな」
「いやいやいや!?」
ヴァイスがぼやくのを横目に、ティーダさんが小さく笑いながら話の流れを戻す。
「――それより、ユウト。君自身はどうなんだ? 勝ち筋は見えてるかい?」
「うーん……」
俺はしばし考え、ゆっくりと口を開く。
「4対4の少人数戦になると、どうしても不確定要素が多いです。正直、ポジションの偏りが大きいっていうか……」
「こっちはクイントさんが
「だけど相手は、適正だけの話だったらGW一枚にCG三枚。中・遠距離主体の布陣になると思います」
「なるほどね。“The ミッドチルダ式”って感じの魔導師チーム。中・遠距離での制圧に強い。となると射程や得意レンジ的に私たちとしてはどちらかというと接近戦に持ち込みたいけど……そこまでの距離をどう詰めるかが勝負のカギ。」
「接近戦となるとフェイト……GWも要警戒ですね。練度も高いし、何より素早い。こっちの魔法をかわしつつ撹乱に徹されたら、連携は難しいかと。ああでも、接近に意識しすぎるとなのはの砲撃が通りやすく……」
思わず、俺の背筋が震えた。記憶に刻まれた“スターライトブレイカー”の衝撃を思い出し、ぞわりと寒気が走る。
「とにかく正直、かなり厳しい戦いになるかと…」
「怖っ……いやいや、やっぱヤバくないか?」
「こら、ビビるな。ったく、ユウトも不安になりそうなことばっか言うな。」
話に聞き飽きたような表情を浮かべたヴィータが、空になったマグカップを机に置きながら、俺の肩を叩いた。
「相手の強さを直視するのは悪くねぇ。たしかに警戒心は大事だ。でも相手の強さを前に弱気になるのはダメだろ。“自分たちにしかないもの”もちゃんと見とけ。あいつらに勝てるかは――そこ次第だと思うぞ?」
ヴィータの言葉に、部屋の空気が一段引き締まる。
「……自分たちにしかないもの、か」
呟きながら、俺は仲間たちの顔を順に見渡した。
俺は呟きながら、チームメンバーの顔をひとりひとり見渡した。
「あたしから言えるのはここまでだ」
ヴィータは立ち上がり、大きく伸びをする。
「あたしはもう寝るわ。お前らもあんま根詰めずに早く寝ろよ。試合前にコンディション崩すのが一番最悪だからな」
「おう、ありがとうヴィータ。もう少し作戦練ってから寝るよ」
「それは負けないためじゃなく勝つために必要なこと、か?」
ヴィータが振り返りながら問いかける。
「…もちろん。」
◇ ◇ ◇
ヴィータが去ってから、一時間。
特務隊控室のテーブルは、紙と走り書きの矢印で埋め尽くされていた。
「――ひとまず、こんなところだね」
ティーダさんがペンを置き、深く息を吐く。
「最初は魔力を温存しつつ、できるだけ接敵距離を詰める。地上や低空での進軍を徹底して……接敵後は有利なポジション確保を優先して一気に魔力リソースを吐いて超短期決戦に持ち込む。」
「作戦というより指針ね。でも、細かく縛りすぎると戦場じゃ硬直するし、これくらい緩いほうがいいわ」
クイントさんが頷きながら腕を組む。
「俺としては、クイントさんの負担が心配ですけど。ヴァイスの支援ありとはいえ、陸戦魔導師が空の魔導師との一騎打ち……」
俺が呟くと、クイントさんは軽く肩をすくめた。
「役回りがシンプルで助かるくらいよ。目の前の敵を叩くだけ。――それを言うなら、ティーダくんの幻影魔法のほうがよっぽど酷じゃない?」
「まぁ、今回の僕の役回りは時間稼ぎ要員だからね。幻影魔法で撹乱しつつ一人以上足止めできれば御の字。消費が激しいから五分が限界だと思うけど……それでもやるしかないよね。最優先したいのは狙い、あの砲撃型の子と、アリシア技術官の妹さん、だったっけ」
ティーダさんがさらりと言う。
「いや、ほんと頼もしすぎっすよ。……俺なんて“臨機応変にやれ”の一言で終わったからな」
ヴァイスがぼやくように笑う。
「後方支援のFBなんてそんなもんだと思うけどなぁ。あ、でも明日はヴァイスの狙撃、めちゃくちゃ期待してるから。…絶対外すなよ?」
「ユウトこそ、飛ばしすぎて相手を倒すより先に少ない魔力空っぽになんなよ?」
「ははっ、それはお互い様だろ」
「あ?」「お?」
ティーダさんは俺たちの間に割って入るように苦笑した。
「仲間同士でプレッシャー掛け合ってどうするんだい。――さて、そろそろ休もうか。ヴィータ教導の言うとおりコンディションを崩すのが、一番のよくないよ」
「そうだな」
ヴァイスが立ち上がる。
自然と俺たちは輪を作り、右手を重ねた。
「……よし、明日は――」
「「「絶対に勝つぞ!」」」
声が重なり、拳の熱が伝わる。
その瞬間、胸の奥に火が灯った。
敵は強い。だが、逃げる気はない。――勝ちに行く。その気持ちだけは、誰ひとり嘘じゃなかった。
◇ ◇ ◇
ーークロノ視点
本日の業務を終え、明日の打ち合わせをしようと訪れた本局チーム控え室。
部屋の外からもなにやら騒がしい声が聞こえる。
扉を開けると、すぐに視線が集まった。
「…やあ、明日の作戦は決まったかい?」
「あ、クロノくん!」
「クロノ、久しぶり…元気だった?」
「ああ、依然変わりないよ。久しぶりだな。」
軽く頷いて答える。――なのはもフェイトも顔つきが少し大人びた気がするな。
はやてが小さくため息をつきながら振り返った。
「作戦なんやけど、ちょっと揉めてるところがあってなぁ。」
「揉めてる点…なにを?」
「ほら、明日の模擬戦って4対4の少人数戦やろ?少なくともどこかでは1on1の場面が起きると思うからそれぞれのマッチアップ相手を考えよって私が言うたら…」
「クロノくん! ユウトくんの相手は私がいいと思うよね!」
「クロノ、戦闘スタイル的にも私の方が適任だと思うよね?」
「「ねぇ!?」」
……言い合いながらこちらを見てくる二人。
珍しい。なのはとフェイトがここまで張り合うなんて。
「…こんな感じで2人ともユウトくんの相手したいって聞かへんのや。」
「……一応聞くがはやて、君は?」
「私はええわ。元々接近戦得意やないし、勝つためなら後方支援一択やね。それか一対一の場面になるなら相手のFB狙い一択や」
「それは合理的だが……ユウトにまだ“アレ”を見せてないだろう。こういう場で披露するのは、君の性格なら好きそうだが」
「んー、確かにサプライズは好きやけどな。明日は絶対に勝たなあかんから、遊んでる場合やないわ」
言い切るはやての目は笑っていなかった。
背筋に冷たいものが走る。
一体何がそこまでさせるのか…。
「うん…明日は絶対勝つよ。そのためにユウトの相手は私が…。」
「フェイトちゃん、ここいちばん大事な場面なら私が戦った方がいいと思うのっ!」
「…す、凄いやる気だな。なにがそこまで君たちをやる気にさせるんだ。」
「あれ、クロノくんは聞いてへんの?実はさっきな、ユウトくんの取材をしてた広報官の方から聞いたんやけど、ユウトくん、負けたら何でもするって言ってたらしいんよ!」
「な……っ」
頭を抱えそうになる。そんな不用意な……いや、らしいと言えばらしいか?
でも相手チームが分かっていないはずのユウトがそんなこと言うとは思えないが…
インタビュアーの広報官、すこし調べておくべきか?
一応穏健派の派閥からの人材だったはずだが…
「ユウトくん、インタビューでもえらい自信満々で答えてたし本気で勝つつもりで来るはずや。そこで私らが完勝して、ご褒美もらいつつ…ちょーっとだけ連絡と帰省とかしなかった事にお灸を据えてやろうってなったんや。そしたら2人とも自分が相手するって言うてな?」
「そ、それは……」
まずい。この流れでは、“善戦しつつ惜敗”という筋書きが吹き飛ぶ。
(……題目は試験的なカートリッジ導入の結果を上層部に見せる場。美しい形は、適度に苦戦させてあちらに勝たせて“導入の必要性はあるが、万能の物ではない”と締めることだった。だが……なのはたちがこの調子では、容赦なくユウトを狙いにいくだろう。)
「なぁ、クロノくん。」
「な、なんだい…はやて。」
はやての声に思考が中断される。見上げると、なにかを疑うような鋭い目。
「なんや、えらい焦ってる顔して…なにかあったん?」
「い、いや…明日の試合展開について考えてただけだよ!!」
「そっかぁ、なら安心やなぁ。クロノくんには凄い頼りにしてるんよ。実力も経験も、やっぱり頭ひとつ抜けてる。そんなクロノくんなら…明日とーっても活躍してくれるよな??」
「あ、ああ…もちろん全力を尽くすよ。」
「うん、ええ返事や…!」
「ーだから私がユウトくんの相手をするのっ!フェイトちゃんは最後にやった模擬戦私に負けたでしょ!」
「そ、そんなこといったらここ半年の模擬戦は私の13勝12敗15引き分けで私の方がなのはより勝率高いよ!」
「でも最後に勝ったのは私だもん!」
「ず、ずるいよ…なのは!」
「ずるくないもん!」
「「むむむ…っ!」」
「なんか段々ヒートアップしてきてないか?」
「あかんなあ…このままじゃ本気でけんかし始めかねん。そろそろ仲裁せなあかんなぁ。よいしょっと。」
「はやて…なにを?」
「ええから見とき…はい、2人とも注目っ!」
ぱん、と手を打ち、はやては二人へ向き直る。
「ほら、なのはちゃんフェイトちゃん! ユウトくんばっかり見てたら勝てへんで? 他の特務隊の方々も強いんやから!相手チームの二人は元々現役の管理局員、ユウトくんと同じ新人枠の人もシグナムも見込みある言うてたし…油断して負けたらどうなるかわかってるよな?」
「ご褒美が…」
「貰えない…!?」
一瞬で引き締まる二人の顔。
……恐ろしい。これが“主”の力なのか。
「分かったらなのはちゃんもフェイトちゃんも喧嘩はそろそろやめて、経験豊富なクロノくんも交えて改めて作戦考えるで!ええな!」
「うんっ!頑張ろうねフェイトちゃん!」
「うん。なのはも…絶対勝とう!」
「…ふふふ、これで二人のやる気は万全。あのすけこましにはそろそろ誰のものかはっきりさせんとあかん。なんでも言うことを聞くご褒美…なにしてやろうか楽しみやなぁ。」
はやての口元は笑っている。だが、その声の奥底に潜むものは――笑いではない。まるで氷の刃が言葉を削るような冷たさが、そこにある。
「は、はやて……?」
「どうしたの、クロノ。怖いもの見たような顔して……」
問いかけられて、僕はぎこちなく笑ったふりをした。
「な、なんでもないよ」
――心の中では違った言葉が湧き上がる。何でもないわけがない。はやての気配は、あの日、闇の書の“闇”と対峙した時と似た重さを持っていた。確かな重圧。あの感覚が、胸の奥でざわつく。
なんて切り替えだ……。あれほどのオーラを、彼女は軽く纏ってみせる。まるで何事もなかったかのように笑いを浮かべられるその強さに、ただただ圧倒されるしかない
僕は小さく息を吐き、拳を握りしめる。
(すまない、ユウト。君のことは心配だ。だが、ここで場を荒らすわけにはいかない。露骨に庇えば――僕の命が危ない)
だから、僕は決める。見せかけの接戦を演じきる。はやてに余計な疑念を抱かせず、なおかつユウトたちが敗北の烙印を押されるような結果だけは避ける。微妙なラインを、冷静に探る。
(しっかりしろ、執務官。最小限の損失で最大の成果を――それがいつもの仕事だ。……とにかく僕も頑張るから、ユウト。どうか無事でいてくれ。いや、正直に言えば……君が悪いところもあるんだから、とにかく全力で頑張ってくれよ)
自分の中で必死に理論武装を終え、ユウトに祈るように願う。
そのまま、なのはとフェイト、そしてはやてと肩を並べて作戦会議へと戻った。
はやての声は軽やかで暖かい。だけど僕の中には、彼女が放った鋭い光の残像がいつまでもちらついていた。
端的に言えば――普通にトラウマだ。