○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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幻と隙

side-ティーダ

 

バインドで拘束された僕に、執務官は容赦のない連携を叩き込む。

 

「……S2U!」

 

『BLAZE CANON.』

 

咆哮とともに、空間が軋む。

光の奔流が、鎖に縛られた僕を直撃コースで貫こうとしていた。

 

「ティーダくんっ!!」

 

「……耐えてみせますっ!!」

 

魔力の壁を展開。だが――

 

「くっ……!!」

 

その壁は一瞬だけ拮抗し、すぐに砕け散った。

 

【ティーダ DAMAGE 3500 → LIFE 1500】

 

衝撃で視界が白く染まる。肺の奥に焼けるような痛み。

だが、気力はまだ折れていない。

 

(満タンでなければ今ので退場だった……運が良かった)

 

そして――

 

(鎖が……焼き切れた!)

 

砕けたバインド。動ける。まだ、戦える。

 

  「ティーダくん、まだ動ける?」

 駈け寄ったクイントさんが、心配そうにこちらを見つめる。

 残った魔力を搾り出し、立ち上がる。

 「まだ……やれます!ヴァイスもユウトもやばい状況なんです。年長者の僕らでここは勝たないと…っ!」

 「なら、ここからは私がもっと前に出るから。ティーダくんはさっきよりも後ろで私のカバーを頼むわね」

 

 「……いえ、まだ行けます」

 背筋を伸ばし、僕は静かに首を振った。

 

 「二人で同時に攻めないと……向こうに攻撃が入らない。今ので分かりました」

 

 「でも……っ。……わかったわ!」

 

 「――作戦会議は、敵の前でするものじゃない」

 割って入った声。

 その声と同時に、執務官の足が一歩、こちらへと踏み出す。

 

 「……っ、わざわざご忠告どうも。来るわよ、ティーダくん!」

 「はいっ!」

 

 「まぁ……僕も、ただ話を聞いて待ってたわけじゃないからね。感謝はいらないよ」

 執務官が指を鳴らす。

 瞬間――蒼い魔力の刃が、空間に浮かび上がる。

 無数の魔力の刃が、蜂の群れのように僕らに殺到する。

 

 「誘導弾なら……僕だって!」

 『Snake Hound』

 

 僕の誘導弾が、咆哮とともに飛び出す。

 スネークハウンド――緩やかに蛇行する魔力の追尾弾が、相手の刃を迎え撃つ。

 

 だが。

 

 (……抜かれた!?)

 

 軌道を見極められている。

 いくつかの刃が僕の弾幕をすり抜け、肩口をかすめる。

 

 「くっ……!」

 【ティーダ DAMAGE 500 → LIFE 1000】

 

 「私が隙を作り出すわ!」

 『Knuckle Bunker』

 

 クイントさんのアームドデバイスに、魔力が収束する。

 拳に蓄えられた一撃は、間違いなく致命打になりうる――

 だが。

 

 「――通しませんよ?」

 

 冷静な声。

 クロノはその攻撃を巧みにいなし、身体を回転させながらクイントさんの拳を外へと流す。

 

 「体術もさすがね……っ!」

 クイントさんと目が合った。

 チャンスだと思った。

 相手が近接に意識を向けた、この一瞬。

 

 (背後から、狙える!)

 『Rhino Shooter』

 背後から硬化弾を放つが――

 

 「……見えてますよ」

 

 相手は振り返ることなく、杖の先端を向けただけで撃ち落とした。

 

 (っ……くそ!)

 

 そのまま、執務官は回し蹴りを繰り出し――

 クイントさんの背面部に直撃。

 

 「……きゃっ!」

 

 【クイント DAMAGE 500 → LIFE 2400】

 

 彼女の身体が僕のすぐそばまで吹き飛ばされる。

 

 「クイントさん!」

 

 (……まずい。このままだと、ジリ貧だ……!)

 

 攻撃が通らない。

 誘導弾も読まれている。

 クイントさんの拳も、正面からでは届かない。

 しかも…なんとなくだが、手加減されてるようにも感じる。

 いまだって追撃しようと思ったらできたはずだ。

 それをしないのは…試合を盛り上げようとする意図があるのか、それとも…

  

(――とにかく……どこかに隙は!?)

 

 視線を走らせる。

 クロノの足運び、杖の振り、魔力の流れ――

 なんでもいい、勝機の兆しを……!

 

 その時だった。

 

 会場にアナウンスが流れる

 

 『本局チーム:八神はやて 撃墜判定』

 

 「……はやてが、やられた?」

 

執務官の隙を――クイントさんは見逃さなかった

 

「今よ、ティーダ君、フォーメーションF2!」

「はい!!」

 

「ッ!させません!!」

 『Chain Bind』

執務官は咄嗟にクイントさんをバインドで拘束する。

だが――

「私の十八番、見せてあげます!!」

(イメージするのは、脱力ーー足先から下半身、下半身から上半身へ!

ーーー回転の加速で拳を押し出す!)

「これが私のーー繋がれぬ拳ッ(アンチェインナックル)!!」

 バインドが砕ける。

 

 (拘束魔法を――体術のみで振り切った!?)

 驚愕を浮かべる執務官の表情に、一瞬の迷いが走る。

 

 クイントさんはそのまま空中で姿勢を崩すことなく、

 拳を握ったまま、執務官へ向かって突進する――

 

 『Cartridge Load!』

 

リボルバーナックルをフル回転し、相手の防御魔法を砕き、胴に一撃を叩き込む!

 

 「っ……!?」

 

 【クロノ DAMAGE 1200 → LIFE 1450】

 直撃。だが、向こうもただでは攻撃を受けなかった。

 

クイントさんの勢いに合わせてデバイスの先端から形成された魔力の刃がクイントの肩口を直撃し、そこから砲撃が放たれた。

攻撃の勢いを利用した、回避不能の連携…。

 

【クイント DAMAGE 2400 → LIFE 0】

 「まさか、全力を引きだされるとはね……」

 そして、響く撃墜のアナウンス。

 

「クイントさんッ!!」

◇      ◇      ◇     ◇

 

 

ーsideクロノ

 

……なんて、デタラメだ。

 

魔力を一切使わずにバインドを打ち砕き、その勢いのまま至近距離からの拳――想定していなかった一撃。

 

防御が間に合わず、咄嗟に魔力弾で撃ち落としてしまった。

 

【クイント : LIFE 2400 → 0】

 

無機質な撃墜アナウンスが、室内に虚しく響く。

 

(……やってしまった)

 

本気を出すつもりはなかった。時間稼ぎに徹して、もう少し戦況が片付いてから試合を畳む気だった。それでも、「反応してしまった」。

――手加減を忘れる程度には、あの一撃に心を動かされたということ。

 

残る敵は、ティーダ・ランスター二等空尉。

この閉鎖空間にいるのは、もう彼と僕だけだ。

(このまま勝ち切るとおそらく試合終了だが…)

 

演習とはいえ、これは公開模擬戦。

新設部隊と本局チームの戦いとして、観衆の記憶に残る「拮抗した勝負」こそが求められている。

おそらく裏で圧がかかってる試合。圧勝はどちらのチームであっても好ましくない。

――その予定だったが。

 

(はやてが落とされた。体力状況も、フェイトとなのは以外は敵味方問わず2500以下……)

 

今この場でランスター二尉を見逃せば、観戦に回ったはやてに後で何を言われるかわかったものじゃない。

 

(……クイント准尉のバインドブレイク。ヴァイス陸士の同時狙撃。はやてのユニゾン。無線で知りえた場面だけでも十分派手さも見せ場も揃ってる。そろそろ潮時だな)

 

これ以上引き伸ばしたらはやてや観客に手加減を疑われる。

そう自分を納得させ、この試合を畳むことにした。

 

「スティンガー・レイ──エクスキューションシフト」

僕が誇る誘導型・強追尾特化の連続射出魔法。

これを回避しきった者は、今まで数えるほどしかいない。

 

「……っ!」

 

「これが今の僕ができる最上級魔法です。耐えれるものなら…魅せてください!!」

 

無数の蒼い刃が空間を切り裂き、敵を追い詰める。

彼は必死に回避行動を取るが、追尾性の高い魔力刃は何度も角度を変え、標的へと迫っていく。

 

そして――命中。

 

「命中確認ーー状況終了。」

静かに呟いた、次の瞬間。

 

――違和感。

 

(……撃墜判定が出ない? なぜ……?)

 

確かに、命中したはずだ。

魔力の消失反応もある。なのに、試合終了のアナウンスが流れない。

……視線を向けると、そこには崩れ落ちたランスター二尉の姿。

だが、それはほんの数秒後に――煙のように、空気に溶けた。

 

「これは…幻術魔法っ!いつから!?」

 

即座に魔力探知を展開する。が、その場に現れたのは――

 

複数の"ティーダ・ランスター"。

 

(最低でも、10体……!?)

魔力の揺らぎが無い。精密に制御された幻術。

全てが「本体のようにしか」感じ取れない。

 

「ふっ……一本取られました。」

(ここまでくると……最初から全力でも、試合形式だと勝てなかったかな)

次の瞬間、四方から同時に声が重なる。

 

「「「これで終わりだよ…ロードカートリッジ!!」」」

 

「ええ。かかってきてくださいーーブレイズキャノン!!」

 

「「「ブレイク、シュートッッ!!」」」

 

放たれた高密度の魔力弾が同時に発射され、僕の体を貫いた。

50を超える弾丸が放たれるが、実際に僕の身体を襲ったのは2発の弾丸。

しかし…その2発で、十分だった。

 

【クロノ DAMAGE: 2500→LIFE 0】

 

身体が吹き飛び、壁に叩きつけられる感覚の中で。

僕は、静かに目を閉じた。

 

(……やられたよ、お見事だ)




クロノ、本気を出さないまま終了…。
普通にこのルールでも制限かからないのは強すぎなので、素の実力が高いクイント・ティーダコンビと対戦させたうえで手加減させてました。ちなみにティーダはStS終盤のティアナレベルを想定してるのでクロノ以外には実力は上の想定です。StS時点のなのは(19歳)と同じ階級は伊達じゃない。(二階級特進したのかは不明)
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