○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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反撃の狼煙

 金色の閃光が、瓦礫の煙を切り裂いた。

 ユウトを吹き飛ばした金色の魔導師(フェイト)が、ユウトを追って前進する――その軌道を

 塞ぐように、魔力弾を放つ。

 

 「……いけっ、ライノショット!」

 

 背後から放たれた一撃。魔力を圧縮して撃ち出す高威力の弾丸――しかし。

 

 「っ……!」

 

 次の瞬間、蒼い魔力の防壁がそれを阻む。直後に現れたのは、執務官を表す黒い制服に身を包んだ、一本の杖を携える男――最年少執務官(クロノ)

 「クロノ、任せたよ。」

 

 「ああ。さてと、いい妨害だったけど……君たちの相手は僕だ。」

 

 僕が警戒を強めるその時、別の影が――地上から跳躍し、執務官の位置へと迫る。

 

 「ならば、突破させていただきますっ!」

 

 柔らかな声。その穏やかな響きに反して、繰り出されるのは重たく鋭い拳。

 

ストライクアーツとナックルリボルバーによる加速が重なり、

クイントの拳に乗せられた力は回転と速度により増していた。

 (並大抵の防御魔法じゃ――抑えきれない。いける!)

しかし、相手は経験豊富な執務官。瞬時に対応策を打ってきた。

 「受けるには威力が強すぎるな……でも甘いよ。バインド!」

 光沢を持つ魔力鎖が走り、クイントの身体を空中で捉える。

 殴りかかろうとしていた彼女の姿は、空中でぴたりと静止した。

 

 「……っく!」

【クイント DAMAGE 100 

 →LIFE 3400 】

彼女が振りほどけないということは、なにかしらのからくりがある拘束か。だったらーー

「クイントさん、作戦変更だ!」

 

掛け声をあげながら…僕はクイントさんに()()()()発砲した

 

 

「なにを…まさか」

 

【クイント DAMAGE 500 

 →LIFE 2900 】

 

構えた銃型デバイスから放たれる射撃が、手足の鎖を撃ち抜く。鎖は音もなく崩れ、鎖が砕ける音と同時に、クイントが即座に再始動する。

 

 「……お返しですッ!!」

 

 動き出した瞬間にもう拳は振り抜かれていた。

 しかし、密着状態からの腕を使った加速では、本来の威力は発揮できない。

 

 「くっ……!」

 

【クロノ DAMAGE 800 

 →LIFE 4200 】

 拳と防壁が正面から衝突し、魔力の衝撃が弾け飛ぶ。

 

 「ロード、カートリッジ!!……貫いてッ!」

 

 衝撃は障壁を崩しはしなかった。

 しかしクイントさんは無理やり、後方にあるビルの壁に向かって徐々に執務官を押し込む――

 

 「っ……なんて馬鹿力!?」

 「レディにいうセリフじゃないですよ!?」

 

 【クロノ DAMAGE 1500 

 →LIFE 2700 】

そのまま二人の身体が、後方のビル壁面を突き破り、建物内部へと突入する。

 

 爆ぜるガラス片と、空中に舞う魔力の火花。

 

 クイントさんの一撃は決定打ではなかった。

 でも――目的は果たせた。

 

 (空戦魔導師を、閉所に押し込む!)

 

 これで彼女の接近戦能力が最大限活かせるし、外からの援護もない。

 僕は即座にビルの反対側から回り込む。

 

 (僕の仕事は、クイントさんの援護と、執務官をこの空間から出させないこと)

 

 このまま《最強格》と目される相手を倒せれば、一気に流れを掴めるはずだ。

 本来はユウトが執務官の相手をして僕らは別の子をビルの中で一気に倒す予定だったが、それは叶わなかった。

 クロノ執務官 vs 僕&クイントさん。

 相手は格上、でもこっちだって二人ともベテランと呼ばれるぐらいには歴は長い。

 

 (ユウトとヴァイスには人数不利を負ってもらうことになるけど……)

 

 きっと大丈夫、ユウトは対複数を想定した訓練を積んだと言っていたし、ヴァイスも一人で戦えるように特訓された。

だから僕は…必ず目の前の相手を落とす!

しばらく、にらみ合いの硬直が続く。

 

 ──戦況が動いたのは、とある放送がきっかけだった。

 

【ユウト DAMAGE 1500 

 →LIFE 2000】

 

 「「今っ!」」

 

 クイントさんの拳が執務官の防御の壁を殴りつけ、その衝撃で細かな瓦礫が弾け飛ぶ。  その背後から――時間差で飛び出す魔力弾。放物線を描いた設置型と、僕の放った直射弾が、クロノ執務官を挟み撃ちにする

 《コンビネーションパターンΔ》。

 幾度も反復した、僕らの“必勝パターン”の一つだ。

 

 「狙いは悪くない……けど、まだ浅い!」

 

 クロノ執務官は、ほんのわずかに首を傾けただけで、二発の弾道をギリギリで回避。

 その勢いのまま、床を蹴り――一気に距離を詰めてくる。

 

【クロノ DAMAGE 50 

 →LIFE 2650 】

 

 「ティーダ君、下がって!」  「っ、はい!」

 

 クイントさんの叫びで滑り込みながら後退する。  

 その隙を埋めるためにクイントさんが拳を振り抜いた。

 

 『Cartridge Load』    

リボルバーナックルの内部でカートリッジが回転し、クイントの拳が赤く閃く。

 

 「うちのエースはやらせませんよ!!」

 「…エースはユウトじゃなかったのか。まあ、やることは変わらないけどね。」

 

地を滑るように踏み込んだ執務官と、拳を構えるクイントさんが真正面から激突――

 

 「ッッ……!」

 

 衝撃波が周囲の車止めを吹き飛ばす。

 

 拳と杖がぶつかる瞬間、執務官のデバイスがわずかに反らされ、クイントさんの拳がその柄に食い込む。  その体重と魔力の乗った拳は、まさに必殺の一撃――

 

 だが。

 

 「――動きは悪くないです。でも、あなた達ならもっとうまくできるはずです!」

 

 クロノ執務官は――あえてデバイスから片手を離した。

 柄を支点に体をひねり、クイントさんの懐を脱出。

 即座に魔力を展開し、僕のほうへと手のひらを向ける。

 

 『chain Bind』

 

 「……っ!」

 

 床に魔法陣が浮かび、煌めく鎖が一斉に走る。

 

 「くっ……!? しまっ……!」

 

 僕の両脚が、音もなく締め付けられた。

 

◇    ◇    ◇

 

 

…完全に、やらかしたなぁ。

 

【DAMAGE 1500 

 →LIFE 2000

クラッシュエミュレート:感電(運動機能麻痺)】

 

デバイスに 表示されたステータスに思わずため息が漏れる。

 咄嗟に回避したつもりだったが、かすっただけでこのダメージ。

 分断された焦り、奇襲への対応ミス、そして何より――

 

(……フェイトを、軽く見すぎた)

 

武装面ではフェイトが一番制限あったのは事実。

なるべく早く倒してほかのカバーに行くことも方向性としては間違ってないはず。

 

ただ…絶対に負けられないという焦りと、たぶんだけど、観客から見られるという緊張で本来の動きができなかった。

 

とにかく、その他諸々の理由でとっくにライフは開幕の半分になった。

 

ぎりぎりで回避して直撃は避けたつもりだったけど、かすっただけでこのダメージか…

地味にフェイトの変換資質がこのルールだと悪さしてるな…付与効果とかインチキすぎる。

まあ実際喰らっても痺れ感じるけど。

 

(とにかくこのままじゃ終われない。)

「アンブレイカブル、《静かなる風よ、癒しの恵みを》…」

【HEALING 200

 →LIFE 2200

 《状態異常解除:感電》】

 

「……俺の回復魔法じゃ、この程度か。せっかくシャマルに習ったのにな」

 

 言い訳のように呟いたところで、念話が入る。

『ユウト!大丈夫か!?』

 

「ああ、ちょっとドジった。でも平気。すぐ立て直すから――作戦通りに頼む」

 

『作戦通りって、もう予想外のことばっかで、なにがなんだか…ティーダの方は執務官にクイントさんと一緒に交戦してて念話でねえしよ…』

 

「そっちの様子は?」

 

『砲撃手のほうはさっきのサーチャーで戦場を探ってるみたいだ、もう一人は…大がかりな魔法準備してるみたいだけど、今んとこ準備に時間かかりそうだ。』

 

「……はやては広域殲滅魔法で決着をつける気か。

 なのははその護衛兼、ヴァイスへのカウンター役ってとこだな。

 だったらどっちかがエース……落とせば勝機はある」

『ギャンブルで片方狙撃するか?』

 

「正直、ありだな……でも、今はまだ早い。

 はやての詠唱を妨害しつつ、落とされないように立ち回ってくれ。

 あいつの全体攻撃喰らったら、こっち全滅する。冗談抜きで、試合終了だ」

 

『おいおい……無茶言うなって。狙撃手なのに1対2やらされるのは――』

 

 ぷつん。念話が途切れる。

 

「……ヴァイス?」

 

「狙撃手の方は、今──なのはが見つけてくれたみたいだよ、ユウト」

 

 背後から届いた、柔らかな声。

 

「ッ……フェイト」

 

 その姿はいつの間にか、自分の死角に入り込んでいた。

 微笑みのような表情を浮かべながら、魔力の刃を構えている。

 

「ダメージ……思ったよりは減ってなかった。

 ……あそこから、防いだんだ。」

 

「避けた、つもりだった。けど……避けきれなかった」

 苦笑しながら言い返す。

 

「でも、お前はやっぱり凄いな。強い」

 

「ありがと……じゃあ、落とすね。」

 

 淡々とした口調。その目には一切の迷いがない。

 

 だから、俺も応える。

 

「……勝負は、ここからだろ」

 

 身体を低く構える。それぞれのマッチアップはなし崩し的にだけど決まった。

 

――そろそろ、反撃の時間だ。

 

◇     ◇     ◇

 

ユウトはさっき「心配するな」って言ってたけど――

やっぱ、無理してる感じだった。

 

たぶん、あいつはこの模擬戦に、何かを背負ってる。

作戦会議の時から感じてた、焦り。

それを俺は、気のせいだって見過ごした。

その重りを、少しでも軽くできなかったのは……俺のミスだ。

 

だから――

 

「言われてたとおり、邪魔しないとなぁ……ったく!?」

 

背後から追ってくるのは、桃色に輝く誘導弾。

この色――あの砲撃手の子、たぶん高町なのはって子の仕業か。

 

「詠唱してた魔法の方は……っ!」

 

一瞬だけ、視線を後方に投げる。

空には、五重に重なった巨大な魔法陣と、膨張する魔力球体。

 

(広域殲滅魔法――ユウトが言ってたやつか。確かに、アレを撃たれたら全員巻き込まれて試合終了だな……!)

 

誘導弾はしつこく追ってくる。けど、それ以外の攻撃は来ない。

詠唱している術者の護衛に徹してるんだろう。

わざわざ俺を確実に排除するために危険を冒す必要はないってか。

 

(こっちの位置の把握は済んでる。狙撃に対しては防御なり回避なりで防げるから、俺のことは後回しでいいってか……!)

 

最近、年下にナメられてるって自覚はある。

二個下のユウトに普通にタメ口きかれて――まぁ、あいつはもう仲間だからいいとして。

ティアナちゃんには、家事の仕方で小姑ばりに指導され――

今はユウトより年下の魔導師たちに、脅威とすら思われてない。

 

……俺だって、誇り(プライド)ぐらい持ってる。

 

(温厚な俺でも、そろそろキレてもいい頃合いだよなぁ……)

 

そして、俺は――選ぶ。

 

「ここいらで一発、派手にぶちかまさないと気が済まないよなぁ! ストームレイダー!」

 

I'M READY.(いつでもどうぞ)

 

バレてる狙撃手が、真正面から撃っても無駄だ。

一発の弾丸は防がれるだろう。

防御貫通特化で撃墜を狙ってもいいが、おそらく向こうはバリアジャケットからして防御も堅そうだ。

だから、囮をつかって護衛を引きはがし本命を狙う。

 

ここで使うのは前線で編みだした新技――時間差同時狙撃。

ただ二発続けて撃ったように見えて、実は弾速が違う。

弾速の遅い魔力弾を先に放ち、着弾のタイミングに合わせて別の狙撃を時間差で撃つ。

 

標的は、空を旋回して護衛し合う二人。

片方が狙われた瞬間にもう片方が反撃する戦法――だったら、まとめて打ち抜けばいい。

 

――放つ。

「……いくぞッ」

『Sure.』  

一発目、魔力をたっぷりため込んだ高威力低弾速のハードブリーチ弾を高町なのはって子めがけて打ち出す。低弾速といっても人間の目ではぎりぎり反応できるかどうかの速度。

でも、空戦魔導師なら反応するだろう。

 

だからこその2発目……

 

「ストームレイダー、回せッ!」

Cartridge Load.SonicShooter』  

 

カートリッジが炸裂。

派手な高火力低速の弾丸が空を割り、続けて撃ち込む本命弾――ソニックシューター。

今度は速度重視、加速を意識して鋭く細身に形成された一撃。

高町なのはは、必ず一発目に集中する。その隙――警戒が薄れた八神はやてへ、直撃を。

 

「……もらったっ!」

 

【なのは:DAMAGE 500 → LIFE 4500】

【はやて:DAMAGE 3500 → LIFE 1500】

 

――必殺の二撃は、確かに届いた。

 

護衛のほうは、防御魔法を貫通こそしたものの、本体に届く前に逸らされた。

そして、本命の一撃は――詠唱に集中していたはやてのLIFEを、大きく削り取った。

 

すぐさま狙撃地点を離脱。

反撃とばかりに打ち出された砲撃を避けつつ、ビルの陰へ滑り込む。

 

そして、念話を開く。

 

「広域魔法は止めた。だから――お前らは、安心して目の前の敵だけに集中!!」

 

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