戦闘が終結し、フェイト・テスタロッサは時空管理局の艦内に保護されていた。
医療区画で応急処置を受けたのち、彼女は簡易的な事情聴取のため、一室へと案内される。
部屋の中央には頑丈なテーブルと椅子が置かれ、フェイトの正面にはクロノ・ハラオウン、そして高町なのはが並んで座っていた。
「……フェイト・テスタロッサ。話せるか?」
クロノの落ち着いた声が室内に響く。
なのはは心配そうにフェイトを見守っていた。
「……うん。私が知ってることなら……」
フェイトはまだ痛みの残る身体を気遣いながら、ゆっくりと頷いた。
「まず確認だ。君はプレシア・テスタロッサの娘であり、彼女の指示でジュエルシードを集めていた。間違いないか?」
「……はい」
「しかし今回、ユウトが君に攻撃を加え、最終的にジュエルシードを回収して姿を消した。その理由について、何か心当たりは?」
「……全部はわからない。でも……ユウトは母さんと何かを話していた。私には聞かせてくれなかったけど……」
「……なるほど。だとすれば、ユウトは君を――」
「違う!」
クロノの言葉を遮って、フェイトが強く否定する。
「ユウトは……そんな人じゃない! 嘘も、裏切りもしない。絶対に、彼なりの考えがあって……それに……」
「それに?」
クロノが静かに問い返す。
なのはは息を呑んだまま、何も言えずにいた。
そのとき、室内の通信端末が点滅し、オペレーターの声が届く。
『クロノ執務官、緊急通信が入っています。発信者は――プレシア・テスタロッサ。』
「……!」
クロノの表情が険しくなり、フェイトとの視線を一度交わす。
やがて、応答ボタンが押され、スクリーンに映し出されたのは――プレシア・テスタロッサ。そして、その隣に立つのは、無表情のユウトだった。
「……母さん……ユウト……!」
フェイトが息を呑む。
『ごきげんよう、時空管理局の皆様。それと……フェイト。』
「……どうしてユウトくんが……」
『ユウトのことを責めないで。彼は計画通り、任務を遂行しただけ。』
「計画……?」
クロノが眉をひそめる。
『ええ。最初からずっと私の目的は、死んでしまった本当の娘――アリシアを蘇らせること。フェイト、あなたはそのために作られた存在。プロジェクトFによって生まれた、人工生命体なのよ。』
「……!」
「そんな……!」
なのはが驚きの声を漏らす。
『名前の“フェイト”は、開発コード“F.A.T.E”のまま。アリシアの記憶を与えたのに、外見以外、何もかも違った。あなたは、役に立たない人形だった。』
「……やめて…ください…」
フェイトの声がかすれる。
『ずっと、あなたのことが嫌いだった。あの子に似ているのに、全然違う……ただの失敗作。』
「……お願いします、私は……!」
フェイトの声が震え、目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
『ジュエルシードはすべて揃った。あとは、本当の娘――アリシアを蘇らせるだけ。あなたのような偽物は、もう必要ない。どこへでも消えてちょうだい。』
映像の後方には、緑色のポッドに眠る少女の姿があった。フェイトに瓜二つ――しかし、目を閉じたまま静かに眠っている。
『……最後に教えてあげる。私はあなたを、娘だと思ったことなんて一度もない。』
フェイトの膝が崩れ、椅子から床へと倒れ込む。
「フェイトちゃん!!」
「フェイト!」
なのはが支えるも、フェイトの目からは光が消えていた。
通信は、何の余韻もなく一方的に切断される。
部屋には、沈黙が残った。
そして――
「……母さん……ユウト……」
かすかに震える声で、フェイトは虚空に向かって呟いた。
「置いてかないで……」
その声は、誰にも届くことなく、ただ静かに消えていった。
フェイトを医務室に寝かせたあと、静まり返った空間の中で、なのはが口を開いた。
「ユウトくんたち……きっと、嘘をついてる。フェイトちゃんのこと、どうでもいいなんて思ってないはずだよ。」
その言葉に、クロノとユーノが顔を上げる。
「わざわざ僕たちに通信を送ってきたこともおかしい。まるで、"自分たちはフェイトと無関係です"って、わざと主張してるみたいだった。」
「……」
「……」
沈黙の中、なのはがアルフにまっすぐ視線を向ける。
「アルフさん……プレシアさんの居場所、教えてください。」
クロノも続く。
「……ああ。僕たちからも頼む。」
アルフは驚いたように二人を見る。
「……教えて、どうするつもりだい?」
なのはは小さく笑い、はっきりと答えた。
「決まってるよ。おバカなことしてる家族を、ちゃんと止めに行くんだ!」
「……ふぅ。これで、あなたとの約束は果たせたわよね?」
プレシアは隣に佇むユウトに、静かに声を掛けた。
「……ああ。酷な話だが……これで、フェイトは“俺たちに利用されただけの存在”になった。
計画が終わっても、捕まるのは俺たちだけだ。」
プレシアは目を閉じ、微かに息を吐く。
「……それで、本当にやるのね?」
「……ああ。
ジュエルシード20個を使った時間遡行――
時空転移魔法で、過去に遡りアリシアを事故から救う。」
「やることは、大規模な転移魔法……。
虚数空間を通じて過去へ物質を転送する……。
理論自体は昔から存在するけど、実用には至ってないわ。」
「ああ、俺もディジターが集めた資料を見た。
けど、どれも“人間の体には耐えられない”って結論だった。
時間を遡ることによる時間軸の差の分だけ…『揺れ戻し』と言われる現象がほぼ確実に起こり、
それが、逆行した物質に急激な負荷を与える。
生身の人間じゃ、普通は耐えられない。」
ユウトは拳を強く握りしめた。
「でも、“5秒”。
理論上、揺れ戻しが発生するとされる5秒以内に元の時間軸へ戻れば……
負荷は大幅に軽減される……そうだろ、ディジター?」
『……はい。
本来、時間転移には大規模な術式構築と莫大な魔力が必要です。
5秒以内の再転移など、ほぼ不可能とされてきました。
ですが――ジュエルシードの魔力と能力を使えば……理論上は可能です。』
「ま……そもそも“帰ってくるのが困難”なだけで、“過去へ行く”こと自体は確実にできる。
そこで俺がアリシアに特殊な結界を張れば……助かるんだな?」
プレシアは静かに頷いた。
「……ええ。
私は事故当時、爆発や災害から守るために防御結界を張っていた。
けど、暴走して飛散したヒュードラの微粒子エネルギーが、
無差別に結界内へ侵入してきたの。
空気中の酸素を奪い尽くし、アリシアが吸い込んだことで……
血中の酸素が奪われ、命を落とした。」
「私は、アリシアを救うために……
その微粒子を取り除く方法を長年研究してきた。
やっと完成したわ。でもその代償で、私の身体にも後遺症が残った……。」
ユウトはプレシアを見つめ、険しい顔で言った。
「……だからか。お前の身体が限界にきてる理由は……。」
プレシアは苦笑を浮かべて頷く。
「ええ。でも、その研究があったからこそ……
アリシアを救う手段が手に入った。
術式のデータはあなたのデバイスに渡してあるわ。……頼んだわよ。」
ユウトはディジターを軽く叩き、力強く頷いた。
「ああ。任せろ。
俺がやるのは、ディジターの指示通りに魔法を制御して、結界を張るだけ……
それだけだ。……頼んだぞ、ディジター。」
『はい。最後のガーメル調査隊員として、本領を発揮するときです。』
ユウトは静かに目を閉じ、決意を固める。
――その時、時の庭園内にアラートが鳴り響いた。
「ッ……まずい、乗り込まれた!」
「術式の準備を始めなさい!
私と魔導兵が足止めする!」
「お前の身体じゃ危険だ!」
「いいから行きなさい!
これまでの苦労を水の泡にする気!?」
「……っ! ディジター!!」
『了解。ロストロギア・ジュエルシード――
まずは10個を解放。転移術式、ロード開始』
「っ……制御、バカみてぇにムズいぞ!?」
『本来これは、“物質のみ”を送る術式です。
それを生身のマスターに転用しているのですから、そのくらい許容してください。
制御のコツを掴み、帰還時には5秒以内――
いえ、“結界展開を含めて2秒”で完遂する必要があります。
管理局がここまで来るギリギリの時間まで、練習してください!』
「わかってる……!!」
時空転移の揺れ戻し設定はゲームのG.O.Eの設定を本作風に取り入れた形です
まあ、アリシア生存させるために無理やりつけた設定なので、ここからは原作崩壊気味です