基本的にはかなり短編でユウトがそれぞれのキャラと過ごす一日を書いていく予定です
一話の内容少ない分更新が増えるかもです
ちなみにプレシアが生存しているのでリンディさんがフェイトの保護者になることはないのでフェイト・T・ハラオウンは今作では出ません。ずっとフェイト・テスタロッサちゃんです。
アースラへようこそ
どこまでも青く広がる海。その穏やかな波音が、静かな風とともに耳に届く。
ミッドチルダの港湾施設に隣接した監視エリアの片隅、ユウトとフェイトは並んで腰を下ろしていた。
ふたりとも、時空管理局からの「保護観察処分」の適用を受け、これから正式に保護者と面会する予定だった。
だが、まだその人物は姿を現していない。
空は高く、風は暖かい。海の向こうには水平線が見えていた。
「……まだ来ないね」
フェイトがぽつりと呟いた。上着が風に揺れる。
「まあ、あの事件の事情を知ってる保護観察官として信頼置ける人ってことは結構立場上の人だと思うし、そういう人は多忙なんじゃないか?」
ユウトは手持ち無沙汰に、小石を指先で弾いて砂の上を転がした。彼の表情には、それほど焦りも苛立ちもなかった。ただ、潮の匂いを感じながら、平静を保っているようにも見えた。
フェイトはちらりとユウトの横顔を見て、小さく笑った。
「ユウトって、こういうとき落ち着いてるよね。私……1人だったら、たぶん緊張して落ち着かないと思う」
「そりゃ、俺もちょっとは緊張してたさ。でも――」
ユウトはフェイトの方を見て、穏やかに言った。
「――お前が隣にいるなら、まあ大丈夫かなって」
フェイトの目が少し見開かれた。その頬が、ほんのりと赤く染まる。
「……それ、ずるい言い方」
「そうか?」
「……うん。ちょっとだけ、うれしいけど」
そのあとは、しばらく沈黙が続いた。波音だけが、二人の間を流れていく。
ふと、ユウトがポケットから紙を取り出した。
「なあ、今日来るって言ってた“保護観察者”って、誰だと思う?」
「えっと……私たちの事情に理解あるえらい立場の人だから………あー、ってことは――」
「――うん。たぶん“リンディさん”ぐらいしかいないよな。」
二人は同時に小さく頷いた。
そのタイミングで、潮風を切るように軽やかな足音が背後から近づいてきた。
「お待たせ。2人とも、ここにいたのね」
柔らかな声とともに現れたのは、落ち着いた微笑みを浮かべた、時空管理局アースラ艦長・リンディ・ハラオウンだった
「ごめんなさいね、待たせてしまって。予定より少し遅れてしまったわ」
「いえ……その、大丈夫です。私たち、ちょうど来たところなので」
フェイトが少し緊張した面持ちで答えると、リンディはその様子に気づいたのか、優しく肩に手を添えた。
「そんなに緊張しなくてもいいのよ。“保護観察処分”とはいっても、あなたたちを罰するためのものではないの。むしろ、新しいスタートのための準備期間だと思ってくれていいわ」
その言葉に、フェイトの表情がわずかに和らぐ。
「……アースラでの仕事を放って俺たちの面倒みるんですか?」
ストレートな物言いに、フェイトが「ユウト…」と小さく呟く。
だが、リンディは微笑みを崩さないまま、静かに彼の言葉に答えた。
「ええ、もちろん。本気よ。あなたたち子供たちは、私にとって大切な未来の一部…といいたいところだけど、二人のことも、アースラのことも放っておけないわ。だから、あなたたちには基本的にアースラ船内で居住してもらうことになるわ。もちろん、危険な任務には連れて行かないし、ここ数か月はただの哨戒任務しか入ってないわ。」
そのまっすぐな言葉に、ユウトはしばらく黙っていたが――やがて、目を伏せるようにして呟いた。
「……わかりました。なら、よろしくお願いします」
フェイトがほっと息をつき、リンディも満足そうに頷く。
「ええ。じゃあ、まずは艦へ案内するわね。生活スペースや食堂、訓練施設など、一通り見て回りましょう。船には、アリシアさんやリニスさんもあなた達と一緒に生活してもらうことになってるわ。」
「あ、部屋割りって……決まってるんですか?」
フェイトが少し不安そうに聞くと、リンディはくすっと笑った。
「ええ。本来なら部屋は、1人部屋なんだけど……。保護観察対象者は同じ部屋だって(アリシアさんが)決めてたから…二人は相部屋ね。もちろん、ちゃんとそれなりの広さは確保してあるわよ」
「「えっ……」」
二人の声が、揃って上がる。
フェイトの頬が、赤く染まる。
「し、仕切りとか……あるんですか……?」
「もちろん。でも、あなたたちがどう使うかは自由よ。暮らしやすいやり方で工夫してね」
リンディが歩き出し、フェイトとユウトは顔を見合わせる。
「……同じ部屋かぁ」
「イヤ、だった……?」
「イヤとは言ってねぇけど、……まあ、色々気を使いそうだなって」
「……私だって、緊張してるんだから……」
そんなふうに言い合いながら、2人はゆっくりとリンディの後を追った。
海風は少しずつ弱まり、静かに空のへと吹いていた