ミッドチルダの中心部に建てられた博物館に向かう。
市街地は普段よりも人が多く、地上部隊員と思われる人物も警備の為か街を巡回している。
皆、展示会に興味を引かれているようだ。
道中で貰ったパンフレットによると、チケット無しでは入れる場所が制限されているとはいえ、普段よりも珍しい物が多く展示されているようだ。
チケットを受付に渡し、展示物を観覧する。古代ベルカ時代の物と書かれる肖像画や、宝石のようなものがズラっと並んでいる。そのなかで赤い結晶が特に目を引いた。
「これって……」
「ねぇ……きみ!」
突然後ろから声を掛けられる
驚きながら振り向くと
自分と同じぐらいの背をした子供が立っていた。
女の子だろうか…整った顔と透き通った髪の色に思わず目を惹かれる
「どうかしました?」
「あぁ……驚かせたなら謝るよ。僕はユーノ・スクライア。君の名前は?」
「ユート、ユート・ソウマです。」
「そっか、ユートね……うん覚えた!」
「それで何の用ですか?」
そう言うと少女?は少し顔を赤らめ、恥ずかしそうにこちらの顔を覗き込みながら話した。
「実はこの展示会、全然同い年の子が居なくてみんな大人の人ばっかで一緒に見て回る人がいなかったからさ。君も1人そうだし良かったら、一緒に見ようよ!」
「そういうことでしたら、ご一緒させていただきます。」
「ユートってなんか堅苦しい話し方するね……?何歳なの?」
もうすぐ6歳になる。そう伝えると少女は驚いた顔をする。
「嘘!2歳も年上なんだ!身長も同じぐらいだから同い年だと思ってたよ!」
うぐっ……と声に出そうになる。
ついに自分の伸び悩んでいる身長は2歳しか変わらない推定女の子に追いつかれそうなのか……少し落ち込みながらユーノと共に歩きながら会話する。
「あ、そういえばユートが見てた結晶、僕が見つけたものなんだよ!」
ユーノが得意気に話し出す。
少しうらやましい。。。
此処ミッドチルダは子供でも意欲と実力があれば働く人も少なくない。
身内にもクロノという実例がある。
自分は以前仕事の手伝いをしたいと伯父に伝えた所、遺跡発掘は危険な仕事だからと同行を拒否されたことがあったのだが……
4歳の女の子にできる仕事すら伯父は自分に任せられないのだろうか……
そういえばクロノも5歳から魔導師の訓練を正式に始めていたな、と少し遠い目になりながらユーノに愚痴る。
「あはは……きっと、ユウトの事が心配なんだよ。それに、スクライア一族は移籍の発掘を生業としてるから色々と普通の家庭といろいろ
異なるんじゃないかな?そもそも僕も安全な上層までしか入れさせて貰えないし。」
(家に帰ったら伯父に頼んでみるか……)
そう1人考えているとユーノが目を輝かせながら話しかけてくる
「そうそう!僕が発掘した結晶なんだけど、正直古代ベルカ時代の宝石なんかと比べたら見劣りするし、少し魔力が込められているぐらいしか珍しいところないんだけど、ユウトはすごい興味津々みたいな顔だったよね?どこが気になったの?」
「いや、結晶というか込められてる魔力の方が気になって」
「込められてる魔力?」
首を傾げながらユーノが顔を近づけてくる。ラベンダーのような花の香りがする。
少し、距離感の近さにドギマギしながらユーノに説明する。
「結晶に込められている魔力なんだけど、流れが一定なんだ。普通、結晶が魔力を集める素材だったとしても何百年と遺跡に放置されて魔力が流れて出ていくはずだろ?」
「たしかに……言われてみればそうかも?」
「だからなんかの術式が刻まれているんだと思うんだ」
「例えば……?」
「そうだな……わざわざ結晶に術式を刻む理由を考えると、結晶の中に長い間なにか隠したり、保存しようとしてたんじゃないかな?」
ま、詳しくは調べてみないと分からないけど……とつづける。
「すごいよ、ユート!見ただけでそんな分かるなんて!うちの一族の人達はただの綺麗な魔力結晶なんじゃないか言ってたんだよ!」
「そうなのか…?」
しかし、一つ疑問が起きる。
なぜ遺跡調査を生業にしている スクライアの人間が気づかなかった物をなぜ自分が気づけたのだろうか?
ユーノと話し合う。
「うーん、ユウトは魔力探知が得意のかな。ほら、執務官の人なんかは、魔力の残滓からどんな魔法が使われたとか捜査して犯人を捕まえるって聞いたことあるし。」
なるほど……普段からやっているトレーニングの成果がでた、ということだろうか。
「ユートって魔法の練習も頑張ってるんだね。それにしてもうちの一族では見つからなかった発見だな。僕も魔力コントロール頑張ろうかな。今まで発掘した遺物ももっと詳しく分かるかもだし。」
そういうと、ユーノは微笑みながらこっちの顔を覗き込みながら駆け足で前に出る。
「もうつぎで、展示物は最後だね!」
「ああ……」
気づけば展示会にある遺物はほとんど見終わっていた。
最後の展示物の傍には高そうなスーツを着た女性と見知った男が話していた。
「伯父さん、お疲れ様です。」
声をかけられた伯父は、まるで重症患者のように救いを求める顔でこちらに振り向いた。
「おお!ユート!よく来たな!」
「あのガーメルさん、お話はまだ終わっていないのですが……」
「スマンのお嬢さん、次の客が来てしまったようじゃ。順序どうり、次のお土産ルームに向かってくれの」
女性を奥の通路へと半ば無理やり案内した伯父は嬉しそうにこちらに戻ってきた。
「伯父さん、どうしたんですか?」
「いやなに、先程の女性が管理局の方のようなのだがずっとこの展示物の発掘した場所や発掘状況などを聞いてきての……それ自体を話すのはいいんだが何やら様子がおかしくてな。なにやら裏の政治絡みの話かの…」
どうやら先程の女性が、例の管理局のお偉いさんらしい。その割には結構雑な対応しているのでないかと内心冷や汗をかいていると……
「ユートってもしかして有名な遺跡調査隊隊長ガーメル・クロスフィアさんの知り合いなの?」
「ああ、そうだよ。伯父さん、こちらは展示会で知り合ったユーノです。」
「おお、そうか。お前さんも隅に置けんな!そんなべっぴんさん連れてデートしよって!」
ユーノと2人して顔が赤くなる
よくよく考えればたしかにこれはデートなのでは……
「あの!」
ユーノが突然怒ったように声をあげる
ここまで話して大人しめだと思ってたユーノが大声を上げたことにびっくりした
「ど、どうしたんだ、ユーノ?」
「ぼ……は、……です」
「ん?なんじゃハッキリいってくれい」
「僕は男です!!」
時が止まった。どうやら自分は男の子にときめきを感じていたらしい。
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結局あの後、ユーノは直ぐに帰ってしまった
「なんというかスマンの…ユート」
「いえ……僕も会ってから女の子だと思ってましたから。」
結局伯父さんと二人でしょんぼりと肩を落とし、今日あったことを話しながら帰った。
家に着くと、伯父は少し悩むような顔をしながら話し出した。
「なぁ……ユート。」
「なんですか?伯父さん」
「お前の両親のことなんじゃが……実は交通事故で無くなったというのは嘘なんじゃ。」
「……」
知っている。と本当は伯父に伝えようとした
伝えれなかった。伯父は両親が死んだ時の事を覚え,毎日夢を見る子供の事をどう思うだろうか
きっと心配するだろう。伯父は優しいから。
でも もしも、伯父が自分の事を気味悪がって捨ててしまうかもしれない……そう思うと口が動かない。
「お前の両親は昔言ったと思うが管理局員での……クロノの父とは同僚だったようじゃ」
そこから両親のことを色々と語り出す。
聞きなれない専門用語もいくつかあり詳しく分からなかったが、自分が分かったのは
両親とクロノの父は同じロストロギア関連の事件で亡くなったこと。
事件の名前。
そして事件のロストロギアはいまだ見つかっていないこと。
そして、僕の魔力量が少ないのは幼い頃にその事件の影響でリンカーコアが傷ついてしまったことが原因かもしれないということ。
「ま、ざっとこんなもんか話しておかなければならなかったものは……」
「どうして……今この話を……?」
「そりゃお前さんを発掘調査に連れてくためじゃよ。
ユーノくんの話を聞いて自分も行きたいと言ったのはお主じゃろ?」
それはそうだが……
「遺跡発掘調査は、滅んだ古代都市の遺物が出ることも多い。それこそロストロギアもじゃ。」
「ロストロギアはそのほとんどがひとつの次元世界を滅ぼした実績がある危険な代物じゃ。それに対してもし発掘したらどう扱うかそれをお前にも考えてい欲しかったんじゃ。」
どう扱うかってそもそもロストロギアは使用を禁じられているものでは?
「例えばの話じゃ、もしお前が発掘したロストロギアが誰かの迷惑をかけるが両親を甦らせるものだったら?もし、発掘した遺物が両親の仇をとることができるものだったら?お前さんならどうする……?」
頭では、絶対に使用してはいけないと分かっている。でも、本当に自分が発掘したとき、その力を求めて欲望に振り回されないだろうか……。
「わからない……」
自然と言葉が口からこぼれ落ちた。
「本当はやっちゃいけないって分かってるんだ、でも……」
自然と目から涙がこぼれる。
伯父はとても珍しいものでも見たかのように驚きそして、微笑みながら言った
「いまはそれでいいんじゃ」
「え?」
「お前さんはまだ若い。答えを出すのはもっとあとでいい……ほれ受け取れ。」
伯父から何かを投げ渡される。それは中心にアメジストのような宝石を象った腕輪の形をしている。
腕輪の内側には、《ユーベル》と《マコト》の名前が刻まれている。
母さんと父さんの名だ。
「伯父さん、これは?」
「インテリジェントデバイス、お前さんの父親が使っていたデバイスじゃよ。中に入っていたAIはどうやら損傷から初期化されているようじゃがの」
「父さんの……」
『おはようございます、マスター』
「伯父さん、この子の名前はなんて?」
「別にお前さんが名前を決めても良いんじゃぞ?」
「いや……父さんと同じ名前がいいんだ」
『ディジター』
「え?」
『私の名前は、ディジターです。マスター』
「たしか、お前の父の故郷である管理外世界の言葉で親愛を表すDearと訪問者を表すVisitorを掛け合わせた名前じゃったかの」
「親愛なる訪問者…うん……ディジターいい名前だよ。これからよろしくディジター!」
『ええ、マスターこれからよろしくお願いします。』
「それではディジター。遺跡調査について、説明たのめるかの?」
『はい、ガーメル』
『マスター、遺跡調査には様々な危険が伴います。そのうち特に危険な物をピックアップして説明します。』
『まずひとつは、ロストロギアなどの遺物です。基本的には発掘地の状態は未活性状態ですが、採掘の衝撃で活性化し、暴走する可能性があります。』
「うん、それは前に伯父さんに聞いたことがあるよ。」
『2つ目が、落石です。採掘現場は安全を考慮して作業しますがそれでも地盤が不安定な場所での作業になります。上から岩が降ってきて行動不能になる。帰り道が無くなる様々な可能性があります。』
『そして最後に採掘した穴から天然ガスが流れてく出てくることですね。天然ガスといっても別次元世界の、滅んだ文明のものですから人体にどのような影響があるかわかりません。最悪の場合発掘チーム全員が気化したガスを吸い込んで全員呼吸困難でお亡くなりになられたことも』
「あー、それは怖いね。」
「うむ、ワシら調査チームはそういった危険を経験・予測・そして入念な調査することで、回避しておる。だから何年も調査のための知識を学び技術をすべて教わった者のみをうけいれてきた。かといって、ここ数年は特に忙しい時期での、お前さんの教育を任せる人員も足りておらんのじゃ。」
『そこでガーメルは私を連れて調査のデータを蓄積させることで、私を調査に対するマスターの指導員として成長させることにしました。』
『それに、先程伝えた危険要素3つに対して、それぞれ封印処理・身体保護・防御フィールドの展開といった作業をインテリジェントデバイスである私の自己判断で対応することであなたの安全は99%保証されます。』
((そこは100%じゃないのか……))
伯父と目を合わせ首を傾げる
「まぁ、データの蓄積を蓄積させると言ってもデバイスを装着しておけば、勝手にデータ収集をしてくれたからの。お前さんを拾ってからずっと着けておったし、データ量も十分じゃろうと思うぞ。」
__ま、わしからの誕生日プレゼントということにしてくれ
伯父は、少し頭をポリポリと掻きながら言った。
きっと伯父は自分を拾ってからいつかこんな日がくると思ってずっとデータを収集していくれていたのだろう。
「それで伯父さん、いつ発掘に出掛けますか?」
「ディジターをお前さん向けに調整してからかの……早くて3日後ぐらいか?」
そういった伯父はこちらを真剣な顔で見つめながら1呼吸置いたあと、
話し出した
「デバイスを使った戦闘訓練は必ず許可を取ってからすること。お前さんとて、無断での戦闘魔法使用違反で管理局、クロノの世話になるのはいやじゃろ?」
どうやら伯父は自分がこそこそ魔法の練習をしていたことも知っていたらしい。
少し冷や汗をかきながら首を縦にふった。
どうやら隠し事は出来ないようだ。
次の日から、魔法の修行と歴史の勉強。そして、遺跡調査の日々が始まった。