○○を救う魔法。   作:黒歴史メーカー

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覚醒

ーーーディジター視点

ありえない、理解が追い付かない

 

私のマスターは魔力量が生まれた時から人よりも少ない。

だから魔力コントロールを鍛え、少ない魔力でも威力が出るように日々修行をしていた。

だが今は?

 

普段の紫色の魔力光は白く代わり、体から溢れる膨大な魔力で無理やり飛行魔法を行使することで、体を宙に浮かべ動き出す。

 

「ディジター、砲撃用意」

 

マスターが私に命じる

考える余裕は無い

 

今は敵を倒さなければ、

そう考え魔力を1点に集中させる

 

「フォース…バスター!!!」

『force buster 』

 

先程のフルパワーの砲撃より威力が落ちるずが、その数倍は大きいサイズの砲撃が空から地上へ向け放たれる。

マスターも調子が異常に良い

 

先程は砲撃を難なく避けられたがこれなら……!

 

「チッ…避けきれなかったか…」

 

「すみません、トーレ。私が足を引っ張りました。」

 

どうやらトーレと呼ばれた女がもう1人を抱えて高速移動で砲撃から逃げたようだ。

直撃こそしなかったようだが、かなりのダメージは与えることができた

 

好機だ

 

『マスター、このまま制圧を!』

 

「フォースバレット!」

『force Bullet』

 

マスターの周囲に魔力スフィアが浮かび、それぞれが敵を攻め立てたてる。普段の状態ではあれば展開できるスフィアは最大でも4個程度が限界であったが、いまのマスターは16個も展開し、それを自在に操っている。明らかに魔力量が増えている事実に戸惑いつつも制御を手伝う。

 

「ちっ、このままでは埒が明かない、IS起動…ライドインパルスッッ!」

トーレと呼ばれた女が目にも止まらなぬ速さでスフィアをかいくぐり接近してくる。

先ほどの砲撃を避けられたのは、この技の仕業か、、、

不味いっ…このままでは…!

 

「そこまでだ、トーレ」

 

男の声がどこかから響いている

魔力探知には反応しない…周辺には居ないはずだが…

 

「なんだ、ドクター。なぜ止める」

 

「いやなに…その子供に実に興味が惹かれてねぇ…実験材料にしたいんだ。出来ればその子殺さずに連れ帰ってきて欲しいんだよ…」

 

「なんだと…?」

 

敵はなにやら話し合っているようだ

 

今のうちに距離をとり、魔力をマスターの回復に回す。状況はかなり悪い。

こちらの戦力は出血が酷いマスターのみ。それに対し、向こうは最低でも2人。さらにISというという現状こちらが対処不可能な切り札。

 

いまのマスターの様態はかなり悪い。かすり傷が致命傷になりかねない。この状況を打破するにはもう使える手札がない…。

 

「なぁ、ディジター…」

 

喋るのも辛いのか、マスターは掠れた声で話し出した。

 

『今は、体の治療に専念してください。マスター』

「まぁまぁ、聞いてくれよ…よく分からん力が溢れてるが正直今のままだったら確実に負ける。こんな辺境の管理外世界、増援は見込めないし逃げ場も正直ない。」

 

マスターの言うことは正論だ。

今回の調査地である世界は管理局が把握している管理外世界の中でもかなり遠い辺境の地にある。

 

次元世界を渡る船だって早くても1週間後にしか渡航してこない。この場を切り抜けたところで状況は芳しくない。

 

「だから、こそあいつが持っている遺物を狙う」

 

『正気ですか…?あの遺物は発掘したばかりで、そもそもこの場を何とかできる力をもっている可能性は1パーセントにも満たないかと』

 

「いや、遺物の正体はおおよそ予想がついてる。あれは…」

 

マスターから提案された作戦をシミュレートする。

 

此方と向こうの戦力バランス

現状のマスターのコンディション

不確定要素の予測

作戦が成功する最善の策と不確定要素を考慮した次善策

その全てを演算する

 

「どうだ…?いけるか?」

 

『正直、かなり厳しいです 成功確率は高く見積って20%程度でしょうか』

 

「単純計算5回に1回も成功するなら十分だ」

 

『5回に4回は失敗するということですよ、マスター』

 

「ま、生き残るにはこれしかない。やるぞ…相棒?」

 

マスターは機械である私のことを相棒と呼んでくれた…

なら機械の私に出来ることはその信頼に答えるだけ!

 

『状況はよくありません。先手必勝最高最速で終わらせましょう。』

 

こちらが作戦を決定した頃、向こうもどうやら話し合いは終わったようだ

こちらを囲むような陣形をとり、距離を図っている

 

「いくぞ、ディジター!!」

『はい、マスター!!』

 

デバイスは砲撃形態のまま、トーレと呼ばれてた女に突っ込む

 

「ほう、正面からくるか…」

相手は構えを作り此方を迎撃する準備を始める。 その瞬間体を反転させ、瞬間高速移動魔法を使用する。

 

「此処だ!」

『force bosst』

 

「ちっ、狙いはこちらですか」

 

ドゥーエと呼ばれていた女は挟み撃ちにしようと行動していたようで急に反転し突っ込んできた此方に対して対処が遅れる。

ここまで読み通り…!

 

「ディジター!!フォースバスター・シャープシフト!!!」

『Force Buster Sharp Shift』

 

先程の砲撃と違い、射程を縮め威力を絞ることで射撃の精度を高め、寸分の狙いも外さない精密射撃を行う。

恐らく機械の体であろう相手に対して一撃での戦闘不能には持っていくほどの威力は見込めないだろう…

 

しかし狙いはその手にもっている遺物!!

 

閃光が空を掛け、遺物である門を貫く

瞬間扉から天に向かって光が放たれる

 

「貴様ッ何をしている!?」

 

動揺した様子でうしろから追いついてきたトーレが叫ぶ。

 

「これでも、こっちは遺物に関する知識は学んできてるんだ…形状・デザインそして魔力回路の繋がりそれらからある程度はそれの正体の予測はつく。その遺物は、古の国の王族が城に用意した隠し通路にあしらわれた装飾と共通点が多い。しかも込められた術式はベルカ式の転移魔法とにている。だったら予想される遺物の能力は、緊急時に決められた場所もしくは無差別な場所への長距離転送による脱出!!」

 

「なっ…」「最初からそれを狙って…!?」

 

扉から放たれる光が段々と大きくなり、巨大な魔法陣が展開される。

そしてマスターの体が光の膜に包まれる。魔法陣の中にいる相手には何も影響はないようだ…

どうやら考えうるうちの最善の結果を引いたようだ。

 

最悪のパターン、それは扉がその場にいる全ての者が同じ場所に転移すること。この場合場所を変えただけであまり状況は変わらない。しかし、もしかしなら増援が来る可能性がある場所に転移するかもしれない。かなりの博打だったがどうやらマスターは運が良い方だったようだ。

 

相手は転移魔法が完成する前にこちらを妨害せんと攻撃を仕掛けてくるが全て光の膜によって防がれる。

 

「ちっ…仇である我らを置いて逃げるのか??」

 

「ああ…今の僕が何度やっても勝てないだろうし」

 

「ふん…随分と開き直った態度だな」

 

マスターの体が透け始める

どうやら転移魔法が完成したようだ

 

「忘れるなよ…僕はお前たちを許さない。今は勝てなくてもいつか必ずお前たちを倒し、必ず敵を…」

 

話の途中で、門の扉が開きマスターの体は門の中に吸い込まれる。

門の中はまるで宇宙にいるかのように広大でその中を長い渦のような物が無数に伸びている。私達はそのうちの1本の中を泳いでいるようだ…

 

トーレ視点ーーーーーーーー

 

「すみません、ドクター。ご命令どうりに奴らを捕獲することは出来ませんでした。どうしますか?このロストロギアを使って奴らを追いますか?」

 

《いやいや、君に落ち度はないよ。無理を言った私が悪い。それに、そのロストロギアを使っても意味は無いよ。》

 

「何故ですか?」

 

《そのロストロギアは、魔力を注いだ術者をその者の縁のある場所へと転送する力をもっている。恐らく彼が転送された場所は、ミッドチルダか以前彼が訪れた場所のどこか。君が使ったところでせいぜい私のとこへ転送されるだけだろう。》

 

それに、とドクターと呼ばれた男がため息をつきながら言い放つ

《あんな無理やりな方法で起動して、正常に動作するだろうかねぇ?》

 

「ドクター、それはどう言った意味で?」

 

《ロストロギアの魔力が指数関数的に増加している。計算によると96時間後には暴走するだろう。こちらへ早く戻りたまえ。はぁ、せっかくの新しい実験材料だったんだが…》

 

「はっ、了解しました。ドクター。」

 

ーー通信を切る。

「はあ、これで任務失敗ね。トーレ 」

 

「ああ、遺物の回収は不可能。対象も1人取り逃がした。」

 

「ウーノ姐さんにも、小言言われるんだろうなぁ憂鬱だわ。」

 

「それもあいつ、ユウトとかいう子供のせいだ。次会った時は容赦なく殺そう」

ーーもっとも、次があればの話だが

 

 

それから約96時間後 ドクターの予想どうりロストロギアは暴走。

次元震を起こしひとつの次元世界が観測されなくなった。

 

ーーディジター視点

 

渦に飲まれ長い時間がたった。

正確な時間としては352800秒、約4日ほど経過した。

 

マスターの様態に異常はない。意識も正常。

 

なにも変わらない景色にいくら機械の自分であっても退屈を覚える。

 

「ディジター 、俺たちこれからどうなるんだろうな」

 

『余程遠い場所に転移させられているのでしょうか。いえ、この場合は高速移動による転送でしょうか。ともかく随分長い間ここにいますね』

 

「腹は空かないし喉も減らないから餓死するって訳でもないがこの狭い空間にずっとってなるとなんも出来ないし退屈なんだが」

 

『傷の手当も完璧に出来た訳ではありません。あまり動かないように。。。あと、魔力の方もあの時の膨大な力を感じません。むしろ減っているような気がします』

恐らく門の起動時から私達の体を包んでいる光の膜は超高速移動に耐えるために私たちの体を冷凍保存のような形で保存しているのだろう。そしてこの光の膜の維持にマスターの魔力が使われている可能性がある。

 

『おや…?マスター、あちらを。』

 

なにもなかった空間の向こうに光が見える

その光は徐々に大きくなる

どうやらこの長い時間もようやく終わりを迎えるようだ。

さて…これからどうなることやらーーー

 

そう考えていた私とマスターを次の瞬間凄まじい音と共に激しい揺れと衝撃が襲った

 

真っ暗だった空間は七色の空間へと変貌する。まるで虚数空間に迷い込んだみたいだ。そして、私たちの体を包んでいた光の膜はひび割れ今にも壊れそうだ。

 

「何が起きた!?」

 

これはもしや…

 

『魔道具の暴走現象と似た反応が起きています!衝撃に備えてください!』

 

「まさか、次元震…!?」

 

パキっとなにかが割れるような音がした。

 

光の膜が割れ凄まじい魔力波が襲う

 

『protection』

 

直ぐに衝撃からマスターを守るため、障壁を展開する

先程見えた光は既に目と鼻の先にあり、光の中からは穴のような物が空いている。おそらく出口だろう…、あそこまで耐えれば…!!

 

「ぐうッ…」

 

しかし、不測の事態は続く。先程の衝撃で治りかけの傷口が再び開いてしまったようだ

お腹からおびただしい量の血が流れ、マスターは崩れ落ちる

 

『マスター!?』

 

返事はない…このままでは転移が成功したとしてもマスターが…

 

障壁を私に込められた残りの魔力で強固なものとし、時間を稼ぐ。

次元震による強力なエネルギー余波が私たちを襲う。

 

直ぐに障壁が破られ、エネルギーの波に押し流される。少しでもマスターを助けようと私は無茶を承知で障壁の再展開し、衝撃を軽減する。

外装は剥がれ落ち、内部回路が焼ける音がする。

 

そうしているといつの間にか穴の外まで押し出された。

 

(ここは…空!?)

 

状況は最悪

現在の高度はおよそ400メートルはあるだろうか。

空から地面に向かい重力に引かれるように下に落ちる。

 

徐々に加速しはじめる中、シュミレーションを繰り返す。

どうにか、残された魔力を使ってマスターが生存する道を考えなければならない

 

障壁を展開し、地面との衝突を和らげる?ーー否、先程の次元震により、深手を負った意識不明のマスターの体を十分な加速を伴った衝突から守るほどの障壁を展開する魔力は残されていない

 

故に方法は一つだけ

 

ーーー飛行魔法を使い、ベクトル相反により落下のエネルギーを打ち消す

 

少しでもマスターが生存する確率を上げるためにするため障壁を解除し、魔力を温存する。

きっと壊れかけたこの機体は次に魔法を放てば崩れ落ちるだろう。それでもマスターを守れれば本望だ。

 

そして、時を待つ

 

といっても、人の身で考えれば時間はすぐだろう。高さ400メートルから自由落下した場合、地面に落ちるのは約9秒

 

早すぎてはだめだ。私に残された魔法では一瞬の上昇が限界、高い高度で数秒上昇しても再び落下して死んでしまう。

遅すぎてもいけない。減速しきれずそのまま地面に突っ込んでしまうだろう。

 

推定衝突時間まで残り3秒を切る

 

ふと、考えがよぎる

例えこの身を犠牲に衝突を防いだところでマスターの体はもう……

 

余計な思考は切り捨て魔法を発動

地面ギリギリ寸前のところで衝突は回避する

 

よかった…

限界まで無理をした甲斐があったというものだ

内部回路は焼けきれ、私のセンサー既に機能せずマスターの生体反応すら認識しない。

 

《システム警告:外装破損率95%。動作限界まで残り10秒。強制シャットダウンを開始します。》

緊急アラートがなる。

視界が暗くなり、システムが順番にシャットダウンしていく。

薄れゆく視界のなか、倒れたマスターの体を見る。

もはや呼吸をしているかも分からない。腹部からは先日の戦闘で受けた傷から血が溢れている…このままでは……

 

(誰か…マスターを…助けて)

次の瞬間、すべての機能がシャットダウンし私は深い眠りについた。

 

 

「……きみ、大丈夫!?」




これにて過去編…というか本編につなげるための導入が終わりました…
ちょっと駆け足過ぎたなと反省してます……
次回からは我らが主人公登場します。
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