ーー時の庭園・中心部。
プレシアはひとり、クロノ、なのは、ユーノ、アルフと対峙していた。
「死にたくないなら伏せなさい――サンダーレイジO.D.J!」
《Thunder Rage: Occurs of Dimension Jumped》
紫電を纏う巨大な雷撃が、空間を切り裂き、彼らに襲いかかる。
巨大な船ひとつ落とせる程の大規模な、紫電迸らせる轟雷。
「くっ……危ない!」
ユーノが咄嗟に展開した防御魔法が雷撃を受け止めたものの、衝撃は凄まじく、地面が爆ぜ、大気が焼かれる。視界は揺れた。
「これが……大魔導師……プレシア・テスタロッサ!」
クロノはすぐにデバイスS2Uを構え、命令を飛ばす。
「なのは! ユーノのシールドが崩れる前に押し込むぞ!」
「……うん!」
なのはは即座に魔力を集中し、レイジングハートに呼びかける。
「ディバインバスター・フルチャージ!」
『Divine Buster Full Charge』
轟音とともに奔る巨大な魔力光線。その圧倒的な光の奔流を前にしても、プレシアは動かず、ただどこか諦めたような表情を浮かべていた。
「――ッ!」
そのとき。紫電の爆発を裂くように、光の残像を纏った影が突き抜けた。
「……フェイト!?」
光の中から飛び出したフェイトが、プレシアの身体を抱えて砲撃の軌道から脱出させた。
地面にそっと母を降ろし、フェイトは言う。
「母さん……もう、やめて!」
動揺した様子で目を見開くプレシア。
「なぜ……なぜ助けたの? 私は、あなたを娘と認めていないのに……!」
「関係ないよ。母さんが私をどう思っていようと……私にとっては、あなただけが母さんなんだ!」
「くだらないわ……人形風情が……!」
その言葉とは裏腹に、プレシアの瞳には確かに涙が浮かんでいた。
フェイトは、なおも静かに、しかしまっすぐに言葉を紡ぐ。
「それでも、私は母さんが好き……せめて、この事件が終わるまでは、助けさせてください!」
その言葉に、プレシアは言葉を詰まらせた。
──その間にも、クロノはすでに次の行動を起こしていた。
【時の庭園・最深部】
青白く輝くジュエルシードが浮遊する空間。その中心で、ユウトはひとり術式の発動に取り掛かっていた。
「間に合ったか……!」
駆け込んできたクロノを、ユウトがちらりと見やる。
「間に合ってないよ、執務官さん。」
「やめろ! ジュエルシードの力を暴走させれば、何が起きるかわからない!」
「待って、クロノ!」
クロノが振り向くと、ユーノが必死に制止していた。
「ジュエルシードは暴走してない……制御されてるんだ!」
「そんなはずが……! いや、本当に……可能なのか……!?」
『可能です。ガーメル調査隊最後の生き残りである私と、マスターであれば』
その言葉に、クロノの表情が強張る。
「ガーメル調査隊……やはり、君は……!」
叫ぶより早く、ユウトは魔法陣を展開。空間が捩れ、光が渦を巻く。
「時間転移術式……過去に行くつもりか!? そんなことをしたら、揺れ戻しが――!」
クロノが詠唱を始めかけたそのとき。
「ごほん……あー……」
ユウトは、わざとらしく咳払いをして、台本でも読むかのような調子で語り出した。
「僕は、必ず帰ってくるから……心配しないでください。クロノ兄さん、ユーノ。」
「ユウト……記憶が……!?」
「まだ全部は思い出してない。でも……それでも、大丈夫だよ。ちゃんと、やってくるから。」
そう言って、ユウトは静かに笑う。
ジュエルシードの力を受けて、術式が起動する――。
時空がねじれ、光がユウトの身体を包み込んでいく。
「じゃあ、行ってくるよ」
彼の姿が、光の中へと飲み込まれた――。
転移が完了した直後、ユウトの視界を埋め尽くしたのは、遠くの施設から放たれる凄まじい閃光だった。
「……っ、わかってったけど、マジで事故の“直前”じゃねえか……!」
隣には、突然現れたユウトに驚いた様子の、フェイトに瓜二つの少女――アリシア・テスタロッサの姿。
「間に合え……!」
ユウトは即座に魔法陣を展開し、アリシアの周囲に遮断結界を展開する。続けて、自身の身体も包むようにもうひとつ結界を張った。
次の瞬間――。
研究施設の一角で大爆発が起き、炎と衝撃が全てを飲み込もうとした。しかし、遮断結界の内側だけは、まるで異空間のように、静寂と光に守られていた。
「……おにーさん、だれ?」
倒れ込んでいたアリシアが、混乱した様子で周囲を見渡しながらユウトに問いかける。崩れかけた施設の瓦礫の中で、彼女の小さな手をそっと握る。
「君の……お母さんに渡してほしいんだ。」
ユウトはそう言いながら、掌の中にひとつのメモリーチップをそっと置く。
「……これは?」
「プレシアさんにこれ渡して。……大事なものだから」
それ以上の説明をする余裕はなかった。
結界が限界を迎える前に、ユウトは転移の準備に入る。だが、その腕を、アリシアの小さな手が再び掴んだ。
「おにーさん、体から光が…!?」
ユウトは少しだけ笑い、優しく言葉を返す。
「……ごめんね、色々説明できなくて。でも、大丈夫。またいつか――未来で会おう」
その言葉を残し、ユウトはアリシアの手を振り払い、時空転移の魔法を起動する。
ーー振り払う際にポケットから落とした何かに気づかずに…