しかも内容まとめられなくてかなり読みにくいしわかりずらくなった…
アースラ訓練室――冷たく硬質な床に、魔力の軌跡が描かれる。
白い空間に響くのは、ふたりの息づかいだけ。
ユウトは、ゼェ、と短く息を吐いた。
視線の先には、執務官――クロノ・ハラオウンが立っていた。黒のジャケットに身を包み、ブレない構え。相変わらず隙がない。
「……はぁ。マジで、やりづらいなクロノ。」
「それは光栄だな。いまの君みたいなタイプには“考えさせる戦い”をさせるのが一番有効的だとおもったからね」
冷静な口調で言いながらも、クロノの表情にはどこか興味深げな色があった。
これで5分経過。
クロノのから攻撃はしないという約束の時間が終わろうとしている。
ユウトはすでに全身に疲労が残っていたが、それでも立ち上がる。
真正面から技術と読み合いでぶつかれる相手なんて、そうそういない。
「さて、ここからが本番だ。次は、僕が仕掛ける」
「……おう。上等」
クロノが動いた瞬間、ユウトの視界が一気に染まった。
高速の魔力刃が二手に分かれ、左右から迫る。
(来る――!)
ユウトはとっさに後退、左手で展開したラウンドシールドで一撃を受け流し、すぐにディジターの機首を前方にスライドさせ――
「カノンモード、展開」
《Kanon Mode Ready. 》
「フォースバレット!」
《Force Bullet》
目の前のクロノの姿に弾丸を飛ばすー直後、デバイスを背後に振るう。
「……やっぱり、動体視力は異常なほどに伸びてるな」
振り返ると、杖を振り下ろしたクロノの姿がある。
互いのデバイスが鍔迫り合い、近距離で展開した魔力スフィアをぶつけあう。
煙が晴れ、いつの間にか背後に回っていたクロノが、わざとらしく肩をすくめる。
「僕が知っていた頃の君なら、いまのフェイントには絶対に引っかかってたはずだ。記憶を失う前より今の君は――勘が鋭いな」
「……そんなこと、自分じゃ分からないけど!」
あくまでクロノは、教え導くように、理論的に追い詰めてくる。
交錯するにつれ、徐々に敗北までの道筋が作られていく。
「…だが、やはり弱点は反応の遅さだな。僕が知っている頃の君と動きが変わらない。せっかくの強みである反射神経が活かせていない」
「……反射と反応って何か違うのか?」
一旦足を止め、クロノに質問する
「…簡単な話、君は戦いの1手分を無駄にして動いているな。今の君は、無理して過去の自分と同じように動こうとしている癖がある。」
「…癖?」
「…ああ。例えば防御面。相手の攻撃を認識すると、咄嗟に回避行動を取ろうと体が準備し…しかし頭の方で、昔の自分と同じような戦術パターンで行動しようと考えて最終的に防御魔法を展開する。この思考と行動のずれの分だけ、どんどん戦況は不利になっていく。」
「たしかに、戦う時はディジターから学んだ過去の俺の動きをトレースして戦術を組み立てているけど…」
「魔法戦を知っていた記憶を失う前の自分の真似事…。たしかにそれは初めて魔法を扱う君にとって効果的だったかもしれない。実際、凄まじい急成長を見せた。」
「…ああ。過去の自分が確立した自分に合った戦法や戦術…それがなかったら俺はたぶんジュエルシードの暴走体とかに負けてた気もするしな」
「…だか、そろそろステップアップの時間じゃないかな。真似事で得られる経験値はもう十分得たよ。」
「…新しい自分を受け入れる…か。」
「今のキミの長所や短所を意識した戦い方を模索するといい。」
「うーん、自分ではあんま分からないけど…」
「…なら、アースラの皆に聞いてみたらどうだ?最近は訓練外時間でも模擬戦たまにしてるんだろ?」
「…たしかに。ありがとうクロノ!まずは、フェイト辺りに聞いてみるよ。」
「…うん。そうするといい。」
訓練室でクロノとの個別訓練を終えた、ユウトは一人で廊下を歩いていた。
手には、小さなメモパッド。ディジターからの提案で、周囲の意見を直接入力することになったのだ。
「ってことで、今から皆に“俺のいいとこ・悪いとこ”聞いて回るってことで……。めっちゃ恥ずかしいけどな」
一人目は、フェイト。
訓練後のシャワーを終えたフェイトが、タオル片手に部屋で休んでいた。
「ユウトの長所? そうだね……」
少し考えてから、彼女は静かに言った。
「やっぱりスピードかな。あの時の動きは、私でも追えないくらい。直線的な移動だけなら、私よりも速いと思う」
「まあ、3次元的な動きはフェイトの方が速いけどな」
「あと……動体視力と反応もすごい。特に接近戦で“相手の反撃を出させる前に潰す”みたいな動き、結構やりずらいかな」
「お前、よく見てんな……」
「うん。私は近距離での動きは結構ユウトのこと、参考にしてるし。手数が少ない分、密着じゃなくてヒットアンドアウェイを狙うことが多いけどね。」
「……で、短所とかは?」
「えっと……いっかい守りに入ると、そこから立て直すのがちょっと苦手かも。受け続けると、押し切られやすい」
「う……それ、クロノにも言われた」
「ユウトの反応速度だったら受けてから攻撃じゃなくて、避けながら攻撃する方がいいと思うな。」
「…わかってはいるんだけどなぁ」
「…きっとなんかのきっかけで良くなると思うよ。頑張ってね。」
「…あぁ。ありがと、フェイト」
「…ううん、こんなの大したことないよ。次は誰に聞きに行くの?」
「次は、俺らの模擬戦よく観戦してるアリシアのとこかなぁ」
「…そっか、ねぇ、私も新しい戦い方…練習中なんだ。ユウトの新しい戦法決まったら一緒に練習しようね。」
「…ああ、必ず。」
二人目は、アリシア。
アリシアは、食堂でリニスとお菓子を食べながら談笑していた。
アリシアに話しかけると、すぐに話し出した。
「ユートの長所? いっぱいあるよ!」
「そこまで自信満々に言われると逆に怖いんだけど……」
「だって本当だもん。ユウトって、魔力のコントロール、すごく上手いよ。私、見ててびっくりするもん。“ここに1発だけ通したい”っていう弾、ぴったり出してる」
「まあ、それはディジターのおかげもあるけどな」
「あとね、ほかの長所は、やっぱ手数の多さかな。近距離は相手に強みを押し付けやすいし、遠距離戦は耐えながら細かいポイントでダメージ稼いでくよね!」
「…ああ。まぁ意識はしてる。」
「…やっぱユウトの弱点はすぐガス欠しちゃうとこかな?高速機動だって沢山の魔力使って無理やり加速してるんでしょ?」
「ぐ……言い返せない……。そうだ、リニスさんはどう思いますか?フェイトの師匠って聞きましたし、相当強いのでは?」
「今の私は、アリシアの使い魔ですから…アリシアの魔力量的にあまり自由に魔法を使うという訳には行きませんので戦えませんが…そうですね。」
「あ、あはは…ごめんね、全然魔力なくて…」
「…いえ、アリシアを責めているわけではありませんよ!えー、とユウトさんの直した方がいい所は4つほどですかね」
「…4つもですか…」
「1つ目は一撃の軽さ。いくら細かい所でダメージを重ねても、魔力総量的にあなたが持久戦を仕掛けるメリットは少ないかと。」
「…まぁ、そうですね。」
「2つ目は、やりたいことの多さ。高速機動と近接でのインファイト…両者を同時にやろうとするとその分魔力の消費量も増えますし。」
「…はい。」
「3つ目は、迷いですね。反撃を恐れて、相手の動きを封じることを意識しすぎて、あまりクリーンヒットを取れていません。」
「…」
「4つ目は、決め手ですね。例えばフェイトは近距離で撹乱して、相手にバインドを仕掛ける…そして、大規模魔法での決着…ですが、あなたの場合は…」
「…はい。そんな魔力ありません…」
「…ああ!そんなに落ち込まないでください!これらは簡単に改善できますよ!」
「…本当ですか!それは一体どうすれば…」
「…うーん、そうですね。あまり私から答えを言うのもよくありませんが…ヒントぐらいはいいでしょう。ヒントは…」
少し手を顎にあて、考え込んだあとにリニスは答える。
「…いまの戦法が決して悪いものでは無い…ことでしょうか?」
「…?それは先程の弱点などは解決出来ないのでは…?」
「あら、意外と頭が固いんですね…では、それこそあなたをよく見てるクロノくんに答え合わせでもしてみたらいいのでは無いでしょうか?」
「…わかりました。とりあえずクロノのとこ行ってみます。」
「あ、そうだ!ユウト!!」
「…どうした?アリシア。」
「私がユウトの火力不足とか手数とかいろいろ何とか出来るかもしれないよ!」
「えぇ……どこからその根拠が……」
「リニスとデバイスのこと調べてたんだけど、面白い部品があったんだ!ディジターに組み込んだら凄いことになるよきっと!」
「…なるほど。じゃあその部品とやらは期待してるよ。それじゃ」
「またねー!」
そして、再び訓練室にいたクロノの所に戻る。
「…なるほど、それで最後は僕と。」
「ああ。やっぱ模擬戦にも1番付き合って貰ってるし、なによりいまの俺の動きの元となった記憶を失う前のこと知ってるのクロノぐらいだし」
「まあ、いい。それで、キミの長所と短所だっけか」
「ああ、バシバシいってくれ」
「君の短所、聞くまでもないだろ。魔力総量の低さ。故に一撃の威力を軽くするか、連発を抑えるか…とにかく継戦能力が低い。正直、長期戦ならフェイトやなのはは遥かに及ばない」
「…うん。」
「だから、いまのキミは近接での短期決戦を仕掛けることが多いが…簡単な話、ここにいる模擬戦メンバーはもう慣れてきた。初見の相手でも、近接が得意な相手に押し切れるほどの威力は出せないし…」
「かと言って、遠距離戦主体にするには、手数がなぁ…スフィアも威力考えると同時に展開できるのは4個ぐらいだし…砲撃重視にしてもなのはの劣化だしなぁ」
「だが、それを補って余りあるのが、“精密な制御”と“技のキレ”だ。僕が過去に見てきた中でも、そこは上位に入る。射撃でも接近でも、極端な位置で強みが出る」
「……極端な位置、ね」
「いまのキミの近距離戦の強みはスピードによる圧倒的な手数…それに対抗手段がない相手には一方的に勝てる。この強みは捨てたくない。」
「…でも、通じない相手には無駄に魔力消費してよく動くだけなんだよな」
「ならば、動かなければいいだろ?」
「どういうこと?」
「それぞれを分割して独立した戦法を作るんだ。基本は高速機動戦、通じない相手には…近接だとそうだな。キミの目と反射の良さを活かしたカウンターヒッターはどうだろう。敢えて敵に攻撃を打たせ、少ない魔力でのKOを狙うにはうってつけだ。」
「…なるほど、インファイト主体とカウンター主体の動き…遠距離戦はどうすればいいと思う?」
「遠距離戦でのキミの強みは射撃精度と魔力コントロールだ。一対一の状況だったら…そうだな、高速戦闘で相手の攻撃は避けつつ、収束した砲撃のみでダメージを狙う…とかかな。」
「…でも魔力量キツくないか?」
「ああ。だが、キミの魔力コントロールなら高町なのはのように空気中に広がった魔力を高速戦闘下でも収束できるかもしれない。とても難しいが…魔力量はなんとかなると思う。」
「…なるほど。それで複数対複数の動きは?」
「…それならいちばん簡単だろ。
魔力スフィアを展開した複数の弾幕での味方の支援もしくは近接での前線ヘイトタンクかな。」
「…俺の攻撃性能だいぶ落ちないか?」
「分かりやすく例をあげるなら…そうだなフェイトと君が組んだ場合はフェイトが前線で戦場を駆け回り、フェイトに直撃する弾を君が相殺し続けるとかかな。」
「…それだけでいいのか?」
「…普通は、誤射が怖くて君も弾を撃ちにくい、フェイトの方も自由に飛びにくいが…キミの射撃精度と、フェイトからの信頼両方あって初めて成立するなかなか高度な連携だぞ?逆に高町なのはが味方の場合は君が前線役になればいい…」
「なるほど、俺の強みじゃなくて味方の強みに全ベッドする動きか…」
「まぁ、器用貧乏とまでは言う訳では無いが、フェイトよりは自由に飛べないし、高町なのはよりは砲撃性能が低く、僕よりも経験値が優れている訳では無い…」
「…!なるほど」
「…そうだ。なのはやフェイト、そして僕の3人の強みは自分の得意分野に持ち込むのが得意な事だ。それができないなら君は相手の苦手分野で戦うことが出来ればそれだけ有利に動けるはずだ。」
「…ありがとう。クロノ、考えはまとまったよ。」
「…結構。それでどうだ?」
「…?」
「…せっかくの訓練室だ。新しい動き、試したいだろ?」
「…!ああ、よろしく頼む!クロノ!」
そして訓練が始まり…5分後
訓練室の空気が、張り詰めていた。
クロノが魔力を走らせ、空中に数枚の的としてシールドを展開する。
その向こう側――ユウトは、すでにカノンモードの構えで静かに狙いを定めていた。
1、2、3――的の出る順番から、クロノの動きの“次”を読む。
《Lock-on》
「――そこだ」
『Snipe Shooting』
放たれた魔力弾は、空間を裂くように走り、シールドの一枚を弾き飛ばした。だが、クロノはすでにそこにはいなかった。
後方に気配あり。ユウトはディジターを通常形態へと戻し、すぐさま迎撃の構えを取る。
杖を振り下ろそうとするクロノの喉元にデバイスを突き立て、直撃寸前で止める。
「…うん。さっきと違って、変形への切り替えに無駄な動きが減ったな。かなり読みの精度が良くなってる」
「……カウンター型、性に合ってんのかもな。先に手を出すより、こっちのが反射と思考のバランス取れてる気がする」
その時――訓練室の扉が音を立てて開いた。
「ユウトー!」
元気な声とともに、アリシアが勢いよく飛び込んできた。後ろにはフェイトとエイミィ、そしてリニスの姿もある。
「……って、まだ訓練中だった?」
「いや、ちょうどひと段落ついたとこ」
ユウトが汗を拭いながら言うと、フェイトが少し心配そうに近づいてくる。
「新しい戦い方、試してるんでしょ? 無理しすぎてない?」
「今のとこは平気。むしろ、思考ひとつ変えるだけでこんなに動きやすくなるんだって驚いてる」
「それなら私見てみたいな。……ユウトの新しい戦い方」
フェイトがそう微笑むと、アリシアも手を挙げた。
「それならチーム戦してみたら? アルフ呼んで2対2で!クロノとユウトのコンビネーション、見たことないし!」
「…なんでそんな急に?」
「さっき話した新しい部品を使ったディジターのバージョンアップ!ユウトの戦法に合ったバージョンアップを考えるにはやっぱり実際目に見ておきたいし!」
「…え?アリシア…私のデバイスにはその…新しいバージョンアップとかって…?」
「あっ!ごめんフェイト…忘れてた!部品頼んでないし…とりあえずユウトの後でやってみるよ!」
「…私…妹なのにユウトに先越された」
「…なんか、すまん」
リニスは「ふふ」と小さく笑いながら肩をすくめる。
クロノはそんな様子にため息を吐きながら言う。
「…実際、今のユウトは新しい戦術を試す段階を超えてあとは実践で技のキレを磨く段階に来てる。チームでの戦いも悪くはないな。」
「そっか……ねぇ、私も。ユウトの動きに合わせる練習、しておきたいな」
フェイトのその言葉に、ユウトは一瞬だけ黙って――そして、静かにうなずいた。
「……なら、何回かに模擬戦分けてやるか。まずは遠慮なくフェイト、タイマンで新戦術、見せてやるよ」
「うん、私も試したい…バルディッシュと考えた新しい力…ソニックモード見せてあげるよ。」
フェイトがバルディッシュを手に取り、アリシアがビデオカメラを回す。
そしてその日の訓練はアースラ消灯時間まで続いたという…。