○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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修羅場

(なのは視点)

 

RH!! (レイジングハート)……はやてちゃんっ!?」

『Divine Buster』

 

 相手の弾道の位置から予測して砲撃を撃った瞬間私の真横に光が通り抜ける。

 直撃を受けたはやてちゃんが、空中でバランスを崩しかけ、魔力で体勢を立て直す彼女に、私はすぐに駆け寄った。

【はやて:DAMAGE 3500 → LIFE 1500】

「……あかん、作戦通りに進みすぎて油断しすぎたなぁ。やっぱり、ヴァイスくんもかなりのやり手やったかー」

 

「よ、余裕そうだね……?」

 

「なのはちゃんは軽傷やし、ウチもまだ戦える。戦況自体はまだ優勢や。私もここから巻き返すで!」

 

 クロノくんは建物内に追い込まれてるけど、その分、敵のベテラン二人組を足止めしてくれてる。

 フェイトちゃんはユウトくんと交戦中。あれも作戦通り、爆発力のあるユウトくんに対する時間稼ぎ。

 

 そして私──はやてちゃんの広域殲滅魔法を通すために、護衛と狙撃への警戒を担当してた。

 

 ……ここまでは、はやてちゃんの作戦通りだったはずだった。

 

 けど──

 

「……まさか、一発目の狙撃で私の防御を抜いて、その直後に本命をはやてちゃんに撃ち込むなんて……」

 

 完全に読まれてた。あれは、私の判断ミス。

 防ぎきれるって、どこかで甘く見てた。

 

「ごめん、私のせいで……!」

 

「謝らんといて、なのはちゃん。これは、私の作戦が甘かっただけや。それに、まだ終わりやない」

 

 そう言って、はやてちゃんはゆっくりと構え直した。

 その瞳に宿る決意に、私は少しだけ胸を撫で下ろす。

 

「……こっからは、次のプランや。切り替えていこ!」

 

 そう言いながら、はやてちゃんは胸元からペンダントを取り出す。

 十字架の意匠が刻まれた、あの大切な──。

 

「使うんだね……! じゃあ、はやてちゃん、狙撃手の位置はあっちだよ!」

 

「了解っ! ……ほな、巻き込まれんようにな!」

 

 描くのは──第二の作戦。

 広域魔法が失敗した場合、かつ対戦相手の組み合わせが想定通りだったときに備えた、戦術フォーメーション。

 

 私とフェイトちゃんが、敵エース(と想定される)ユウトくんを挟み撃ち。

 一方ではやてちゃんは、狙撃手──ヴァイスさんの支援を切り離すため、自ら結界を張って相手ごと封鎖する。

 

 はやてちゃんは、正面戦闘は苦手。だけど、おそらく相手もそう。

 それに、今のはやてちゃんには……あの子がいる。

 

 だから──大丈夫。

 

 私とフェイトちゃんで、先にユウトくんを墜とす!

 クロノくんや、はやてちゃんが落ちるその前に──!

 

 勝負は、まだ終わってない!

 

 ◇         ◇         ◇

(ユウト視点)

【ユウト LIFE 1650】

【なのは LIFE 4500】

【フェイト LIFE 2500】

 

 

 はっきりいって状況は最悪。

 少しだけライフを削られながらも、受けるダメージ以上にフェイトに反撃をしていた俺のもとに…敵の増援が到着した。

 

『Divine Shooter』『Photon Lancer』

 金色と桃色の魔力弾が網のように迫る。正確無比な軌道で、俺の進路を容赦なく潰しにかかってきた。

(……でも)

「……ディジター!」

 

『Unbreakable Boost R』

 

 カートリッジが弾ける音と共に地を蹴る。

 

 六連続の超加速──《アンブレイカブル・ブースト・リボルヴ》で縦横無尽に、ジグザグに駆け抜けながら魔力弾をすり抜けていく。

 フェイトほどのトップスピードでは自由に飛べない。この魔法は、加速と方向転換を繰り返すことで、素の状態でもフェイトに喰らいつくために作った。

 無茶すること前提のこの技を、ヴィータには「ベルカより脳筋」と笑われたけど──それでも今の俺には、十分切り札になる。

 

「なにその魔法!?」

 

「……この半年間、ただ任務をこなしてたわけじゃない! 来てくれたなら、まずはそっちから落とさせてもらうぞ、なのは!」

『Flash Edge』

 ディジターの先端に光の刃を形成。そのままなのはに突進し──

 

「させないよ! バルディッシュ!」

『Sonic Move』

 

 俺の動きを読み切ったフェイトが、高速で割り込んでくる。

 

「……そこッ!」

『Flash Edge Zwei』

 

 左手のアンブレイカブルからも刃を生成。二本の光刃がブーメランのように曲線を描いて飛び、フェイトを狙う。

 

「……直撃コース!」

 

「いまカバー行くよ、フェイトちゃん!」

 

 その進路を読んで、なのはが防御魔法を展開しようと割り込む──その瞬間。

 

「……そこだ、ディジター!」

Vanish.

 

 視界が白く染まる。

 二本の光刃から放たれた閃光が炸裂し、周囲の視界を奪っていく。

 

「──眩しいっ!?」「視界封じ……!」

 

「お前ら二人相手に別に一人で勝てるとは思ってないさ……でも、俺の仲間が、お前らに劣ってるとも思ってない! だからアイツらを信じて、俺はここで──お前らを足止めすることにした!」

 

「ご褒美のために絶対負けられないんだから!」

「うん。それに、ちょっとだけ寂しい思いさせたユウトに、お仕置きしなきゃだもんね」

 

「カートリッジ使えないお前らに簡単に負けてるようじゃ……いつまでも俺は、お前らに追いつけないんだよ!!」

 ディジターを構えたまま、左手のアンブレイカブルに魔法陣を展開する。

 紫と白に輝く幾何学文様──ベルカ式魔法陣だ。

 

「……ベルカ式とミッド式の同時使用!?」

「ユウト、まさか……!」

「これくらいしないと、胸張って強くなったっていえないからな……!」

 

 片手にディジター、もう片手にアンブレイカブル。

 デバイスの同時使用のメリットを今まで生かし切れていなかった。

 アームドデバイスであるアンブレイカブルをただの接近戦・カートリッジ用で終わらせない。

 俺の課題を教えてくれたのは、シャッハ師匠だった。

 技の応用を見せてくれたのは、守護騎士たち。

 そして、五歳の頃からクロノに叩き込まれた魔力制御の技術──

 それが今、形になる。

 

「この力で──!」

『Cartridge Load──Ready.Unbreakable Bullet!』

『Explosion! Arms strengthening(武装強化)!』

 

「あの魔法シグナム達と同じ……いや、速い!?」

 

「ベルカ式の魔法ならうちの部隊に使い手が多くてな! いろいろ学ばせてもらった!!」

 

 ディジターから魔力弾を射出し、同時にアンブレイカブルの噴射で一気に加速。

 足元の魔法陣が回転する。地面を踏み抜きながら、なのはに急接近!

 

「速い……! でもさせないよ……!」

『Sonic Move』

 フェイトが割って入り、バルディッシュを振り下ろす。

 

「アースラでお前(フェイト)と考えたカウンター戦術のこと、忘れてないよな!」

 

 その斬撃をディジターで受け止め──アンブレイカブルで追撃。

 

「……そう簡単にやらせない。バリアジャケット、パージ!!」

『Sonic Drive』

 

 バリアジャケットがソニックモードに変換され、雷撃が迸る。

 手足に防具を集中させ、防御を削って速度に全振りしたフェイトが、瞬間的に間合いを離脱する。

 

(逃がしたか……でも──)

「気づいてるよ!」

『Chain Bind』

 

 背後から隙を狙っていたなのはへ、魔力の鎖を飛ばす。

「バインド!? でも、こんなの──!」

 

 なのはは魔力を収束させて鎖が破壊し、拘束は解除される。

 ……だが、それも狙い通り。

「知ってるよ……なのはの、負けず嫌いなとこも!」

『Unbreakable slash』

 アンブレイカブルの斬撃が拘束解除の硬直に、ギリギリ間に合う。

 

「っぐ……っ、うまいっ……!」

 

【なのは:DAMAGE 1500 → LIFE 3000】

 

「まだ終わりじゃないぜ!」

 

 ディジターのトリガーを引く。構えは、なのはの砲撃を意識したもの。

 

『Blaster Form Ready』

「──フォース・ブラスター・ES!!」

『Forth Blaster / Early Shot』

 

 砲撃をまるで大剣のように薙ぎ払い二人に攻撃する。

 フェイトはかわし、なのはは展開された防御魔法が威力を受け止めるが──衝撃は殺しきれない。

【なのは:DAMAGE 500 → LIFE 2500】

 だが、その表情には……焦りと、笑みが同居していた。

「フェイトちゃん……」

「うん。ちょっと、やばいかも」

 

「このままじゃ……ご褒美、なくなっちゃうかもね」

 

「ユウト、本気で倒しにきてる」

 

 そう呟き、2人は顔を見合わせ──そして、ふっと微笑んだ。

 

 ──戦いを楽しむ、真剣な笑み。

 

「でも……楽しくなってきた!!」

 

「うん。ユウトとこうして遊ぶのも、久しぶりだからかなっ!」

 

◇         ◇           ◇

(ヴァイス視点)

 

「砲撃と誘導弾が止んだ……?」

 

 狙撃を成功させてから、移動のためにしばらく走っていた俺だったが、追ってきていた誘導弾と砲撃が突如として途絶えた。

 魔力の温存か、それとも別の作戦か──

 考えを巡らせる俺の耳に、ユウトからの念話が飛び込んでくる。

 

『ヴァイス! こっちになのはが来た。出来たらカバー欲しい!!』

 

「ユウト狙いに切り替えたのか! わかった、すぐにいくから待ってろ!!」

 

『助かる! はやての動きがないのは不安だけど、それよりもあの──i人相手はきついka-らなるべくha……』

「……ユウト?」

 

 念話が途中で切れた。敵の攻撃を受けた様子はないが、これは通信自体が途絶したような──。

 

「まさか……」

 そこで、違和感に気づく。

 空を見上げた瞬間、うっすらと見える淡い光が視界を包んだ。

 気がつけば俺は、黒紫の光が展開する結界の中に囲まれていた。

 

「見たこともない結界タイプ……てことは、ベルカ式、つまりはやてって子の仕業だな!?」

Analysis:Communication interference(通信妨害効果もあるようです)

「それで念話が切れたのか……っ!?」

 その直後、轟音と共に俺の二つ先隣のビルが光に包まれ文字通り消滅した。

「は、はあ!?」

 

 光が発生した場所に目を向けると、魔導書型のデバイスを持った少女が浮かんでいた。

 結界内だから味方の誤射気にせずぶっぱなす気か!

 

「ユウトの方いったと思ってたけど、なんでこっちに来てんだよ……Sランク魔導師!」

 

 このまま何もせずに身を潜めてもしょうがない。

 こっちの位置も大まかにはばれてるだろう……

 だったら攻勢にでて大規模魔法をさせる隙を与えないことが俺の勝ち筋か

 

「次の攻撃のタイミングで打って出るぞ、ストームレイダー!!」

Really? (正気ですか?)

「辛らつだな!? 安心しろ、向こうは広域支援型、正面戦闘は五分ぐらいの賭けだろ」

Being bad at something isn't the(苦手なのと出来ないは) same as being unable to do it.(ぜんぜん違いますよ)

「うるせぇ! やるったらやるんだよ……!!」

(ユウトは今二対一で頑張ってる。クイントさんたちも、とんでもなくやばい執務官を相手してる)

 

 思い返すのは、作戦を話し合った際、相手チームの弱点を探していた時。

 

 ──なのは達は実戦経験かなり豊富だし、臨機応変に戦えるけど、はやては……魔力量は世界一レベルだけど、実戦経験も少ないし完全後衛型だから自衛能力はいちばん低いからなぁ。

 あの中では一番付け入る隙があるはずだとおもうよ。

 

 ユウトが教えてくれた相手の情報アドバンテージと、隊長たちがつけてくれた半年の厳しい訓練と苦しかった実戦経験を自信に変えて、不敵な笑みを浮かべる自分を想像する。

 隣のビルが再び消滅したのを確認と同時に飛び出して撃ち抜く。

 

「堪忍なぁ……狙撃はもう通さへん」

 相手の手がふわりと上がった。  その瞬間、光が渦を巻き、周囲に防御壁が展開される。

 そして、俺の弾丸はいくつかの壁を突破するが、次第に勢いを落とし最後は停止する。

 

「なるほど……たしかに魔力量はとんでもないな……」

「悪いなぁ、ヴァイスさん。こうして会うのは初めましてやね? 前ちょっとだけ電話であいさつさせてもらったけど、八神はやていいます。細かい魔法制御は苦手やから……結界の中で思いっきりやらせてもらうな」

「いうことは素直なわりにやること、えげつねぇな……!」

「ヴィータからいろいろ話は聞いとるよ? 狙撃の才能はぴか一。でも……私と同じで正面戦闘は苦手やろ?」

「まじかよ……」

(教官……俺の情報流してたのか。いや、たぶんこの試合決まる前にちょろっと雑談で話した程度だろうけど)

 心の中で舌打ちしつつ、ストームレイダーを肩に構える。

「で、どうする気だ? 俺をここに閉じ込めたって、そっちのエースが落とされたらどうにもなんねぇだろ? そっちの応援にでもいった方がよかったんじゃねえか?」

 

 軽い挑発に、相手は軽く手を振る。

 

「心配せんでええ。なのはちゃんも、フェイトちゃんも、クロノくんも。私なんかよりよっぽど頼りになるしな。大がかりな魔法はもう間に合わへんし私ができることは、こっちでヴァイスさんの狙撃を封じること……それだけで、十分や」

 

「そうかい……なら、こっちはその余裕、崩してやらなきゃ筋が通らねぇな!」

『System all green. Standby ready. Slug Mode.』

 

 スコープを手で叩き、ストームレイダーのモードを切り替える。

 バレルが短く・太くなり、砲口は分けられ更にグリップには固定と保護を兼ね備えたアームガードが出現する。

 これが、狙撃形態から、こっそりストームレイダーと日夜相談して考案した中距離対応の『スラッグモード』。

 

「……やりあおうぜ、夜天の主さんよ! あんたの情報が古いってところ見せてやるよ!」

「……うん、来たってや。全力で相手したるで!」

 かけられる声音は、どこまでも優しかった。

 しかし次の瞬間、広がる魔力は優しさとは対極にある苛烈なものだった。

 

「ストームレイダー、ぶっ放せ!!」

『Diffusion Cannon』

「仄白き雪の王、銀の翼以て、眼下の大地を白銀に染めよ。来よ、氷結の息吹!! (アーテム・デス・アイセス)

 相手の頭上に無数の魔法陣が展開され、そこから空から地上へ降り注ぐ氷の雨。その一発一発が結合をつづけ、質量的な破壊力を持ち、地形を変え、戦場を雪景色に変えていく。

 対するは、ストームレイダーの増えた砲身から放たれる二発の弾丸。それがさらに空気中で分散してまるでショットガンのように広がる拡散砲。だが──

 

「……ちくしょう、飲まれる……!」

 

 氷の矢が肩を掠めた瞬間、全身が凍りつくような痛みが走る。

 

【ヴァイス:DAMAGE 500 → LIFE 1500|状態異常:凍結(行動阻害)】

 

「っ……動きが鈍る!」

 

 避けきれず、次第に足が止まっていく。

(なにが……特務行動隊だよ。こんなんじゃ……)

 

 弱音が、喉元までせり上がる。

 脳裏に浮かぶ仲間たちの顔。そして──

 

 息を吐く。結界内にひろがった冷気からか、白息が広がった。

 それでも氷の雨は止まらない。ストームレイダーにも氷の膜が張っていく。

【ヴァイス:DAMAGE 500 → LIFE 1000】

(まだだ…)

 

 ふと、モニターに映る観客席の方に向けた視線の端に、小さな手が振られていた。

 あいつ()が、兄の晴れ舞台を観に来てくれている。

 

(ここで……かっこ悪いとこ見せられるかっての!)

 

 奥歯を噛み締めた。内から込み上げる熱が、全身の血管を駆け巡る。

【ヴァイス:DAMAGE 500 → LIFE 500】

「体力残り三桁……この勝負私の勝ち──」

 

「ストームレイダー、回し続けろ!!」

『──Limit Overdrive.Full Blast.

 

 砲身の一部パージさせ、魔力を充填しながらビルの上へと跳躍する。

 

 ──ー狙いを定める必要なんてない。

 

 ──拡散弾を当たるまで撃ち続ける!!

 

 カートリッジシステムでの急速魔力補充と、砲身を展開してむりやりを放熱させて行う連射機構。

 時間差同時狙撃の際に見せた早打ち、それの拡散弾バージョン。

 

 もちろん負荷も激しいし、制御も難しい。

 そしてなによりスラッグモードでは放熱が間に合わずデバイスに負荷がかかりすぎる禁じ手。

 本来なら実践では使えなかったが……

「こんなにも冷たい氷が降ってるなら……むしろ好都合だよなぁ!」

 氷の雨も、空に飛ぶ魔導師も、すべて撃ち落とす!!

 

「私の魔法を利用して……きゃ!?」

【はやて:DAMAGE 800 → LIFE 700】

 広がる雪景色の中、ついに届いた一撃。

 連射された拡散弾が、防御を破り、その身を打ち抜いた。

 残念ながら本体には拡散した弾丸の一部が命中しただけ、想定よりダメージこそ多くはないが……

「よっしゃあ!!」

It's still coming! (まだ来ます、油断なきよう!)

「わかってる! ライフ状況は五分の両方死にかけ……つぎの一発で決める!」

 

そして、墜落して地上に落下した八神はやての様子を伺おうとビルの屋上から覗き込んだ――その瞬間だった。

 

地上から新たな光が放たれた。

 

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