「クロノ!どうしたんですか?」
「…ん?手紙は読んでないのか?」
クロノはこちらを見つめ、不思議そうに首を傾げる
「すみません、途中までしか読んでません。」
申し訳なさそうに頭を下げるながら謝罪する。
「そこまで気にすることでもない。ただ、僕がここに来ることをガーメルに知られたくなかっただけだ。」
寡黙な友人は少し笑うような、呆れるような顔をしている。
前あった時よりも背がかなり伸びているように感じる。
それに魔導師としての仕事を始めただけあってか体つきもしっかりとしてかなり筋肉量も増えていそうだ。
その分顔は少しやつれているようにも見えるが……
「背、伸びましたね。」
「ああ、そういう君は前と変わらないな。」
む……自分が気にしているところをついてくる。
正直自分はかなり背が小さい方だ。
未だ5歳を過ぎたばかりではあり、この身体はいまだ成長期半ばではあるが、同年代と比べると平均より大幅に身長が低い。
正直なんかの病気で体が成長していないといってくれた方が良いのだが医者にかかっても体は健康そのものと判断される。
少し不貞腐れていると
「ははっ、相変わらず変わらないな。君のそーいうとこは。」
両手を前に組みながら自信ありげに笑う姿は昔を思い出す。
「人が気にしてる所をいじるの、年上としてどうなんですか?」
「まぁまぁ、そう不貞腐れるな。手紙を読んで居ないなら僕がここに来た理由も知りたいだろ?」
「それは……そうですけど」
「実は……」
「じゃあ、僕はこれで」
「はい、ありがとうございました。クロノ」
「またクロノ兄さんって呼んでもいいんだぞ?」
「もう、子供の時の話はやめてくださいよ」
「君は子供だろ?」
「確かに僕は5歳ですがそれで言ったらクロノも3つしか変わらないでしょう?」
「まぁ……それもそうだが、管理局員としてはいろいろ年長者ぶらないとやっていけないことも多いんだよ。個人的には、ただの一般市民の子供である君がそこまでしっかりとしているのは疑問に思うのだが」
「まぁ僕も1人で長期間留守番しなきゃ行けないですしね。」
「うむ……では、そろそろ行くよ。次会う時は、僕が執務官試験に合格した時かな。」
「がんばってください。クロノ、応援してますよ」
「ああ」
そう言うとクロノは少し駆け足で去っていく。今日は朝から仕事でもあったのだろうか。
わざわざ時間を作って会いに来てくれたクロノに申し訳ない気持ちになりながら伯父にあることを伝えにリビングに戻るのだった。
ビングに戻ると伯父は忙しそうに職場に向かう準備をしている。
「伯父さん、少しいいですか?」
慌てながらネクタイを結ぶ伯父に声をかける。
「おお……ちょうど良かった実は、今日発掘した遺物の方に説明役として博物館の展示会に行かねばならんくての。まったく、あのクソ上司め、管理局の重鎮も見に来るとかで急にスーツ着用を義務づけるとか抜かしおって……」
そう悪態をつく伯父のネクタイを直しながらクロノに伝えられた事を話す。
「実はその展示会、僕も行くんですよ。」
「なんじゃと……?展示会はかなり倍率が高かったチケットが事前に用意してないと入れないはずだが……」
「僕がもうすぐ誕生日だから、クロノが早めの誕生日プレゼントをくれたんですよ。」
仕事のコネで手に入れた。自由に使うといい、と少し悪い顔をしながら言うクロノの顔を思い出しながら伝える。
「そうか……もうそんな季節かの……わしもプレゼントを用意せねばな……」
「いえ……気持ちだけで十分ですよ?」
「そんな訳にはいかんぞ!お前の母親だってお前さんの歳の頃にはあれもほしいこれもほしいとワシにだだをこねておったわい」
「そうなんですか……」
「ふむ…そろそろアレを…」
何やら伯父は考え込んでいる
「そういえば、展示会にくるなら一緒にいくか?向こうについたらワシは色々と打ち合わせすることがあるから一緒にはいれんが」
「貰ったチケットの入場できる時間はお昼すぎからみたいなので、僕は後で自分で向かいますよ。洗い物残ってますし」
「そうか……ではわしは先に行っておるぞ」
「ええ……いってらっしゃい。またあとで。」
さて……伯父が居なくなった家は少し寂しい。テキパキと家事を済ませてしまおう。
手を動かしながらふと考える。そういえば、展示される遺物はなんだろう……
わざわざ研究チームの代表として日々忙しく過ごしている伯父を説明役として呼び出すほどの代物があるのだろうか……?
そう考えているといつの間にか洗い物どころか洗濯物も全て終えていた。
魔力量が少ない人より少ない僕に、
魔法の練習にもなるとクロノから教えてもらった
かなり精度が良くなったのではないだろうか。
家事を終えたあとの日課として魔法のコントロールの修行も(伯父に内緒で)コソコソしているのもあり、デバイスの補助がないため大規模な魔法は使えないが今の自分ならそこそこ戦えるのでは無いかと思っている。
まだ展示会に向かうには時間が余っているな、とのんびり考えながら手のひらサイズの魔力球を指先でコントロールしながら考える。
「もう5年か……」
この家に引き取られてからずっと考えていることがある。
毎日見る赤子の夢についてだ…
きっと赤子は自分なのだろう。
夢に出てくる赤子を抱いた男女は話に聞く両親に似ている。
なぜ夢を見るのだろう
それこそ、赤子の頃の記憶など、覚えてるはずもない
疑問だらけだ……
それでも夢を見る度に何となくだが思うことがある。
それは強くならなきゃいけないこと
なにもできないまま、もうなにも失わないように。
弱いままの僕は、きっとまた1人になってしまうとなぜか予感していた。