○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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なのはの場合

地球滞在4日目の放課後――

 人気のない広い公園に、魔法の気配を抑えるように、アルフが展開した結界が静かに広がっていた。

 

「よし、結界完成。中で魔法使っても、外にはバレないよ!」

 

 アルフが満足げに手を下ろすと、ユウト・なのは・フェイト・アリシア・リニスが、順々にその中へと足を踏み入れた。

 

「本当はユーノくんも来られたらよかったんだけどね。あっちで仕事があるんだって」

 

「まあ、あいつも忙しいだろ。代わりに俺が模擬戦の相手するよ」

 

 ユウトが軽く手を上げると、なのはがにっこり微笑む。

 

 アルフが展開した結界の中、空気がぴんと張りつめていく。

 軽く風が吹き抜ける中、ユウトはディジターを右手に装着し、魔力を静かに高めていた。

 

「じゃあ、3人で回しながらやろう。1対1、勝ち残り形式でいいかな?」

 

 なのはの提案に、フェイトもユウトも頷いた。

 

「私、先に出るね。……ユウトくん、お願い」

 

「おう。こっちも、遠慮しねぇからな」

 

 地面を蹴った瞬間、なのはの足元に魔力の羽が浮かぶ。

 その身を軽やかに浮かせ、優雅な軌道で空中へと舞い上がる。

 

 対して、ユウトは地上にとどまったまま。

 右手のディジターから光の刃が展開され、同時に周囲に小さな魔力スフィアを数個浮かべる。

 

「――行くよ、ユウトくん!」

 

 次の瞬間、なのはが先手を取る。

 《ディバインシューター》の高速弾が、波のように連続して放たれる。

 

『Round Shield』

 

 ユウトは瞬時に展開した防御魔法で1発、2発を防ぎ、あえて3発目をギリギリで避けるように体を傾けた。

 ――魔力の無駄を抑え、動体視力と反射で見切る。

 

「とっ……そこ!」

 

 間髪入れず、ユウトが跳び上がる。《フォースブースト》による急加速。

 空中で魔力スフィアを再展開、同時に《フォースショット》をなのはの射線ぎりぎりに撃ち込んだ。

 

 なのははすぐに《プロテクション》で防御。だがその瞬間、ユウトの姿が視界から消える。

 

「上――!?」

 

 気づいたときには、上空から《フォースインパクト》が振り下ろされていた。

 

 間一髪で避けたなのはの肩口を、かすめるように魔力の刃がすり抜ける。

 

 その着地の衝撃で土煙が巻き上がり、双方一度距離を取る。

 

「……ほんとに、戦い方変わったね。無駄がないっていうか……“怖い”って感じるくらい」

 

「言われてみれば、お前らに張り合おうと必死だったしな……でも今は、魔力量の少なさをごまかせる戦い方になってるだけさ」

 

 その言葉に、なのはは静かに頷く。

 

「うん、それでも――負けないよ!」

 

 言葉と同時に放たれる一撃。《ディバインバスター》がチャージ状態で放たれる。

 

 ユウトは回避とシールドを併用してやり過ごし、設置していたスフィアと自身のデバイスから魔力弾を撃ち込む。

 一瞬の攻防、勝負の分け目は相手への対抗策。

 

 決着は――僅差だった。

 

「……っ、ここまで!」

 

 アルフの声で模擬戦が中断され、両者が地面に降り立つ。

 互いに息を整えながらも、どこか満足そうに笑い合った。

 

「……今回は負けちゃったけど、やっぱり、しがらみなく魔法で戦うの楽しいね!」

 

「こっちも、気抜けなかったぞ。……次、フェイトだな」

 

 ディジターの刃が再展開される。

 フェイトは小さく深呼吸をして、一歩踏み出す。

 

「……いくよ、ユウト」

 

「おう。この前のリベンジさせてもらうぜ」

 

 ――次の激戦が、始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

模擬戦が始まった直後

 

地面を蹴る音もなく、フェイトの身体がふわりと宙を舞った。

 

 金色の髪が風にたなびき、展開されたバルディッシュが起動音を響かせる。

 

『stand by,ready set up.』

 

「いくよ、ユウト!」

 

「来い!」

 

 フェイトの得意とするミドルレンジでの高速戦闘

 まるで残像が見えるかのような軌道でユウトを翻弄しながら、左右から挟み込むように《アークセイバー》が連射される。

 

「チッ、速いな……!」

 

 ユウトはスフィアで牽制しつつ、シールドで正面を固め、ぎりぎりで弾道を読み切る。

 

 《フォースブースト》で反転、高速回避とともに《フラッシュエッジ》――遠距離斬撃がフェイトの軌道を狙って放たれた。

 

 フェイトもまた、その反撃を読み切っていた。

 

「――それは、私には届かないよ!」

 

 幻影魔法で位置を誤認させ背後へと回り込んだフェイトのバルディッシュが回転し、《フォトンランサー》を間合いゼロで打ち込む。

 

「……っ、やばっ――!」

 

 ユウトは咄嗟に魔力盾を展開、直撃は避けたが、爆風でバランスを崩して後方へと弾き飛ばされた。

 

 空中に浮かぶユウトの身体。

 

 そこへ、追撃をかけようとフェイトが迫る――だが、その瞬間。

 

「――えっ?」

 

 ユウトの足元に漂っていたスフィア弾の制御が乱れる。

 

 直前までユウトが操作していた魔力スフィアの一つが、制御ミスで不安定な爆裂反応を起こした。

 

「あ、やべ……!」

 

「きゃっ――!」

 

 ユウトは咄嗟にフェイトの身体を抱き寄せ、反転して地面を背に向けながら、二人はそのまま空中から落下していった。

 

 バルディッシュもディジターも、咄嗟の反応に完全な防御を展開する間もなかった。

 

 重なるように――地面へ。

 

 ドスン、という重い音。

 

 結界の地面に、二人は衝撃を吸収されながらも倒れ込んでいた。

 

 ユウトの両腕が、フェイトをしっかりと抱き締めるように支え、その下に自分の身体を敷いていた。

 

「う、うぅ……ってぇ……」

 

「ユウト……!? だ、大丈夫!?」

 

 驚いた顔でフェイトが見上げる。至近距離――いや、ほとんど顔が触れる距離で、ユウトが眉をひそめた。

 

「お前こそ……怪我は……?」

 

「だ、大丈夫……だけど、ユウトくん、顔……近い……」

 

「……わ、悪い」

 

 互いに照れくさくなって、視線をそらした瞬間。

 

「な、なにやってんのー!」

 

 少し離れた場所からなのはの声が飛んできて、二人はあわてて飛び起きた。

 

「ち、違う、これは事故だって!」

 

「そ、そう! 魔力スフィアが、えっと、その……!」

 

 言い訳を重ねる二人をよそに、アリシアやリニス、アルフはくすくすと笑っていた。

 

 結界の中に、夏の日の終わりのような、ほのかな余韻が漂っていた――。

 

 

戦いが終わり、それぞれが会話しながら帰り道を行く

 

「最近のユウトくん、戦い方すごく変わったよね。動きが落ち着いてて……なんだろう、すごく“迷いがない”感じ」

 

「だろ? カウンター主体にしたら、意外と合っててさ。……こっちに攻撃させるように誘導して、タイミング計って反撃。あんまり魔力使わなくて済むし」

 

「ふふ、昔はガンガン突っ込んでたのにね」

 

「……昔って言っても、そこまで前じゃないだろ」

 

 そのやり取りに、フェイトとアリシアがくすくすと笑う。

 

 そして、ふと――なのはがユウトの隣に立って見上げるように彼を見つめた。

 

「ねぇ、ユウトくん」

 

「ん?」

 

「……やっぱり、背、高くなったよね」

 

 ユウトは一瞬だけ「しまった」というように視線をそらしたが、すぐに観念したように小さく頷いた。

 

「10センチくらいは伸びた、ってアースラの医療チームが言ってた。記憶はないけど、赤子のころに巻き込まれた事件の影響で成長が阻害されてたとか。……お前らがジュエルシードのに俺の回復を願った影響で、“健全な状態の俺”に急成長した、って話」

 

「そっか……じゃあ、それだけ心も体も元気になったってことだね」

 

「ま、まぁ……そうかもな」

 

 言葉少なに答えるユウトに、なのはは一歩近づく。

 以前より少しだけ見上げるようになったその視線が、ふと、やわらかく揺れた。

 

「正直……ちょっとさみしいな。前までユウトくんの頭、ポンポンしやすかったのに」

 

「……やめろ、そういうの。前はなのはのほうがちょっと背が高かったけど、今は俺のが背高いし。」

 

「ふふっ。じゃあ今度から、背伸びしてポンポンしよっかな」

 

「それはもっと恥ずかしいわ!」

 

 笑い合うふたりの声に、周囲の空気もほんのり和んだ。

 

 ――魔法よ出会ってから変わったものもある。

 けれど、それでも変わらない関係も、きっとあるのだと。

 

 夕陽が傾き始めた空の下、模擬戦前のひとときは、少しだけ甘く、懐かしい空気に包まれていた。

 

そのやりとりを見ていたアルフとアリシアはフェイトの背後に回り込み、にやりと笑う。

 

「ねえねえ、フェイト~?」

 

「……な、なに?」

 

 フェイトはすでに察していた。さっきの“落下事件”のことを。

 

「今日の模擬戦、すっごく良かったよ? 迫力あったし、スピードもかっこよかったし……でもなにより、最後の“抱かれたときの顔”が最高の見どころだったな~って!」

 

「っ……! ち、ちがっ……あれは事故だってば!」

 

「うんうん、事故だったよね~。でもねぇ……どうしてフェイトの顔が、あんな真っ赤になってたのかな~?」

 

「なっ……!!」

 

 アリシアはひらひらと手を振りながら、さらに畳みかける。

 

「いや~、見てたこっちが照れたよほんと。あとでそのまま告白するのかと思っちゃった~♡」

 

「も、もうやめてぇ……!」

 

 顔を覆ってうずくまるフェイト。

 そんな彼女の頭を、そっとリニスが撫でる。

 

「ふふ、でもフェイト、本当に嬉しそうだったな?」

 

「アルフまでっ……!」

 

 少し離れた場所で、ユウトが「聞こえてるんだけど……」とぼそっと呟くも、アリシアのテンションは止まらない。

 

「ていうか、この前一緒に寝てたのに、いまさら何照れてんの?」

 

「ちょっ、それはっ……!!」

 

「んふふ~、あーもうフェイトが可愛すぎる~。今日はお姉ちゃん、大満足だよ」

 

 フェイトは真っ赤なまま、アルフの後ろに隠れて小声で抗議していた。

 

「アルフ……止めてよ、アリシアを……」

 

「無理。アリシア、調子に乗ったらしばらく止まんないし」

 

「そんな……」

 

 アリシアの明るい笑い声が、夕暮れの公園に響き渡る。

 どこかで鈴虫の音が鳴き始める中で、フェイトの顔の赤みだけが、夏の夕陽に負けないくらいに色づいていた。




なのは回なのか、フェイト回なのかはっきりしなかった……
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