○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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フェイト・アリシアの場合

【フェイトの場合】

 

ミッドチルダの空に浮かぶ時空管理局艦アースラ。

 

その艦内での新生活が始まって数日。

 

保護観察処分を受けたユウトは、フェイトと共に与えられた部屋で生活を始めていた。

 

朝、ユウトは軽い違和感で目を覚ました。

 

寝返りを打とうとして、何かやわらかいものが右腕に触れていることに気づく。

 

「……フェイト?」

 

 眠そうな目をこすりながら顔を向けると、そこには自分の右腕にしがみついて寝ているフェイトの姿があった。

 

金色の髪が肩にかかり、いつもよりも幼く見える寝顔に、ユウトは一瞬言葉を失う。

 

 静かな部屋の中、聞こえるのは2人の寝息だけ。

 

(……なんで、同じベッドに?)

 

 昨晩、2人で遅くまで話していたのは覚えている。

魔法の訓練やアースラでの生活ルール、それから、俺が知ってるなのはの昔話のこと。

 

 フェイトが自分の布団に潜り込んできたのは、そのあとだったのかもしれない。

 

「……フェイト、起きろって。暑い……」

 

 そっと声をかけると、フェイトがうっすら目を開けた。

 

「ん……あ……っ!? ご、ごめん、ユウト……!」

 

 飛び起きたフェイトの顔が真っ赤に染まる。慌てて距離を取る姿に、ユウトは苦笑しながらも、どこかくすぐったい気持ちを抱いた。

 

「ま、寝ぼけてただけだろ。気にすんなって」

 

「う、うん……」

 

 気まずい空気の中、2人は朝の支度を始める。

 

だけど、どこかぎこちなくなった動きに、互いに視線を合わせづらくなる。

 

 朝食を終えた後、ユウトはふとフェイトの荷物の整理棚に目をやった。机の上に置かれていたのは、なのはから貰ったリボン。

 

「それ、ずっと飾るのか?」

 

 ユウトの声に、フェイトは恥ずかしそうに頷いた。

 

「うん……一緒にいられなくても、これ見たら少しだけ安心できる気がして……」

 

 その言葉に、ユウトは小さく笑った。

 

「そっか。……オレも、あの家恋しくなるな…たまに思い出すよ」

 

 ふとした瞬間に浮かぶ高町家の温かな記憶。

 

 そんな柔らかい朝の時間の中、ディジターの機械的な声が部屋に響いた。

 

『マスター、フェイトさん。クロノさんによる朝の定期訓練開始時刻まで、残り十二分です。』

 

「あ、やば。着替えないと」

 

「うん……じゃあ、後でロビーで」

 

 ようやく自然な笑みを交わして、2人はそれぞれの支度へと動き出した。

 

 こうして、ユウトとフェイトの同棲生活(?)は、少しの波乱とぬくもりが入り混じったまま、静かに幕を開けたのだった。

 

 訓練場に向かう途中、ユウトはいつもの通路を歩いていた。

 天井の照明は柔らかく、足音が金属の床に響くたびに、まだこの場所が船である実感が湧く。

 

「……おはよう、ユウト」

 

 背後から声をかけてきたのは、クロノだった。執務官の制服姿で、片手に書類端末を持っている。

 

「おはよう、クロノ」

 

 ユウトが軽く会釈をすると、クロノは足を止め、彼の横に並んで歩き始めた。

 

「どうだ。同部屋のフェイトとは、うまくやれてるか?」

 

「……まあ、たぶん。今朝は起きたら一緒の布団で寝ててビックリしたけど。」

 

「……は?」

 

 クロノの顔が一瞬固まる。

 

「いや、寝ぼけてたんだって。あいつ」

 

「……そ、そうか。ならいい」

 

 無理に納得しようとするクロノの反応に、ユウトは小さく笑ってごまかした。

 

「今日の訓練、まあ初回だからな。魔法戦の動きの確認をさせてもらう。フェイトと模擬戦をしてもらい、2人の動きを重点して見ようと思う」

 

「了解」

 

 自然な流れで会話が進み、ユウトの表情も少し引き締まる。アースラでの生活は、まだ始まったばかりだ。

 

 そして今日もまた、彼の日常は静かに、けれど確かに動き出していた。

 

 

 

ーーーユウト模擬戦中ーーーー

 

 

 

 

訓練を終え、フェイトとの模擬戦の結果は惨敗。

 

高速機動戦では、トップスピードこそ互角以上に立ち向かえるが、加速力・旋回力・戦術…とにかくトップスピードに行く前に妨害され、有利に立ち向かえない。

 

かと言って、射撃戦に持ち込んでも、フェイトの膨大な魔力量にものを言わせた大規模魔法や最大火力での砲撃には為す術がない。

 

唯一の勝ち筋は超密着状態での近接戦闘で逃げる暇を与えずにそのまま押し切ることぐらいだが…向こうもそれを分かっててヒットアンドアウェイの構えをとってくる。

 

「なぁ、ディジター…やっぱ勝つにはどうすればいいかな?」

 

『いまのマスターの戦闘スタイルは、記憶を失う前の猿真似ですからね…そろそろ今の自分にあった戦法を考えましょうか…。』

 

 

 そう1人(+1機)反省会して朝食を終えたあとフェイト達と合流し、俺たち保護観察組はアースラ艦内の清掃当番を任されていた。

 

「それにしても、こんなに設備の整った船で生活するなんて、思ってなかったな」

 

 モップを動かしながら、ユウトがぼそっと呟く。艦内は設備が整っており、生活スペースも清潔で快適。けれど、どこか"仮住まい"のような感覚が抜けない。

 

「うん。私は、アリシア達と過ごせてうれしいけど……でも、少しだけ緊張するかも。管理局の人たち、みんな優しいけど、まだ慣れないなって」

 

 はしゃぎながら走り回るアリシアを尻目に、フェイトは手にしていた雑巾で棚を拭きながら、少しだけ眉を下げた。

 

 ユウトは、フェイトの言葉に静かに頷く。

 

「ま、俺も似たようなもんだよ。なんか“見られてる”感じするし……今はお試し期間、って感じだな」

 

「……うん。でも、ユウトと一緒だから、私は少しだけ安心できるよ」

 

 不意にそんな言葉を向けられて、ユウトは思わず手を止める。

 

「……なぁ、アルフ?俺って今口説かれてる…?」

 

「…んぁ?あー、うん口説かれてるんじゃないか。」

 

「ち、違うよ!!適当言わないでアルフ!?あのね、そういう意味じゃなくてっ……!」

 

 真っ赤になって慌てるフェイトを見て、ユウトはふっと笑った。

 

 ユウトの言葉に、フェイトは小さく笑った。

 

 そんな日常の中、少しずつ――本当に少しずつだけど、ユウトとフェイトの距離は縮まっていくのだった。

 

 

 

 

 

【アリシアの場合】

アースラでの生活も慣れてきたころ……

 

その日はフェイトはクロノとの個別訓練が入っていたおり、ユウトはアリシアと2人で任務のため市街へ向かうことになっていた。

 

任務といっても、アースラの補給物資(主に生活用品やエイミィのコスメ)を買いに行くだけの、ごく簡単なものである。

 

ユウトはそれを、保護観察組が外に出かけれるようにするための口実だと理解している。

 

ーーなおフェイトが朝、補給任務と個別訓練の約束が被っていたと知った時の顔は忘れられない。

 

 ミッドチルダ中央区のショッピングエリア。整然とした街並みと近代的なビルが立ち並ぶ中、アリシアは元気よく道を歩いていた。

 

「ユウト! あの店クッキーの試食やってる! 行ってみようよ!」

 

「……なあ、俺たち一応、任務中だぞ」

 

「うん、でも寄り道くらいいいじゃん。どうせ買うものだって、ほとんど買い終わったって言ったでしょ?」

 

 アリシアは人懐っこい笑顔を浮かべながら、ユウトの腕を軽く引いた。まるで年下の妹のような仕草――けれど実際の所は、フェイトの姉である。

ふと、ユウトの脳裏に浮かんだのは、フェイトの落ち着いた口調と控えめな笑顔だった。いつも一歩引いて、自分を律している彼女の姿。

 

(……やっぱり、この姉妹、全然違うな)

 

 顔は瓜二つでも、雰囲気はまるで正反対。フェイトは静かに人を支えるタイプで、アリシアは前に立って人を引っ張る……というより、走り回って巻き込んでいくような明るさがある。

 

「お前、ほんとに姉なんだよな……」

 

「え? 何その言い方。疑ってる?」

 

「いや、違う違う。むしろ逆。……“妹”っぽいなって思っただけ」

 

「ふふ、エイミィちゃんとかにもよく言われる。たしかに、フェイトの方がずっと落ち着いてて大人っぽいけど…」

そう言って、アリシアは足元の石を蹴る。

 

「でもね、私はフェイトのこと、ちゃんと“妹”だと思ってるよ。すごくしっかりしてて、優しくて、私にはないものをたくさん持ってる。あと身長も!……ちょっとだけ、羨ましいって思うこともあるけど……まだまだ誰かに頼りたいお年頃なんだから、お姉ちゃんが頑張っていい所見せようとしてるんだよ?」

 

 意外な言葉に、ユウトは足を止めた。

 

「お前がそんなこと思ってるなんて、ちょっと意外」

 

「そりゃあ、私だってちゃんと妹のこと見てるもん。姉としてね」

 

 アリシアはそう言って、少し得意げに胸を張る。その姿はやっぱり、どこか年下っぽく見えて、ユウトは思わず笑ってしまった。

 

そんな和やかな時間も束の間、少し先で怒鳴り声が上がった。

 

屋台の荷下ろしで荷物が崩れ、近くにいた子供が巻き込まれそうになっている。

 

 誰もが驚きで動けない中、アリシアが誰よりも早く走り出した。

 

「危ない!」

子供を崩れた木箱から庇うようにアリシアは子供を抱えてて衝撃に備える。

 

衝撃に備えるアリシアだったが、いつまで経っても来ない衝撃に、恐る恐る目を開けると、ユウトが間一髪、落下する木箱を魔力により身体強化で受け止めていた。

 

 ユウトが駆け寄った時、アリシアは膝をつきながらも無事な子供を安心させていた。

 

「……無茶すんなって……」

 

「うん、ごめん。でも……勝手に体が動いちゃった」

 

 照れたように笑うアリシアの横顔に、ユウトは言葉を失った。

(……ああ、やっぱこいつもフェイトと姉妹なんだな)

 

 見た目は子供っぽくても、ちゃんと誰かを守る側として動ける。それが、アリシアなりの強さ。

 

 帰り道。荷物を受け取り、2人は並んで歩いていた。

 

「いやー、ユウトが怪我してなくて良かった。フェイトやリニスにバレたら危ないことするなって怒られちゃうかもしれないし、今日のことは内緒ね!」

 

「…まぁ、別にいいけど。」

 

「いやー、私ももっと魔法が使えたら私一人でも何とかなったかな?」

 

「…アリシアって魔法……あんまり得意じゃないんだよな?」

 

 ユウトの問いかけに、アリシアは「あー……」と気まずそうに笑った。

 

「うん、全然ダメってわけじゃないけど、適性はほとんどないって診断されたね。攻撃魔法も防御魔法も、どれも平均以下」

 

「へえ……フェイトはすごい魔力してるのにな。姉妹でもそんなに違うんだな」

 

「そうだね。でも、だからこそ“フェイトにできないこと”を探したの」

 

 アリシアは、お守りとして渡された胸元の小さなペンダント型デバイスを指先で軽く弾いた。

 

「リニスに色々教えて貰ってるから私、デバイスの知識は結構あるよ!修理も設計も、任せてって感じ。動力構造とか、魔力変換式の計算とか、そういうの大好きでさ」

 

「……デバイスマイスターってやつか」

 

「うん。ユウトやフェイトはこれから管理局の一員として、戦うことになった時のために、私ができることをしたいんだ。戦えなくても、フェイトやみんなを支えることはできる。それに、壊れたデバイスが元通り動き出す瞬間って、すっごく気持ちいいんだよ?」

 

 誇らしげに笑うその横顔は、戦場には立たなくても、確かに“誰かの力になれる”という自信に満ちていた。

 

 ユウトはふと、自分の右手にあるデバイス待機状態の腕輪をそっと触れる。

 

「……じゃあ、ディジターが壊れたときは頼むな」

 

「もちろん! 私、インテリジェントデバイスの構造にずっと興味あったんだよね~。使い手の癖が反映されてるっていうか、ちょっと無茶な設計だけどかっこいいよね!改良案もデバイスと相談できるし!」

 

「…そっか。」

 

「ねえユウト。今日、一緒でよかったよ。普段は言えないこと、ちょっとだけ言えた気がする」

 

「そうか?」

 

「うん。やっぱ二人っきりのほうが、変な遠慮しなくていいから」

 

「俺に対して遠慮なさすぎだと思うけどな」

 

「ふふ、それはたぶん、安心してるからだよ」

 

 無邪気に笑うアリシアの姿に、ユウトは心の中でフェイトの静かな微笑みを思い浮かべた。

 

 姉と妹。まるで違う。でも、どちらも――守りたいと思った。

 




書いてて思ったけどせっかくフェイトたちの罪原作より軽くしたんだし……空白期ぐらい自由に過ごさせてあげたいのでアースラ地球に滞在させてやろうかな…
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