○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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アンノウン

「負け、ちゃった……」

 

 呟くようなフェイトの声。

試合終了のアナウンスが静かに響いた戦場で、俺は地面に倒れ伏せたまま空を見上げた。

 

「あー……疲れた……」

 体に残った力を抜きながら、ゆっくりと息を吐く。  

見上げた空には、あの星のような砲撃の残光がまだ薄く漂っていた。

 

スターライトブレイカー。  高町なのはの代名詞とも言える魔法。

 その余波の中で、俺たち特務隊チームは……勝利した。

 

 フェイトがしゃがみ込み、髪をかき分けながら俺の顔を覗き込む。

「どうして……ヴァイスさんがエースだったの? 狙われにくいポジションとはいえ、自衛力は低いし、はやての作戦だと優先的に狙われてたし……ユウトだって狙われる可能性は考えてたでしょ?」

 

「……なのはを信じた結果、かな。」

 

「……なのはを?」

 

「俺の知ってる高町なのはなら……絶対に倒れられない立場ってやつは、誰よりも自分がやろうとするんだ。そして、フェイトもはやても……なのはにその責任を預けることを、自然に受け入れると思ったんだ」

 フェイトは黙って、俺の目を見つめたまま頷く。

「だから……正直、こっちのエースは誰でも良かった。なのはのブレイカーが決まったら全員落ちる。だったら、狙われにくいヴァイスが適任だなって」

 

「そこは結構雑なんだね……?」

 

「でも、作戦全体は結構真面目に組んだつもりだ。フィニッシャーのなのはに対して、フェイトやクロノがいた時に妨害されずにカウンターを決めるには、意表をつくしかないと思って──」

 

「──そのためには幻術使いのティーダさんと、俺の反射魔法、そんでもって速射精度の高いヴァイスが必要。ここまでが俺たちの最低条件だった。その中で、一番前線張らないヴァイスにエースを託した。」

 

「そっか。なら、ユウトの読み通りになった訳だ。」

 

「……そういう事じゃないよ。実際はやての策に引っかかりまくったし……」

 

 沢山の想定外に襲われた。

 最初の奇襲から始まり、分断。

 そしてヴァイスに使った隔離結界。そんで俺の知らない新たなリインフォース……。

 あとフェイトの俺の油断を誘うムーブ。

 

「……勝てたのは、作戦がはまったっていうよりは、ヴァイスやティーダさん達が、俺の想定よりももっと強くなってたから。」

 

 そう、心から思った。  皆で必死に考えた作戦の一つが噛み合っただけ。  それが、たまたま勝ちに繋がった。

 

「……そっか」

 

「ああ……」

 

「……」

 

「……」

 

(……気まずい)

 

そ、そういえば……撃墜判定貰ったら、結界外に転送されるんじゃなかったっけ……?」

 

「……あ、たしかに。クロノやはやてなんかは……結界外に転送されたみたいだけど……撃墜されてない私はともかく、なのは達も残ってるのは変だね。」

 

「……試合終了のアナウンスから結構時間たった気がするんだけど、この後どうするんだ?」

 

「んー、なんか変、だね。ちょっと様子見てこようかな。ユウトはどうする……?」

 

「俺はパスかな……ていうか、実の所魔力切れでかなり限界に近い……」

 

「ふふっ。わかった、ゆっくり休んでて。なのはたち、連れてくるから──っ!? 

 

「ん……どうした、フェイト?」

 

「魔力サーチに反応があって。ーこれは、結界外からの転送反応……? 

 

「お迎えが来たってことか?」

 

「……いや、結界内から出されるのはともかく、外部からの侵入なんてあんまり考えられないよ。

 それに……!」

 

 その瞬間、俺の視界にも入ってきた。

 俺達のスタート位置の方角から、ふわふわと浮遊しながらそれらはこちらに接近していた。

 

「識別不明……未確認機体?」

「いや……あれは……!!」

 

 筒状のボディ。

 装甲板におおわれた全身に無数のスリットと小さな砲門。

 そして──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「──任務で1回だけ出くわしたことのある。あれに近づくと魔力の結合が妨害されるぞ! フェイト!!」

 

「近づくと効果がかかる……教本で見たAMFかな。でも、AAAランクの魔法防御を機械兵器が……?」

 

「前に範囲内に閉じ込めらた時は魔法の発生すら厳しかった……注意してくれよ!」

 

「えっ、そのときはどうしたの!?」

 

「無理やりカートリッジで魔力結合が完全解かれるより先に大技ぶち当てて壊した!」

 

「ち、力技すぎるよ……!」

 

 フェイトの呆れたような反応にも、今は少しだけ冗談を挟む余裕がある。

 

「でも今なら、やりようはある。少なくとも、お前ならな」

 

「……そっか、魔力が消されて通らないなら、『発生した効果』の方をぶつければいい……!!」

 

「この距離ならまだAMFの範囲外……今この場に戦えるのがお前だけな以上、頼りにしてるぞ……フェイト。」

 

「ふふ……そう言われたら、なんだか何でもできる気がするな。」

 

「……あの、緊急事態だから危機感もってくれよ?」

 

「ふふっ……大丈夫、分かってるよ。いくよ、バルディッシュ──」

 構えられた戦斧からドキュンッと鈍い金属音が響き渡り、そこから薬莢……カートリッジが排出される。

 

「サンダー……!」

 

 明るかった空は黒く染まり、雷雲が立ち込める──そして。

 

フォ──ルッ!! 

 

 その声とともに、天から雷光が落ちる。

 無数の敵機が、避ける間もなく閃光に貫かれ、黒煙を上げて墜ちていった。

 

「性能のわりに、あんまり賢くはなさそうだね。動きは単調だし、特定の反応を追いかけて攻撃範囲にいるものを攻撃するって感じだ」

 

「天候操作に、遠隔発生……また、凄い魔法を覚えたようでなにより……」

 

「褒めてくれてありがとう。感想はまた後日聞くとして……今は、襲撃者の目的を探らないと。」

 

「……どうやら、そう簡単に行かなさそうだ。」

 

 言葉にしなくても伝わる。

 肌を這うような違和感。魔力の流れが乱れていく。

 

「……相手のフィールド圏内に入ったみたいだ。」

「わわっ……っと。ごめん……何体か撃ち漏らしたみたい……」

 

 フェイトの足元がわずかに揺らぐ。

 そのまま彼女の身体がふわりと落下し、高度を急速に失っていく。

 

 AMFの影響下で完全に魔力を消されるわけじゃない。だが、制御が乱され、空中浮遊すら困難になる。

 

 ──見たところ。

 前に遭遇したときよりも出力は低そうだが、数の影響か、それとも別の要因か……。

 

「敵の数はさっきのでだいぶ減ったはず。なのは達はまだ目を覚ましてないから……」

 

「……うん。私なら平気だよ。それに……相手が機械なら思いっきりやれるし、私の雷なら相性は良さそうだ。それに──」

 

「それに?」

 

「私たちは執務官志望。執務官だったら……これくらいはひとりでやれないと。」

 

「……耳が痛い話で。」

 

「えっ!? あ、そういうつもりで言ったんじゃなくてっ!」

 

「分かってる分かってる……なのは達は任せて。」

 

「も、もう……行ってきます!!」

 

 そう言い残し、フェイトは再び舞い上がった。

 

 フェイトを見送り、俺はひとり──スターライトブレイカーの着弾地点へと足を向けた。

 

 

 あの場に取り残された、ブレイカーの光に呑まれた仲間たち。

 

 特に心配なのは、ティーダさんだ。

 いくら非殺傷設定とはいえ、高密度の砲撃魔法を直撃で受けて無事で済むわけがない。

 LIFEが0になった時点で、肉体にもそれなりの衝撃は走る。

 インターミドルでも撃墜後は担架で運ばれることがざらだしな。

 

(なのはも……撃ち切った直後に攻撃を受けたなら、身体の負担も相当だろうな)

 

 不安と焦燥を押し殺し、雷が遠くで何度も弾ける音を感じながら瓦礫を踏み越えて中心部へ向かう。

 

「……いた」

 

 声が漏れた。

 

 崩れた瓦礫の影に、倒れている3人の姿。

 ぐるぐる目を回して仰向けになっているなのは。

 その横には、ヴァイスに覆いかぶさるように倒れ込むティーダさん。

 

(……そっか。ティーダさんがヴァイスを庇ったんだな)

 

 自分よりも後ろにいたヴァイスをかばうように覆い被さり、直撃を受け止めた。

 その結果、撃墜判定が数秒遅れ──ヴァイスが最後に残る形となった。

 

(それが、勝利の鍵になったんだ)

 

 小さな事、一瞬の判断が、勝敗を分ける。

 それを理解していたのは、あの瞬間、誰よりもティーダさんだったのかもしれない。

 

 俺はそっと歩を進め、三人のそばに膝をついた。

 

「さてと、……無事、でいてくれよ」

 

 瓦礫の影、まだ微かに揺れる魔力の残響を感じながら、俺はそれぞれの気配を確かめた。

 

 瓦礫を越え、倒れている三人に駆け寄る。

 

 まずは呼吸。体の動き。外傷。

 

「……大丈夫そうか」

 

 かすかに上下する胸。浅い呼吸音。

 目を閉じたまま動かないが、命の危険はない。

 ぐったりとしてはいるが、出血や魔力の暴走の兆候もない。

 

(無事……とまでは言えないけど、大きな怪我はなさそうだな)

 

 なけなしの魔力で回復魔法を三人にかけながら安堵が胸を満たした、その瞬間だった。

 

 バキッ……! と、足元の地面が突如として崩れた。

 

「──なんだ!?」

 

 反射的に飛び退く。

 崩落した地面から、駆動音と共に現れたのは……あの未確認機体。

 いや、それよりもさらに一回りは大きい、重装甲タイプの個体だった。

 

「……なんで、こんなとこに……!」

 

 咄嗟に背後を振り返る。

 ……よかった。地盤の崩壊には、なのはたちは巻き込まれていない。

 

 だが、目の前の問題は──

 アンチ・マギリンク・フィールド……AMF。

 この機体が纏っているそれは、さっきよりも高密度であること。

 

(AMF濃度が急に上がった……つまり、ずっと隠れて隙を伺ってたってことだ。

 ──()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 逃げ場のない焦燥が喉を締める。

 

 未確認機は容赦なく、エネルギーをチャージしながら砲門をこちらに向けてくる。

 

 俺はボロボロの身体を引きずり、なんとか距離を取りながらディジターを構えた。

 

「──フォースバレット!」

 

 力を振り絞って放った魔力弾は、AMFの濃度に阻まれ、発射後すぐに空中で霧散した。

 

『マスター、今ので……魔力、完全に枯渇しました……』

 

「そりゃなけなしの魔力でなのは達に回復魔法使ったしな……わかってる。けど、行動しなきゃ何も変わらねぇだろ……っ!?」

 

 機械のボディから圧縮されたエネルギーがあふれだす。

 そしてこちらにそれを放つ直前──

 

 突然、未確認機体がこちらではなく、方向を変えた。

 

「っ──やめろ! そっちにはなのはが……っ!!」

 

 声が枯れるほどに叫ぶ。

 

 全身を酷使して駆け出すが、それはあまりにも遅い。

 

 そして──

 

 光が放たれた。

 

「──なのはぁぁぁぁ!!」

 

 腕を伸ばす。ただ、それしかできなかった。

 衝撃が空気を裂き、爆風が俺を後方の瓦礫へと叩きつけた。

 

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