次回以降は無印とA'sの間の箸休め編少し書いてから
A'sにはいっていく予定です
ーーー転送が終わり、その場に残された一同は、迎えの船が到着するまでの待機を命じられていた。
フェイトは、時おりユウトの顔をちらちらと盗み見ていた。
「……」
ユウトは口を半開きにしたまま、ぼんやりと空を見つめている。頬はまだ赤く、明らかに動揺が続いている。
(……むぅ)
フェイトは小さく唇を噛み、胸の奥に小さな棘のような痛みを感じていた。
「……ユウト」
「え? あ、フェイト……」
フェイトに声をかけられ、ユウトは我に返るように振り向いた。その顔は相変わらず赤く、どこか気まずそうだ。
その様子を見て、フェイトの中で何かがもやもやと膨らんでいく。
「……嬉しそうだね」
「え?」
ユウトが目を丸くする。フェイトはふいっと視線をそらしながら、少しだけ棘を含んだ口調で続けた。
「私にあんなことしたくせに……なのはにキスされて、あんな顔して……そんなに嬉しかったの?」
「そ、そんなわけじゃ……! びっくりしたっていうか……!」
動揺するユウトを、まわりの局員たちが興味津々に見つめている。
エイミィを筆頭に、数名はちゃっかりカメラを向けて録画を始めていた。
「……そう」
フェイトはそっけなく答えたが、自分の頬がじわりと熱くなっているのを自覚していた。
(なにこれ……なんで、こんなにモヤモヤするの……?)
「フェイト?」
ユウトが不思議そうに声をかけてくる。
「……なんでもない」
そっぽを向いたまま、小さな声で答えるフェイト。
気づきたくなかった。
でも、もう――気づいてしまった。
(やっぱり、私……ユウトのこと……)
光が差し込む静かな場所で、
フェイトの心だけが、ひっそりと揺れていた。
そして、1ヶ月後――ジュエルシード事件の裁判が始まった。
なのはは地球に残り日常生活を謳歌し、ユーノは故郷であるスクライア族の元に帰るも、時空管理局の無限書庫書記の仕事に就くことにした。
そして今――ユウト、フェイト、プレシアは、時空管理局本部の法廷に立っていた。
広大な裁判所の中央、円形の審問席の前に、三人は並んで立っている。彼らを取り囲むように高官たちが席につき、審判官が厳しい視線を向けていた。
「これより、『ジュエルシード事件』に関する裁判を執り行う。」
重々しい声が響き渡る。
「被告、プレシア・テスタロッサ。貴女は違法な次元航行実験を行い、ロストロギアの不正使用、さらには時空管理局への敵対行動を取った。その罪を認めるか?」
プレシアは目を伏せ、静かに頷いた。
「……ええ、認めるわ。」
その表情に迷いはない。
その表情を見届けた審判官は視線をフェイトとユウトへ向けた。
「フェイト・テスタロッサ、およびユート・ソウマ…ああ、今はユウト・タカマチだったな。諸君らはプレシア・テスタロッサの計画に加担し、時空管理局の作戦を妨害した。しかし、調査の結果、両名はプレシアに利用されていただけであり、深い悪意をもって行動したわけではないと判断し、情状酌量の余地があると考えられる。」
フェイトは俯いたまま、拳を握りしめていた。ユウトは表情を曇らせ、何か言いたげに口を開きかけたが、言葉を飲み込んだ。
「よって、フェイト・テスタロッサ、ユウトの両名に対し、正式な処罰はせず、保護観察処分とする。」
「――今後、数ヶ月は管理局内の施設にて保護観察者の監視下に置かれ、適正な教育と指導を受けること。…良いな?」
「……わかりました。」
フェイトは小さく答えた。ユウトも短く「了解」とだけ呟いた。
「では、両名は下がって良い。プレシア・テスタロッサの細かい罪状にについて、詳しく取り決めていく。まずはーー」
数時間に渡る審問を終え、
裁判官が槌を打ち下ろし、法廷に静寂が戻った。プレシアの判決自体は次回の公判まで持ち越されたがーー
ユウトは、そっとフェイトの方を見た。彼女の顔は、まだ迷いを抱えているようにも見えた。
(やっぱり、プレシアの釈放は難しくなるのか…)
重い表情の二人に、大して、プレシアは穏やかに、ただ静かに空を見つめていた。
「……母さん。」
フェイトが震える声で呼びかけると、プレシアは冷静な表情のまま彼女を見た。
「……フェイト、ユウト。」
彼女の視線は静かで、どこか遠いものだった。
「どうして……どうして全部、自分のせいにしたの……?」フェイトが涙を滲ませながら問う。
プレシアは一瞬だけ瞳を伏せたが、すぐにフェイトを真っ直ぐに見つめた。
「……私の望みは私の子供達が自分の人生を過ごすこと…あとは、些細なことよ。」
淡々とした声だった。しかし、その中には確かな決意が込められていた。
「これ以上あなたたちの、未来を奪うわけにはいかないでしょう?」
「……っ……!」
フェイトの瞳から涙が零れる。
「……フェイト。」
プレシアは初めて、優しく娘の名を呼んだ。
「あなたはもう、私の影を追わなくていい。自由に生きなさい。…遅くなってごめんなさいね。…私は、あなたのことを愛しているわ。」
「……母さん……」
「そして、ユウト。」
ユウトは無言でプレシアを見つめていた。
「あなた達の裁判はこれで一旦終わり。私はまだ判決まで時間がかかるから…その間アリシア達のこと、よろしくお願いするわ。」
ユウトは静かに頷いた。
「……わかった。またな。」
それが、ユウトなりの別れの言葉だった。
「…ふふ、また…ね。恐らく私、禁固刑だからもう会えないと思うけど…そうね…また会いましょう。」
プレシアは最後に微かに微笑み、護送されていった。
彼女の背が消えるまで、フェイトは泣きながら、その姿を見送り続けた。