○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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事件終結

ーーーなのは視点

事件が終わってから、10日が経ちました。

みんなの傷も少しずつ癒えて、プレシアさんの病気も、ユウトくんの怪我も、管理局の最新施設で治療され、完治したそうです。

そして今日、事件の当事者が集められ、事情聴取を受けることになりました。

 

「ねぇ、クロノくん……フェイトちゃんは?」

「……彼女は、今回のプレシアとの面会を拒否した。」

 

「え……」

 

クロノくんは目を伏せながら答えます。

「ここ数日、ずっと考え込んでるみたいだ。無理もない……母親からあんな仕打ちを受けて、仲間にまで撃たれた。事件の最中は平気に見えても、後からいろんな感情が押し寄せてくるものだよ。」

 

「……そっか。フェイトちゃん、大丈夫かな……」

 

「なのは、フェイトは今アルフと一緒に護送室で保護されてる。心配しすぎるな。」

ユーノくんが、少し優しく言ってくれました。

 

落ち込む私たちを見て、クロノくんが気を引き締めたような声で話し出します。

 

「とりあえず、まずはプレシアと……アリシア、そしてリニスに話を聞こう。君たちも同行してくれるね?」

 

「うん、行こう。ユーノくん」

「ああ」

 

面会室に入ると、そこには手錠をつけられたプレシアさんと、その隣に……アリシアちゃんたちがいました。

 

「……あ、来た来た!なのはちゃん!」

「えっと、こんばんは。アリシアちゃん……」

 

アリシアちゃんは、長い間コールドスリープのような魔法で眠っていたらしく、本当は一回り以上年上なんだそうです。でも見た目はちょっと背の低いフェイトちゃんって感じで……。そっくりなのに、すごく活発で、なんだか不思議なギャップがあります。

 

「こんばんは、なのはさん」

リニスさんは落ち着いた雰囲気で挨拶してくれました。

元はプレシアさんの使い魔で、今はアリシアちゃんの使い魔を務めている人です。フェイトちゃんの魔法の師匠でもあって、あのバルディッシュを作った人なんだとか……

 

「……あれ?ユウトくんは?」

 

「彼については、正直扱いが難しいんだ」

クロノくんが言葉を選びながら話し始めます。

「今回の事件は、管理外世界で起きたものだし、管理局の管轄としてはロストロギアの回収が本来の任務だ。現地で僕たちの世界の住人がロストロギアを求めて戦闘行為を行っていた場合は、僕たちはそれを制圧する義務があるが……ユウトの場合は…」

 

「……そっか、ユウトくん、記憶喪失だったもんね」

 

「うん。戸籍上はすでに事故で死亡扱いになっていたし……最悪でも執行猶予で済むだろう。裁判は避けられないけど…記憶喪失で管理外世界で育った人間が知らずにロストロギアと関わる…しかも肝心のロストロギアはそこまで危険な取り扱いをされた訳でもない。…牢屋行きにはならないはずだが、どういう立場でとりあつかうか、決めかねているんだ。」

 

ーーごほんっ。

クロノくんが場を締めるように軽く咳払いをする。

 

「それじゃあ、本題に入ろう。アリシア、リニス。まずは君たちの話を聞かせてくれ。」

 

「うん、じゃあまずは私からね!」

 

 

 

 

それから語られたのは、ユウトくんが過去に行ったあとの出来事だった。

 

彼がアリシアちゃんを救ってからの、プレシアさんとの時間――

 

「アリシア……!? 無事なの!?」

 

「……お母さん、私は平気だよ?」

 

「体に異常は……本当にないのね。でも、あの爆発に巻き込まれて、どうして……」

 

プレシアはアリシアの体を魔法で丁寧に検診する。アリシアの身体は正常そのもので、大気中に広がっていたはずのヒュードラ粒子の影響も、どこにも見られなかった。

 

「これ、助けてくれた変なお兄さんが、お母さんにって……」

 

アリシアが懐から、ひとつの小さな端末――メモリーチップを取り出す。

 

「これは……メモリーチップ?」

 

プレシアはそれを研究室の残っていた装置に接続し、データを読み取る。

 

「……っ、これは……!」

 

そこに収められていたのは、未来の記録。

 

アリシアの死、自身の狂気、人工生命体、そしてジュエルシード――

 

あまりに膨大で、衝撃的な情報がそこには詰まっていた。

 

「お母さん……どうかしたの……?」

 

「……アリシア、お願いがあるの。きっと辛いことになるかもしれない。しばらく、離れ離れになるかもしれないけれど……聞いてくれる?」

 

「……お母さん、ずっと離れ離れになっちゃうの?」

 

「ううん……ちょっと先の未来まで、長ーいお休みをとるだけ。お母さんだけ、少し歳をとっちゃうかもしれないけど……」

 

「いつかまたお母さんに会えるなら、それでいいよ! お母さんのことなら、なんでも言うこと聞くよ!」

 

「……ありがとう。そういえば、アリシア……前に妹が欲しいって、言ってたわよね?」

 

「っ! お母さん、覚えててくれたの!? この前の誕生日の話!」

 

「ええ、もちろんよ。アリシア……あなたが目を覚ますころには、あなたはもう“お姉ちゃん”になってるわ」

 

「ほんとに!? ねぇねぇ、その子の名前は!?」

 

「名前は……“フェイト”。アリシアととってもよく似た、可愛い女の子よ」

 

「フェイト……うん、覚えた!」

 

「それじゃあ、アリシア……また未来で会いましょう」

 

「うん……おやすみなさい、お母さん……」

 

 

 

 

 

 

 

「――そうして、私は凍結魔法で身体を保存されて、この時代まで眠ってたんだ」

 

アリシアの話を聞いて、クロノは思案するように唸った。

 

「……しかし、そうなると矛盾が生じる。過去が改変された結果アリシアが生きているなら、今のプレシアが犯行に及ぶ理由がなくなるはずだ」

 

「ええ。今の私には、アリシアを失った記憶はあっても、彼女が生き延びて、封印処理を行った記憶はないの。つまり、過去に介入する前の記憶のままよ」

 

「となると……これは平行世界の問題か? だが、アリシアがここにいる理由の説明には……」

 

「うーん、詳しいことは私にもよくわかんないけど……その、“タイムパラドックス”ってやつで、フェイトやユウトが出会わなくなると困るから、なんだっけ……えっと、リニス?」

 

「はい、ここからは私が説明いたします」

 

リニスは一歩前に出て、穏やかに言葉を紡ぐ。

 

「プレシア……あなたはアリシアを凍結処理したあと、私を“新たな命”として生み出しました。使い魔としての私を」

 

「……そして、私に命じました」

 

1つ目、プレシア自身の記憶を魔法で改変し、“アリシアは事故で死んだ”と認識させること。

 

2つ目、特定の“キーワード”を設定し、それを聞くことで、改変された記憶を元に戻すようにすること。

 

3つ目、私とプレシアの契約が終了した際、アリシアと新たな契約を結び、生き延びること。

 

4つ目、指定された年月日になったら、アリシアの凍結を解除すること。

 

5つ目、未来が変わりすぎないように、たとえ非情な手段であっても、このメモリーデータに記された行動を、プレシアに実行させること。

 

「――そうして私は命令通りに、可能な限り“本来の歴史”が大きく逸れないよう、影から行動し続けてきました。そして今、この時を迎えたのです……すべては、アリシアとフェイト――二人がどちらも生きていられる未来のために」

 

なのはは静かに、深く頷いた。

 

「……そうだったんだね」

 

 

 

 

 

「そして……今こそ、プレシアの記憶を解除する時です。アリシア、お願いします」

 

リニスの言葉に、アリシアが頷く。彼女は静かに母に向き直り、その瞳を真っ直ぐに見つめた。

 

「……お母さん」

 

その声は、まるで幼いころの優しさを宿したまま、どこか凛とした強さを感じさせた。

 

「『いつかの未来、運命の日まで』」

 

その瞬間、プレシアは頭を抱え、崩れ落ちるように膝をつく。

 

「……ああ……全部、思い出した……。私は……フェイト……あの子に……なんてことを……!」

 

揺れる肩。震える声。崩れた姿に、なのはは慌てて駆け寄った。

 

「プレシアさん……! だ、大丈夫ですか……?」

 

なのはの声に、アリシアもそっと母の背に手を添える。

 

「お母さん……」

 

プレシアはうつむいたまま、ただ涙をこぼす。

 

その光景を静かに見つめていたクロノが、やがて背を向け、口を開いた。

 

「……僕は、ユウトの方に事情を聞きに行く。なのは、ここは任せた」

 

「……うん。任せて」

 

なのははしっかりと頷き、プレシアとアリシアの傍に腰を下ろす。

 

そのすぐ隣で、ユーノがクロノに声をかけた。

 

「……クロノ、僕もユウトのところへ行っていいかな。僕も……あいつに、ちゃんと聞きたいことがあるんだ」

 

クロノは少しだけ黙ってから、頷く。

 

「……あの件だな。わかった。ユーノ、こっちに来てくれ」

 

二人はゆっくりと部屋を後にする。静寂の中、なおもすすり泣く声だけが、残されていた。

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